58 / 82
見せたくない(ロイ視点)
しおりを挟む
ランス達を含む前衛隊が森の中へ入ってからどのくらい経っただろうか。
「うわああああ」
救護班と一緒に救護所の前で待機していると、突然森の中から王都の騎士が叫びながら走ってきた。
「どうした!」
何かから逃げてきたようだが、何もいない空中に剣を振り翳していてどうやら騎士は錯乱しているらしい。他にも数名の騎士が森の奥から走ってきたが、やはり錯乱しているようだ。
「いけない、このままだと幻覚に、飲み込まれる」
リラが神妙な顔で言うと、白龍ジュインが片手を大きく広げて空中を扇ぐ。すると光が周囲に舞い、騎士達の周りに降り注いだ。騎士達はハッと我に返る。
「お、俺たちは一体……」
「どうしたんだ、急に森の中から出てきたが」
静かに聞くと、騎士達は顔を見合わせて身震いをする。
「ケインズ団長達の後に続いていたんだが、突然魔物が沢山現れてきて。倒しても倒してもわいて出てくるんだ。出元を突き止めて向かっていると突然みたことも無い恐ろしい魔物に襲われて……」
「君たちはどうやら幻覚を見せられていたようだね。弱い心に漬け込む魔物がいたようだ」
ジュインが言うと、騎士達はバツの悪そうな顔をしている。
「怪我、してる」
リラが気づいて治癒魔法をかける。リラが自分から誰かの状態を気にかけるなんてすごい進歩だ、驚きと嬉しさが込み上げる。だが、なぜか同時に心配にもなってしまうのは過保護だろうか。
リラの様子に気づいた救護班の医師や看護師たちも他の騎士達の救護に当たり始めた。
「!」
森の中から禍々しい気配がする、数体いるか。
「ひっ、あいつらわいて出てくる魔物達だ、俺たちを追ってきたのか」
騎士が悲鳴をあげる。
わいて出てきたと言っていたが、気配からするにそんなに数は多くないし今のところ限られている。騎士達を追って本体からはぐれた魔物ってとこだろう。すぐに剣を抜いて構える。
「ロイ」
リラが心配そうに俺の名前を呼ぶ。心配してくれていることにも嬉しさが込み上げてくるが、今はその感情に浸っている場合ではない。
「大丈夫だ、リラ達は治癒に専念してくれ」
すぐに襲ってくる魔物達を斬りつける。数はそこそこ多いが一体一体の強さは大したことないな。騎士達を追いかけてきた魔物はあっという間に倒し終えることができた。
「す、すげぇ……やっぱり白龍使いの騎士は強いんだな」
騎士の言葉にリラの顔が心なしか綻んでいる、どうやら俺が誉められて嬉しいらしい。そうやって表情に出すようになったんだな、なんて微笑ましく思っていると、そんなリラの表情を見て手当されていた騎士がソワソワし始めた。
ん?なんだか嫌な予感がするな。
「討伐祭の打ち合わせの時もずっと無言で真顔だったからわからなかったけど、聖女様って結構可愛らしいんですね」
「確かに、よく見ると可愛い」
他の騎士達もリラの顔を見て次々に可愛い可愛いと言い始めた。おいおい、お前らいい加減にしろよ。
騎士達の様子にリラはよくわからないと言った顔で俺を見る。いや、説明に困るんだが……。
「うちの妻を誉めていただいて、どうも」
ズイッと一つ前に出てそう言うと、あっ!そうだった、という顔をして騎士達が萎縮する。リラの表情が少しずつ和らいで変化のレパートリーが増えていくことは喜ばしいことだ、だがそれによってリラの可愛さが他の奴らに知れてしまうのはなんだか気に食わない。大いに気に食わない。
着ていたローブをリラに羽織り、フードを被せた。リラはキョトンとしているがわからなくて構わない。この可愛さを誰にも見せたくないだなんて俺もしっかり独占欲の塊になりつつあるな。
「寒くないように、だ」
本当は違う目的だが、リラはそんなことには全く気づかずに俺を見て嬉しそうに笑った。
「ありがとう、ロイ」
ヒューゥと口笛が聞こえる。お熱いことで、なんて声も聞こえてきた。うるせぇんだよ、全く。
「うわああああ」
救護班と一緒に救護所の前で待機していると、突然森の中から王都の騎士が叫びながら走ってきた。
「どうした!」
何かから逃げてきたようだが、何もいない空中に剣を振り翳していてどうやら騎士は錯乱しているらしい。他にも数名の騎士が森の奥から走ってきたが、やはり錯乱しているようだ。
「いけない、このままだと幻覚に、飲み込まれる」
リラが神妙な顔で言うと、白龍ジュインが片手を大きく広げて空中を扇ぐ。すると光が周囲に舞い、騎士達の周りに降り注いだ。騎士達はハッと我に返る。
「お、俺たちは一体……」
「どうしたんだ、急に森の中から出てきたが」
静かに聞くと、騎士達は顔を見合わせて身震いをする。
「ケインズ団長達の後に続いていたんだが、突然魔物が沢山現れてきて。倒しても倒してもわいて出てくるんだ。出元を突き止めて向かっていると突然みたことも無い恐ろしい魔物に襲われて……」
「君たちはどうやら幻覚を見せられていたようだね。弱い心に漬け込む魔物がいたようだ」
ジュインが言うと、騎士達はバツの悪そうな顔をしている。
「怪我、してる」
リラが気づいて治癒魔法をかける。リラが自分から誰かの状態を気にかけるなんてすごい進歩だ、驚きと嬉しさが込み上げる。だが、なぜか同時に心配にもなってしまうのは過保護だろうか。
リラの様子に気づいた救護班の医師や看護師たちも他の騎士達の救護に当たり始めた。
「!」
森の中から禍々しい気配がする、数体いるか。
「ひっ、あいつらわいて出てくる魔物達だ、俺たちを追ってきたのか」
騎士が悲鳴をあげる。
わいて出てきたと言っていたが、気配からするにそんなに数は多くないし今のところ限られている。騎士達を追って本体からはぐれた魔物ってとこだろう。すぐに剣を抜いて構える。
「ロイ」
リラが心配そうに俺の名前を呼ぶ。心配してくれていることにも嬉しさが込み上げてくるが、今はその感情に浸っている場合ではない。
「大丈夫だ、リラ達は治癒に専念してくれ」
すぐに襲ってくる魔物達を斬りつける。数はそこそこ多いが一体一体の強さは大したことないな。騎士達を追いかけてきた魔物はあっという間に倒し終えることができた。
「す、すげぇ……やっぱり白龍使いの騎士は強いんだな」
騎士の言葉にリラの顔が心なしか綻んでいる、どうやら俺が誉められて嬉しいらしい。そうやって表情に出すようになったんだな、なんて微笑ましく思っていると、そんなリラの表情を見て手当されていた騎士がソワソワし始めた。
ん?なんだか嫌な予感がするな。
「討伐祭の打ち合わせの時もずっと無言で真顔だったからわからなかったけど、聖女様って結構可愛らしいんですね」
「確かに、よく見ると可愛い」
他の騎士達もリラの顔を見て次々に可愛い可愛いと言い始めた。おいおい、お前らいい加減にしろよ。
騎士達の様子にリラはよくわからないと言った顔で俺を見る。いや、説明に困るんだが……。
「うちの妻を誉めていただいて、どうも」
ズイッと一つ前に出てそう言うと、あっ!そうだった、という顔をして騎士達が萎縮する。リラの表情が少しずつ和らいで変化のレパートリーが増えていくことは喜ばしいことだ、だがそれによってリラの可愛さが他の奴らに知れてしまうのはなんだか気に食わない。大いに気に食わない。
着ていたローブをリラに羽織り、フードを被せた。リラはキョトンとしているがわからなくて構わない。この可愛さを誰にも見せたくないだなんて俺もしっかり独占欲の塊になりつつあるな。
「寒くないように、だ」
本当は違う目的だが、リラはそんなことには全く気づかずに俺を見て嬉しそうに笑った。
「ありがとう、ロイ」
ヒューゥと口笛が聞こえる。お熱いことで、なんて声も聞こえてきた。うるせぇんだよ、全く。
14
あなたにおすすめの小説
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
【完結】死の4番隊隊長の花嫁候補に選ばれました~鈍感女は溺愛になかなか気付かない~
白井ライス
恋愛
時は血で血を洗う戦乱の世の中。
国の戦闘部隊“黒炎の龍”に入隊が叶わなかった主人公アイリーン・シュバイツァー。
幼馴染みで喧嘩仲間でもあったショーン・マクレイリーがかの有名な特効部隊でもある4番隊隊長に就任したことを知る。
いよいよ、隣国との戦争が間近に迫ったある日、アイリーンはショーンから決闘を申し込まれる。
これは脳筋女と恋に不器用な魔術師が結ばれるお話。
混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない
三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。
【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?
はくら(仮名)
恋愛
ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。
※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。
竜帝に捨てられ病気で死んで転生したのに、生まれ変わっても竜帝に気に入られそうです
みゅー
恋愛
シーディは前世の記憶を持っていた。前世では奉公に出された家で竜帝に気に入られ寵姫となるが、竜帝は豪族と婚約すると噂され同時にシーディの部屋へ通うことが減っていった。そんな時に病気になり、シーディは後宮を出ると一人寂しく息を引き取った。
時は流れ、シーディはある村外れの貧しいながらも優しい両親の元に生まれ変わっていた。そんなある日村に竜帝が訪れ、竜帝に見つかるがシーディの生まれ変わりだと気づかれずにすむ。
数日後、運命の乙女を探すためにの同じ年、同じ日に生まれた数人の乙女たちが後宮に召集され、シーディも後宮に呼ばれてしまう。
自分が運命の乙女ではないとわかっているシーディは、とにかく何事もなく村へ帰ることだけを目標に過ごすが……。
はたして本当にシーディは運命の乙女ではないのか、今度の人生で幸せをつかむことができるのか。
短編:竜帝の花嫁 誰にも愛されずに死んだと思ってたのに、生まれ変わったら溺愛されてました
を長編にしたものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる