聖女として白龍の生贄になると思ったらなぜか騎士様と契約結婚することになって愛されています

鳥花風星

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「ふざけんなっ!」

 ガイル様がシキ様にまとわりつく黒い霧状のものを剣で切った。他の白龍の騎士様たちも聖女様たちにまとわりつく黒い霧を切断していく。

 その間に白龍様たちは目を合わせ、一斉に両手を本体の塊へ向けた。するとその手から白い光が放たれ、本体の塊を縛り付ける。白龍様たちは両手で白い光を掴み、塊を拘束する。

「今のうちに切りかかるんだ。目を狙うんだよ」

 ユイン様がそう言うと、ユーズ様とランス様は同時に走り出した。その二人の進路を遮るかのように枯れた植物が二人に襲い掛かってくる。それをガイル様とクロウ様が斬りつけ道を確保する。

「おりゃあああああ!」

 ユーズ様とランス様が宙を飛び、それぞれ本体の目に剣を突き刺した!

「ギャアアアアアア!!」

 断末魔のような叫び声が聞こえ、本体の黒い塊は塵のようになって消えていった。それと同時に、私たちにまとわりついていた黒い霧のようなものも消えていく。

「やったか……」

 ケインズ団長が険しい顔でそう言うと、ワッ!と王都の騎士たちから歓声があがった。

「セシル!大丈夫?」

 ランス様が駆け寄ってきてくれた。ホッとして微笑むと、そのままランス様に抱きしめられた。

「無事でよかった……」

 人目もはばからずに抱きしめられたので正直言って恥ずかしい。

「ランス様、は、恥ずかしいです」

「こんな時に恥ずかしいもくそもないだろう」

 抱きしめる手は緩めるどころかきつくなる。そんなに心配してくれたんだ……恥ずかしさがあったけど、今はそれよりも嬉しさのほうが勝っている。

「うっわなんだよそれ」

 ガイル様の声がして振り向くと、シキ様の腕を見て神妙な顔をしている。シキ様の左手にはくっきりと人の手のような跡が残っていた。

 ハッとして自分の腕を見ると、やっぱりあった。気持ち悪いくらいくっきりと、人の手のような跡だ。

「これは一体……」

 不安に思ってミゼル様を見ると、険しい顔で腕を見ている。いつも穏やかな白龍様がこんなにも険しい顔をするなんて珍しい、何かやばいことなのかしら。そう思っていたら、手の跡は次第に薄くなって消えていった。

「なんだったんだ?」

 クロウ様が驚いてそう言うと、あちこちからうめき声が聞こえてきた。さっきの戦闘で怪我をした王都の騎士たちの声だ。


――今はまず怪我人を運ぶことが先決だ。浄化ももう少しで終わるだろう

 ギール様の声がすると、他の白龍様たちが次々と白龍姿に変化していく。


――私とユインで怪我人を運ぼう。ウェズはここでギールと一緒に浄化の仕上げを頼むよ

 ミゼル様がそう言うと、白龍様たちは大きな体でうなずいた。

 怪我をしている王都の騎士様たちをミゼル様とユイン様に乗せると、ミゼル様たちは大きく羽ばたいて上空へ登っていく。


――先に救護所へ行っているよ。すまないが君たちは徒歩でおいで。急がなくてもいい、気をつけて来るんだよ

 そう言ってミゼル様とユイン様はゆっくりと飛んで行った。


――ここは任せなさい。魔物ももう暴走することはないだろう

 ギール様の言葉に、その場の一同が頷く。

「すまない、よろしく頼んだ。それじゃ、俺たちも出発するぞ」

 ユーズ団長の号令で残りの騎士たちと私たち聖女も歩き出した。




 どれほど歩いただろう。行きよりも帰りの方がなぜか長く感じたのは、戦い終わった安堵と疲労のせいなのかしら。

「ベル様!セシル!」

 来た道を戻り救護所が見えると、リラがこちらに気づいて走り寄ってきた。

「みんな、無事?よかった」

 ぎゅっと抱き着いて来たリラに思わず顔がほころんでしまう。

「ランス、無事でよかった。大変だったみたいだな」

 ロイ様がランス様に声をかけると、ランス様もホッとした様子で返事をした。

「何とか。ミゼルたちはもう来てるんだよな?」

「あぁ。怪我した騎士たちは医者や看護師が見てくれているよ」

「リラも治癒魔法で治してくれたからね、みんな無事だ」

 ジュイン様が微笑みながらそう言うと、リラが照れながらはにかんでいる。

「とりあえず何とかなったな。浄化は白龍様二匹に任せて俺たちは一度王都へ戻ろう。お前たちもそろそろ限界が来てるんじゃないのか」

 ケインズ団長が険しい顔でユーズ団長に言う。

「お前はなんだかんだで白龍使いの騎士のことをよくわかってるんだな」

 そう言うユーズ団長の顔色は蒼白で、気づけばランス様やガイル様たちの顔も蒼白で今にも倒れそうだ。

「力を使いすぎたんだわ。早く力を補充しないとやばそうな状況ね」

 シキ様が静かにそう言った。



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