聖女として白龍の生贄になると思ったらなぜか騎士様と契約結婚することになって愛されています

鳥花風星

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隠していた気持ち

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 シキの腕を取り振り向かせると、シキの顔は真っ赤になっていた。今までのシキならありえないような、見たこともないようなどうしようもなく可愛らしく切羽詰まった顔をしている。

 おいおいおいおい、なんて顔してるんだよ。

「シキ、お前……」
「は、離して!」

 シキは無理矢理腕を解こうとするが、俺はさらにシキの両肩を掴んでしっかりと向かい合うようにする。

「シキ、おいシキ、お願いだから俺を見てくれよ」

 シキは向かい合っても俯いたまま決して俺を見ようとしない。なんなんだよ、そんな顔して、そんな態度とって、俺が平常でいられると思うか?

「なぁ、シキ。そんなに顔真っ赤にして俺の顔が見れないなんて、お前本当は俺のこと」
 そこまで言うと、シキが顔を上げてキッと俺の顔を見る。ほ~ら、引っかかった。シキは煽るとすぐムキになる。すると、俺と目が合ったシキの表情がまた変化していった。

「あなたこそ……なんでそんな顔してるの、そんな、優しそうな辛そうな顔……」

 どうやら俺は俺で随分と複雑な表情をしているらしい。仕方ないだろ、この状況じゃそうなるのも当たり前だ。

「お前がそうさせてるんだろ」
 そう言うとシキは目を丸くしてから顔を真っ赤にして恥ずかしそうにまた俯いた。せっかく可愛い顔で俺の顔を見てくれたのにと残念な気持ちが胸の中に広がっていく。

「……どうして他の女のところに行ってなかったの。あなた、無類の女性好きだったじゃない」
「おいおい、俺に対するイメージ酷すぎないか?俺が無類の女好きなんじゃなくて、女が俺を放っておかないだけ」

 嘘は言っていない。何もしなくても俺に女が寄ってくるのはシキと契約結婚してからも変わらずだった。

「だったらなんで……」
「それはシキさん、あなたのせいなんですけどね」

 そう言うと、シキは驚いた顔で俺の顔を見る。よかった、また俺を見てくれた。

「私は別に何もしてないわよ!あなたが他の女性とどうなろうと関係ないって結婚の時に言ったでしょう。白龍のために力わけさえできればお互いに関与しないって……」

「それが俺にとっては新鮮で納得がいかなかったわけ。そんなこと言う女なんて一体どういう神経してんだって思うだろ?だからシキのことを知りたいってそればっかり考えてたらいつの間にかこうなっただけだ。他の女なんてどうでもよくて、俺の頭の中はシキのことでいっぱい」

 俺の言葉にシキは信じられないというような顔をしている。まぁ俺自身が一番そんな自分を信じられなかったけどね。

「……意味がわからないわよ。いつも私を揶揄ったり意地悪を言ったりしてきたじゃない」
「だってお前、任務のこと以外は普通に喋ろうともしてくれなかっただろ。お前の気を引くためにはそうするしかなかったんだから仕方ないだろうが」

 そう言うとさらにシキの顔が信じられないという表情になっていく。スカートを両手でぎゅっと握り締め、肩はほんの少しだけ震えている。あぁ、今すぐ抱きしめたいけどそんなことしたらまた怒らせてしまうんだろうな。それに今はそれよりも大事なことがある。

「さて、俺はちゃんと質問に答えたからね。シキさん、今度は俺の質問に答えてもらいますよ。……お前、俺のこと好きなんだろ。それなのになんでそっけない態度取ったり冷めた目で見たりするわけ?日常会話すらしてくれないし」

 シキは俺の質問に口をパクパクさせている。何かを言いたそうな、でも言えなくて困っているような、怒っているような次から次へといろんな表情をしていて面白い。いや、面白がってる場合じゃないな。

「悪い、言葉のチョイスを間違えたな。一つ一つ聞いていく、その方がいいだろ。シキ、お前は俺のこと嫌い?」

 そう聞くと、パクパクさせていた口が止まって小さくすうっと息を吸い込む音が聞こえた。

「き、嫌いじゃ、ない」

「じゃ、なんで普段俺のこと避けてたの?日常会話すらまともにしてくれないのはなんで?」

 俯いたままのシキに問いかけるけどシキは微動だにしない。そんなシキの顔を覗き込むと、シキの両目がうっすらと涙ぐんでいた。

「おい、シキ、なんで泣きそうなんだよ、ごめんて。あぁ、くそ。答えられないならまた今度でい」
「わ、私は、あなたのこと好きになっちゃいけないと思って、だから必要以上に近寄らないようにって……」

 困った俺の言葉を遮るようにして、シキが声を発した。って、え?今なんて言った?


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