聖女として白龍の生贄になると思ったらなぜか騎士様と契約結婚することになって愛されています

鳥花風星

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本心(ガイル視点)

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「わ、私は、あなたのこと好きになっちゃいけないと思って、だから必要以上に近寄らないようにって……」

 シキが涙を浮かべながら必死に喋り出す。戸惑う俺をよそに、シキはさらに早口で捲し立てた。

「最初は本当にどうでもいいと思っていたのよ。あなたのような女たらしには全く興味ないし、そもそも人間に興味がないから。人との距離もうまく測れないし、わざわざ関わらない方が楽だもの。それで本当に問題なかったの。それなのに、いつの間にかあなたのことが気になり出して……」

 両手を握りしめ、震えを堪えるようにして必死に言葉を紡ぐシキ。

「これだけ長く一緒にいれば嫌でもあなたのいろいろな部分が見えてくる。老若男女問わず誰にでも分け隔てなく優しいところ、めんどくさがりのくせに正義感が強いところ、そっけないくせに思いやりのあるところ、やる気のなさそうに見えて仕事熱心なところ。良いところばかりではもちろんないし気に食わないところだってたくさんある、それでもあなたの色々な部分を知っていくことでどんどんあなたのことが気になってしまうのよ」

 そう言うと、息が苦しくなったのかほうっと深呼吸をする。

「……私は他人とどう接していいのかわからない。あなたとの距離感もどうしたらいいかわからないし、これ以上あなたに惹かれていってしまうことが怖かった。だから必要以上に関わらないように必死だった。あなただって私みたいな人間に好かれても困るだけだもの」

 そこまで言って、シキは俺の顔を見上げた。その顔はいつもの無表情な顔を必死に作ろうとする、でもできない苦しそうな顔だ。

「……質問には答えたわ、これで満足?もういいでしょう」

 座っていたソファから立ち上がり、シキは部屋を出ようとする。だが、そんなことはさせない。俺は後ろからシキを抱きしめた。

「は、なして……!」
「やだね、そんな一世一代の告白聞いてハイソウデスカって見送る馬鹿がどこにいるんだよ」

 シキは一人でずっと苦しんでいた。俺と一番初めに結んだ約束を律儀に守り通そうとして、そのために俺を避け続けていた。なんなんだよ、それ。好きにならないように必死だったって、どんな殺し文句だよ。

「……はぁー。なんでもっと早く言ってくれなかったんだよ。俺はずっと嫌われてるんだと思ってた。ただ単にすれ違ってただけじゃん」

 いや、そうじゃない、俺ももっと早くに聞くべきだったんだ。シキが俺を避けるように、俺も大事なことを先延ばしにしてずっと避けていた。シキとの関係を進めることが怖くて、踏み込むことができなかったんだ。

「ごめんな、ずっと一人で苦しかっただろ。俺も、もっとちゃんとシキと向き合うべきだった」
 そう言うと、シキからすすり泣く声がする。

「な、に言って……あなたは、何も悪くないじゃない。私なんかに、こんなこと言われて、困るだけなのに」
 ヒック、と嗚咽を漏らすシキを、俺はもっと力強く抱きしめた。

「困ってない。むしろ嬉しいよ。シキとこうやって初めてちゃんと思いをぶつけ合うことができた。不器用で意地っ張りなシキさんがこんなにも頑張って思いを伝えてくれたんだ、嬉しくないわけないだろ」

 そう言うと、シキが涙を流しながらムッとした顔で振り返る。あぁ、なんなんだよ、ぐちゃぐちゃな顔なのにすごい可愛いし愛おしくてたまらない。

 涙を指でふいて、そっと目尻に口つける。シキは一瞬驚いて後ろに下がろうとしたが、そうはさせない。ちゃんと腰に片手を置いて逃げられないようガードする。

「逃げるなよ、両思いなんだし」
 俺の言葉にシキは驚いた顔をして言う。

「両思い……?」
「そう、シキは俺のことが好き、俺はシキのことが好き。ほら、両思いだろ?」

 ふふっと笑うとシキはポカンとした顔になる。さっきまであんなに泣いていたのに涙がすっかり止まってしまった。
泣いたり驚いたりこんなに表情豊かなシキは初めてで、そのことが余計に俺の心を高揚させる。

「あなたが私のことを好きだなんて嘘でしょう?」
「いやいや、待って。お前は今まで一体何を聞いていたの?俺の話はスルー?」

 呆れたように言うと、シキは俺の顔をまじまじと見つめて首を傾げた。え、何それ可愛い、今までそんなことしなかったじゃん!

「本当に……?」
「本当に」

 俺の言葉を聞いて、シキの両目からまた涙がポロポロとこぼれ出した。なんだよもう、愛おしくて無理。

「なあ、嬉しくて泣いてるんだよな?だったら笑って?俺、シキの笑顔が見たい」

 両手でシキの両頬を優しく包むと、シキは俺の顔を見つめて、瞬きをする。そして、ふんわりと嬉しそうに笑った!

「何それ、可愛すぎ」

 耐えきれなくなってシキにキスをした。そしてこの日、俺とシキは結婚以来初めて力分けとは関係なく愛し合った。


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