「偽聖女」と追放された令嬢は、冷酷な獣人王に溺愛されました~私を捨てた祖国が魔物で滅亡寸前?今更言われても、もう遅い

腐ったバナナ

文字の大きさ
4 / 26

4話

しおりを挟む
 契約を終えたフィーアは、王妃の間へと戻った。

 翌日から、彼女の「浄化の泉」スキルを使った活動が始まることになった。ガゼル王から最初に与えられた使命は、王宮内部の汚染を解消することだった。長年にわたる魔力汚染は、王宮内の獣人たちの健康や精神状態にまで影響を及ぼしていた。

 フィーアは、王妃の間の窓から外を眺めた。王宮の中央には、かつて美しかったであろう広大な庭園がある。しかし今は、枯れた木々、濁った池、そして淀んだ魔力が渦巻く荒れた土地と化していた。

(まずは、この庭園から始めよう。ここを浄化できれば、王宮全体の空気も変わるはず)

 フィーアは、侍女に庭園へ行く許可を求めたが、王の厳命により部屋からの外出は許可されないと告げられた。

「王妃様。王様の命です。あなた様は、この部屋で浄化の力を集中させるようにと」

 侍女の獣人は、警戒しながら言った。

「わかりました。では、せめてこの部屋に、浄化された植物をいくつか置かせていただけませんか?植物は、浄化の力の定着を早めます」

 フィーアは、自身のスキルを最大限に活かすため、許可を得た上で、浄化された鉢植えをいくつか運び込ませた。

 その日の午後、フィーアの部屋に、一人の幼い訪問者があった。

 扉をノックしたのは、一匹の小さな子ライオンの獣人だった。彼は、ガゼル王の甥であり、王の唯一の肉親であるレオン王子(10歳)だった。

 レオンは、獣人族特有の純粋で傷つきやすい瞳でフィーアを見つめた。彼の表情には、長年の孤独と不安が滲んでいた。

「あ、あの……。あなたが、新しく来た王妃様?」

「ええ。フィーアと申します。あなたは、レオン王子ですね」フィーアは優しく微笑んだ。

 レオンは、不思議そうな顔で部屋を見回した。

「この部屋……なんだか、空気が綺麗だね。いつもは、息苦しくて、ここに近づくのも嫌だったのに」

 フィーアは、レオンが魔力汚染に敏感であることを察した。そして、彼の心の声が、「誰も僕を見てくれない。寂しい」という、深い孤独を訴えているのを聞いた。

(この子は、この淀んだ王宮の中で、ずっと寂しかったんだわ……)

 フィーアは、レオンに浄化されたばかりの空間で煎れた、薬草茶を差し出した。

「よろしければ、お茶をどうぞ。ここは、もう大丈夫です。魔力汚染は、わたくしが取り除きましたから」

 レオンは、警戒しながらも一口飲むと、その清々しい風味に目を見開いた。

「美味しい!こんなに美味しいお茶、初めて飲んだよ!」

 その日から、レオン王子は、フィーアの部屋に頻繁に顔を出すようになった。彼にとって、フィーアの部屋は王宮内の唯一の安息の地であり、フィーア自身が温かい母親のような存在に感じられたのだ。

 フィーアは、レオンに汚染されていない土壌の話や、健康を保つ食事の話をした。レオンは、彼女の話に目を輝かせ、彼女の「地味だが確かな知識」を、驚くほど素直に吸収していった。

 フィーアの王妃の間が「レオン王子の憩いの場」となりつつあることを知ったガゼル王は、内心穏やかではなかった。

 ガゼル王の心の声:(あの息子が、他人に懐くなどありえない。特に人間に……もし、この女が息子を利用しようとしているのなら、容赦はしないぞ)

 王の冷たい警戒心と、息子への深い愛情が、フィーアの心を揺さぶった。フィーアは、ガゼル王の孤独と、彼がレオン王子を心から愛していることを知っていた。

(王様は、とても孤独で、不器用な方。この国を守るために、心を鬼にしているのね。まずは、彼の大切な存在であるレオン王子を癒やすことが、王との契約を成功させる第一歩だわ)

 フィーアの心に、獣人国の安寧と、孤独な父子を癒やすという、新たな使命感が宿った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

テイマーなのに獣人ばかりにモテすぎて困ってます!~彼女はまだツンデレ獣人に番認定されたことに気付いてない~

しましまにゃんこ
恋愛
リリアは、この春、アリシア王国で冒険者になったばかりのテイマーの女の子。早く冒険者として活動したいのに、まだ一匹もテイムすることができずに焦っている。 森に入れば触手に襲われ、街を歩けば獣人に襲われる無自覚天然ドジキャラのリリア。 そんなリリアを溺愛し、陰ながらこっそり見守る黒ヒョウ獣人のロルフは、いつもリリアに振り回されっぱなし。 実は二人の間にはある秘密が!? 剣と魔法、魔法道具が使えるファンタジーな世界で、テイマーとして活躍したい女の子と、好きなのに好きといえない獣人の男の子の、勘違い、溺愛、ジレジレ、時にヤンデレなドタバタ系ラブコメです! 『王女様は聖女様!?おてんば姫の冒険録~全属性の賢者、500年後に転生する!ペットのドラゴンが迷子なので冒険者になって探しにいきます!』と同じ世界です。今後「王女様~」のほうでも登場予定です。お楽しみに! 小説家になろう、他サイトでも掲載しています。

【完結】辺境伯の溺愛が重すぎます~追放された薬師見習いは、領主様に囲われています~

深山きらら
恋愛
王都の薬師ギルドで見習いとして働いていたアディは、先輩の陰謀により濡れ衣を着せられ追放される。絶望の中、辺境の森で魔獣に襲われた彼女を救ったのは、「氷の辺境伯」と呼ばれるルーファスだった。彼女の才能を見抜いたルーファスは、アディを専属薬師として雇用する。

お堅い公爵様に求婚されたら、溺愛生活が始まりました

群青みどり
恋愛
 国に死ぬまで搾取される聖女になるのが嫌で実力を隠していたアイリスは、周囲から無能だと虐げられてきた。  どれだけ酷い目に遭おうが強い精神力で乗り越えてきたアイリスの安らぎの時間は、若き公爵のセピアが神殿に訪れた時だった。  そんなある日、セピアが敵と対峙した時にたまたま近くにいたアイリスは巻き込まれて怪我を負い、気絶してしまう。目が覚めると、顔に傷痕が残ってしまったということで、セピアと婚約を結ばれていた! 「どうか怪我を負わせた責任をとって君と結婚させてほしい」  こんな怪我、聖女の力ですぐ治せるけれど……本物の聖女だとバレたくない!  このまま正体バレして国に搾取される人生を送るか、他の方法を探して婚約破棄をするか。  婚約破棄に向けて悩むアイリスだったが、罪悪感から求婚してきたはずのセピアの溺愛っぷりがすごくて⁉︎ 「ずっと、どうやってこの神殿から君を攫おうかと考えていた」  麗しの公爵様は、今日も聖女にしか見せない笑顔を浮かべる── ※タイトル変更しました

【完結】聖女のはずが勇者(仮)に間違われて、魔王さまに溺愛されてます

小豆缶
恋愛
なんちゃって聖女認定試験で、まさかの「勇者認定」を受けてしまったリン。 実は戦う気ゼロ、しかも金なし・仲間なしの超ポンコツ。 そんな彼女に下されたのは、魔王復活の危機を理由に街の外へ放り出されるという無茶な命令! 途方に暮れながら魔王城のあるダンジョンを目指すも、道中で遭難。 絶体絶命のピンチを救ってくれたのは――なんと、あの魔王だった!? 帰る場所もなく、頼み込んで魔王城に居候することになったリン。 戦えない勇者(?)と、戦いを嫌うツンデレ魔王。 この不器用で奇妙な共同生活が、今、始まる――!

天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎ ギルドで働くおっとり回復役リィナは、 自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。 ……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!? 「転ばないで」 「可愛いって言うのは僕の役目」 「固定回復役だから。僕の」 優しいのに過保護。 仲間のはずなのに距離が近い。 しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。 鈍感で頑張り屋なリィナと、 策を捨てるほど恋に負けていくカイの、 コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕! 「遅いままでいい――置いていかないから。」

【完】麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜

こころ ゆい
恋愛
※完結しました!皆様のおかげです!ありがとうございました! ※既に完結しておりますが、番外編②加筆しました!(2025/10/17)  狼獣人、リードネストの番(つがい)として隣国から攫われてきたモモネリア。  突然知らない場所に連れてこられた彼女は、ある事情で生きる気力も失っていた。  だが、リードネストの献身的な愛が、傷付いたモモネリアを包み込み、徐々に二人は心を通わせていく。  そんなとき、二人で訪れた旅先で小さなドワーフ、ローネルに出会う。  共に行くことになったローネルだが、何か秘密があるようで?  自分に向けられる、獣人の深い愛情に翻弄される番を描いた、とろ甘溺愛ラブストーリー。

「異常」と言われて追放された最強聖女、隣国で超チートな癒しの力で溺愛される〜前世は過労死した介護士、今度は幸せになります〜

赤紫
恋愛
 私、リリアナは前世で介護士として過労死した後、異世界で最強の癒しの力を持つ聖女に転生しました。でも完璧すぎる治療魔法を「異常」と恐れられ、婚約者の王太子から「君の力は危険だ」と婚約破棄されて魔獣の森に追放されてしまいます。  絶望の中で瀕死の隣国王子を救ったところ、「君は最高だ!」と初めて私の力を称賛してくれました。新天地では「真の聖女」と呼ばれ、前世の介護経験も活かして疫病を根絶!魔獣との共存も実現して、国民の皆さんから「ありがとう!」の声をたくさんいただきました。  そんな時、私を捨てた元の国で災いが起こり、「戻ってきて」と懇願されたけれど——「私を捨てた国には用はありません」。  今度こそ私は、私を理解してくれる人たちと本当の幸せを掴みます!

魔力ゼロと捨てられた私を、王子がなぜか離してくれません ――無自覚聖女の王宮生活――

ムラサメ
恋愛
伯爵家で使用人同然に扱われてきた少女、エリナ。 魔力も才能もないとされ、義妹アリシアの影で静かに生きていた。 ある日、王国第一王子カイルの視察で運命が動き出す。 誰も気づかなかった“違和感”に、彼だけが目を留めて――。

処理中です...