「偽聖女」と追放された令嬢は、冷酷な獣人王に溺愛されました～私を捨てた祖国が魔物で滅亡寸前？今更言われても、もう遅い

11話

　契約を破棄し、フィーアを「愛する妻」として迎えることを決意したガゼル王は、その日以来、フィーアへの態度を公私ともに一変させた。彼の愛は、以前の「独占的な支配」から、「絶対的な庇護と寵愛」へと変わっていた。

　公務中も、ガゼル王はフィーアを執務室に呼び、自分の隣に座らせるようになった。

「フィーア。君の存在が、私の精神的な安寧に不可欠だ。君は、私の目の届く範囲にいなさい」

　ガゼル王は、もはや躊躇なく依存を口にした。

　ガゼル王の心の声：（彼女の温もりを感じるだけで、公務の疲労が半減する。ああ、愛している。彼女が私の妻だという事実が、私を満たしている）

　フィーアは、ガゼル王の重く、熱い愛を受け入れ、王の孤独を癒やすことに専念した。

　そして、その日の夜。二人は契約ではない、真の夫婦の契りを結んだ。

　ガゼル王の愛は、長年の孤独と渇望に裏打ちされており、激しく、そして切実だった。彼は、フィーアの全てを求め、彼女に自分がどれほど深く愛しているかを、体で示し続けた。

　フィーアは、ガゼル王の冷徹な仮面の下に隠された情熱を感じ、彼が求めていた「二度と裏切られない愛」を、全身で捧げた。

　翌朝、ガゼル王は、即座に一つの重要な宣言を行った。

　彼は、獣人族の全貴族と主要な民の代表者を王宮に集め、フィーアを伴って玉座に現れた。

「集まった者たちに告ぐ」

　ガゼル王の声は、以前よりも力強く、幸福に満ちていた。

「フィーア・アルファスとの婚姻契約は、本日をもって破棄する」

　会場に、わずかな動揺が走る。貴族たちは、王がフィーアの浄化の力をもう必要としなくなったのではないかと警戒した。

　しかし、ガゼル王は、フィーアの手を強く握りしめ、その黄金の瞳をまっすぐに見つめながら、宣言を続けた。

「フィーアは、もはや『契約王妃』ではない。彼女は、私とこの獣人国に、真の希望と温もりをもたらした。彼女は、私の心と、この国の未来を繋ぐ、唯一無二の存在だ」

「よって、本日より、フィーア・アルファスは、私の愛する妻であり、この獣人国の真の女王として振る舞う。彼女への不敬は、私への反逆と見なす。彼女への愛と忠誠は、私と同等に尽くせ」

　ガゼル王の言葉は、公の場での「愛の誓い」であり、フィーアへの絶対的な庇護の宣言だった。

　彼の宣言により、フィーアの立場は、「利用される資源」から「王の心と一体化した、神聖な存在」へと昇華した。獣人貴族たちは、王の圧倒的な愛と、フィーアの揺るぎない地位を理解し、頭を垂れた。

　王宮での儀式を終えた後、ガゼル王はフィーアを抱き上げ、執務室へと連れ戻した。

「フィーア。君は、私の愛を公にした。もう二度と、私から離れることはできない」ガゼル王の心の声は、「永遠に彼女を独占できる」という歓喜に満ちていた。

　フィーアは、王の強い腕の中で微笑んだ。

「はい、王よ。わたくしは、この温かい場所と、あなた様の傍を、永遠に離れるつもりはございません」

　愛のない契約から始まった二人の関係は、ここに真実の愛と家族の絆という、確固たる土台の上に築き直されたのだった。