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28.醜態
しおりを挟むラウル様に…侯爵の爵位が…!?
この年で、しかも伯爵家の次男に…これは異例中の異例だ。
会場の皆も驚いている。
「ラウル・アイロワニーは、命をかけ私を賊から守り抜き、ワルヤーク伯爵の悪行を見抜き隣国との戦争を未然に防いだ!更に悪政に苦しむ侯爵領の領民達を救い出したその功績は大きい。その上、妻となるフレミアは元々バラレンド侯爵領を1人で支えていたと報告を受けており、この地を任せる2人に相応しいと見受けられる!!」
「ありがたき幸せ」
ラウル様が跪き返事をする。
何という事だろうか。
侯爵領をもう一度治めることが出来るなんて…これ以上の幸せは無い。
(いや、待って…?)
領民達は私が離れる際に"しばしの別れ"と言っていた。
ラウル様も心配無いと言っていた。
こうなる事が最初から全て分かっていたように……。
(これが全て計算内なら…)
私は自分の夫となるラウル様を少し恐ろしくも思うのだった。
その時。
会場中から拍手が鳴り止まぬ中、
ジュリーが衛兵に捕らわれながら耳を疑うような事を口にした…
「あぁ、ラウル様!このお歳で侯爵なんて凄いですっ!やっぱり貴方は私が思った通りの方でしたわ!!私…侯爵夫人として尽力致しますわ…!」
「何…?」
きっと今まで全て計算内だったラウル様も、これは想定外だったようで思わず顔をあげる。
「ラウル様…お顔も綺麗に治ったし…!これで酷い顔になった事も全て水に流しますわ!お母様とお父様は残念だけど仕方無いですわね!」
突飛な発言に思わず私も話さずにはいられない。
「殿下、発言をしても…?」
そう言うと、皇子は頷かれた。
「ジュリー。おやめなさい。両陛下の御前です!貴女がラウル様の妻になる事は有り得ないのです…!これ以上恥の上塗りはやめなさい!」
姉としての最後の情けだ。
「きゃぁ、またお姉様はそう言っていつも私を虐めて…!はっ!!ラウル様を私から奪おうとしているのね!ラウル様と先に婚約したのは私よ!ラウル様も私とだから婚約したのよ!私と婚約解消になって自暴自棄でお姉様と婚約…そうよね、ラウル様ぁ…?」
その様子を見た皇子が、不快感を露わにした顔つきでラウル様を見る。
[お前、本当にこの女と婚約解消できて良かったな]
そう言わんばかりだ…。
「私は以前も申しましたが、フレミアと婚約できて幸せです。婚約解消を申し出て頂き心より感謝していますよ」
ラウル様はそう言ってジュリーにフワリと微笑む。
その笑顔は男女を問わず虜にする魔性の微笑みだ…。
このような状況にも関わらず、ジュリーも一瞬見惚れているようだ。
しかしふと我に帰り、
「やだっ!やだやだやだ!やっぱり私ラウル様と結婚したい!」
遂に駄々をこね始めた。
「もう、良い。不愉快だ。連れて行け」
今まで事の成り行きを見守っていた陛下が静かにそう仰ると、衛兵が義母と妹を無理やり引きずり連れていく。
「ちょっと!!離しなさいよっ!!元はと言えばラウルが悪いのよっ!!」
「いやあ!怖い!ラウル様っ!?ラウル様!?助けてっ!!!貴女の妻がこんな目にあっているのよ!!ラウル様ぁぁぁいやああああ」
なりふり構わず叫ぶ2人には、もはや哀れみすら感じる…。
父は私の方を振り返ると、哀しそうに微笑み、抵抗する事無く衛兵に連れていかれた。
(お父様………)
父は本当に心の弱い人だった…。
祖父が生きている時は祖父に怯え、次は義母に怯え……。
父親らしい事をしてもらった覚えはあまり無い。
それでも…。
この世に存在する唯一の肉親。
もう少し、向き合いたかった……。
そう思い少し唇を噛む。
しかし。
これからは自分も侯爵夫人。
立ち止まっている暇は無い。
少し湿っぽくなってしまったものの、そう自分に言い聞かすのだった。
会場の扉がパタンと閉まる。
嵐が去った後のようだ。
「他人事のように見ている者もいるかもしれないが…。ラウルの傷を悪く言った者はこちらで全て把握している。第2.第3皇子達の婚約相手を探している所だが、浅はかな者、王族を愚弄する者は真っ先に除外だ」
皇子がそう言うと、数名の令嬢は顔面蒼白になった。
何とか王家と繋がりを持とうと必死になって皇子達と婚約を望む高位貴族は少なくない。
皇子の婚約者になるならない関係無く、王族に悪い印象を与えただけで貴族には致命的だろう。
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