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第125回 白紙の封筒
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都市伝説レポート 第125回
「白紙の封筒」
取材・文: 野々宮圭介
先月末、編集部に一本の電話が入った。横浜市在住の会社員・田口さん(仮名・35歳)からだった。
「先週、自宅の郵便受けに差出人不明の封筒が入っていたんです。中身は白紙だけだった。捨てようと思ったけど、なんとなく気になって取っておいたら、昨日、友人から『最近、白紙の手紙が届く怪談』のことを聞いて...」
編集部には、同様の問い合わせが過去2か月で6件寄せられていた。いずれも共通するのは「差出人不明の封筒」「中身は何も書かれていない白紙」そして「不思議と捨てられない違和感」である。単なるいたずらか、それとも...。
私は取材を開始することにした。
調査を進めると、この現象は特定の地域に限ったものではなく、全国で散発的に報告されていることが分かった。SNS上でハッシュタグ「#謎の白紙郵便」を検索すると、100件以上の投稿がヒットする。
東京都内の郵便局員・K氏(40代)は匿名を条件に証言してくれた。
「正直、白紙だけ入った封筒なんて、誤配か単なるいたずらだと思っていました。でも最近、そういう問い合わせが増えてきて...しかも差出人の記録が残っていないんです。消印もない。つまり、正規の郵便ルートを通っていない可能性があります」
白紙の手紙を受け取った人々に共通する特徴はあるのだろうか。私は15名の受取人にインタビューを試みた。年齢は20代から60代まで幅広く、職業や居住地域にも共通点はなかった。ただ一つ、8割以上の人が「最近、人生の岐路に立っている」と感じていたことだ。
取材を進める中で最も興味深かったのは、「スマホのライトを当てると文字が浮かび上がる」という噂だった。この情報源を辿ると、大阪在住の大学生・村上さん(22歳)にたどり着いた。
「友達から聞いたんですよ。白紙の手紙にスマホのライトを当てると、何か見えるって。私も試したんです。最初は何も見えなかったけど、暗い部屋で角度を変えながら照らしたら...」
村上さんは言葉を詰まらせた後、自身のスマホを取り出して保存されていた写真を見せてくれた。暗闇の中で白い紙に光が当たっている画像。よく見ると、かすかに「あなたが選ぶべき道はそこではない」という文字が浮かび上がっているように見える。
「この後、就職先を変えることにしたんです。なんか...言葉にできない確信があって」
この現象について、私は印刷技術の専門家・工藤教授(62歳)に意見を求めた。
「不可視インクの技術は昔からありますよ。熱や光、水などの刺激で発色するものです。最近ではスマートフォンの青色LEDの特定波長に反応する特殊インクも開発されています。しかし、そのような技術が一般に流通しているとは考えにくいですね」
工藤教授は「科学的に説明可能な現象」と断言するが、問題は誰がなぜこのような手紙を送っているのかという点だ。
受取人たちの証言を整理すると、「見えた」というメッセージは主に三種類に分類できることが分かった。
1. 未来の自分からの警告(「その選択は後悔する」「彼を信じてはいけない」など)
2. 過去の後悔や懺悔(「あの時、あなたを傷つけてごめんなさい」など)
3. 不吉な予言(「あなたが死ぬ夢を見ました」「あと3日」など)
東京都内の受取人・佐々木さん(44歳)は、「あなたが死ぬ夢を見ました」という文字を見たと証言する。
「最初は怖くて眠れませんでした。でも三日後、私は交通事故に遭いそうになったんです。いつもと違う道を選んだから避けられた。何かが私に警告してくれたんじゃないかって...」
編集部には現在、読者から送られてきた「白紙の手紙」が5通保管されている。私は暗室で各々にスマホのライトを当ててみた。
結果は...ほとんどの紙には何も現れなかった。しかし、一通だけ、光の角度によってわずかに文字らしきものが浮かび上がった。「選択」「機会」といった単語が断片的に見えたような気がする。写真に収めようとしたが、不思議なことに、カメラには何も写らなかった。
この現象について、心理学者の中田博士(58歳)は次のように分析する。
「人は白紙を見せられると、そこに何かを見ようとする心理が働きます。特に『何か見えるはず』という先入観があれば、脳が実際には存在しない情報を『補完』してしまうことがあります。一種の集団暗示現象と考えられますね」
確かに科学的に説明すれば、そうかもしれない。だが、受取人たちの表情はあまりにも真剣で、彼らが見たという「メッセージ」が人生の転機と重なる例があまりにも多い。
取材の過程で灰原探偵に協力を依頼し、差出人の特定を試みた。郵便物の繊維分析や指紋検査も行ったが、決定的な証拠は見つからなかった。
ただ一つ、気になる情報がある。灰原探偵によれば、1980年代にも似たような「白紙郵便」の報告があったという。当時は「ホワイトレター現象」と呼ばれていたらしい。そして、その現象は約一年で突然終息したというのだ。
この「白紙の手紙」現象は、科学的に説明できる単なる集団心理なのか、それとも私たちの理解を超えた何かなのか――。結論を出すには、まだ情報が不足している。
もし読者の皆様の中に、同様の体験をされた方がいらっしゃれば、ぜひ編集部までご連絡いただきたい。また、もし差出人不明の封筒が届いたら、念のため暗い部屋でスマホのライトを当ててみるのも一興かもしれない。
そこに何が見えるか、あるいは何も見えないか――それはあなた次第なのかもしれない。
(了)
*本誌では読者の皆様からの都市伝説情報を募集しています。身近な不思議体験がありましたら、編集部までお寄せください。
「白紙の封筒」
取材・文: 野々宮圭介
先月末、編集部に一本の電話が入った。横浜市在住の会社員・田口さん(仮名・35歳)からだった。
「先週、自宅の郵便受けに差出人不明の封筒が入っていたんです。中身は白紙だけだった。捨てようと思ったけど、なんとなく気になって取っておいたら、昨日、友人から『最近、白紙の手紙が届く怪談』のことを聞いて...」
編集部には、同様の問い合わせが過去2か月で6件寄せられていた。いずれも共通するのは「差出人不明の封筒」「中身は何も書かれていない白紙」そして「不思議と捨てられない違和感」である。単なるいたずらか、それとも...。
私は取材を開始することにした。
調査を進めると、この現象は特定の地域に限ったものではなく、全国で散発的に報告されていることが分かった。SNS上でハッシュタグ「#謎の白紙郵便」を検索すると、100件以上の投稿がヒットする。
東京都内の郵便局員・K氏(40代)は匿名を条件に証言してくれた。
「正直、白紙だけ入った封筒なんて、誤配か単なるいたずらだと思っていました。でも最近、そういう問い合わせが増えてきて...しかも差出人の記録が残っていないんです。消印もない。つまり、正規の郵便ルートを通っていない可能性があります」
白紙の手紙を受け取った人々に共通する特徴はあるのだろうか。私は15名の受取人にインタビューを試みた。年齢は20代から60代まで幅広く、職業や居住地域にも共通点はなかった。ただ一つ、8割以上の人が「最近、人生の岐路に立っている」と感じていたことだ。
取材を進める中で最も興味深かったのは、「スマホのライトを当てると文字が浮かび上がる」という噂だった。この情報源を辿ると、大阪在住の大学生・村上さん(22歳)にたどり着いた。
「友達から聞いたんですよ。白紙の手紙にスマホのライトを当てると、何か見えるって。私も試したんです。最初は何も見えなかったけど、暗い部屋で角度を変えながら照らしたら...」
村上さんは言葉を詰まらせた後、自身のスマホを取り出して保存されていた写真を見せてくれた。暗闇の中で白い紙に光が当たっている画像。よく見ると、かすかに「あなたが選ぶべき道はそこではない」という文字が浮かび上がっているように見える。
「この後、就職先を変えることにしたんです。なんか...言葉にできない確信があって」
この現象について、私は印刷技術の専門家・工藤教授(62歳)に意見を求めた。
「不可視インクの技術は昔からありますよ。熱や光、水などの刺激で発色するものです。最近ではスマートフォンの青色LEDの特定波長に反応する特殊インクも開発されています。しかし、そのような技術が一般に流通しているとは考えにくいですね」
工藤教授は「科学的に説明可能な現象」と断言するが、問題は誰がなぜこのような手紙を送っているのかという点だ。
受取人たちの証言を整理すると、「見えた」というメッセージは主に三種類に分類できることが分かった。
1. 未来の自分からの警告(「その選択は後悔する」「彼を信じてはいけない」など)
2. 過去の後悔や懺悔(「あの時、あなたを傷つけてごめんなさい」など)
3. 不吉な予言(「あなたが死ぬ夢を見ました」「あと3日」など)
東京都内の受取人・佐々木さん(44歳)は、「あなたが死ぬ夢を見ました」という文字を見たと証言する。
「最初は怖くて眠れませんでした。でも三日後、私は交通事故に遭いそうになったんです。いつもと違う道を選んだから避けられた。何かが私に警告してくれたんじゃないかって...」
編集部には現在、読者から送られてきた「白紙の手紙」が5通保管されている。私は暗室で各々にスマホのライトを当ててみた。
結果は...ほとんどの紙には何も現れなかった。しかし、一通だけ、光の角度によってわずかに文字らしきものが浮かび上がった。「選択」「機会」といった単語が断片的に見えたような気がする。写真に収めようとしたが、不思議なことに、カメラには何も写らなかった。
この現象について、心理学者の中田博士(58歳)は次のように分析する。
「人は白紙を見せられると、そこに何かを見ようとする心理が働きます。特に『何か見えるはず』という先入観があれば、脳が実際には存在しない情報を『補完』してしまうことがあります。一種の集団暗示現象と考えられますね」
確かに科学的に説明すれば、そうかもしれない。だが、受取人たちの表情はあまりにも真剣で、彼らが見たという「メッセージ」が人生の転機と重なる例があまりにも多い。
取材の過程で灰原探偵に協力を依頼し、差出人の特定を試みた。郵便物の繊維分析や指紋検査も行ったが、決定的な証拠は見つからなかった。
ただ一つ、気になる情報がある。灰原探偵によれば、1980年代にも似たような「白紙郵便」の報告があったという。当時は「ホワイトレター現象」と呼ばれていたらしい。そして、その現象は約一年で突然終息したというのだ。
この「白紙の手紙」現象は、科学的に説明できる単なる集団心理なのか、それとも私たちの理解を超えた何かなのか――。結論を出すには、まだ情報が不足している。
もし読者の皆様の中に、同様の体験をされた方がいらっしゃれば、ぜひ編集部までご連絡いただきたい。また、もし差出人不明の封筒が届いたら、念のため暗い部屋でスマホのライトを当ててみるのも一興かもしれない。
そこに何が見えるか、あるいは何も見えないか――それはあなた次第なのかもしれない。
(了)
*本誌では読者の皆様からの都市伝説情報を募集しています。身近な不思議体験がありましたら、編集部までお寄せください。
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