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06.墓穴を掘るだろう
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屋上事件の後から江藤弟がやけにかまうようになった。デートならしてもいいという俺の言質を取ったせいか、どこかに遊びに行こうとしつこく誘ってくる。正直言ってうんざりしていた。江藤のことは嫌いじゃない、普通に懐いてくれているならかわいいものだが、好きのベクトルが違うので怖い。
今日も俺は屋上でもそもそと腹巻の買ってきた焼きそばパンを食べながら、江藤の誘いを聞いている。のんびりとしていた俺の日常は完全に壊されて、江藤の明るい声が空に響く。
「今週の日曜日、磯城君はどうしたい?動物園?遊園地?水族館?それともショッピングでも映画館でもいいけど、どれがいい?」
用事があるからで避けてきたが江藤はめげない。おまけに邪険には出来ない理由もある。こいつは、俺が思っていたような、便利で、ただのいい子などではなく!!悪魔だった!!俺が少しでも邪険に扱おうものならば、クラスの女子が「磯城君、江藤君に冷たくない?そういうのよくないよ」なんて言われる。俺は不良などと言われているが実際は不良などでもなく、女子の束の圧は普通に怖い、針の上にでも座らされている気持ちにさせられた。集団の悪意は強い。
それだけではあきらたずに、教師までもがそれを耳にしたらしく、いじめはよくないと声高に熱く説教され、挙句の果てに江藤の兄が出てきてあんまふざけたこと抜かしているとシメるぞ。と脅された。俺はにっちもさっちも行かない状況下に置かれてしまっている。正直いじめられてるのは俺だ。ちらりと腹巻に視線を送ってみる。素知らぬ顔でいちごミルクをすすっているその顔面を殴り飛ばしたくなったが、そこではっとした。そうか。2人きりが嫌なら腹巻も誘えばいいじゃん!
「腹巻も一緒に行かないか?」
「は?」
「え」
江藤と腹巻の声が重なった。
「ほら、人数多いほうが楽しいんじゃねーかって」
自分でもガラにでもないことを言っているのは分かっている。だが江藤と2人きりは避けたい。江藤はその顔の下にとんでもないものを潜ませた人物である事を俺はもう知ってしまっている。2人きりになるだと…!カモがネギを背負ってさらに土鍋までご丁寧に用意して、食ってくださいって言っているようなものだ!
「なんで俺までそんなのに行かなきゃなんねーんだよ」
腹巻がごねる、俺はがっとやつの肩を掴むと江藤に背を向けて、聞かれないように小声で言う。
「いいから!お前は黙って俺についてこればいいんだよっ!!」
俺も必死だ。
「お…おぅ?」
腹巻は気圧されて頷いた。
「腹巻も行きたいって言ってるしさ」
くるりと身体を180度回転させて笑顔を振りまいた。実際には江藤への恐怖心で笑顔が引きつっていたが、まあなんとか取り繕えただろう。
「ふーん……磯城君、僕と2人きりは嫌?」
江藤の空気が下がって声が低くなる、顔は笑っているのに目が笑ってない。……っ、寒気がする。やばい、やばい、やばい。何でスイッチを踏んだ?腹巻と居るときにはこのモードになる事は無かったのに!?腹巻はさっぱり気づいていないのか、あんぱんをもしゃもしゃ食べている。くそ、バカがうらやましい!
「そ、そうじゃ…なくて……だな。俺は単純に人数が多いほうがって……」
座りながらもじりじりと後退する。怖すぎる!俺は不良じゃなくて普通の人間で、喧嘩なんかもしたことが無い、たとえ腕に覚えがあったとしても、江藤に限っては1度でも殴ってしまえばこちらが負け。大量に江藤のバッグについている連中に袋叩きにされる!俺はじりじりと後退して、がしゃんと音を立ててフェンスに当たってしまう、江藤はなんて事ないようにつかつかとこちらに歩み寄ってくると、俺に視線を合わせるようにして屈んだ。
「ね、磯城君。分かってると思うけど…磯城君が何をしようと、僕が好きになった時点で僕のものになるって決まってるんだよ」
真剣な目で射すくめられて思わず心臓が跳ねて視線が泳ぎ、その先に腹巻を見つけたがぼーぜんとしていて、なんの役にも立ちそうにない。
「いいよ。新垣君も来たって」
唐突に身体を離すと、もうすぐチャイムなるから戻るね、いつもの笑顔を見せ軽い足取りでこの屋上を出て行った。
「………あぁ」
俺はげっそりとして縮こまる。
「………あれ。何」
呆然としていた腹巻が我に返って話しかけてきた。
「しらん、なんかこの間告白されて」
「付き合ってんの?」
「バカかお前は!今の何処にそうゆう要素があったとゆうんだ!?半ば脅されてんだよ!!なぁ、腹巻助けろよ!日曜日しくったら絶対俺やられる。絶対嫌だ!!」
頭腐ってんのか!?どう見たらそうなる!だが縋れるのはもう腹巻しかいない。
「それならいい考えがある」
真面目腐った表情で言われた。
「本当か!!」
思わず笑顔を浮かべる。でも俺はここで重大な欠陥を忘れていた。腹巻は頭が悪い。授業の成績だけでなく、社会的にもバカだ。だからそんな腹巻が言ういい考えなんかが最良であるはずなかった。
「俺と付き合ってることにすればいいんだ」
「バカだ!!お前はっ!!」
全力で叫んだ。
「なんでそうなるんだ!!他に好きなやつとかが居るとかで諦めさせる方法は分かるが……!!」
腹巻とは付き合ってないと前に言ってしまっている。
「他にアテあんのかよ」
「う…」
言葉に詰まる、俺の交友関係はほとんどが男。つーか男しかいない。生まれつきのこの目つきの悪さに加えて、性格もよかねーし、女子にモテたためしがない。クラスの女子に頼む?そんなことできるはずが無い、女子は全員江藤の味方だ。俺の味方といえば、目の前にいるこのバカしかない。っく、なんて、なんて、なんて、戦力にならない味方なんだ!!それにもし腹巻と付き合ってないというのが嘘だったら、消すとまで言っていたような気もする。…あれは空耳だったかもしれないが。
「んで、どーすんだよ」
「……分かった。でもやるからには全力でやるぞ」
俺の決意した表情に腹巻は引き気味に頷いた、日曜は決戦日だ。
今日も俺は屋上でもそもそと腹巻の買ってきた焼きそばパンを食べながら、江藤の誘いを聞いている。のんびりとしていた俺の日常は完全に壊されて、江藤の明るい声が空に響く。
「今週の日曜日、磯城君はどうしたい?動物園?遊園地?水族館?それともショッピングでも映画館でもいいけど、どれがいい?」
用事があるからで避けてきたが江藤はめげない。おまけに邪険には出来ない理由もある。こいつは、俺が思っていたような、便利で、ただのいい子などではなく!!悪魔だった!!俺が少しでも邪険に扱おうものならば、クラスの女子が「磯城君、江藤君に冷たくない?そういうのよくないよ」なんて言われる。俺は不良などと言われているが実際は不良などでもなく、女子の束の圧は普通に怖い、針の上にでも座らされている気持ちにさせられた。集団の悪意は強い。
それだけではあきらたずに、教師までもがそれを耳にしたらしく、いじめはよくないと声高に熱く説教され、挙句の果てに江藤の兄が出てきてあんまふざけたこと抜かしているとシメるぞ。と脅された。俺はにっちもさっちも行かない状況下に置かれてしまっている。正直いじめられてるのは俺だ。ちらりと腹巻に視線を送ってみる。素知らぬ顔でいちごミルクをすすっているその顔面を殴り飛ばしたくなったが、そこではっとした。そうか。2人きりが嫌なら腹巻も誘えばいいじゃん!
「腹巻も一緒に行かないか?」
「は?」
「え」
江藤と腹巻の声が重なった。
「ほら、人数多いほうが楽しいんじゃねーかって」
自分でもガラにでもないことを言っているのは分かっている。だが江藤と2人きりは避けたい。江藤はその顔の下にとんでもないものを潜ませた人物である事を俺はもう知ってしまっている。2人きりになるだと…!カモがネギを背負ってさらに土鍋までご丁寧に用意して、食ってくださいって言っているようなものだ!
「なんで俺までそんなのに行かなきゃなんねーんだよ」
腹巻がごねる、俺はがっとやつの肩を掴むと江藤に背を向けて、聞かれないように小声で言う。
「いいから!お前は黙って俺についてこればいいんだよっ!!」
俺も必死だ。
「お…おぅ?」
腹巻は気圧されて頷いた。
「腹巻も行きたいって言ってるしさ」
くるりと身体を180度回転させて笑顔を振りまいた。実際には江藤への恐怖心で笑顔が引きつっていたが、まあなんとか取り繕えただろう。
「ふーん……磯城君、僕と2人きりは嫌?」
江藤の空気が下がって声が低くなる、顔は笑っているのに目が笑ってない。……っ、寒気がする。やばい、やばい、やばい。何でスイッチを踏んだ?腹巻と居るときにはこのモードになる事は無かったのに!?腹巻はさっぱり気づいていないのか、あんぱんをもしゃもしゃ食べている。くそ、バカがうらやましい!
「そ、そうじゃ…なくて……だな。俺は単純に人数が多いほうがって……」
座りながらもじりじりと後退する。怖すぎる!俺は不良じゃなくて普通の人間で、喧嘩なんかもしたことが無い、たとえ腕に覚えがあったとしても、江藤に限っては1度でも殴ってしまえばこちらが負け。大量に江藤のバッグについている連中に袋叩きにされる!俺はじりじりと後退して、がしゃんと音を立ててフェンスに当たってしまう、江藤はなんて事ないようにつかつかとこちらに歩み寄ってくると、俺に視線を合わせるようにして屈んだ。
「ね、磯城君。分かってると思うけど…磯城君が何をしようと、僕が好きになった時点で僕のものになるって決まってるんだよ」
真剣な目で射すくめられて思わず心臓が跳ねて視線が泳ぎ、その先に腹巻を見つけたがぼーぜんとしていて、なんの役にも立ちそうにない。
「いいよ。新垣君も来たって」
唐突に身体を離すと、もうすぐチャイムなるから戻るね、いつもの笑顔を見せ軽い足取りでこの屋上を出て行った。
「………あぁ」
俺はげっそりとして縮こまる。
「………あれ。何」
呆然としていた腹巻が我に返って話しかけてきた。
「しらん、なんかこの間告白されて」
「付き合ってんの?」
「バカかお前は!今の何処にそうゆう要素があったとゆうんだ!?半ば脅されてんだよ!!なぁ、腹巻助けろよ!日曜日しくったら絶対俺やられる。絶対嫌だ!!」
頭腐ってんのか!?どう見たらそうなる!だが縋れるのはもう腹巻しかいない。
「それならいい考えがある」
真面目腐った表情で言われた。
「本当か!!」
思わず笑顔を浮かべる。でも俺はここで重大な欠陥を忘れていた。腹巻は頭が悪い。授業の成績だけでなく、社会的にもバカだ。だからそんな腹巻が言ういい考えなんかが最良であるはずなかった。
「俺と付き合ってることにすればいいんだ」
「バカだ!!お前はっ!!」
全力で叫んだ。
「なんでそうなるんだ!!他に好きなやつとかが居るとかで諦めさせる方法は分かるが……!!」
腹巻とは付き合ってないと前に言ってしまっている。
「他にアテあんのかよ」
「う…」
言葉に詰まる、俺の交友関係はほとんどが男。つーか男しかいない。生まれつきのこの目つきの悪さに加えて、性格もよかねーし、女子にモテたためしがない。クラスの女子に頼む?そんなことできるはずが無い、女子は全員江藤の味方だ。俺の味方といえば、目の前にいるこのバカしかない。っく、なんて、なんて、なんて、戦力にならない味方なんだ!!それにもし腹巻と付き合ってないというのが嘘だったら、消すとまで言っていたような気もする。…あれは空耳だったかもしれないが。
「んで、どーすんだよ」
「……分かった。でもやるからには全力でやるぞ」
俺の決意した表情に腹巻は引き気味に頷いた、日曜は決戦日だ。
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