不幸の手紙に“男に告白される”って書いてあったんだが?

すもも

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08.希望は幻だろう

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野郎4人だけで観覧車に乗り込んで辟易する。江藤兄は俺を負の感情で睨みつけているし、江藤弟はしおらしかったが気持ちが沈んでいる様子。最早何かの罰ゲームだ。腹巻は先ほどの空気を忘れてしまったのか窓の外を眺めては、家はあっちらへんかな!なんて笑っている。それが救いだった。

時間は経ち、空は青からオレンジに色を変えていた。そろそろお開きだ。

「そろそろ時間だし、もう帰ろうぜ」

江藤はこれで懲りたはずだ。俺なんかを好きになっても仕方がない。

「うん、でも最後にオバケ屋敷に行きたいな」

江藤の言葉に俺は凍り付く。お…オバケ屋敷…だと!!俺は幽霊というものが大嫌いだ。あの現実に存在していないくせにやけに存在感を発揮して、人をむやみに怖がらせて驚かせるそれ。たとえお化け屋敷が作られたものであったとしても暗闇から見知らぬ人間が飛び出して驚かせるんだぞ!そんなのに金払う酔狂さは持ち合わせていない。お化けが怖いだなんてキャラじゃない、自分でも分かってる、分かってるからよけいに嫌だ!!

「どうしたの?行こうよ」

にこにこにこ笑う江藤。こ…いつ…もしかして俺の弱点を知っているのか?空恐ろしさを感じながらも怖いからやめようとも言い出せない俺は頷いた。

「わ、分かった。行こうぜ、はらま、春馬」

恋人設定を守るために普段では呼ばない本名で呼び、腹巻の腕を引っ張った。

「お、おぉ」

俺がぐいぐいと腹巻を引っ張ると腹巻は驚いた表情をする。

「最後くらい僕と一緒に入ろうよ」

江藤が反対側から腕を引いた、江藤と暗がりでふたりきり?怖いものに怖いものをかけ合わせたらとんでもないことになうだろう!

「悪いな江藤。りょーすけは俺のなんだ」

ぐっと腹巻に腰を引かれた、ぞわっと鳥肌が立ちその顔面を叩き潰したい衝動に駆られたが、そもそも頼んだのは俺だ。成功したらどれだけの報酬をぼったくるつもりでいるのか腹巻は仕事してる。

「そ、ういうわけだ。悪いな江藤」

江藤弟が舌打ちをしたの俺は聞き逃さなかった。さっさと逃げるに限る。俺は乱暴に腹巻を引っ張っていくとパスを見せてずかずかと入っていく。こんなのは作り物だって知っている。作り物、作り物、大丈夫だ!俺!!気合を入れて入っていく。

「なありょーすけ」

お化け屋敷に入って腹巻は暗がりでは分かりにくいが、真面目腐った顔をして俺を見た。

「どうした」

何か重要なことか?

「俺、新たな才能を見出したかもしれない。俳優になれるかも」

なにを言い出すかと思えば。呆れてものも言えない。

「とにかく、ここを出ようぜ」

さっさと終わらせようと歩き出すが、突然頭上から首筋にかけて雫が落ちてきて、俺は大袈裟に飛びのいた。その先に首の長い女性が居て、ひぃっと飛びのく。人間が演じてるわけでもないただの置物に、なんでこんな子供だましみたいなのが怖いのか正直自分でも分からん。ひとりびくびく飛びのいていると、

「ははーぁん」

楽しそうな声が横から聞こえた。腹巻がにやにや笑ってる。

「オバケが怖かったのか、そーかそうか」
「ちっ違う。こんな子供だまし、今時子供でも驚ろかねえよ!」

腹巻のそのしたり顔がものすごくむかつく。だいたい俺が腹巻より上に立っていると思っているし、そうあることが当然だと思っている!!なのに、なんなんだ!この敗北感っ!!

「ほら、りょーすけ。怖くないように手でも繋ごうな~」

くそ、バカにしやがって!俺は伸ばしてきた腹巻の手を叩き落とし、ひとりずんずんと進んでいく。

「ひとりで行くな」

後ろからかかってくる少し焦った声にイラッとする。腹巻のくせに!腹巻への怒りのせいで怖さも大分薄らいできた。

それにこの試練さえ乗り切れば、俺はもう自由だ!!あの江藤に付きまとわれることも無く、あの兄貴から不幸の手紙も届くとも無く!きっと全てが万々歳に終わる!恐怖心を打ち破り足早に進む、周りなんてなにも見ていない。暗い道を歩いているだけだと言い聞かせて順路に沿っているとふと明かりが消えた。足元を仄かに照らしていた唯一の拠り所が消えて辺りが真っ暗になる。何も見えない。

「なっ、なんだよこれっ!!…っ、腹巻大丈夫かっ!?」

幽霊は嫌いだが暗所恐怖症ではないが今居る場所はオバケ屋敷で、不安感が背中にへばりつく。こういう時にはふらふらと動かないのが賢い方法だ。下手に動いて自分の今いる場所が分からなくなるなんてことはバカのすることだ。

「おい、腹巻。近くに居るんだろ、返事ぐらいしろ」

あまり騒いで俺が暗闇を怖がっていると思われるのは癪だが、声が返ってこないのが不気味だ。近くに居るであろう腹巻に向かって手を伸ばすも、その手は何もつかめない。ぱしっと俺の手を取る人があった。

「おい、近くにいたのなら声をかけろ」

そしてぼんやりと足元の明かりがともされ俺の思考能力は停止した。突然、おどろおどろしいなにかが俺の手を掴む。あまりの恐怖に声にならない悲鳴を上げてどこか分からぬ方向へと走る、手の感触は人間のものと思おうとしたけれど、なんかぬるってしてた、なんかぬるっとしてた!!外への明かりが見えてきてようやく外に出れると淡い希望に気持ちが楽になる、

瞬間、腕を握られた。

「むり」

情けないことに俺はこれで気を失ってしまった。
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