神様を育てることになりました

菻莅❝りんり❞

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6 過去の遺物との遭遇

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「うーん。良く寝た」

俺はベッドから降り、少し体を動かしてから洗面所へ行った。

そしてまだ寝ているラグをそっとポケットに入れ食堂へ向かった。

まだ朝早いからかそこまで人はいなかった。

「おはよう。ご飯を食べたいんだけど、大丈夫ですか?」

昨日はそのまま寝てしまったので夜は食べていない。なので、お腹が空いている。

「おお、はよ。飯だな、大丈夫だぞ。そうと疲れてたんだな。副長が飯に顔を出さないから心配して、部屋をノックしても反応がなかったから、予備の鍵で確かめに部屋に入ったけど、熟睡していて人が入ったのにも気付かないって、危機感がないと嘆いていたぞ」

ワハハハと豪快に笑いながら食堂の受付のおっさんが言った。

「ハハハ。多分今までそれほど身の危険を感じる生活をしていなかったのかもしれないね。(手持ちのテントも特別仕様で、危険とは縁が無かったし)」

そう言って鍵を返却し、注文してお金を払い、受け取り口へ向かった。

食事をしていると、食べ物の匂いで起きたラグから催促され、ポケットから取りだし、お気に入りのグーレの実を数粒渡した。

食事をしている間に人が増えていた。依頼ボードの前は冒険者でごった返していたので、俺はそのままギルドを出た。

外に出ると、ごみ袋を片手にゴミ拾いをしている人が何人かいた。その大半が子供だった。

「おっ、早速採用したんだ。行動早っ」

そう言いながらも、俺は露店が並んでいる場所とは反対の方へ足を向けた。

ギルドを中心に、道が3つに分かれており、

右側は禁入エリアの門へ続いていて、露店が立ち並んでいる道。

真っ直ぐ行くと領主邸や街の人が住む住宅がある道。

左側は、武器や防具店やお菓子やさんやカフェ、雑貨屋等がある道。と子供の落書き地図に簡易な説明書きがあった。

冷やかし程度で武器や防具屋に入ると、ただ武器や防具を売っているだけではなく、奥の方が作業場になっていた。

武器等も一級品ばかりあり、値段もそれなりにした。勿論、新人に優しいお手頃値段のもあった。

「やっぱ、あの樹林があるからいいものがあるな」

店主も、俺が冷やかしでいるのが分かるのか、さっさと出ていけオーラを出していた。

(職人かたぎの人なんだな。頑固そう)

俺は一通り見ていると、乱雑に纏められている篭の中のある剣に目が止まった。
鑑定すると

ーーーー
100年前の育成者の持ち物。
邪神を生み出したことで消滅した。
仮主神の与えし行方不明だった武器。
回収することをおすすめします。この世界の人には扱えないようになっています。
ーーーー

俺は自分の腰にある剣を鑑定した。

ーーーー
育成者に仮主神が与えられた武器の一つ。
育成者以外に扱えないように制限がかけられている。
ーーーー

ある意味特別な剣だった。俺は回収するために乱雑に篭の中にあるその剣を取り、他にない確認してから店主に持っていった。

「すいません。これください」

店主はその剣を見て、渋い顔をした。

「あー、確かに売り物としてあそこに置いていたが、これはなまくらだ。どんなに研いでも木一つ斬れない。ただの飾りだ」

職人としてのプライドか。言わなければ分からないのに、バカ正直に言ってきた。

「そうなんだ。でも一目見てこれだ!って思ったので買うよ。使えなくても文句は言わない。わざわざ言わなくてもいいのに、注意してくれたんだ」

「ほぅ。武器があんたを認めたのか。あんたならこの剣を扱えるかもな。だったらあんたにやるよ。この剣だけは扱いに困っていたからな」

「いやいや、お金は払うよ!」

そう言って、篭の前にある値札をみて、お金を取り出し、カウンターに置いた。

「いや、いらねぇ。金は返す」

払う、いらねぇ。と俺と店主でやり取りしていると、奥から女の人が出てきて

「うるさいよ!作業の集中の邪魔してんじゃないよ!なに騒いでんだ!」

鉄槌を手にした女の人は店主に詰め寄った。

(へぇ。女の人が作ってるのか)

俺は女の人が手にしている鉄槌を見てそう思った。

俺が鉄槌に気を取られている間に、店主から事情を聞いた女の人が、

「確かにここは武器屋でそれは売り物だ。あんたが金を払うって言うのは間違ってはいない。だけど、たまにいるだよ。武器が主と認める人が。そう言う時はどんなに高額な武器でも私達はその武器をただで譲っている。勿論、それが本当かの見分けはちゃんとしている。これでも武器を作ってるんでね。わかるだよ、そう言うのは。だから遠慮せずにそれを受け取んな」

なんとも男らしい言い分なのに、それでいて女性らしい笑顔で言った。

俺は店主からお金を受け取り

「では、お言葉に甘えていただきます。ありがとうございます」

店主も女の人も笑顔で頷いていた。俺は店を出る前にお礼を込めて、一礼してから店を出た。

***

「珍しい客だったな。あんな奴、いままで見たことねぇ」

「そうさね。あまり居ないとは言え、何十年かに一人位は武器に認められる人は居るが、まさかあのなまくらに主が現れるとはね。これだから武器作りはやめられない。しかも気づいたか?あの客。私を見ても偏見の目で見なかった。嬉しかったねぇ」

店主は、女の人の言葉に目を細めた。

「そうだな」

まだまだ男社会の物作り業界。特に、武器や防具を作るには技術だけではなく、力も必要なので女の人は差別の対象になりやすい。

そんな男社会で腐らずに技術を身に付け、一人前になっても、女が作る武器は信用できないと最初は全く売れなかった。

そんな中、今の店主兼旦那はヨミのように、偏見を持たず、素直に武器の精度に感動した一人だ。

店主が表に出るようになってからは、少しずつ武器も売れてきたが、女の人は奥から出てくることはなかった。

「少しずつ少しずつ、あんな客が増えるさ。きっと」

実際、女の人は気づいてないが、この街の人達はこの武器を作っているのが女の人だと知っている。それでもみんなここで武器を買っていく。

ある冒険者は

「この剣で九死に一生を得た。折れてしまったが、この剣がなければ俺が死んでいた。感謝する」

とお礼を言いに来たこともあった。

「さて、仕事に戻るか」

ヨミの何でもない態度が嬉しかった夫婦だった。

***

何件かある武器や防具屋を周り、他にないか見てまわったがあれ一本だけだった。

その後は、適当に街を見てまわって一軒の宿屋に入った。

「済まないが、部屋はいっぱいだ。他をあってくれ」

本当に済まなそうにしていった。そのあとも2、3件まわったが全滅し、ギルドへ戻った。二階に上がり

「部屋、まだ空いてます?」

俺の様子になにかを察したのか

「冒険者としても、旅行者としてもまずは、先に宿を決めておくものだ。教訓になったな。昨日の部屋で良いなら空いてるよ」

俺はほっとして

「ではその部屋でお願いします」

とお金を渡した。ついでに食事の注文もした。

食事を済ませ、部屋に戻ると昨日の失敗を繰り返さないために、先にラグを取り出してからベッドに入った。

「明日はこの街から出て・・」

呟きと同時に俺は眠りについた。
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