卒業した姉とこれから入学するのではしゃぐ妹

月輝晃

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人狼ゲーム②

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「……かおりんは、怪しいね」

 奈々りんの声が落ち着いていた。
 笑ってるけど、目は真剣だ。
 ゆはりんがこっちを見た。
「え、かおりん、うそついてるんですか?」
「ち、ちがうよ!」
「でも、なんかいつもより静かです」
「……集中してるの」

 心臓がうるさい。
 嘘をつくたびに、ゆはりんのまっすぐな瞳が痛い。
 そして、奈々りんの沈黙がもっと痛い。
 彼女は、何も言わずにわたしの顔を見ている。
 まるで――
 “本当の嘘は、そっちでしょ?”
 って言いたげに。

 (やめてよ……そんな目、しないで)



「じゃ、投票しよっか」
 奈々りんの声が低く響く。
「一斉に指差して。せーの!」

 三本の指が同時に上がった。
 ……結果、2対1でわたしに。

「え、ちょっと!?」
「ごめん、かおりん。でも……顔が嘘でした」
 ゆはりんが小さく言う。
「顔が嘘ってなに……!」

 奈々りんは静かにカードをめくる。
「やっぱり、“人狼”だったんだ」
「……正解」

 笑って言ったつもりだったのに、声が震えた。
「かおりん、上手でしたね」とゆはりんが嬉しそうに言う。
 その“嬉しそう”が、まっすぐで、だからこそ胸が締めつけられる。

 (わたしは、ほんとのことを隠してる)
 (この子の“好き”に、まだ返事をしてない)
 (奈々りんの“好き”にも、触れられないまま)

 ……ゲームの中だけじゃない。
 わたしは現実でも“人狼”のままだ。



「ねぇ、次のゲームは、正直にいこうか」

 奈々りんが突然言った。
「正直に?」
「そう。質問に“ほんとのこと”で答える。嘘ついたら負け」

「それ人狼関係ない……」
「関係あるよ。ね、かおりん?」

 視線が絡む。
 怖い。
 でも、逃げられない。

「じゃ、質問。“いま、一番ドキドキしてる相手はだれ?”」

 一瞬、教室の空気が止まった。
 ゆはりんが驚いた顔でわたしを見る。
 奈々りんは、微笑みながら待っている。

「……わたしは」

 言葉が喉の奥でつかえた。
 でも、出さなきゃ。
 誰かを傷つけるとしても、ずっと嘘のままよりは――

「いま、ドキドキしてるのは……」

 ……チャイムが鳴った。
 終業の鐘。
 全員がびくっとした。
 わたしは笑うしかなくて、「また今度ね」とごまかした。

「ずるい」奈々りんが低く言った。
「続き、次の村で聞かせてもらう」
「……うん」

 ゆはりんは何も言わなかった。
 でも、ほんの少しだけ悲しそうに笑っていた。



 窓の外は、もうすっかり暮れていた。
 三人で教室を出るとき、風がひゅうと吹き抜ける。
 ゆはりんのマフラーが少しほどけて、わたしが手を伸ばして直す。

「ありがとう、かおりん」
「ううん」

 その笑顔が近すぎて、また心臓が跳ねた。
 前を歩く奈々りんの背中が、夕闇に溶けていく。

 (このままじゃ、誰も嘘をつかなくなる日は来ないのかも)

 そう思いながら、わたしは教室のドアを閉めた。
 風がカーテンを揺らして、最後の光が床を滑る。
 机の上には、裏返したままのカードが三枚。
 「人狼」「村人」「占い師」。

 どれも、今のわたしたちみたいに――
 “誰が本当か分からない”まま、そこに残っていた。
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