夏と竜

sweet☆肉便器

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31 お祝い

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 その日は夕方からお祝いのパーティーだった。

 じいちゃんは知り合いの養魚屋さんに大きな鯉を届けてもらって、ばあちゃんはお勝手でちらし寿司を作ってくれた。エミおばさんもパイを焼いて来てくれたんだ。
 他にもいろんな料理がたくさんだ。

 じいちゃん家のいつも使ってるちゃぶ台だけじゃ料理が乗らないから、冬のおこたつまで出してきてちゃぶ台の横に並べたんだ。

 じいちゃんとばあちゃん、エミおばさんとシャノン、そして僕とアオちゃんはみんなで料理を囲んでそれぞれにコップを掲げた。

 「では、アオの飛行成功を祝して、乾杯!」

 「「「カンパーイ」」」

 あちこちでグラスのぶつかるチンチンって音が響きわたる。

 僕もアオちゃんと最初にグラスをぶつけ合って、「おめでとう」「ありがとう」って言い合う。僕に続いてみんなもアオちゃんに労いの言葉を掛け、それに嬉しそうに返事を返していた。

 シャノンとアオちゃんは乾杯が楽しいのか、みんなと乾杯が終わっても何度もふたりでグラスをぶつけていた。

 「アオちゃん、ナッちゃん、ふたりとも頑張ったわね。さぁ、お料理、腕によりをかけたからお腹一杯食べてちょうだい」

 ばあちゃんが小皿にちらし寿司を盛り付けて僕たちに渡してくれた。

 「ありがとうばあちゃん、んー、ちらし寿司おいしい」

 僕はちらし寿司を頬張る。アオちゃんはエミおばさんのパイを切り分けてもらって夢中でむさぼっていた。シャノンはジュースを飲みながらばあちゃんにカナッペを半分に割ってもらって食べていた。
 じいちゃんとエミおばさんはお互いのコップにお酒を注ぎながら鯉の洗いに箸を伸ばしていた。

 おっきな鯉をじいちゃんが注文した時はどうするのかと思ったんだけど、じいちゃんは庭で桶に水を張ってそこで鯉を捌き始めたんだ。

 分厚い刺身包丁で頭を落とし三枚におろす。皮ごと鱗を取ってお湯に一度くぐらせた後に冷水で締める。流れる様な動作でお皿に盛り付けられた鯉は赤身が普通のお刺身よりも強い感じだった。

 酢味噌にちょんと浸けてじいちゃんは鯉の洗いを口に運ぶ。
 すかさずそこにお酒を流し込んだ。

 「っか! 旨いっ、鯉なんて何年ぶりだろうなぁ。アオのお祝いだから張り切って届けさせてみたんじゃが、旨いなっ。ワシは海の刺身よりこっちが好みじゃな」

 「ふぅん、こんな味なのね。刺身は故郷でも日本食レストランで食べたけど、カープまで食べるなんて日本人は悪食ね」

 ヨーロッパでは鯉ってあんまりいいイメージがないらしい。最近では錦鯉なんかがあっちでも流行っててそうでもないらしいんだけど、やっぱり鯉を食べるのはエミおばさんにとっても衝撃的だったみたい。

 とは言いつつもエミおばさんも美味しそうに食べてるんだけどね。

 シャノンとアオちゃんにはちょっと鯉は不評だ。たぶん捌く前に生きてる鯉を見せてしまったからかもね。
 鯉って他の魚よりもちょっと不気味だもん、口の辺りとか。

 僕も鯉は初めてだった、でもけっこう好きな味だ。見た目を抜きにすれば全然いける。

 パーティーは続く。

 お酒も入ってじいちゃんとエミおばさんはどんどんと声が大きく騒がしくなって、アオちゃんとシャノンはたぶんもうお腹が一杯なんだろうけど、ご馳走を目の前に食べるのを止めようとしない。
 僕はばあちゃんに食後のお茶を淹れてもらってそれを啜っていた。

 「ナッちゃん、もうお二階行ってお休みなさい」

 いつの間にかうとうとと座りながら船を漕いでいたみたい。
 僕はばあちゃんに肩を揺すられて目を覚ました。

 じいちゃんとエミおばさんはまだ呑んでいる。
 もうテーブルの上は片付けられていて一升瓶とお酒のだろう冷奴くらいしか置かれていなかった。
 あんなにたくさんあったご馳走が一晩でなくなっちゃうなんてすごい食べたんだなってあらためてびっくりした。。

 「ん」

 僕は目を擦って立ち上がった。

 「キュッ」

 その拍子に僕の膝で眠ってたアオちゃんがコロリと畳に転がった。
 けどアオちゃんは起きない。きっと頑張って飛んだから疲れてるんだろう。

 ふふ、お腹もパンパンに膨れて真ん丸だ。かわいいなぁ。

 僕は慣れた動作でアオちゃんを小脇に抱えた。

 「エミさんも泊まってくでしょうからシャノンちゃんもお二階で寝かせてあげて」

 ばあちゃんに言われてシャノンも反対の手でそっと運ぶ。

 シャノンもばあちゃんが敷いてくれたであろうバスタオルにくるまってグッスリだった。

 歯だけ磨いて二階へあがる。

 お風呂は家に戻ってすぐに入ったので必要ない。

 お布団にもぐって部屋の灯りを消す。

 今日は満月でやさしい灯りが障子を透かしている。輪郭だけだけどアオちゃんとシャノンが寄り添って眠ってるのがわかった。

 「おやすみ、アオちゃん、シャノン」

 明日もきっと素敵な一日になるだろう。

 そう信じて僕はそっと目を閉じた。


 
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