シスターレナに叱られたい!

雛山

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懺悔其の五 ちわーっす三河屋です

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「ふあー、今日は暇だねぇ」

 何故かここに来る連中は無駄に濃いヤツが多いから、精神的に疲れるんだよねぇ。
 アタシが暇で欠伸をしていたらバターンと音を立てて扉が開いた、少しビックリしちゃったよ。

「ちわーっす、三河屋です!」

 場違いな挨拶がこの懺悔室ファッキングルームに木霊する、だって三河屋って何だよ普通は来ても懺悔室にゃ来ないだろ。

「ご注文伺いにまいりましったー」

 無駄に元気なヤツが来たなぁ、しかも声がデケェよ。

「いや、ここ厨房でも裏口でもないから帰ってくれない?」

 アタシがそう三河屋に声をかけると、何故かカラカラと三河屋が笑った。

「あはは、またまた冗談でー、いつも来てるじゃないっすかー」

 何かトンチキな事言ってるぞ、いつも来てるってアタシはコイツを見た事が無い。

「は? お前、此処来るの初めてだろ」
「えー、毎週来てるじゃないっすか、そう言えばリフォームしました? 何というか雰囲気がガラっと変わりましたよね?」

 話が噛み合わないぞコイツ? リフォームなんてしてないし。

「お前、どこか別の場所と勘違いして無いか?」
「いやいや、いつも通りっすよ」

 本格的に何言ってるんだコイツ?

「で、注文はなんでしょう? 先週はお酢と醤油を一瓶づつの注文っしたよね?」
「頼んだ記憶ねぇよ!」
「えー? 頼んでたはずっすよ、そう言えば今日はなんでカーテン越しなんすか? 声も少し幼い感じですし、風邪でも引きました?」

 ヤバイよコイツ一体、何と勘違いしてるんだ?

「いや、だからさここは懺悔室だぞ、誰の家と間違えてるんだ?」
「懺悔さん? そんな名前の人いないっしょー。で、今日の注文は? 味噌がそろそろ無くなるようなこと前に言ってましたよね」
「味噌はこないだ買ったよ! だから何処の誰と間違えてるんだよ!」

 くそ! ガチでここ誰だか知らない人の家だと思い込んでるぞコイツ、三河屋と言いつつ新手の嫌がらせ集団か何かか? 地上げ屋とかだったらどうする?

「ここって衆煎寺しゅうせんじさんでしょ?」
「衆煎寺って、お前それ隣町だろ! 宗教関係しか共通してねぇだろうが」

 教会とお寺を間違えるか普通? パスタと蕎麦を間違えるようなもんだぞそれ。

「ええ? マジで? あぁ、またやっちゃったよ」

 三河屋はここが衆煎寺ではないと理解してうなだれている、何故気付くのにここまでの時間がかかるのか謎で仕方ないが。

「ここは懺悔室であり悩み相談もやってるから、何かあるなら聞くよ」

 アタシがそう言うと、三河屋はポツポツと話し出した。

「じゃあ、聞いてください、俺は極度の方向音痴でしかも思い込みが凄く激しいみたいなんですよ」
「みたいじゃないよ、思い込み超激しいよ」
「自分ではそんなつもりないんですけどねぇ」
「良く考えて行動しなよ、普通に考えてさ何でお寺と教会の懺悔室を間違えるんだよ、外観や内装的には共通点ほぼ無いだろ」

 キツイな思い込みと方向音痴のダブルパンチって。

「こないだもスーパーに買い物に行ったつもりが銭湯だったんすよ」
「流石にすぐに気が付かないか?」
「ここがスーパーだって思っちゃうと、どうしても気づけないんですよ」

 こいつは手ごわいな三河屋、というかそんなでよく仕事になるな。

「こうなったら、徹底的に道を調べて迷わないようにするしかないぞ」
「やはり、そうなっちゃいますよね」
「アタシにはそれくらいしか、解決策が思いつかないんだよ……」

 この程度しか思いつかない時点で、アタシにゃ懺悔室なんて無理なんだよなぁ。
 しかし何とかアイデアを出さないといけない、どうしたものか。

「いっそ、老人や子供用のGPS付きの携帯でも持ったらどうだ?」

 まあ、それでどこまで効果あるかは知らないけど

「いやー、実は俺の携帯ってすでにそれなんすよねぇ」
「マジかよ、お手上げじゃないか、アンタ自分で試したことってあるのか?」
「地図を見てってのはやったんすけど、俺方向音痴なんで地図見てもチンプンカンプンだったっすね」

 あー、確かに方向音痴の人って地図見ても、よくわからないとか聞いたことあるなぁ。

「車で移動してるならカーナビ使ってみるとかって、こんなの最初にやるかー」
「車の免許持ってないんですよ、原付ですね。原付にカーナビでも付けてみようかなあ」
「あー、原付用ナビかアレ、モノによっては見た目超ダサイんだよなー」
「ダサイんすか……まあ、でも仕方ないからやってみますよ」

 後何かないか? 道を迷わないは前提だがそれが難しいから困るのであって、しかも間違った場所に着いてしまうとそこが間違っていても目的地と勘違いしてしまうか……まずは場所の確認をするとか。いやいやいや幾ら何でもそれは基礎の基礎すぎるだろ……まあ、どうせやってるだろうけど聞いてみるか。

「一応、聞いておくけどさ」
「なんすか?」
「まず、場所に着いたらそこが目的地かちゃんと確認はしてるか?」
「……」

 え? なにその沈黙、まさかのまさか?
 三河屋はポンと手を打ってから、おお! と驚いたような顔をした。

「それっす! いやーなんで気付かなかったんだろう、確認かーそういえば一回もやったことないなあ」
「ふざけんな! お前、それ一番最初にやるヤツだろ! なんでやらねーんだよ!」

 なんで一番最初にやることやってないんだコイツ?

「なんででしょうねー!」
「テメ、コノ、ふざけやがって!」

 アタシが立ち上がると、三河屋は慌てて席から立ち、走って部屋から出ていこうとする、しかし最後に。

「相談に乗ってくれて助かりましたっす! あとご迷惑おかけしました! 次は確かめてからきますから怒らないで―」
「もう来るなアホー!」


 そして慌てて三河屋は出て行った
 はぁ、なんか無駄に疲れた……せっかく暇だったのになぁ
 ま、いいか。なんだかんだで今日も一人迷える子羊ファッキングシープを助けた事だしな……
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