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懺悔其の十二 ノースヒルフォーエバー
しおりを挟む「んー! んんんー!!」
懺悔室に縄でぐるぐる巻きにされた、ボロ雑巾が転がっており呻いている。
先程黒い服着た厳つい兄さん達が担いできたものだ。転がした後、兄さん達はどこかへ行ってしまったが。
そして、兄さん達の後から背の高い女性がプラチナブロンドを靡かせながらやってきた。
「あー、マリアさん。これなんですか?」
「こんにちはレナちゃん、今日もキュートね」
そしてその女性は、雑巾の近くで足を止める。
ハリウッド女優も裸足で逃げだすようなこの美女は、うちのシスターで『アンナマリア・フェーデ』イタリアンなマフィアの祖父を持つその筋の人だ、何故こんな日本の小さな教会でシスターをしてるのかは謎。
たまに教会にベレッタ21A ボブキャット普通に置いとくのはやめてほしい、モデルガンと言ってますがどう見てもモデルガンじゃありません。
年齢は二十代半ばくらい、背が高くスラっとしていて出るところは出ており引き締まるところは引き締まっている、俗に言うナイスなバディ。服の上からでもスタイルの良さが際立つ…ピチッとしたスリットの入った改造修道服なんだけどな。
長い髪に長いまつげ、ただ目は細目でさらにいつも細めているので一見目を閉じているようにも見える。
いつもは柔和な表情の彼女だが、今その表情は現役だった時のアタシでも怯みそうになるほど鋭い物だ。
そしてその美女の前にロープで簀巻きにされ、さるぐつわを噛まされて転がっている少年。学制服を着ていることから学生だと分かる、ボサボサの髪型にニキビの多い顔、表情は涙目になっており顔の色は青く、震えている。
「懺悔室に懺悔をしなければならない子を連れてきたのよ」
「はぁ、何かしたのねこいつ」
「えぇ、私のファミリーに手を出すとは面白い子よねぇ」
マリアさんはアタシたちの事をファミリーと呼び本当の家族のように接してくれるが、害をなす相手には容赦がない。
最近もこの町で空き巣騒ぎがあり、先日この教会にその空き巣が入った事があった、しかしその後は空き巣の話はパタリと聞かなくなったんだよなぁ。
なんでも警察の前に素っ裸にひん剥かれて、ボールギャグを噛まされ半殺し状態の二〇代後半の男が転がされていたそうだ。
その男が警察に保護された後空き巣騒動が収まっている、あの時もマリアさんがブチ切れてたからなぁ……くわばらくわばら。
「んー! んー!」
呻いてばかりで何言ってるかわかんないや、さるぐつわしてるから仕方ないけど。
「マリアさんコイツ何したんですか?」
「これよコレ」
マリアさんはそう言うと高級そうなカメラを胸元から取り出した、ん? 今どこから取り出した?
そして取り出したカメラを地面に叩きつける。
男の目が見開かれ涙がこぼれた……汚ねぇツラ……
「レナちゃんを盗撮してたのよ……」
そう言いながらマリアさんが男を踏みつける、ハイヒールのカカトで踏まれてる男は脂汗を流しながら呻いていた。
「まあ、今回はレナちゃんが標的だったみたいだから、こうして捕まえてレナちゃんの所に連れてきたのよ、丁度懺悔室だったからね」
盗撮と来てピーンと来たよ、コイツがどうやら北岡のようだ。
「あぁー、なるほど。お前か」
「あら?レナちゃんコイツ知ってるの?」
知ってるの? と言いながら男のわき腹をつま先で蹴った……いったー見てる方も痛い……呻いてやがる
「ええ、まあ以前リナのヤツが言ってた盗撮魔だと思いましてね」
「あら、リナちゃんがね。とりあえずコイツはレナちゃんに任せるわね、懺悔を聴いてア・ゲ・テ」
「わかりましたと」
そう言ってマリアさんはしゃなりしゃなりとモデル歩きで懺悔室を後にした、本当あの人こんな所よりロアナプ〇とかにいる方が似合うよな……
アタシはさるぐつわを外してやる。
「お前が北岡だな、よりによってあの人に見つかるなんて。ヘタ打ったな、生きてることに感謝しろよ」
「はぃぃぃ! そうです北岡です! すいませんごめんなさい」
首をカクカク振りながら謝る、それにしても泣き顔がビジュアル的に汚いんだけど。
「で、なんでこの教会を狙ったんだ? 一応ここは懺悔室だから懺悔は聞いてやるよ」
「うへ、うへへ。ここのシスター達って美人ぞろいじゃないですか。小遣い稼ぎにも僕の趣味にも丁度いいんですよ」
「小遣い稼ぎ? おい、お前まさか……」
「リアちゃんとか一部に大人気なんだよ、リナちゃんなんて女性にも大人気さ、マティアちゃんも人気高いよ」
こいつアタシたちの盗撮写真を売ってやがったのかよ、どうしようもないクズだな。
マティア……アイツまで盗撮してるのかよ、アイツも変態だぞ。修道女の恰好してるが男だぞ、しかもマゾ。
「お前、リアの本当の年齢知らないからそんなことできるんだぞ」
「え? リアちゃんって中学生くらいじゃないんですか?」
「……今度、本人に聞いてみろ。ただし聞く前に遺書は書いておけよ」
しかし、以前ここに来た女子高生はコレのどこが良かったんだよ……流石に趣味悪すぎだろこれ。
「さて、お前ちょっと擁護できないぞ、盗撮もアレだが盗撮写真売ってるとか」
「そこをどうかお許しください!」
「うーん、マリアさんが動いちゃった今、普通の条件じゃ許されないんだよなぁ、まったく面倒な事になったもんだ」
「そんなぁ……軽い気持ちでやったのに」
罪の意識が低いって世も末だよねぇ。
「軽い気持ちでやるなよ、犯罪だぞ。アタシだって昔は俗に言うヤンキーだったけど喧嘩はしたが犯罪はやってないからな」
「え? そんなに可愛いのにヤンキーだったんすか?」
「うるせー! 今は容姿の事は関係ないだろうが」
「あー、すいませんすいません! 写真撮っていいですか?」
「ダメに決まってんだろうが! 反省してねーだろお前」
こいつは殴っていいかな?
「お前が何気なしにやってる盗撮で被害被る人がいるの、理解してるのか?」
「はいぃぃ! 理解してます申し訳ありません! ですから写真撮っていいですか?」
「……お前、脳の病気か? ダメだつってるだろうが、いい加減にしないと十字架背負わせて町内全力疾走させるぞ」
「そんなぁ、こんな間近に最高クラスの被写体がいるのに写真に収められないなんて……」
「写真を撮ることが悪いんじゃないんだよ、盗撮がダメなんだよ。ちゃんと断り入れるならリアなんてきっと喜んで被写体になってくれるぞ」
「マジですか!?」
リアならきっとアイドルみたいなポーズ付きで許可するなきっと。
「とにかく! お前はちゃんと懺悔して罪を償え、じゃないとうちの狂犬アンナマリア・フェーデが再びお前を迎えに行くぞ」
「ぎゃーーーー!! スイマセンスイマセン本当に勘弁してください、命だけはお助けを! でもあの人の写真も撮りたいです!」
コイツ懲りてるのかどうなのかわかんねーなぁ……
「でも、どうやって罪を償えばいいんですか?」
コイツの贖罪か、重しでもつけて海に沈めるか? んー、それはマリアさん向けだな。
まずは売った写真の回収させるか、しかしそれだけじゃ生ぬるいな、そうだ! あの女子高生と付き合わせよう。
「よし、決めた。まずは売った写真の回収な、これは必須だ、回収手段は問わない」
「え? 何百枚もあるんですけど」
「知るかバカ」
まあ、自業自得なんで同情は出来ないな
「そして次の贖罪はとある少女を助ける事だ」
「少女を助ける? 誰を助けろと?」
「その少女というのはお前と同じ学校にいる名前は知らないが、お前に好意を抱いている」
なんか嬉しそうな表情してるな? イラっとする表情だなぁ。
「ああ、創作料理研究会の所属だと聞いたな」
アタシのその言葉を聞くと、とたんに顔が青ざめていく。
「うおわあああ! あの子かあの子なのか……何故あの『黒き凶兆』と呼ばれるアイツが……」
スゲー仇名だなおい、考えた奴中二病だろ。
「ソイツと付き合え、拒否した場合……わかるな?」
「はい!! わかりました! 清いお付き合いをさせていただきます!!」
最早、北岡は変な笑顔で泣き笑いしていた。
アタシは前に来た女子高生を救う事も出来、北岡の贖罪もできるナイスなアイデアに満足している。
「うぅ、何でこうなったんだろう……」
泣き言を言っているがアタシはそれを聞かなかったことにする、そしてロープをほどいてやる。
そして北岡にアタシは笑顔でドスを効かせる
「贖罪頑張って」
アタシの応援の言葉を聞くと、北岡はまた泣きながら上ずった声で返事をした。
「おーし! 写真回収に行ってこーい!」
アタシはそう言うと北岡のケツにタイキックをかまして送り出す、北岡はヒイヒイ言いながら走って懺悔室から出て行った。
北岡が出ていくのを見るとマリアさんが入ってきた。
「なーに、やっぱレナちゃんは優しいわね」
「そうですか? マリアさんが滅茶苦茶なだけじゃないですか?」
「滅茶苦茶ってそうかしらぁ。あの子も素っ裸で東京タワーから紐無しバンジーして生還したら許してあげるわよ」
「……それ、簡単に言うと死ねって事じゃないですか」
「贖罪よ贖罪」
そう言うとマリアさんは細目でウィンクをした、器用だな。
「まあ、でもこれで前に来た女子高生と北岡という道を外れた少年を救う事が出来たから、良しとしましょうよ」
「レナちゃんがそう言うなら私も納得してあげるわ。まあ、次やったら……紐無しバンジーだけどね」
こうして盗撮魔の魔の手から教会は守られたのであった。
追記:リア曰く北岡のサイトは消されていたそうだ。
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