シスターレナに叱られたい!

雛山

文字の大きさ
12 / 56

懺悔其の十二 ノースヒルフォーエバー

しおりを挟む
 
「んー! んんんー!!」

 懺悔室に縄でぐるぐる巻きにされた、ボロ雑巾が転がっており呻いている。
 先程黒い服着た厳つい兄さん達が担いできたものだ。転がした後、兄さん達はどこかへ行ってしまったが。
 そして、兄さん達の後から背の高い女性がプラチナブロンドを靡かせながらやってきた。

「あー、マリアさん。これなんですか?」
「こんにちはレナちゃん、今日もキュートね」

 そしてその女性は、雑巾の近くで足を止める。
 ハリウッド女優も裸足で逃げだすようなこの美女は、うちのシスターで『アンナマリア・フェーデ』イタリアンなマフィアの祖父を持つその筋の人だ、何故こんな日本の小さな教会でシスターをしてるのかは謎。
 たまに教会にベレッタ21A ボブキャット普通に置いとくのはやめてほしい、モデルガンと言ってますがどう見てもモデルガンじゃありません。

 年齢は二十代半ばくらい、背が高くスラっとしていて出るところは出ており引き締まるところは引き締まっている、俗に言うナイスなバディ。服の上からでもスタイルの良さが際立つ…ピチッとしたスリットの入った改造修道服なんだけどな。
 長い髪に長いまつげ、ただ目は細目でさらにいつも細めているので一見目を閉じているようにも見える。
 いつもは柔和な表情の彼女だが、今その表情は現役だった時のアタシでも怯みそうになるほど鋭い物だ。
 
 そしてその美女の前にロープで簀巻きにされ、さるぐつわを噛まされて転がっている少年。学制服を着ていることから学生だと分かる、ボサボサの髪型にニキビの多い顔、表情は涙目になっており顔の色は青く、震えている。

「懺悔室に懺悔をしなければならない子を連れてきたのよ」
「はぁ、何かしたのねこいつ」
「えぇ、私のファミリーに手を出すとは面白い子よねぇ」

 マリアさんはアタシたちの事をファミリーと呼び本当の家族のように接してくれるが、害をなす相手には容赦がない。

 最近もこの町で空き巣騒ぎがあり、先日この教会にその空き巣が入った事があった、しかしその後は空き巣の話はパタリと聞かなくなったんだよなぁ。
 なんでも警察の前に素っ裸にひん剥かれて、ボールギャグを噛まされ半殺し状態の二〇代後半の男が転がされていたそうだ。
 その男が警察に保護された後空き巣騒動が収まっている、あの時もマリアさんがブチ切れてたからなぁ……くわばらくわばら。

「んー! んー!」

 呻いてばかりで何言ってるかわかんないや、さるぐつわしてるから仕方ないけど。

「マリアさんコイツ何したんですか?」
「これよコレ」

 マリアさんはそう言うと高級そうなカメラを胸元から取り出した、ん? 今どこから取り出した?
 そして取り出したカメラを地面に叩きつける。
 男の目が見開かれ涙がこぼれた……汚ねぇツラ……

「レナちゃんを盗撮してたのよ……」

 そう言いながらマリアさんが男を踏みつける、ハイヒールのカカトで踏まれてる男は脂汗を流しながら呻いていた。

「まあ、今回はレナちゃんが標的だったみたいだから、こうして捕まえてレナちゃんの所に連れてきたのよ、丁度懺悔室だったからね」

 盗撮と来てピーンと来たよ、コイツがどうやら北岡のようだ。

「あぁー、なるほど。お前か」
「あら?レナちゃんコイツ知ってるの?」

 知ってるの? と言いながら男のわき腹をつま先で蹴った……いったー見てる方も痛い……呻いてやがる

「ええ、まあ以前リナのヤツが言ってた盗撮魔だと思いましてね」
「あら、リナちゃんがね。とりあえずコイツはレナちゃんに任せるわね、懺悔を聴いてア・ゲ・テ」
「わかりましたと」

 そう言ってマリアさんはしゃなりしゃなりとモデル歩きで懺悔室を後にした、本当あの人こんな所よりロアナプ〇とかにいる方が似合うよな……
 アタシはさるぐつわを外してやる。

「お前が北岡だな、よりによってあの人に見つかるなんて。ヘタ打ったな、生きてることに感謝しろよ」
「はぃぃぃ! そうです北岡です! すいませんごめんなさい」

 首をカクカク振りながら謝る、それにしても泣き顔がビジュアル的に汚いんだけど。

「で、なんでこの教会を狙ったんだ? 一応ここは懺悔室だから懺悔は聞いてやるよ」
「うへ、うへへ。ここのシスター達って美人ぞろいじゃないですか。小遣い稼ぎにも僕の趣味にも丁度いいんですよ」
「小遣い稼ぎ? おい、お前まさか……」
「リアちゃんとか一部に大人気なんだよ、リナちゃんなんて女性にも大人気さ、マティアちゃんも人気高いよ」

 こいつアタシたちの盗撮写真を売ってやがったのかよ、どうしようもないクズだな。
 マティア……アイツまで盗撮してるのかよ、アイツも変態だぞ。修道女の恰好してるが男だぞ、しかもマゾ。

「お前、リアの本当の年齢知らないからそんなことできるんだぞ」
「え? リアちゃんって中学生くらいじゃないんですか?」
「……今度、本人に聞いてみろ。ただし聞く前に遺書は書いておけよ」

 しかし、以前ここに来た女子高生はコレのどこが良かったんだよ……流石に趣味悪すぎだろこれ。

「さて、お前ちょっと擁護できないぞ、盗撮もアレだが盗撮写真売ってるとか」
「そこをどうかお許しください!」
「うーん、マリアさんが動いちゃった今、普通の条件じゃ許されないんだよなぁ、まったく面倒な事になったもんだ」
「そんなぁ……軽い気持ちでやったのに」

 罪の意識が低いって世も末だよねぇ。

「軽い気持ちでやるなよ、犯罪だぞ。アタシだって昔は俗に言うヤンキーだったけど喧嘩はしたが犯罪はやってないからな」
「え? そんなに可愛いのにヤンキーだったんすか?」
「うるせー! 今は容姿の事は関係ないだろうが」
「あー、すいませんすいません! 写真撮っていいですか?」
「ダメに決まってんだろうが! 反省してねーだろお前」

 こいつは殴っていいかな?

「お前が何気なしにやってる盗撮で被害被る人がいるの、理解してるのか?」
「はいぃぃ! 理解してます申し訳ありません! ですから写真撮っていいですか?」
「……お前、脳の病気か? ダメだつってるだろうが、いい加減にしないと十字架背負わせて町内全力疾走させるぞ」
「そんなぁ、こんな間近に最高クラスの被写体がいるのに写真に収められないなんて……」
「写真を撮ることが悪いんじゃないんだよ、盗撮がダメなんだよ。ちゃんと断り入れるならリアなんてきっと喜んで被写体になってくれるぞ」
「マジですか!?」

 リアならきっとアイドルみたいなポーズ付きで許可するなきっと。

「とにかく! お前はちゃんと懺悔して罪を償え、じゃないとうちの狂犬アンナマリア・フェーデが再びお前を迎えに行くぞ」
「ぎゃーーーー!! スイマセンスイマセン本当に勘弁してください、命だけはお助けを! でもあの人の写真も撮りたいです!」

 コイツ懲りてるのかどうなのかわかんねーなぁ……

「でも、どうやって罪を償えばいいんですか?」

 コイツの贖罪か、重しでもつけて海に沈めるか? んー、それはマリアさん向けだな。
 まずは売った写真の回収させるか、しかしそれだけじゃ生ぬるいな、そうだ! あの女子高生と付き合わせよう。

「よし、決めた。まずは売った写真の回収な、これは必須だ、回収手段は問わない」
「え? 何百枚もあるんですけど」
「知るかバカ」

 まあ、自業自得なんで同情は出来ないな

「そして次の贖罪はとある少女を助ける事だ」
「少女を助ける? 誰を助けろと?」
「その少女というのはお前と同じ学校にいる名前は知らないが、お前に好意を抱いている」

 なんか嬉しそうな表情してるな? イラっとする表情だなぁ。

「ああ、創作料理研究会の所属だと聞いたな」

 アタシのその言葉を聞くと、とたんに顔が青ざめていく。

「うおわあああ! あの子かあの子なのか……何故あの『黒き凶兆』と呼ばれるアイツが……」

 スゲー仇名だなおい、考えた奴中二病だろ。

「ソイツと付き合え、拒否した場合……わかるな?」
「はい!! わかりました! 清いお付き合いをさせていただきます!!」

 最早、北岡は変な笑顔で泣き笑いしていた。
 アタシは前に来た女子高生を救う事も出来、北岡の贖罪もできるナイスなアイデアに満足している。

「うぅ、何でこうなったんだろう……」

 泣き言を言っているがアタシはそれを聞かなかったことにする、そしてロープをほどいてやる。
 そして北岡にアタシは笑顔でドスを効かせる

「贖罪頑張って」

 アタシの応援の言葉を聞くと、北岡はまた泣きながら上ずった声で返事をした。

「おーし! 写真回収に行ってこーい!」

 アタシはそう言うと北岡のケツにタイキックをかまして送り出す、北岡はヒイヒイ言いながら走って懺悔室から出て行った。

 北岡が出ていくのを見るとマリアさんが入ってきた。

「なーに、やっぱレナちゃんは優しいわね」
「そうですか? マリアさんが滅茶苦茶なだけじゃないですか?」
「滅茶苦茶ってそうかしらぁ。あの子も素っ裸で東京タワーから紐無しバンジーして生還したら許してあげるわよ」
「……それ、簡単に言うと死ねって事じゃないですか」
「贖罪よ贖罪」

 そう言うとマリアさんは細目でウィンクをした、器用だな。

「まあ、でもこれで前に来た女子高生と北岡という道を外れた少年を救う事が出来たから、良しとしましょうよ」
「レナちゃんがそう言うなら私も納得してあげるわ。まあ、次やったら……紐無しバンジーだけどね」

 こうして盗撮魔の魔の手から教会は守られたのであった。

 追記:リア曰く北岡のサイトは消されていたそうだ。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる

みおな
恋愛
聖女。 女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。 本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。 愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。 記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

聖女の、その後

六つ花えいこ
ファンタジー
私は五年前、この世界に“召喚”された。

処理中です...