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こじらせてる?
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カレンはカフェ・ジェスで元恋人のワイアットと向かい合っていた。
外で用事をすませている時にワイアットとばったりでくわし、話しがしたいといわれカフェにきた。
ワイアットと一緒にカフェにきたのは十六歳の時以来で、ワイアットは四年前より体が一回り大きくたくましくなり、顔つきも大人っぽくなっているので、知らない男性と一緒にいるような据わりの悪さがあった。
「話すチャンスをくれてありがとう」
ワイアットの口調が昔と同じで懐かしい。
「どういたしまして?」
いつ会っても大丈夫なよう心の準備はできていたが、実際に会うと緊張してあたふたする。
「いまさらだけど謝らせてほしい。カレンを傷つけて本当に申し訳なかった。
ずっと謝りたくて何度も手紙を書いたけど、何をどう書いても嘘っぽくて結局だせなかった。
ガキで自分のことしか考えてなくて、仲間内で格好つけるために思ってもないこといった。それがカレンを傷つけることになると分かってなかった。
カレンのことが好きなのを友達に知られて、からかわれるのが嫌で、ごまかそうと思ってあんなこといってしまった。
好きな女の子のことでお互いからかうことがよくあったから、それをかわしたくて好きなわけじゃないといえば大丈夫だろうと思ったんだ。最低だよな。
本当にカレンのことが好きで、カレンと付き合えてものすごく浮かれてた。大好きで大切だったのに、最低なことして傷つけて本当にごめん。ずっと後悔してた」
きっとワイアットもカレンと同じように心の準備をし、カレンにあやまるために言うべきことを何度も練習したのだろう。
カレンはワイアットからあやまられ、あの頃のワイアットが好きだった自分がなぐさめられた気がした。
練習台といわれたのは衝撃だった。好きという気持ちを踏みにじられ苦しかった。
それだけにワイアットがちゃんとカレンのことを好きだったと知り、あの時の恋心がむくわれたと思った。
「あやまってくれてありがとう。お互い過去のことは水に流して、これからは普通に接しよう」
ワイアットが口をかすかに開けておどろいている顔がおかしく、カレンがくすりと笑うと、ワイアットがあわてたように「本当に許してくれるのか?」と聞いた。
「だっていまさらでしょう? それに仕事場が近いから顔を合わせることも多くなるし、気まずいままだと嫌じゃない?」
ワイアットが納得していない顔をしたのでカレンは言葉をついだ。
「あの時はもちろん腹が立ったし傷ついた。でもいつまでも引きずってるのって疲れるんだよね。だからお互い気まずくないようにした方がいいでしょう?
私も幼馴染みと話している時に大げさにいったり、悪乗りして変なこといっちゃったりすることあるし。
あの時はガキでお馬鹿さんだったでいいんじゃない?」
ワイアットが「そういうところ変わってないな」と笑顔をみせた。
「過去のことをごちゃごちゃ考えるより、これからに生かせるよう反省したら嫌なことはさっさと忘れるってよく言ってたよな」
「それ、うちの母の受け売り。うちの姉がくよくよ考えすぎるタイプだから、母が姉によくいってたの」
「そういえばカレンのお姉さん結婚した時に、やけ酒する男が続出したって聞いたけど」
この町で一番美しいといわれた姉は、少しはなれた町の酪農をいとなむ家にとついだ。
家族と親しい友人以外は意外な嫁ぎ先におどろき、姉のことを好きだった男の子達はなげいた。
地域一帯の酪農を牛耳るほど裕福な家であったら、まだ周囲は納得できたのだろうが、ごく普通の家なので「どうして?」と思われた。
「あの子の性格が私に似てたら、美しさを武器にしてものすごい成り上がりができただろうに」
母がよくそのようにいった。
母は見目がよくモテていた父をつかまえたので女の子達から嫌がらせをうけた。
しかし男勝りといわれる母は「目には目を歯には歯を」とことごとく返り討ちにしたという。
姉が母のようであったら、姉は自分の美しさを「こんなものいらない」といわずもっと楽しめただろう。
結婚し家畜にかこまれた生活をしている姉は、「もう人からじろじろ見られることはないし、商家の娘だからと人に愛想よくする必要もないから幸せよ」といっている。
「そういえばワイアットってうちの姉に興味なさそうだったけど、もしかして興味ないふりしてただけ?」
意外なことを聞かれたという表情をしたあと、ワイアットは「ふりじゃなくて、きれいで人気がある人としか思ったことがない」きっぱりいった。
「俺はカレンの方がきれいだと思ってたし、その気持ちは変わってない」
思わぬ言葉にカレンの動きが固まった。
姉とちがいカレンは「きれい」といわれることがない。
いたって普通の容姿だが、美しい姉と比べられるので見目が残念というあつかいをされた。
しかし姉とカレンの二人が並んで一緒にいると「似てる」と意外そうにいわれることが多い。だからといってカレンの見目への評価はかわらないが。
「ほめてくれてありがとう。じゃあ、また付き合う?」
笑いながら冗談をいったところ、ワイアットがおどろいた顔をしたがすぐに、
「そうしよう。このまま結婚してもいい」といった。
「そういう冗談をかえすなら、もうちょっと明るく笑えるようにやってほしいかなあ」
「冗談じゃない。お互い独身だし問題ないだろう? もしかしてこの間ここでお茶してた男と付き合ってる?」
どん引きだ。
もしかしたらワイアットはこれまでずっとカレンへの罪悪感に苦しみ、責任をとらなくてはと思っているのかもしれない。
「べつにあの時のおわびに結婚するとかいわなくていいよ」
ワイアットがカレンを見つめた。直線的な太い眉とくっきりした目のバランスが絶妙で、ついみとれてしまう。
優男の父と中性的な兄を見慣れているせいか、ワイアットのような男らしいワイルド顔にカレンは弱かった。
「過去のおわびとかじゃない。付き合ってた時から結婚したかった」
カレンは「嘘でしょう!」とカフェで叫ばなかった自分をほめた。
外で用事をすませている時にワイアットとばったりでくわし、話しがしたいといわれカフェにきた。
ワイアットと一緒にカフェにきたのは十六歳の時以来で、ワイアットは四年前より体が一回り大きくたくましくなり、顔つきも大人っぽくなっているので、知らない男性と一緒にいるような据わりの悪さがあった。
「話すチャンスをくれてありがとう」
ワイアットの口調が昔と同じで懐かしい。
「どういたしまして?」
いつ会っても大丈夫なよう心の準備はできていたが、実際に会うと緊張してあたふたする。
「いまさらだけど謝らせてほしい。カレンを傷つけて本当に申し訳なかった。
ずっと謝りたくて何度も手紙を書いたけど、何をどう書いても嘘っぽくて結局だせなかった。
ガキで自分のことしか考えてなくて、仲間内で格好つけるために思ってもないこといった。それがカレンを傷つけることになると分かってなかった。
カレンのことが好きなのを友達に知られて、からかわれるのが嫌で、ごまかそうと思ってあんなこといってしまった。
好きな女の子のことでお互いからかうことがよくあったから、それをかわしたくて好きなわけじゃないといえば大丈夫だろうと思ったんだ。最低だよな。
本当にカレンのことが好きで、カレンと付き合えてものすごく浮かれてた。大好きで大切だったのに、最低なことして傷つけて本当にごめん。ずっと後悔してた」
きっとワイアットもカレンと同じように心の準備をし、カレンにあやまるために言うべきことを何度も練習したのだろう。
カレンはワイアットからあやまられ、あの頃のワイアットが好きだった自分がなぐさめられた気がした。
練習台といわれたのは衝撃だった。好きという気持ちを踏みにじられ苦しかった。
それだけにワイアットがちゃんとカレンのことを好きだったと知り、あの時の恋心がむくわれたと思った。
「あやまってくれてありがとう。お互い過去のことは水に流して、これからは普通に接しよう」
ワイアットが口をかすかに開けておどろいている顔がおかしく、カレンがくすりと笑うと、ワイアットがあわてたように「本当に許してくれるのか?」と聞いた。
「だっていまさらでしょう? それに仕事場が近いから顔を合わせることも多くなるし、気まずいままだと嫌じゃない?」
ワイアットが納得していない顔をしたのでカレンは言葉をついだ。
「あの時はもちろん腹が立ったし傷ついた。でもいつまでも引きずってるのって疲れるんだよね。だからお互い気まずくないようにした方がいいでしょう?
私も幼馴染みと話している時に大げさにいったり、悪乗りして変なこといっちゃったりすることあるし。
あの時はガキでお馬鹿さんだったでいいんじゃない?」
ワイアットが「そういうところ変わってないな」と笑顔をみせた。
「過去のことをごちゃごちゃ考えるより、これからに生かせるよう反省したら嫌なことはさっさと忘れるってよく言ってたよな」
「それ、うちの母の受け売り。うちの姉がくよくよ考えすぎるタイプだから、母が姉によくいってたの」
「そういえばカレンのお姉さん結婚した時に、やけ酒する男が続出したって聞いたけど」
この町で一番美しいといわれた姉は、少しはなれた町の酪農をいとなむ家にとついだ。
家族と親しい友人以外は意外な嫁ぎ先におどろき、姉のことを好きだった男の子達はなげいた。
地域一帯の酪農を牛耳るほど裕福な家であったら、まだ周囲は納得できたのだろうが、ごく普通の家なので「どうして?」と思われた。
「あの子の性格が私に似てたら、美しさを武器にしてものすごい成り上がりができただろうに」
母がよくそのようにいった。
母は見目がよくモテていた父をつかまえたので女の子達から嫌がらせをうけた。
しかし男勝りといわれる母は「目には目を歯には歯を」とことごとく返り討ちにしたという。
姉が母のようであったら、姉は自分の美しさを「こんなものいらない」といわずもっと楽しめただろう。
結婚し家畜にかこまれた生活をしている姉は、「もう人からじろじろ見られることはないし、商家の娘だからと人に愛想よくする必要もないから幸せよ」といっている。
「そういえばワイアットってうちの姉に興味なさそうだったけど、もしかして興味ないふりしてただけ?」
意外なことを聞かれたという表情をしたあと、ワイアットは「ふりじゃなくて、きれいで人気がある人としか思ったことがない」きっぱりいった。
「俺はカレンの方がきれいだと思ってたし、その気持ちは変わってない」
思わぬ言葉にカレンの動きが固まった。
姉とちがいカレンは「きれい」といわれることがない。
いたって普通の容姿だが、美しい姉と比べられるので見目が残念というあつかいをされた。
しかし姉とカレンの二人が並んで一緒にいると「似てる」と意外そうにいわれることが多い。だからといってカレンの見目への評価はかわらないが。
「ほめてくれてありがとう。じゃあ、また付き合う?」
笑いながら冗談をいったところ、ワイアットがおどろいた顔をしたがすぐに、
「そうしよう。このまま結婚してもいい」といった。
「そういう冗談をかえすなら、もうちょっと明るく笑えるようにやってほしいかなあ」
「冗談じゃない。お互い独身だし問題ないだろう? もしかしてこの間ここでお茶してた男と付き合ってる?」
どん引きだ。
もしかしたらワイアットはこれまでずっとカレンへの罪悪感に苦しみ、責任をとらなくてはと思っているのかもしれない。
「べつにあの時のおわびに結婚するとかいわなくていいよ」
ワイアットがカレンを見つめた。直線的な太い眉とくっきりした目のバランスが絶妙で、ついみとれてしまう。
優男の父と中性的な兄を見慣れているせいか、ワイアットのような男らしいワイルド顔にカレンは弱かった。
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