神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン

文字の大きさ
86 / 143
2章〜フォレスト王国王都〜

閑話、私を奴隷から解放してくれた幼女

しおりを挟む
 僕は物心ついた頃からもう檻の中にいた。

 そしてある日、僕は買われた。買われたということがどういうことなのかさえあの頃の僕は分かっていなかった。

 僕を買ったのは、侯爵家の令嬢だ。

 僕は顔がいいらしい。だから獣人だけどこの令嬢に買われたと使用人達が言っているのを聞いた。

 そして僕はその令嬢に可愛がられた。

 僕にとっては苦痛でしかなかったけど。

 常に側に居るコトを求められた。お嬢様を肯定するコトだけを求められた。一緒に寝るコトを求められた。僕の全てを求められた。

 そんなに求められても僕にとっては苦痛でしかなかった。だって、求められているのは外見の「私」だけで、「僕」自身は見られていない。

 それがとてもとても悲しかった。苦しかった。逃げたかった。だけどどうしようもなかった。だって、僕は買われた身だから。

 勝手に逃げる事を許されない。勝手に死ぬ事を許されない。勝手に心を消す事を許されない。

 全て出来ぬまま、求められる「私」でいた。


 だけどそんな日は突然終わった。売りに出されたのだ。

 僕が何故売られたのか奴隷市場に行く途中で聞かされた。

 僕が売りに出された理由。それは大きくなったから、らしい。

 僕は十五歳らしい。それぐらいの見た目だと言われた。お嬢様は、そんな大きくなった僕は可愛く見えず、売りに出したそうだ。

 普通なら、前以上に辛い思いをするかもしれないと怯えてしまうかもしれない。

 腕も不機嫌な男に切り落とされた。

 でも僕は、希望を捨ててはいなかった。

 だって、僕にとって辛い事は、「僕」自身を見てくれないこと。

 だからこれからはもしかして、という希望が捨てられなかった。

 そしてそんな僕を見て、他の奴隷達は「どうしてそんな希望を持てるんだ」と聞いて来た。

 何故だろう。僕も分からない。でも何故か暗い気持ちにはならなかった。

 今なら分かる。何となくリティア様との出会いを予感していたんだ。

 
 奴隷市場が解放されたらしい。沢山の人がやって来た。僕を見てはウットリとしている。

 最初は気持ち悪いと思っていたがお嬢様で慣れた。

 奴隷市場が開かれてしばらく経った時、あの人は来た。唯一、僕を見てウットリとしなかった人達。

 そしてその人達の中心は、幼女だった。その幼女は僕が気に入ったらしい。

 僕を買った。そして僕は、連れて行かれた。どこに?城に。

 訳がわからなかった。しかしこの人達がどういう人なのか分からない今、口を開くのは得策ではないというのは分かっていた。

 だから疑問は心の中で全て留めて顔にさえ出さないようにした。

 そして城の豪華な部屋へと入った。

 そこで僕を買った人が話し始めた。

「こんにちは。私はリティア。貴方の名前は?」

 僕の名前?そんなモノ考えた事がなかった。お嬢様には白ちゃんと呼ばれていた。しかし、僕はそれを名前とは思っていない。

 何で答えればいいんだろう。そんな事を考えて悩んでいたら、リティア様は僕に性別を聞いて来た。うん。慣れている。

 はぁ、僕はそんなに性別が分からないだろうか。慣れていても地味に傷つく。

 そしてこの人は僕に名前をくれた。僕だけの名前。それはーーー


「チカ」


 チカ。僕だけの名前。名前がこんなにいいものだとは知らなかった。そして、その喜びを噛み締める前に、とんでもない事をこの人は言った。

 この腕に付いている奴隷に腕輪を取るという。


 何言っているんです??


 そんな事出来たら奴隷の腕輪、意味なしだと思う。

 気持ちだけ受け取ろうと結果を待っていたら、この人はあっさりと、それはもうあっさりと腕輪を外した。


 えええぇぇーーー!!


 いやいやいや。こんなの普通無理じゃない!?

 僕の頭の中はごちゃごちゃだ。

 他の人達が何か言っているが、それも頭に入ってこない。

 そしてリティア様に呼ばれて現実が見えた。

「あ、あっけなさ過ぎですよ……っ!」

 視界が滲む。ああ、僕は泣いているんだ。

 泣いたのは記憶のある限りでは初めてだ。


 奴隷の腕輪なんて、当たり前過ぎて気にしていなかった。だけど、外れるといろんな感情が溢れて来る。

 僕の中では知らずの内に、奴隷の腕輪が一番の苦しみだったらしい。当たり前過ぎて、そんな事にすら気がつけなかった。

 そして腕輪が外れた事により、嬉しさ、喜び、いろんな感情が出て来た。


 リティア様、いろんな感情をくれた貴方の側にいたい。

 
 そして粘って僕は従者の位置を獲得した。しかしリティア様はそれ以上のモノをくれた。

 
 家族。僕は、リティア様達の家族としても側にいられる。

 家族。その繋がりが、とても嬉しい。

 でも実感が湧かず、呆然としていたらリティア様が首を傾げて聞いて来た。家族は嫌なのかと。

 か、可愛いぃー!!

 そんな事、他の人にやって欲しくないです。

 ……はっ。

 僕はリティア様の家族兼従者となった。

 やっと実感が湧いて、僕は笑った。

 そしてリティア様が笑い、他の人達も笑った。

 ああ、何て幸せなんだろう。


 この気持ちをくれたリティア様のお側に、家族として、従者としてずっとずっといます。
 





 

 
 
しおりを挟む
感想 36

あなたにおすすめの小説

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

4/10コミック1巻発売!【完結】魔王様、溺愛しすぎです!

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
ファンタジー
2026/01/20追記 『魔王様、溺愛しすぎです!』のコミカライズ情報、解禁となりました! TOブックス様から出版、1巻が4/10発売予定です。 キャラクターデザインに『蒼巳生姜(@syo_u_ron)』先生! 以前表紙絵をお願いした方です(*ノωノ) 漫画家は『大和アカ(@asanyama)』先生です° ✧ (*´ `*) ✧ ° 連載については改めて発表させていただきますね_( _*´ ꒳ `*)_ 「パパと結婚する!」  8万年近い長きにわたり、最強の名を冠する魔王。勇者を退け続ける彼の居城である『魔王城』の城門に、人族と思われる赤子が捨てられた。その子を拾った魔王は自ら育てると言い出し!? しかも溺愛しすぎて、周囲が大混乱!  拾われた子は幼女となり、やがて育て親を喜ばせる最強の一言を放った。魔王は素直にその言葉を受け止め、嫁にすると宣言する。  シリアスなようでコメディな軽いドタバタ喜劇(?)です。 【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう 【表紙イラスト】しょうが様(https://www.pixiv.net/users/291264) 挿絵★あり 【完結】2021/12/02 ※2026/01/20 1巻発売日(4/10)発表! ※2025/12/25 コミカライズ決定! ※2022/08/16 第3回HJ小説大賞前期「小説家になろう」部門 一次審査通過 ※2021/12/16 第1回 一二三書房WEB小説大賞、一次審査通過 ※2021/12/03 「小説家になろう」ハイファンタジー日間94位 ※2021/08/16、「HJ小説大賞2021前期『小説家になろう』部門」一次選考通過作品 ※2020年8月「エブリスタ」ファンタジーカテゴリー1位(8/20〜24) ※2019年11月「ツギクル」第4回ツギクル大賞、最終選考作品 ※2019年10月「ノベルアップ+」第1回小説大賞、一次選考通過作品 ※2019年9月「マグネット」ヤンデレ特集掲載作品

転生幼女の攻略法〜最強チートの異世界日記〜

みおな
ファンタジー
 私の名前は、瀬尾あかり。 37歳、日本人。性別、女。職業は一般事務員。容姿は10人並み。趣味は、物語を書くこと。  そう!私は、今流行りのラノベをスマホで書くことを趣味にしている、ごくごく普通のOLである。  今日も、いつも通りに仕事を終え、いつも通りに帰りにスーパーで惣菜を買って、いつも通りに1人で食事をする予定だった。  それなのに、どうして私は道路に倒れているんだろう?後ろからぶつかってきた男に刺されたと気付いたのは、もう意識がなくなる寸前だった。  そして、目覚めた時ー

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

俺のスキルが回復魔『法』じゃなくて、回復魔『王』なんですけど?

八神 凪
ファンタジー
ある日、バイト帰りに熱血アニソンを熱唱しながら赤信号を渡り、案の定あっけなくダンプに轢かれて死んだ 『壽命 懸(じゅみょう かける)』 しかし例によって、彼の求める異世界への扉を開くことになる。 だが、女神アウロラの陰謀(という名の嫌がらせ)により、異端な「回復魔王」となって……。 異世界ペンデュース。そこで彼を待ち受ける運命とは?

憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

幼女と執事が異世界で

天界
ファンタジー
宝くじを握り締めオレは死んだ。 当選金額は約3億。だがオレが死んだのは神の過失だった! 謝罪と称して3億分の贈り物を貰って転生したら異世界!? おまけで貰った執事と共に異世界を満喫することを決めるオレ。 オレの人生はまだ始まったばかりだ!

処理中です...