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2章〜フォレスト王国王都〜
閑話、私を奴隷から解放してくれた幼女
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僕は物心ついた頃からもう檻の中にいた。
そしてある日、僕は買われた。買われたということがどういうことなのかさえあの頃の僕は分かっていなかった。
僕を買ったのは、侯爵家の令嬢だ。
僕は顔がいいらしい。だから獣人だけどこの令嬢に買われたと使用人達が言っているのを聞いた。
そして僕はその令嬢に可愛がられた。
僕にとっては苦痛でしかなかったけど。
常に側に居るコトを求められた。お嬢様を肯定するコトだけを求められた。一緒に寝るコトを求められた。僕の全てを求められた。
そんなに求められても僕にとっては苦痛でしかなかった。だって、求められているのは外見の「私」だけで、「僕」自身は見られていない。
それがとてもとても悲しかった。苦しかった。逃げたかった。だけどどうしようもなかった。だって、僕は買われた身だから。
勝手に逃げる事を許されない。勝手に死ぬ事を許されない。勝手に心を消す事を許されない。
全て出来ぬまま、求められる「私」でいた。
だけどそんな日は突然終わった。売りに出されたのだ。
僕が何故売られたのか奴隷市場に行く途中で聞かされた。
僕が売りに出された理由。それは大きくなったから、らしい。
僕は十五歳らしい。それぐらいの見た目だと言われた。お嬢様は、そんな大きくなった僕は可愛く見えず、売りに出したそうだ。
普通なら、前以上に辛い思いをするかもしれないと怯えてしまうかもしれない。
腕も不機嫌な男に切り落とされた。
でも僕は、希望を捨ててはいなかった。
だって、僕にとって辛い事は、「僕」自身を見てくれないこと。
だからこれからはもしかして、という希望が捨てられなかった。
そしてそんな僕を見て、他の奴隷達は「どうしてそんな希望を持てるんだ」と聞いて来た。
何故だろう。僕も分からない。でも何故か暗い気持ちにはならなかった。
今なら分かる。何となくリティア様との出会いを予感していたんだ。
奴隷市場が解放されたらしい。沢山の人がやって来た。僕を見てはウットリとしている。
最初は気持ち悪いと思っていたがお嬢様で慣れた。
奴隷市場が開かれてしばらく経った時、あの人は来た。唯一、僕を見てウットリとしなかった人達。
そしてその人達の中心は、幼女だった。その幼女は僕が気に入ったらしい。
僕を買った。そして僕は、連れて行かれた。どこに?城に。
訳がわからなかった。しかしこの人達がどういう人なのか分からない今、口を開くのは得策ではないというのは分かっていた。
だから疑問は心の中で全て留めて顔にさえ出さないようにした。
そして城の豪華な部屋へと入った。
そこで僕を買った人が話し始めた。
「こんにちは。私はリティア。貴方の名前は?」
僕の名前?そんなモノ考えた事がなかった。お嬢様には白ちゃんと呼ばれていた。しかし、僕はそれを名前とは思っていない。
何で答えればいいんだろう。そんな事を考えて悩んでいたら、リティア様は僕に性別を聞いて来た。うん。慣れている。
はぁ、僕はそんなに性別が分からないだろうか。慣れていても地味に傷つく。
そしてこの人は僕に名前をくれた。僕だけの名前。それはーーー
「チカ」
チカ。僕だけの名前。名前がこんなにいいものだとは知らなかった。そして、その喜びを噛み締める前に、とんでもない事をこの人は言った。
この腕に付いている奴隷に腕輪を取るという。
何言っているんです??
そんな事出来たら奴隷の腕輪、意味なしだと思う。
気持ちだけ受け取ろうと結果を待っていたら、この人はあっさりと、それはもうあっさりと腕輪を外した。
えええぇぇーーー!!
いやいやいや。こんなの普通無理じゃない!?
僕の頭の中はごちゃごちゃだ。
他の人達が何か言っているが、それも頭に入ってこない。
そしてリティア様に呼ばれて現実が見えた。
「あ、あっけなさ過ぎですよ……っ!」
視界が滲む。ああ、僕は泣いているんだ。
泣いたのは記憶のある限りでは初めてだ。
奴隷の腕輪なんて、当たり前過ぎて気にしていなかった。だけど、外れるといろんな感情が溢れて来る。
僕の中では知らずの内に、奴隷の腕輪が一番の苦しみだったらしい。当たり前過ぎて、そんな事にすら気がつけなかった。
そして腕輪が外れた事により、嬉しさ、喜び、いろんな感情が出て来た。
リティア様、いろんな感情をくれた貴方の側にいたい。
そして粘って僕は従者の位置を獲得した。しかしリティア様はそれ以上のモノをくれた。
家族。僕は、リティア様達の家族としても側にいられる。
家族。その繋がりが、とても嬉しい。
でも実感が湧かず、呆然としていたらリティア様が首を傾げて聞いて来た。家族は嫌なのかと。
か、可愛いぃー!!
そんな事、他の人にやって欲しくないです。
……はっ。
僕はリティア様の家族兼従者となった。
やっと実感が湧いて、僕は笑った。
そしてリティア様が笑い、他の人達も笑った。
ああ、何て幸せなんだろう。
この気持ちをくれたリティア様のお側に、家族として、従者としてずっとずっといます。
そしてある日、僕は買われた。買われたということがどういうことなのかさえあの頃の僕は分かっていなかった。
僕を買ったのは、侯爵家の令嬢だ。
僕は顔がいいらしい。だから獣人だけどこの令嬢に買われたと使用人達が言っているのを聞いた。
そして僕はその令嬢に可愛がられた。
僕にとっては苦痛でしかなかったけど。
常に側に居るコトを求められた。お嬢様を肯定するコトだけを求められた。一緒に寝るコトを求められた。僕の全てを求められた。
そんなに求められても僕にとっては苦痛でしかなかった。だって、求められているのは外見の「私」だけで、「僕」自身は見られていない。
それがとてもとても悲しかった。苦しかった。逃げたかった。だけどどうしようもなかった。だって、僕は買われた身だから。
勝手に逃げる事を許されない。勝手に死ぬ事を許されない。勝手に心を消す事を許されない。
全て出来ぬまま、求められる「私」でいた。
だけどそんな日は突然終わった。売りに出されたのだ。
僕が何故売られたのか奴隷市場に行く途中で聞かされた。
僕が売りに出された理由。それは大きくなったから、らしい。
僕は十五歳らしい。それぐらいの見た目だと言われた。お嬢様は、そんな大きくなった僕は可愛く見えず、売りに出したそうだ。
普通なら、前以上に辛い思いをするかもしれないと怯えてしまうかもしれない。
腕も不機嫌な男に切り落とされた。
でも僕は、希望を捨ててはいなかった。
だって、僕にとって辛い事は、「僕」自身を見てくれないこと。
だからこれからはもしかして、という希望が捨てられなかった。
そしてそんな僕を見て、他の奴隷達は「どうしてそんな希望を持てるんだ」と聞いて来た。
何故だろう。僕も分からない。でも何故か暗い気持ちにはならなかった。
今なら分かる。何となくリティア様との出会いを予感していたんだ。
奴隷市場が解放されたらしい。沢山の人がやって来た。僕を見てはウットリとしている。
最初は気持ち悪いと思っていたがお嬢様で慣れた。
奴隷市場が開かれてしばらく経った時、あの人は来た。唯一、僕を見てウットリとしなかった人達。
そしてその人達の中心は、幼女だった。その幼女は僕が気に入ったらしい。
僕を買った。そして僕は、連れて行かれた。どこに?城に。
訳がわからなかった。しかしこの人達がどういう人なのか分からない今、口を開くのは得策ではないというのは分かっていた。
だから疑問は心の中で全て留めて顔にさえ出さないようにした。
そして城の豪華な部屋へと入った。
そこで僕を買った人が話し始めた。
「こんにちは。私はリティア。貴方の名前は?」
僕の名前?そんなモノ考えた事がなかった。お嬢様には白ちゃんと呼ばれていた。しかし、僕はそれを名前とは思っていない。
何で答えればいいんだろう。そんな事を考えて悩んでいたら、リティア様は僕に性別を聞いて来た。うん。慣れている。
はぁ、僕はそんなに性別が分からないだろうか。慣れていても地味に傷つく。
そしてこの人は僕に名前をくれた。僕だけの名前。それはーーー
「チカ」
チカ。僕だけの名前。名前がこんなにいいものだとは知らなかった。そして、その喜びを噛み締める前に、とんでもない事をこの人は言った。
この腕に付いている奴隷に腕輪を取るという。
何言っているんです??
そんな事出来たら奴隷の腕輪、意味なしだと思う。
気持ちだけ受け取ろうと結果を待っていたら、この人はあっさりと、それはもうあっさりと腕輪を外した。
えええぇぇーーー!!
いやいやいや。こんなの普通無理じゃない!?
僕の頭の中はごちゃごちゃだ。
他の人達が何か言っているが、それも頭に入ってこない。
そしてリティア様に呼ばれて現実が見えた。
「あ、あっけなさ過ぎですよ……っ!」
視界が滲む。ああ、僕は泣いているんだ。
泣いたのは記憶のある限りでは初めてだ。
奴隷の腕輪なんて、当たり前過ぎて気にしていなかった。だけど、外れるといろんな感情が溢れて来る。
僕の中では知らずの内に、奴隷の腕輪が一番の苦しみだったらしい。当たり前過ぎて、そんな事にすら気がつけなかった。
そして腕輪が外れた事により、嬉しさ、喜び、いろんな感情が出て来た。
リティア様、いろんな感情をくれた貴方の側にいたい。
そして粘って僕は従者の位置を獲得した。しかしリティア様はそれ以上のモノをくれた。
家族。僕は、リティア様達の家族としても側にいられる。
家族。その繋がりが、とても嬉しい。
でも実感が湧かず、呆然としていたらリティア様が首を傾げて聞いて来た。家族は嫌なのかと。
か、可愛いぃー!!
そんな事、他の人にやって欲しくないです。
……はっ。
僕はリティア様の家族兼従者となった。
やっと実感が湧いて、僕は笑った。
そしてリティア様が笑い、他の人達も笑った。
ああ、何て幸せなんだろう。
この気持ちをくれたリティア様のお側に、家族として、従者としてずっとずっといます。
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