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第17話
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お茶を飲んだ後、バシリオ王子自らホステラーノの王宮内を案内してくれる事になった。
「ここは、我らがホステラーノ王国が誇る騎士団の訓練場だよ」
そこには、剣術の稽古をする騎士達がいて、その中に赤い髪の騎士、ゴートンがいた。
ゴートンだわ!
それにしても、改めて見てもやっぱりゴートンとリシェントって似てるわね。
リシェントもちょうどホステラーノ王国で仕事があるからと、私達と一緒にホステラーノ王国にやってきていた。
私達がホステラーノ国王に挨拶に行くというと、仕事があるからとフラフラ何処かへ消えてしまったけれど……。
私達が騎士団の訓練を見ているとバシリオ王子が手を上げて訓練を止めて、ゴートンを呼ぶ。
「彼は、騎士団で1番強いと言われているゴートン・デイヴィスだ」
「はじめまして」
ゴートンは爽やかに笑った。
ああ、ゲーム画面越しに見たゴートンの笑顔が目の前に!!
レオンにバシリオ王子、ゴートンが同じ場所で談笑してるとかどんな奇跡よ!
「ああ、ここにシーフスが居てくれたら最高なのに……」
ルイーザが小さく呟いた瞬間、ルイーザの肩に手が置かれた。
「呼んだか?」
声に驚いて、後ろを振り返るとそこには7年前と変わらぬ姿のシーフスがいた。
「シーフス、どうしてここに!?」
「いや、何か面白い事がありそうだと思って、最近、エルフの里を出てホステラーノ王国に来ていたんだ」
「そ、そうなの?」
確かに、シーフスはゲームでもファニアちゃんが聖女に目覚めると、エルフ里を出てホステラーノ王国に来ていたから、エルフにはそういう勘があるのかもしれない。
「ルイーザ嬢は、シーフス殿と知り合いなのか?」
「え、ええ。レオンと前にお世話になった事があって……」
と言いながら、私は4人が並ぶ様を見て叫びたいのを猛烈に我慢していた。
な、何なの!?この豪華な並びは!!最高過ぎる!!
ま、不味い……。頭に血が登りすぎてフラフラしてきたわ……
「ルイーザ!?」
そして、興奮し過ぎた私は倒れてしまった――
◇
あれ?ここは……?
気が付くと、そこはベッドの上であった。
豪華なベッドてある所を見ると、ホステラーノ王国の客室なのだろう。
起き上がると、一人の侍女姿の女性がこちらを振り返った。
「あら、お目覚めになられましたか?」
ふわっと笑ったその侍女は
「ファ、ファニアちゃん!!」
「は、はい!」
驚いた顔で返事をしたファニアに、私は思った。
やっぱ、ヒロイン可愛いわぁ。
ファニアの可愛いさに、ルイーザが気の抜けた顔になっていると
「ルイーザ様、お加減は如何ですか?お医者様をお呼びしましょうか?」
と心配そうに聞かれて、ルイーザはハッとして淑女のキリッとした顔になると言った。
「いいえ、もう大丈夫よ」
それを聞いたファニアは、眉を下げて安心したように息を吐いた。
「はあ、良かったですわ。それでは、外にいる皆さんに、ルイーザ様がお目覚めになったとお教えしてきますわね。特にレオン王子はとてもご心配されておりましたから……」
そうか……、レオンはエヴァルト王子が何度も倒れているから、私が倒れてきっととても不安がっているわよね。
「大丈夫よ。私が直接行くわ」
そう言って、私は起き上がるとファニアちゃんに手伝って貰い身支度を整え始めた――
その頃、ルイーザがいる客室の扉の前には、心配してレオン、バシリオ、ゴートン、シーフスがルイーザが目覚めるのを待っていた。
しかし、そこは異様に重たい空気に包まれていた――
その重い空気の原因はレオンであった。
レオンはルイーザが倒れた事に激しく動揺していた。
ルイーザ!ルイーザ!!早く目覚めてくれ!お願いだから!
君に何かあったら、俺は……俺は……――
レオンを包む空気が重く黒く渦巻いていく。
その様を魔力を持つバシリオ王子は、何事かと注視し、眉を寄せて、いつでも剣を抜けるように気を張っていた。
シーフスは、無表情で闇に落ちかけているレオンの様子を伺っていた。
ゴートンは、この重い空気の原因が、レオンだと分からず、しかし、何かがおかしいと肌で感じており、落ち着かない様子で部屋の周りに異常がないかと確認していた。
そんな中、ルイーザが倒れたと聞いたリシェントが、急いだ様子でやって来た。
「ルイーザが倒れたって聞いたぞ!……って、おい!レオン!!」
レオンが黒い空気に包まれている事に驚いたリシェントは、すぐ様レオンの肩を掴んだ。
「おい!レオン!!しっかりしろ!!」
「リシェント……、ルイーザが倒れたんだ……」
無表情でそう言うレオンに、闇に食われるんじゃないかという恐ろしさを感じてリシェントは、一旦レオンから距離を取った。
「兄ちゃん!」
リシェントはその声に後ろを振り返ると、そこにはゴートンがいた。
「おい!ゴートン、これはどういう事だ!?レオンは一体どうしたんだ!?」
「レオン王子は、婚約者が倒れて心配して、落ち込んでいるようだね」
ゴートンには、それ以上はよく分からないという顔で言った。
「そうか……、お前は魔力がないんだったな」
リシェントは小さく呟くと、シーフスの方に視線を移した。
「シーフス、これはどういう事なんだ!?」
するとシーフスは小さく笑って言った。
「ああ、レオンは見ての通り闇に落ちかけている。ルイーザが倒れて闇に食われるようなら、やはりレオンは何も変わってなかったって事だ」
「お前!それ本気で言ってるのか!?」
「我はエルフだ。人間とは違う」
シーフスの冷淡な表情と言葉に、リシェントはシーフスにこれ以上何か言った所で仕方がないと、それ以上は何も言わなかった。
それよりもレオンだ。これまで魔力をコントロールする為に頑張っていたんだ。あと一年でルイーザと結婚するっていうのに……。
「レオン!お前、ルイーザと結婚するんだろう!?この先、お前がそんな事でルイーザを守っていけるのか!?」
「ルイーザを……守る……?」
「そうだよ!お前がルイーザを守るんだよ!」
ルイーザ……――
レオンは初めて、ルイーザに会った日の事を思い出していた。お母様が居なくなったばかりで落ち込んでいた時に、ルイーザと初めて出会って、あの時もルイーザは倒れてしまったっけ……。
それから、エヴァルトお兄様が毒に侵された時は、ルイーザが解毒草の事を教えてくれて、ムブルに乗って一緒に二人で取りに行ったんだ。
その後も、ルイーザが侍女やカルメラ王妃に怯む事なく立ち向かってくれたおかげで、お兄様に解毒草を飲ませる事が出来た。
あの時にはルイーザの事を可愛くて格好良い女の子だなって思って、もう好きになってた。だから、ルイーザが僕の事を支えたいって言ってくれて、凄く嬉しくて……婚約したいって初めてお父様に我儘を言ったんだ――
ルイーザと婚約してから、ルイーザと一緒にいられる時間が増えて嬉しくて、楽しくて、幸せだった。ルイーザと二人で王都に行った時だって、ルイーザは社会勉強の為だなんて言ってたけど、僕はデートのつもりで……。ラステックに追いかけられた時は焦ったけど、リシェントと仲良くなって、魔力の事を教えて貰う事が出来たんだ……――
レオンが今までのルイーザとの事を思い出していく度にレオンを包む闇が小さくなっていく。
もうすぐ、ルイーザと結婚する……。今度は僕がルイーザを守れるように強くなるんだ!!
レオンを包む闇が消えた瞬間、客室の扉が開いてルイーザが顔を出した。
「みんな心配させてしまったみたいで、ごめんなさい」
申し訳なさそうに言って笑ったルイーザをレオンは駆け出して、抱き締めた。
レオンの闇はすっかり消え去っていて、リシェントは大きく息を吐いた。
シーフスはレオンの闇が消えた事に楽しそうに笑い始めて、ゴートンはよくわからないが、釣られて一緒に笑っていた。
バシリオは、何かを乗り越えたらしいレオンに、剣を抜こうとしていた手を戻すと肩の力を抜いて、一息ついた。
すると、ファニアがそっとバシリオにハンカチを差し出した。
「よろしければ、汗を拭うのにお使い下さい」
そう言われて、バシリオは初めて自身が冷や汗をかくほど緊張していたのだと気が付いた。
「ああ、助かる」
そう言って、ファニアからハンカチを受け取ると、ファニアはふわっと微笑んだ。
その笑顔にバシリオも笑みを返したのだった。
「ごめんなさい。とっても心配させちゃったみたいで」
強くルイーザを抱きしめるレオンに、ルイーザは少々困惑しながらも優しく言って、レオンを抱き締め返した。すると、レオンは耳元でルイーザにだけ聞こえるように言った。
「ルイーザ、これからは僕が君を守るから、安心して」
その言葉にルイーザは、涙が溢れるのを感じた。
それは、もうレオンが悪の帝王にならないようにと頑張らなくて良いんだと言われたような気がしたからだ。
ああ……、レオンはもう大丈夫なんだね……。良かった――
ルイーザは、甘えるようにレオンの胸に頭を擦り付けて、「ありがとう」と小さく呟いたのだった――
◇
それから1年後、レオンとルイーザの結婚式が執り行われた――
結婚式には友人として、バシリオ王子も招待されていた。
そして、バシリオ王子の護衛でゴートンと侍女のファニアも一緒にきていた。
バシリオ王子とファニアちゃん、いつの間にか良い感じになってるわ!良かった!悪の帝王が居なくたって二人は上手くのね!
とルイーザは一人ホクホク顔で二人の様子を伺っていた。
そして、驚いたのが、ゴートンとリシェントが兄弟だったという事だ。ゴートンはリシェントを見つけると
「兄ちゃん、たまにはホステラーノにも来てくれよー」
と言って弟らしく甘えていた。なんでもリシェントは貴族の家を継ぐのが嫌で、デイヴィス家を飛び出して、世界各国を旅している内に商人になったそうなのだ。ただ、父親とは気まずいらしく、ホステラーノには余り行かないらしい。二人の関係を知った時はそんな、裏設定があったのか!!と興奮してしまった。
そして、ルイーザは皆の姿を見てこう思っていた。
やっぱり、真のハッピーエンドルートはレオンが悪の帝王にならないって事だったのだと――
ルイーザは、自身の隣にいるレオンを見上げる。――が、すぐに顔を逸してしまった。
ホステラーノ王国でルイーザが倒れた後から、ルイーザは前には感じなかった頼もしさをレオンに感じるようになっていた。そして、そんなレオンにルイーザは最近落ち着かない気持ちでいた。
最近、レオンが近くにいるだけでドキドキして落ち着かないのに、花婿姿のレオンは何時もより割増で格好良くて、全然顔を見れないわ。
「ルイーザ、どうしたの?疲れた?」
そんなルイーザの様子にレオンは敏感に反応する。
「う、ううん。なんでもないわ。大丈夫よ」
「本当に?少し、顔が赤いよ。あっちで休もう」
そう言って、レオンはルイーザをエスコートして、人気のない場所へ来ると、ルイーザを椅子に座らせた。
「何か、飲み物を持ってこようか?」
「ううん。大丈夫だから、ここに居て」
ルイーザは、レオンの服の袖を掴んで言うと、レオンの顔を見上げた。
あ、目が合っちゃった……
レオンと見つめ合うと、途端にルイーザはドキドキとして頬を赤くして顔を逸らしてしまう。
しかし、そんなルイーザの頬を優しくレオンの手が包んだ。
「ルイーザ、どうして今日は僕の顔を見てくれないの?」
ほ、ほら!前はこんな事言わなかったのに!
「ねえ……、どうして?」
レオンの綺麗な顔と色気のある声に、ルイーザは本音をポロリと溢してしまう。
「だ、だって……格好良くてドキドキしてしまうから」
その言葉にレオンは嬉しそうに微笑むと、ルイーザの顔を優しく上に向けて、口付けたのだった――
そんな二人の姿を離れた所でムブルとシーフスが祝福していた。
「グルグ、グー」《今回は、レオンが闇落ちしなかったぞ。ルイーザはまるでレオンが悪の帝王になる事を知っているかのような回避術だったな》
「ルイーザは夢見が出来るようだよ。もしかしたら、レオンが違う姿になる夢も見た事があったんじゃないのか?それとも我らのようにいくつもの違うルートを知っているとか?我らは人間とは違う時間軸で過ごしているからな。しかし、今回は格別に面白かった」
「グルルル」《レオンが幸せなら俺はそれでいい》
「お前は本当にレオンが好きなんだな」
そんな話しをムブルとシーフスがしているとは知らず、口付けしているのを見られた事に慌てたルイーザは、真っ赤になってレオンに抗議するのであった――
fin
「ここは、我らがホステラーノ王国が誇る騎士団の訓練場だよ」
そこには、剣術の稽古をする騎士達がいて、その中に赤い髪の騎士、ゴートンがいた。
ゴートンだわ!
それにしても、改めて見てもやっぱりゴートンとリシェントって似てるわね。
リシェントもちょうどホステラーノ王国で仕事があるからと、私達と一緒にホステラーノ王国にやってきていた。
私達がホステラーノ国王に挨拶に行くというと、仕事があるからとフラフラ何処かへ消えてしまったけれど……。
私達が騎士団の訓練を見ているとバシリオ王子が手を上げて訓練を止めて、ゴートンを呼ぶ。
「彼は、騎士団で1番強いと言われているゴートン・デイヴィスだ」
「はじめまして」
ゴートンは爽やかに笑った。
ああ、ゲーム画面越しに見たゴートンの笑顔が目の前に!!
レオンにバシリオ王子、ゴートンが同じ場所で談笑してるとかどんな奇跡よ!
「ああ、ここにシーフスが居てくれたら最高なのに……」
ルイーザが小さく呟いた瞬間、ルイーザの肩に手が置かれた。
「呼んだか?」
声に驚いて、後ろを振り返るとそこには7年前と変わらぬ姿のシーフスがいた。
「シーフス、どうしてここに!?」
「いや、何か面白い事がありそうだと思って、最近、エルフの里を出てホステラーノ王国に来ていたんだ」
「そ、そうなの?」
確かに、シーフスはゲームでもファニアちゃんが聖女に目覚めると、エルフ里を出てホステラーノ王国に来ていたから、エルフにはそういう勘があるのかもしれない。
「ルイーザ嬢は、シーフス殿と知り合いなのか?」
「え、ええ。レオンと前にお世話になった事があって……」
と言いながら、私は4人が並ぶ様を見て叫びたいのを猛烈に我慢していた。
な、何なの!?この豪華な並びは!!最高過ぎる!!
ま、不味い……。頭に血が登りすぎてフラフラしてきたわ……
「ルイーザ!?」
そして、興奮し過ぎた私は倒れてしまった――
◇
あれ?ここは……?
気が付くと、そこはベッドの上であった。
豪華なベッドてある所を見ると、ホステラーノ王国の客室なのだろう。
起き上がると、一人の侍女姿の女性がこちらを振り返った。
「あら、お目覚めになられましたか?」
ふわっと笑ったその侍女は
「ファ、ファニアちゃん!!」
「は、はい!」
驚いた顔で返事をしたファニアに、私は思った。
やっぱ、ヒロイン可愛いわぁ。
ファニアの可愛いさに、ルイーザが気の抜けた顔になっていると
「ルイーザ様、お加減は如何ですか?お医者様をお呼びしましょうか?」
と心配そうに聞かれて、ルイーザはハッとして淑女のキリッとした顔になると言った。
「いいえ、もう大丈夫よ」
それを聞いたファニアは、眉を下げて安心したように息を吐いた。
「はあ、良かったですわ。それでは、外にいる皆さんに、ルイーザ様がお目覚めになったとお教えしてきますわね。特にレオン王子はとてもご心配されておりましたから……」
そうか……、レオンはエヴァルト王子が何度も倒れているから、私が倒れてきっととても不安がっているわよね。
「大丈夫よ。私が直接行くわ」
そう言って、私は起き上がるとファニアちゃんに手伝って貰い身支度を整え始めた――
その頃、ルイーザがいる客室の扉の前には、心配してレオン、バシリオ、ゴートン、シーフスがルイーザが目覚めるのを待っていた。
しかし、そこは異様に重たい空気に包まれていた――
その重い空気の原因はレオンであった。
レオンはルイーザが倒れた事に激しく動揺していた。
ルイーザ!ルイーザ!!早く目覚めてくれ!お願いだから!
君に何かあったら、俺は……俺は……――
レオンを包む空気が重く黒く渦巻いていく。
その様を魔力を持つバシリオ王子は、何事かと注視し、眉を寄せて、いつでも剣を抜けるように気を張っていた。
シーフスは、無表情で闇に落ちかけているレオンの様子を伺っていた。
ゴートンは、この重い空気の原因が、レオンだと分からず、しかし、何かがおかしいと肌で感じており、落ち着かない様子で部屋の周りに異常がないかと確認していた。
そんな中、ルイーザが倒れたと聞いたリシェントが、急いだ様子でやって来た。
「ルイーザが倒れたって聞いたぞ!……って、おい!レオン!!」
レオンが黒い空気に包まれている事に驚いたリシェントは、すぐ様レオンの肩を掴んだ。
「おい!レオン!!しっかりしろ!!」
「リシェント……、ルイーザが倒れたんだ……」
無表情でそう言うレオンに、闇に食われるんじゃないかという恐ろしさを感じてリシェントは、一旦レオンから距離を取った。
「兄ちゃん!」
リシェントはその声に後ろを振り返ると、そこにはゴートンがいた。
「おい!ゴートン、これはどういう事だ!?レオンは一体どうしたんだ!?」
「レオン王子は、婚約者が倒れて心配して、落ち込んでいるようだね」
ゴートンには、それ以上はよく分からないという顔で言った。
「そうか……、お前は魔力がないんだったな」
リシェントは小さく呟くと、シーフスの方に視線を移した。
「シーフス、これはどういう事なんだ!?」
するとシーフスは小さく笑って言った。
「ああ、レオンは見ての通り闇に落ちかけている。ルイーザが倒れて闇に食われるようなら、やはりレオンは何も変わってなかったって事だ」
「お前!それ本気で言ってるのか!?」
「我はエルフだ。人間とは違う」
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それよりもレオンだ。これまで魔力をコントロールする為に頑張っていたんだ。あと一年でルイーザと結婚するっていうのに……。
「レオン!お前、ルイーザと結婚するんだろう!?この先、お前がそんな事でルイーザを守っていけるのか!?」
「ルイーザを……守る……?」
「そうだよ!お前がルイーザを守るんだよ!」
ルイーザ……――
レオンは初めて、ルイーザに会った日の事を思い出していた。お母様が居なくなったばかりで落ち込んでいた時に、ルイーザと初めて出会って、あの時もルイーザは倒れてしまったっけ……。
それから、エヴァルトお兄様が毒に侵された時は、ルイーザが解毒草の事を教えてくれて、ムブルに乗って一緒に二人で取りに行ったんだ。
その後も、ルイーザが侍女やカルメラ王妃に怯む事なく立ち向かってくれたおかげで、お兄様に解毒草を飲ませる事が出来た。
あの時にはルイーザの事を可愛くて格好良い女の子だなって思って、もう好きになってた。だから、ルイーザが僕の事を支えたいって言ってくれて、凄く嬉しくて……婚約したいって初めてお父様に我儘を言ったんだ――
ルイーザと婚約してから、ルイーザと一緒にいられる時間が増えて嬉しくて、楽しくて、幸せだった。ルイーザと二人で王都に行った時だって、ルイーザは社会勉強の為だなんて言ってたけど、僕はデートのつもりで……。ラステックに追いかけられた時は焦ったけど、リシェントと仲良くなって、魔力の事を教えて貰う事が出来たんだ……――
レオンが今までのルイーザとの事を思い出していく度にレオンを包む闇が小さくなっていく。
もうすぐ、ルイーザと結婚する……。今度は僕がルイーザを守れるように強くなるんだ!!
レオンを包む闇が消えた瞬間、客室の扉が開いてルイーザが顔を出した。
「みんな心配させてしまったみたいで、ごめんなさい」
申し訳なさそうに言って笑ったルイーザをレオンは駆け出して、抱き締めた。
レオンの闇はすっかり消え去っていて、リシェントは大きく息を吐いた。
シーフスはレオンの闇が消えた事に楽しそうに笑い始めて、ゴートンはよくわからないが、釣られて一緒に笑っていた。
バシリオは、何かを乗り越えたらしいレオンに、剣を抜こうとしていた手を戻すと肩の力を抜いて、一息ついた。
すると、ファニアがそっとバシリオにハンカチを差し出した。
「よろしければ、汗を拭うのにお使い下さい」
そう言われて、バシリオは初めて自身が冷や汗をかくほど緊張していたのだと気が付いた。
「ああ、助かる」
そう言って、ファニアからハンカチを受け取ると、ファニアはふわっと微笑んだ。
その笑顔にバシリオも笑みを返したのだった。
「ごめんなさい。とっても心配させちゃったみたいで」
強くルイーザを抱きしめるレオンに、ルイーザは少々困惑しながらも優しく言って、レオンを抱き締め返した。すると、レオンは耳元でルイーザにだけ聞こえるように言った。
「ルイーザ、これからは僕が君を守るから、安心して」
その言葉にルイーザは、涙が溢れるのを感じた。
それは、もうレオンが悪の帝王にならないようにと頑張らなくて良いんだと言われたような気がしたからだ。
ああ……、レオンはもう大丈夫なんだね……。良かった――
ルイーザは、甘えるようにレオンの胸に頭を擦り付けて、「ありがとう」と小さく呟いたのだった――
◇
それから1年後、レオンとルイーザの結婚式が執り行われた――
結婚式には友人として、バシリオ王子も招待されていた。
そして、バシリオ王子の護衛でゴートンと侍女のファニアも一緒にきていた。
バシリオ王子とファニアちゃん、いつの間にか良い感じになってるわ!良かった!悪の帝王が居なくたって二人は上手くのね!
とルイーザは一人ホクホク顔で二人の様子を伺っていた。
そして、驚いたのが、ゴートンとリシェントが兄弟だったという事だ。ゴートンはリシェントを見つけると
「兄ちゃん、たまにはホステラーノにも来てくれよー」
と言って弟らしく甘えていた。なんでもリシェントは貴族の家を継ぐのが嫌で、デイヴィス家を飛び出して、世界各国を旅している内に商人になったそうなのだ。ただ、父親とは気まずいらしく、ホステラーノには余り行かないらしい。二人の関係を知った時はそんな、裏設定があったのか!!と興奮してしまった。
そして、ルイーザは皆の姿を見てこう思っていた。
やっぱり、真のハッピーエンドルートはレオンが悪の帝王にならないって事だったのだと――
ルイーザは、自身の隣にいるレオンを見上げる。――が、すぐに顔を逸してしまった。
ホステラーノ王国でルイーザが倒れた後から、ルイーザは前には感じなかった頼もしさをレオンに感じるようになっていた。そして、そんなレオンにルイーザは最近落ち着かない気持ちでいた。
最近、レオンが近くにいるだけでドキドキして落ち着かないのに、花婿姿のレオンは何時もより割増で格好良くて、全然顔を見れないわ。
「ルイーザ、どうしたの?疲れた?」
そんなルイーザの様子にレオンは敏感に反応する。
「う、ううん。なんでもないわ。大丈夫よ」
「本当に?少し、顔が赤いよ。あっちで休もう」
そう言って、レオンはルイーザをエスコートして、人気のない場所へ来ると、ルイーザを椅子に座らせた。
「何か、飲み物を持ってこようか?」
「ううん。大丈夫だから、ここに居て」
ルイーザは、レオンの服の袖を掴んで言うと、レオンの顔を見上げた。
あ、目が合っちゃった……
レオンと見つめ合うと、途端にルイーザはドキドキとして頬を赤くして顔を逸らしてしまう。
しかし、そんなルイーザの頬を優しくレオンの手が包んだ。
「ルイーザ、どうして今日は僕の顔を見てくれないの?」
ほ、ほら!前はこんな事言わなかったのに!
「ねえ……、どうして?」
レオンの綺麗な顔と色気のある声に、ルイーザは本音をポロリと溢してしまう。
「だ、だって……格好良くてドキドキしてしまうから」
その言葉にレオンは嬉しそうに微笑むと、ルイーザの顔を優しく上に向けて、口付けたのだった――
そんな二人の姿を離れた所でムブルとシーフスが祝福していた。
「グルグ、グー」《今回は、レオンが闇落ちしなかったぞ。ルイーザはまるでレオンが悪の帝王になる事を知っているかのような回避術だったな》
「ルイーザは夢見が出来るようだよ。もしかしたら、レオンが違う姿になる夢も見た事があったんじゃないのか?それとも我らのようにいくつもの違うルートを知っているとか?我らは人間とは違う時間軸で過ごしているからな。しかし、今回は格別に面白かった」
「グルルル」《レオンが幸せなら俺はそれでいい》
「お前は本当にレオンが好きなんだな」
そんな話しをムブルとシーフスがしているとは知らず、口付けしているのを見られた事に慌てたルイーザは、真っ赤になってレオンに抗議するのであった――
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先代竜王に真の番が現れてからは虐げられる日々、その末に追放され、非業の死を遂げたエリスティナ。
普通の平民に生まれ変わったエリスティナ、改めエリナは強く心に決めている。
「もう二度と、竜種とかかわらないで生きていこう!」
たったひとつ、心残りは前世で捨てられていた卵から孵ったはちみつ色の髪をした竜種の雛のこと。クリスと名付け、かわいがっていたその少年のことだけが忘れられない。
そんなある日、エリナのもとへ、今代竜王の遣いがやってくる。
はちみつ色の髪をした竜王曰く。
「あなたが、僕の運命の番だからです。エリナ。愛しいひと」
番なんてもうこりごり、そんなエリナとエリナを一身に愛する竜王のラブロマンス・ファンタジー!
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ほんわか優しいストーリーで、ランキング上位に殺伐としたお話が多い中、非常に癒されました。
スルーされ続ける少年に萌えました。
恋のテクニックもお勉強してるの、可愛すぎました。
感想ありがとうございます!
癒しになれて嬉しいです(^o^)
優しいお話で面白かったです。ありがとうございました❗️
ご感想頂けて、嬉しいです!
ありがとうございます!
12話
一気読み中。
ひとまず、誤字報告を。
誤→ 「はあ、せめてシーフスがホステ
ラーノの国に居てくれたるなぁ」
正→ 「はあ、せめてシーフスがホステ
ラーノの国に居てくれたらなぁ」
誤字報告、ありがとうございます!
修正しました!