異世界貴族は家柄と共に! 〜悪役貴族に転生したので、成り上がり共を潰します〜

スクールH

文字の大きさ
49 / 188
少年編 3.5章

第49話 主人公⑦ (リリス視点)

しおりを挟む
「・・・ろ。おい、起きろ」
[おい、起きろ!]

外からは師匠の中からは誰かの声が聞こえる。

「おい、どうしてあんな事になったか説明してもらうぞ」
[おい、君が誰なのか教えてもらうぞ]

目を開けようと力を入れるが、途端に頭痛がして顔を顰める。

[おい、大丈夫か!おい、ババア。早く治癒してやれ]
「ババアじゃないし!」

そんな会話が終わると同時に温かい何かに包み込まれる感覚になる。
体の節々の痛みがなくなり全身に力が戻る。

「おい、意識はあるか!」
[大丈夫だ、意識はある]

「・・・・・・は!」

私は思いっきり目を開けた。
そこはいつもの家、いつもの部屋。

「おい、本当に大丈夫か?」

女性にしては低い師匠の声がした方を向く。
声を聞き、師匠の姿を見た私の目から涙が溢れる。

「・・・我なんかやったか?」
[女子を泣かすなんて!]
「我も女だ!」

コントのような会話を他所に、私は嗚咽を吐きながら泣く。ベットにうずくまり、大きな声を上げて。

「本当に大丈夫か?」
「う”う”、は”い”、だい”丈夫でず」

嗚咽が止まらないせいでうまく喋れない。

「どうして泣くんだ?」
「だって、だって、怖くて」

今度こそ死ぬかも知れない。

そうあの時は何度も思った。

新しい人生が始まったというのに、自分がどれだけ無力だったのか実感させられた。

私が泣き止まないのを見て、師匠が優しく抱きしめてくれる。

「怖かっただろう、よく頑張った。お前は凄い。だから、泣き止め」

頭を優しく撫でてくれる。ここ数年、経験したことのない温もり。

「すいませ”ん”」
「大丈夫だ、落ち着け」

ここが新しい家、帰る場所。

そう思うと先程までの恐怖が和らぐ。

私は心配そうにこちらを見る師匠に笑いかける。すると心の中に不満そうな声色でだれかに話しかけてくる。

[おい、くだらない家族ごっこは終わったか?]

私は場違いで生意気な言葉を無視して師匠に質問する。

「あの後どうなったんですか?」

[無視するな!]


「お前が重症を負わせたおかげで楽に倒せたよ。あの後お前は気絶したから覚えていないだろうけど」

[おい、ババアも無視するな!]

「でもどうして師匠は私の居場所が分かったのですか?」
「それはだな―」

師匠は目を瞑り、唱えた。

[出てきて]

すると私の着ていた服の右ポケットから黄色い精霊が出てきた。

「この子に見守ってもらっていたんだ。精霊術士は精霊と意思疎通できるからこの子に教えてもらって急いで向かったのよ。」
「そうなんですね。・・そういえば先程聞こえた 出てきて という言葉は?」
「それが精霊語よ。貴方もわかるようになったのね」
「ええ・・・まああ」

私と師匠の目が、先程からウザったらしく私達の周囲を旋回する銀色の玉に行く。

[やっと僕の方を見てくれたな]

「あいつが?」
「まあ、一応、恐らく、たぶん・・・私が契約をしました」

[ちゃんと契約したぞ!]
「でも、あの時と色変わってない?七色だったよ」
[そうなのか?僕は覚えてないが]

私達が疑問に思っていると師匠が何やら考え込んでいた。

「師匠は何か分かりますか」

私が聞くと、軽く首をふる。

「いいや、何でも無い。それより、その精霊についてだが、」
[よし、自己紹介だな!僕の名前はクロノス、時空の精霊だ]

「!そうだ、クロって呼んだんだった!」
[変なあだ名を付けるな!猫じゃないぞ]
「駄目?クロ~」
[・・・好きに呼べ]

一応はあだ名を気に入ってくれたらしい。

「で、どうして時空の精霊がリリスと契約したの?」

何時になく鋭い表情でクロを掴む。

[お、おい、精霊をもっと大事に扱え]
「人をババア呼ばわりするような精霊は雑に扱う」

ババア呼ばわりされて怒っているのか師匠は掴みながら振り回す。
そりゃ~見た目からして二十代の人をババア呼ばわりしたら怒られる。

[は、話すから、振り回さないでくれ!]
「大丈夫だ、このままでも話せるだろう」
[お、鬼が!]
「さあ、早く話せ」
[わ、分かった!ていうか話すこと無いし。ただ、気づいたら僕はあの場にいて、そこの精霊術士を呼ばなければいけない気がしたんだ!それだけだ。あとは狼男がいたかぐらいだよ!]

全て話し終わると、師匠の手が止まる。

「新生精霊なのか?」
[さあ、僕にも分からん]
「そうか」

師匠が手を話すと、勢いよく私の後ろに隠れる。

[ああ、怖かった。お、そうだ名前を聞いていなかったな。君の名前は?]

クロが私に聞く。

「私の名前はリリス、ただのリリスよ。よろしく、クロ」
[ああ、よろしく]

私が拳を前に出すと、クロが寄って上に乗る。

私は拳を出した意味を分かっていない姿を見て、思わず噴いてしまう。

気づけば、私の中にあったあの恐怖が完全に無くなっていた。




こうして私は精霊術士になった。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。 《作者からのお知らせ!》 ※2025/11月中旬、  辺境領主の3巻が刊行となります。 今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。 【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん! ※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

俺、何しに異世界に来たんだっけ?

右足の指
ファンタジー
「目的?チートスキル?…なんだっけ。」 主人公は、転生の儀に見事に失敗し、爆散した。 気づいた時には見知らぬ部屋、見知らぬ空間。その中で佇む、美しい自称女神の女の子…。 「あなたに、お願いがあります。どうか…」 そして体は宙に浮き、見知らぬ方陣へと消え去っていく…かに思えたその瞬間、空間内をとてつもない警報音が鳴り響く。周りにいた羽の生えた天使さんが騒ぎたて、なんだかポカーンとしている自称女神、その中で突然と身体がグチャグチャになりながらゆっくり方陣に吸い込まれていく主人公…そして女神は確信し、呟いた。 「やべ…失敗した。」 女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!

勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる! ×ランクだと思ってたギフトは、オレだけ使える無敵の能力でした

赤白玉ゆずる
ファンタジー
【コミックス第2巻発売中です!】 逞しく成長したリューク、そしてジーナ、ユフィオ、キスティーが大活躍します! 皆様どうぞよろしくお願いいたします。 【書籍第3巻が発売されました!】 今回も改稿や修正を頑張りましたので、皆様どうぞよろしくお願いいたします。 イラストは蓮禾先生が担当してくださいました。アニスもレムも超カワで、表紙もカッコイイです! 素晴らしいイラストの数々が載っておりますので、是非見ていただけたら嬉しいです。 【2024年10月23日コミカライズ開始!】 『勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる!』のコミカライズが連載開始されました! 颯希先生が描いてくださるリュークやアニスたちが本当に素敵なので、是非ご覧になってくださいませ。 【ストーリー紹介】 幼い頃、孤児院から引き取られた主人公リュークは、養父となった侯爵から酷い扱いを受けていた。 そんなある日、リュークは『スマホ』という史上初の『Xランク』スキルを授かる。 養父は『Xランク』をただの『バツランク』だと馬鹿にし、リュークをきつくぶん殴ったうえ、親子の縁を切って家から追い出す。 だが本当は『Extraランク』という意味で、超絶ぶっちぎりの能力を持っていた。 『スマホ』の能力――それは鑑定、検索、マップ機能、動物の言葉が翻訳ができるほか、他人やモンスターの持つスキル・魔法などをコピーして取得が可能なうえ、写真に撮ったものを現物として出せたり、合成することで強力な魔導装備すら製作できる最凶のものだった。 貴族家から放り出されたリュークは、朱鷺色の髪をした天才美少女剣士アニスと出会う。 『剣姫』の二つ名を持つアニスは雲の上の存在だったが、『スマホ』の力でリュークは成り上がり、徐々にその関係は接近していく。 『スマホ』はリュークの成長とともにさらに進化し、最弱の男はいつしか世界最強の存在へ……。 どん底だった主人公が一発逆転する物語です。 ※別小説『ぶっ壊れ錬金術師(チート・アルケミスト)はいつか本気を出してみたい 魔導と科学を極めたら異世界最強になったので、自由気ままに生きていきます』も書いてますので、そちらもどうぞよろしくお願いいたします。

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

異世界で目が覚めたら目の前で俺が死んでました。この世界でオリジナルの俺はとっくに死んでたみたいです

青山喜太
ファンタジー
主人公桜間トオル17歳は家族との旅行中、車の中ではなく突然なんの脈絡もなく遺跡の中で目が覚めてしまう。 混乱する桜間トオルの目の前にいたのは自分と瓜二つ、服装さえ一緒のもう一人の桜間トオルだった。 もう一人の桜間トオルは全身から出血し血を吐きながら、乞う。 「父さんと、母さん……妹をアカリを頼む……!!」 思わず、頷いた桜間トオルはもう一人の自分の最後を看取った。 その時、見知らぬ声が響く。 「私のことがわかるか? 13人の桜間トオル?」 これはただの高校生である桜間トオルが英雄たちとの戦争に巻き込まれていく物語

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

処理中です...