異世界貴族は家柄と共に! 〜悪役貴族に転生したので、成り上がり共を潰します〜

スクールH

文字の大きさ
157 / 188
留学編 2章

第157話 世話係 (アルス視点)

しおりを挟む
「アルス、お前にこいつの世話係を命じるぞ!」

そう言ってルイ兄様、レーナ、セバスさんは部屋から出ていった。

「な、何で自分がやらなくちゃ・・・」

そう嘆くしかなかった。

ただでさえ他の仕事で忙しいのに、この子の世話となると・・・

今後の事をいろいろ考えながら自分は近くの椅子に座って少女をぼんやりと眺めた。

・・・それにしても、執事のセバスさんがまさかブルボン家の裏組織を指揮していたなんて。

確かにそう言われてみればいくつか不可解な点はあったけれど、自分はそれを見破ることができなかった。

「流石は、ルイ兄様だ!」

自分は誇らし気に呟いた。

色々とめんどくさい主人であり、兄でもあるが、やっぱりカッコいいな。

いざという時には、しっかりとその実力を見せてくれる。

「う、ううっ!」

ルイ兄様のことを考えていたら、ベッドで眠る少女からうめき声がした。

自分は敢えて声をかけず、彼女が起きるまでじっと待った。


さらに1時間後。

自分もウトウト眠くなってきた頃、微かな声が耳に入った。

「こ、ここは・・・?」

すぐに眠気を振り払い、ベッドのそばに行く。

少女の顔を覗き込むと、うっすらと両目を開けていた。

その目尻には涙の跡が。

「起きられたようですね。ここは、フランシーダ帝国ブルボン公爵家嫡男、ルイ・デ・ブルボン様のアメルダ民主国でのお屋敷です」

自分は敢えてちゃんと説明した。

だが意外にも、「ブルボン公爵家」という言葉にはなんの反応もしなかった。

寝ぼけているだけなのか、それとも記憶喪失なのか、或いはただ単に忘れてしまっただけなのか?

とりあえず、話を続ける。

「貴方は奴隷としてルイ兄様に購入されました。今日から貴方は、正式なブルボン家の奴隷です」

・・・とは告げてみたものの、奴隷として彼女にできる労働など無い。

ルイ兄様は、セバスさんの”弱み”として購入しただけ。

四肢を失った彼女が奴隷として働くことができない以上、この屋敷でも浮いた存在になる。

「ニャーが奴隷?」

ニャー?不思議な一人称だ。猫系の獣人だからか?

「仕事は今のところありません。失礼ですがその手足では・・・」
「手足?」

自分は小さな過ちを犯してしまった。

「あれ?ニャーの手足はどこ?どうして?ねえ、どうしてないの?あれ?ニャーのかあさまは、とうさまはどこ?なんで?ねえ、なんでいないの!どうして、なんで・・・」

その声はどんどんと大きくなっていく。

屋敷全体に響かないよう、咄嗟に防音魔法をこの部屋に展開する。

そして椅子に戻り、彼女が落ち着きを取り戻して再び眠りにつくのを待つ。

こういう精神が壊れかけている人物は、しばらく叫んだり暴れたりして感情を吐き出せば、落ち着くのは知っている。

昔、ルイ兄様の目を盗んでレーナがそうやっていたことを自分は憶えているし、自分もブルボン家に来た当初はひたすら泣いていたものだ。

彼女の気持ちまでは理解してあげられない。

でも、多少の共感ぐらいはできる。

一人ぼっちになる悲しさ、何かを失ったときの喪失感。

そういう感情は誰だって知っているから・・・ルイ兄様以外は・・・

とりあえず、自分の耳にも防音魔法を展開した。

一人でいたい時もあるが、今の彼女は一人にしておくのはまずい状態だ。

なるべく自分の存在を消しながら見守らなければならない。

自分は椅子に深く腰かけ、彼女の挙動に注意を払いながらも、いつしか眠りについていた。


翌朝、目が覚めると、彼女は目を腫らしながら寝ていた。

ベッドにはもがいた痕跡があり、ここから逃げ出そうとしていたことが分かる。

おそらく起きたらまた暴れるだろう。

そう思い、今日は学校も他の仕事も休むことに決めた。

任された任務だし、何より昔の自分と少しリンクする部分も感じてほっておけなかった。

「どうだった?」

不意に背後からレーナの声がした。

おそらく起こさないよう音を立てずにこの部屋に入ってきたのだろう。

「昨夜は暴れ疲れて眠ったと思う」
「まあ、そうよね。普通は・・・」

自身も奴隷として親に売られ、知らない赤の他人に購入された経験を持つレーナが、そう寂しそうに言った。

「貴方は学校を休んで、その子の側にいてあげて。他の事も私がやっておくから」
「ああ。言われなくてもそうするつもりだった。ありがとう、レーナ」

しばし二人の間に沈黙が流れる。

「・・・・こういう子は常に寄り添って話を聞いてあげないと駄目よ。まずは自分の価値観を押し付けず、少しずつ、少しずつ、心を開かせるの。元経験者からの助言よ」

そう言い残して、レーナは部屋から出ていった。

レーナの言っていることは分かっている。

何時間、何日かかっても良い。

そう肚を決めて、少女が起きるのを待った。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。 《作者からのお知らせ!》 ※2025/11月中旬、  辺境領主の3巻が刊行となります。 今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。 【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん! ※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

俺、何しに異世界に来たんだっけ?

右足の指
ファンタジー
「目的?チートスキル?…なんだっけ。」 主人公は、転生の儀に見事に失敗し、爆散した。 気づいた時には見知らぬ部屋、見知らぬ空間。その中で佇む、美しい自称女神の女の子…。 「あなたに、お願いがあります。どうか…」 そして体は宙に浮き、見知らぬ方陣へと消え去っていく…かに思えたその瞬間、空間内をとてつもない警報音が鳴り響く。周りにいた羽の生えた天使さんが騒ぎたて、なんだかポカーンとしている自称女神、その中で突然と身体がグチャグチャになりながらゆっくり方陣に吸い込まれていく主人公…そして女神は確信し、呟いた。 「やべ…失敗した。」 女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!

勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる! ×ランクだと思ってたギフトは、オレだけ使える無敵の能力でした

赤白玉ゆずる
ファンタジー
【コミックス第2巻発売中です!】 逞しく成長したリューク、そしてジーナ、ユフィオ、キスティーが大活躍します! 皆様どうぞよろしくお願いいたします。 【書籍第3巻が発売されました!】 今回も改稿や修正を頑張りましたので、皆様どうぞよろしくお願いいたします。 イラストは蓮禾先生が担当してくださいました。アニスもレムも超カワで、表紙もカッコイイです! 素晴らしいイラストの数々が載っておりますので、是非見ていただけたら嬉しいです。 【2024年10月23日コミカライズ開始!】 『勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる!』のコミカライズが連載開始されました! 颯希先生が描いてくださるリュークやアニスたちが本当に素敵なので、是非ご覧になってくださいませ。 【ストーリー紹介】 幼い頃、孤児院から引き取られた主人公リュークは、養父となった侯爵から酷い扱いを受けていた。 そんなある日、リュークは『スマホ』という史上初の『Xランク』スキルを授かる。 養父は『Xランク』をただの『バツランク』だと馬鹿にし、リュークをきつくぶん殴ったうえ、親子の縁を切って家から追い出す。 だが本当は『Extraランク』という意味で、超絶ぶっちぎりの能力を持っていた。 『スマホ』の能力――それは鑑定、検索、マップ機能、動物の言葉が翻訳ができるほか、他人やモンスターの持つスキル・魔法などをコピーして取得が可能なうえ、写真に撮ったものを現物として出せたり、合成することで強力な魔導装備すら製作できる最凶のものだった。 貴族家から放り出されたリュークは、朱鷺色の髪をした天才美少女剣士アニスと出会う。 『剣姫』の二つ名を持つアニスは雲の上の存在だったが、『スマホ』の力でリュークは成り上がり、徐々にその関係は接近していく。 『スマホ』はリュークの成長とともにさらに進化し、最弱の男はいつしか世界最強の存在へ……。 どん底だった主人公が一発逆転する物語です。 ※別小説『ぶっ壊れ錬金術師(チート・アルケミスト)はいつか本気を出してみたい 魔導と科学を極めたら異世界最強になったので、自由気ままに生きていきます』も書いてますので、そちらもどうぞよろしくお願いいたします。

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

異世界で目が覚めたら目の前で俺が死んでました。この世界でオリジナルの俺はとっくに死んでたみたいです

青山喜太
ファンタジー
主人公桜間トオル17歳は家族との旅行中、車の中ではなく突然なんの脈絡もなく遺跡の中で目が覚めてしまう。 混乱する桜間トオルの目の前にいたのは自分と瓜二つ、服装さえ一緒のもう一人の桜間トオルだった。 もう一人の桜間トオルは全身から出血し血を吐きながら、乞う。 「父さんと、母さん……妹をアカリを頼む……!!」 思わず、頷いた桜間トオルはもう一人の自分の最後を看取った。 その時、見知らぬ声が響く。 「私のことがわかるか? 13人の桜間トオル?」 これはただの高校生である桜間トオルが英雄たちとの戦争に巻き込まれていく物語

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

処理中です...