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留学編 2章
第157話 世話係 (アルス視点)
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「アルス、お前にこいつの世話係を命じるぞ!」
そう言ってルイ兄様、レーナ、セバスさんは部屋から出ていった。
「な、何で自分がやらなくちゃ・・・」
そう嘆くしかなかった。
ただでさえ他の仕事で忙しいのに、この子の世話となると・・・
今後の事をいろいろ考えながら自分は近くの椅子に座って少女をぼんやりと眺めた。
・・・それにしても、執事のセバスさんがまさかブルボン家の裏組織を指揮していたなんて。
確かにそう言われてみればいくつか不可解な点はあったけれど、自分はそれを見破ることができなかった。
「流石は、ルイ兄様だ!」
自分は誇らし気に呟いた。
色々とめんどくさい主人であり、兄でもあるが、やっぱりカッコいいな。
いざという時には、しっかりとその実力を見せてくれる。
「う、ううっ!」
ルイ兄様のことを考えていたら、ベッドで眠る少女からうめき声がした。
自分は敢えて声をかけず、彼女が起きるまでじっと待った。
さらに1時間後。
自分もウトウト眠くなってきた頃、微かな声が耳に入った。
「こ、ここは・・・?」
すぐに眠気を振り払い、ベッドのそばに行く。
少女の顔を覗き込むと、うっすらと両目を開けていた。
その目尻には涙の跡が。
「起きられたようですね。ここは、フランシーダ帝国ブルボン公爵家嫡男、ルイ・デ・ブルボン様のアメルダ民主国でのお屋敷です」
自分は敢えてちゃんと説明した。
だが意外にも、「ブルボン公爵家」という言葉にはなんの反応もしなかった。
寝ぼけているだけなのか、それとも記憶喪失なのか、或いはただ単に忘れてしまっただけなのか?
とりあえず、話を続ける。
「貴方は奴隷としてルイ兄様に購入されました。今日から貴方は、正式なブルボン家の奴隷です」
・・・とは告げてみたものの、奴隷として彼女にできる労働など無い。
ルイ兄様は、セバスさんの”弱み”として購入しただけ。
四肢を失った彼女が奴隷として働くことができない以上、この屋敷でも浮いた存在になる。
「ニャーが奴隷?」
ニャー?不思議な一人称だ。猫系の獣人だからか?
「仕事は今のところありません。失礼ですがその手足では・・・」
「手足?」
自分は小さな過ちを犯してしまった。
「あれ?ニャーの手足はどこ?どうして?ねえ、どうしてないの?あれ?ニャーのかあさまは、とうさまはどこ?なんで?ねえ、なんでいないの!どうして、なんで・・・」
その声はどんどんと大きくなっていく。
屋敷全体に響かないよう、咄嗟に防音魔法をこの部屋に展開する。
そして椅子に戻り、彼女が落ち着きを取り戻して再び眠りにつくのを待つ。
こういう精神が壊れかけている人物は、しばらく叫んだり暴れたりして感情を吐き出せば、落ち着くのは知っている。
昔、ルイ兄様の目を盗んでレーナがそうやっていたことを自分は憶えているし、自分もブルボン家に来た当初はひたすら泣いていたものだ。
彼女の気持ちまでは理解してあげられない。
でも、多少の共感ぐらいはできる。
一人ぼっちになる悲しさ、何かを失ったときの喪失感。
そういう感情は誰だって知っているから・・・ルイ兄様以外は・・・
とりあえず、自分の耳にも防音魔法を展開した。
一人でいたい時もあるが、今の彼女は一人にしておくのはまずい状態だ。
なるべく自分の存在を消しながら見守らなければならない。
自分は椅子に深く腰かけ、彼女の挙動に注意を払いながらも、いつしか眠りについていた。
翌朝、目が覚めると、彼女は目を腫らしながら寝ていた。
ベッドにはもがいた痕跡があり、ここから逃げ出そうとしていたことが分かる。
おそらく起きたらまた暴れるだろう。
そう思い、今日は学校も他の仕事も休むことに決めた。
任された任務だし、何より昔の自分と少しリンクする部分も感じてほっておけなかった。
「どうだった?」
不意に背後からレーナの声がした。
おそらく起こさないよう音を立てずにこの部屋に入ってきたのだろう。
「昨夜は暴れ疲れて眠ったと思う」
「まあ、そうよね。普通は・・・」
自身も奴隷として親に売られ、知らない赤の他人に購入された経験を持つレーナが、そう寂しそうに言った。
「貴方は学校を休んで、その子の側にいてあげて。他の事も私がやっておくから」
「ああ。言われなくてもそうするつもりだった。ありがとう、レーナ」
しばし二人の間に沈黙が流れる。
「・・・・こういう子は常に寄り添って話を聞いてあげないと駄目よ。まずは自分の価値観を押し付けず、少しずつ、少しずつ、心を開かせるの。元経験者からの助言よ」
そう言い残して、レーナは部屋から出ていった。
レーナの言っていることは分かっている。
何時間、何日かかっても良い。
そう肚を決めて、少女が起きるのを待った。
そう言ってルイ兄様、レーナ、セバスさんは部屋から出ていった。
「な、何で自分がやらなくちゃ・・・」
そう嘆くしかなかった。
ただでさえ他の仕事で忙しいのに、この子の世話となると・・・
今後の事をいろいろ考えながら自分は近くの椅子に座って少女をぼんやりと眺めた。
・・・それにしても、執事のセバスさんがまさかブルボン家の裏組織を指揮していたなんて。
確かにそう言われてみればいくつか不可解な点はあったけれど、自分はそれを見破ることができなかった。
「流石は、ルイ兄様だ!」
自分は誇らし気に呟いた。
色々とめんどくさい主人であり、兄でもあるが、やっぱりカッコいいな。
いざという時には、しっかりとその実力を見せてくれる。
「う、ううっ!」
ルイ兄様のことを考えていたら、ベッドで眠る少女からうめき声がした。
自分は敢えて声をかけず、彼女が起きるまでじっと待った。
さらに1時間後。
自分もウトウト眠くなってきた頃、微かな声が耳に入った。
「こ、ここは・・・?」
すぐに眠気を振り払い、ベッドのそばに行く。
少女の顔を覗き込むと、うっすらと両目を開けていた。
その目尻には涙の跡が。
「起きられたようですね。ここは、フランシーダ帝国ブルボン公爵家嫡男、ルイ・デ・ブルボン様のアメルダ民主国でのお屋敷です」
自分は敢えてちゃんと説明した。
だが意外にも、「ブルボン公爵家」という言葉にはなんの反応もしなかった。
寝ぼけているだけなのか、それとも記憶喪失なのか、或いはただ単に忘れてしまっただけなのか?
とりあえず、話を続ける。
「貴方は奴隷としてルイ兄様に購入されました。今日から貴方は、正式なブルボン家の奴隷です」
・・・とは告げてみたものの、奴隷として彼女にできる労働など無い。
ルイ兄様は、セバスさんの”弱み”として購入しただけ。
四肢を失った彼女が奴隷として働くことができない以上、この屋敷でも浮いた存在になる。
「ニャーが奴隷?」
ニャー?不思議な一人称だ。猫系の獣人だからか?
「仕事は今のところありません。失礼ですがその手足では・・・」
「手足?」
自分は小さな過ちを犯してしまった。
「あれ?ニャーの手足はどこ?どうして?ねえ、どうしてないの?あれ?ニャーのかあさまは、とうさまはどこ?なんで?ねえ、なんでいないの!どうして、なんで・・・」
その声はどんどんと大きくなっていく。
屋敷全体に響かないよう、咄嗟に防音魔法をこの部屋に展開する。
そして椅子に戻り、彼女が落ち着きを取り戻して再び眠りにつくのを待つ。
こういう精神が壊れかけている人物は、しばらく叫んだり暴れたりして感情を吐き出せば、落ち着くのは知っている。
昔、ルイ兄様の目を盗んでレーナがそうやっていたことを自分は憶えているし、自分もブルボン家に来た当初はひたすら泣いていたものだ。
彼女の気持ちまでは理解してあげられない。
でも、多少の共感ぐらいはできる。
一人ぼっちになる悲しさ、何かを失ったときの喪失感。
そういう感情は誰だって知っているから・・・ルイ兄様以外は・・・
とりあえず、自分の耳にも防音魔法を展開した。
一人でいたい時もあるが、今の彼女は一人にしておくのはまずい状態だ。
なるべく自分の存在を消しながら見守らなければならない。
自分は椅子に深く腰かけ、彼女の挙動に注意を払いながらも、いつしか眠りについていた。
翌朝、目が覚めると、彼女は目を腫らしながら寝ていた。
ベッドにはもがいた痕跡があり、ここから逃げ出そうとしていたことが分かる。
おそらく起きたらまた暴れるだろう。
そう思い、今日は学校も他の仕事も休むことに決めた。
任された任務だし、何より昔の自分と少しリンクする部分も感じてほっておけなかった。
「どうだった?」
不意に背後からレーナの声がした。
おそらく起こさないよう音を立てずにこの部屋に入ってきたのだろう。
「昨夜は暴れ疲れて眠ったと思う」
「まあ、そうよね。普通は・・・」
自身も奴隷として親に売られ、知らない赤の他人に購入された経験を持つレーナが、そう寂しそうに言った。
「貴方は学校を休んで、その子の側にいてあげて。他の事も私がやっておくから」
「ああ。言われなくてもそうするつもりだった。ありがとう、レーナ」
しばし二人の間に沈黙が流れる。
「・・・・こういう子は常に寄り添って話を聞いてあげないと駄目よ。まずは自分の価値観を押し付けず、少しずつ、少しずつ、心を開かせるの。元経験者からの助言よ」
そう言い残して、レーナは部屋から出ていった。
レーナの言っていることは分かっている。
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そう肚を決めて、少女が起きるのを待った。
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