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──次の日の朝も、家の門前に彼氏面したセスが立っていたので、内心溜め息を吐いた。それで、奴が人の家の門前で甘い言葉を吐き出し始めるものだから、彼の腕を引っ張って急いで家を後にしたのだ。
だが、一度繋いだ手は何度も離そうとしたが離れない。
セスの力は魔法で最弱化しているが、元が無敵ゴリラなので、結局もやしの俺が抵抗出来る相手ではなくされるがままなのだ。
「お二方、おめでとうございます」
それで仲よく手繋ぎで校舎に入ると、同級生が俺たちに向かって祝福の言葉を伝えてくる。声をかけられることが珍しくて思わず笑みが漏れた。
「えへ、──えっと、何故お祝いを?」
「昨日は驚いてお声がけ出来なかったのですが、改めてお祝い申し上げます」
「えぇっと?」
互いに誕生日でもなく、祝われる覚えがない。
だけど、セスにはなんのことか分かっているかのように、祝いの言葉に頷いている。
うむ、余はご満悦じゃ。みたいな感じの頷き方だ。どこの王様だよ。偉そうだな。
「あ、サーシャベルト君、おめでとうございます」
疑問に思いつつ自分の席に座ったら、前の席からもお祝いの言葉が届く。
声をかけてきた眼鏡の彼は学級委員のトマス・ジェイソンだ。その立場から俺が話しかけても逃げず会話してくれる真面目な人だ。
「ねぇジェイソン君、一体何がおめでとうなのだろうか? 俺にはちっとも分からないのだけど」
「あぁ、昨日はまだ皆状況が分かっていなかったのですが──その……僕の口からは」
かぁっと頬を赤らめる彼に首を傾げる。
「言いにくいことなら、耳打ちして……ぎゃっ!」
彼に耳を寄せた途端、俺の足は地面から浮いた。セスが縦に俺を抱き上げたのだ。
「セス、教室で抱きかかえてるなんて何を考え、て──ひぃ、君、そんな刺すような凶暴な目をするんじゃない!」
鋭い凶暴な目で睨まれたジェイソンは縮こまって下を向く。
「リュリュ、浮気は許さない」
「はぁ~~? いつ、俺が浮気したって言うんだ……て、頼むからそんな怖い顔で睨むな!」
抱きかかえられて至近距離で睨まれる俺の身になってみろ! 視線の強さで身体に穴が開いてしまうだろう。
降ろすように再度言うと、昨日と今日とあってかセスは素直に俺を地面に降ろした。
眉間のシワを寄せて、口を一文字に結んで睨んでくるから睨み返した。
「苦しい」
「は?」
「あの男の耳元で囁き、お前の匂いを嗅がせたと思うと胸が苦しい」
セスは胸元を手で握った。
「リュリュは庭の花の匂いが移り、いつも甘い匂いがするのだ……」
「はぁ? 何を言っているんだ。俺の匂いなんてどうでもいいだろう」
「いいわけないだろう」
言い返そうと思ったが、教室内から視線を感じる。目立って仕方がない。
とんだ言いがかりをつけられて怒りが込み上げてくるが、俺はセスから顔を背けて自分の席に着いた。
セスから文句を言いたげな視線を感じるが無視を決め込むと、彼も諦めて自分の席に向かう。朝礼が終われば、俺とセスが選択する授業は何一つ被らないため、ほとんど顔を合わせずに済むのだ。
薬草学の授業はジェイソンと一緒だったため、彼の隣に座った。
改めて朝のことを聞いて見ると、彼は頬を赤らめて困惑したように眉を下げる。
「……すまない、僕は君に言い辛いことを聞いているのだろうか?」
「いえ。普段話しかけない皆さんも今日は一斉に話しかけたからサーシャベルト君が驚くのは無理がない
ことですよね」
そう、普段俺が声をかけると気まずそうな表情をするというのに、今日はそれがなかった。
変貌したみんなの様子に疑問だけが浮かび上がって授業に集中出来ない。歯がゆさを早く解消したいのだ。
「お祝いの言葉をついお伝えしてしまったのは、サーシャベルト君がセス様と結ばれたと聞いたからで
す」
「はぁ⁉ 結ばれた⁉」
授業中だと忘れ、思わず大声を上げて立ち上がってしまった。教師に注意を受け周囲に謝罪し、また着席する。
暫く時間を空けて、改めて小声でジェイソンに質問する。ジェイソンは俺に合わせるように小声で理由を話してくれる。
「昨日、ファレル様がサーシャベルト君を愛おしそうに抱き上げながら下校されたと聞きます。その時に“身体に無理をさせた。もっと大事にする”などと甘い声でお話になられていたとか」
「……昨日の下校時……」
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