催眠術をかけたら幼馴染の愛が激重すぎる⁉

モト

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 あの時か……と頭を抱える。
 昨日はセスと共に午後の授業をサボった挙句、なんと俺を横抱きにして下校したのだ。セスの回復魔法により身体には疲労も痛みもないのに、家まで自分の足が地面につくことはなかった。
 周囲から見れば、事後を物語っているようなものだったのだろう。
 つまりあの祝福の言葉は、深い関係になったことをお祝いされていたわけか。
 驚きのあまり開けた口が塞がらない俺に、ジェイソンは言葉を続けた。

「ファレル様はこの国のトップクラスの特級魔法使い。豪快なパワーを持ってあらゆる分野の魔法を自由自在に操ることができる唯一無二の素晴らしいお方です。憧れる一方、ファレル様の底知れぬ力が僕にはとても怖いのです」

「うん」

 分かるよ。セスの顔も圧力も怖い。幼馴染で見慣れた自分ですら怯えるのだ。皆がビビっても仕方あるまい。

「でも、応援したい気持ちはありました。サーシャベルト君のことを一途に見守るファレル様はガーディアンみたいだなんて囁かれていたのですよ」

「は?」

「ですから、僕からもおめでとうございます」
「?」

 昨日今日ではなく以前の話をしているなら、とんだ誤解だ。
 彼に嫌われているから睨まれ続けていたのだ。無視、威嚇、威圧の三セット。
 その言葉に返答しようとした時に、教師と目が合い「サーシャベルト君、速やかに前に問題を解きに来なさい」と指名されて前の黒板に答えを書いた。

 教師の話は聞いてはいなかったが、そこに書かれている文字を読めば答えはすぐに分かる。

「……よろしい。授業はちゃんと聞きなさい」

「はい、すみません」

 軽い口頭での注意を受け、席に戻る。
 ジェイソンとの雑談は止めたが、授業には集中出来なかった。
 自分のついた嘘が大きくなっていくことにことの重大さを感じ始めていたのだ。
 俺とセスは付き合っていないのに学校中が勘違いしている。

 ──いけない。これ以上、嘘が大きくなる前に速やかに否定しなくちゃいけない。

 授業が終わり昼休憩に入ると、横にいるジェイソンが立ち上がったので、声をかけた。
 先程の話の続きをしたいと前述すると、彼は俺の話を聞くためにまた席に座ってくれる。

「違うんだ。俺とセスは付き合っていない。皆勘違いしているんだよ!」

「……付き合っていない? ですが、ファレル様はそのようなご様子ではありませんよね?」

「そう見えるかもしれない。でも本当に俺とセスは恋人でもなんでもない」

「では、セス様の片想いでしょうか?」


 それも違うと首を横に振ると、ジェイソンは怪訝そうな表情をする。

 どうにか上手く催眠術を伏せて伝えられないかと思っていると、真後ろからひゅうっと冷たい冷気が漂う。

 現在、草木が生い茂る温かな季節だ。だというのに、あっという間に気温が下がり、自分の歯があまりの寒さにカチカチと音を鳴らす。

 委員長の顔色も真っ青になって震えている。
 教室の前に目を向けると、恐ろしい表情のセスが仁王立ちして俺を見降ろしていた。俺の腕を掴むやいなや、恐ろしい表情で責められる。


「付き合っていないとはどういうことだ! さらに俺と言う男がいながら他の男に密着するとは!」

 セスが怒りを露にして声を荒げたため、その場に戦慄が走る。

「セス? 圧力! あつりょ~くっ!」

 腕を掴まれ怒りを至近距離で向けられている俺の恐怖は相当なものだ。それでも騒ぎを広めまいと彼に落ち着くよう声をかける。

「リュリュは俺の恋人だと頷いたじゃないか!」

「ひぃっ、だって恋人だと頷かなかったら、君に抱き潰されると思ったんだよ!」

「もしかして、昨日強引に身体を拓こうとしたことを怒っているのか。それなら何度でも謝るから許し」
「ギャ—————!」


 俺は思わず叫んだ。こんな公共の場でなんんんって言い方をするんだ。

「……一体どんなハードなプレイを?」

 真っ赤な顔で呟くジェイソンの声が聞こえる。
 そして俺達に集まるクラスメイト達の視線。
 断じて、そんな激しいプレイはしてないぞ! 先端だけだからアウト気味のセーフのつもりだ。

「お前のことを一生大事にすると誓ったではないか」

 ざわ……ざわぁ。
 セスの“一生”という言葉に周りがざわつく。
 一生だなんてゴリラが勝手に言っているだけで俺は決して頷いていない!

「俺が愛しているのはこの世でリュリュ・サーシャベルト。お前だけだ。まだ分からないのか⁉ ならば、
このさき一生かけて愛を囁こう!」

「ひぃい!」

 この男に羞恥心はないのか⁉ 
 やばい……。手に負えなくて白目向きそう。今、この男に何を言っても甘い言葉で返されるだけだ。

「……おい、セスよ。ちょっと付いて来てくれますか」
「勿論だ。早く二人っきりになろう」

「……」

 俺が席から立ち上がりセスの腕を掴むと、祝福の声が聞こえる。

 おめでとうございます! おめでとうございます! って。

 それらの声に逃げるように慌てて教室を出た。


「おめでとうございます」

 廊下ですれ違う他学園の生徒からもお祝いの言葉が向けられる。
 俺からすればゴリラを連れて歩く飼育員のつもりである。だが生徒にはカップルが学校内でイチャイチャ手を繋いで歩く図に見えているようだ。
 自ら噂を広げているみたいで、足早に人気が少ない校舎裏に向かう。薄暗いそこで彼の手を離して、彼の方を振り向いた。

「……今日、学校終わったら必ず俺の部屋に来い」

 さっきまで不機嫌そうな顔をしていた彼なのに、嬉しそうに目を輝かせる。

「いいのか」

「あぁ」

 二人っきりで安全に会話できるところはそこしかない。
 一刻も早くこの男を止めなければ、何を話すか分かったものではない──


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