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「なぜ、こうなった」
一人だと快適に過ごせる自分の部屋に大男が入ると窮屈感が凄い。
それもそのはず、俺はベッドに腰をかけるセスの膝上に座らされているからだ。適当な場所に座ってくれと促した曖昧さが悪かったのだろう。
今、こうして大人しくするまで、俺も一通り離れようと努力したのだ。無駄だったけれど。
「リュリュ、お前から誘って貰えてとても嬉しい」
「……そう、そうですか」
頭にぶちゅぶちゅと唇が降り注いでいるが、ツッコミを入れる元気が出ない。
「ようやくお前を腕の中に抱くことが出来た」
長年離れていましたみたいな感慨深げに言うものだから、目を細めた呆れ顔を彼に向ける。
「自分でもおかしいと分かっている。だが、愛おしいと思う気持ちが強まるばかりで、四六時中一緒にいたいのを我慢している」
──強まる?
それは催眠術をかけた時より悪化しているってことだろうか。
抱き締められているから、心臓の音が背中越しから伝わってくる。
「今までどうして離れていられたのだろう。お前のこと好きすぎてどうにかなってしまいそうだ。あっ、
そうだ。もういっそのこと婚約するか」
「はぁ⁉」
ぎょっとして後ろを振り向くと、彼の頬が高揚して紅い。まるでいいことを思いついた子供のように目を輝かせてはしゃいでいる。
「明日にでも、リュリュのご家族に頭を下げて許可をもらおう。卒業したら共に暮らそう。リュリュは一人っ子だからな、俺が婿入りしてもいい」
正気か⁉ ──いや、正気じゃないから言ってるんだ。
しかし今は本気だ。セスは有言実行。すると決めたらする何があろうと実行する人間だ。……俺の身内にまで挨拶されてはマズイ。外堀が完全に埋められてしまう。
「ちょっと待て。現実的に考えろ。セスと俺とではあまりに不似合いだ」
「お前に見合うような男になるから、今は今の俺で我慢してくれ」
──我慢してくれ?
いやいや、逆だ。この国では魔法が使えない俺などは魅力マイナスで誰にも相手にされない。セスが最上級の男だ。そんなことは常識で、セスも分かっているだろうに催眠術のせいで認識まで変わってしまったのだろう。
俺は身体を横向きに変え、セスを見つめた。
彼をこの部屋に呼んだのは、催眠術を完全に解くためだ。そのために催眠術を解く方法を読み込んでいる。
セスが“企み”を思い出して、振り出しに戻ろうとも、婚約だなんて流石の俺もそこまで騙すことが出来ない。
「リュリュが俺の腕の中で見つめてくれている」
「感激しているところ悪いが、本題に……」
「キスしていいか?」
「いや、この部屋に君を呼んだのは……ふっ」
許可していないのにキスで唇を塞がれる。
このゴリラめぇ!
彼の手が俺の顎を固定し、大きく口を開かされる。昨日でコツを上手く掴んだのか、セスの舌が器用に俺の敏感なところを擦ってくる。
「ふっん、うぅっ……はっ、ん」
学習能力が高い。息苦しさを感じると少し離される。でもすぐにくっつく。口腔内を余すところなく舐め尽くされるけれど苦しさはない。
至近距離で見るセスは雄々しい色気がある。
──気持ちよさそう。そんなに俺とのキスが気持ちいいのか。
「ん……?」
俺の尻を下から固いモノが当たっている。これはあの大蛇だ。怖がらせてごめんなさいって言ってたのはどこのどいつだ。尻を脅してくるではないか。
身じろぐとセスは唇を離した。それで、俺の脇に手を添えて持ち上げ、対面になるように膝に座らせ直した。
この体勢、下半身が密着する。戦闘態勢のキングコブラを刺激しないように腰を引けばその背中や腰を宥めるように撫でられる。
「ドスケベ親父みたいな手つきを……」
「好きだ。リュリュ」
「……いや、だからそれは──はぁ」
有頂天になっているセスの表情にズキンッと胸が痛みが走った。
でもその痛みで流されかけた自分がやや冷静になる。再びキスしようとしてくるセスの唇を手で受け止めた。
「ええい、セス、よく聞け! 君が俺と恋人同士だと思っているのは俺がかけた催眠術のせいだ。今からその催眠術を解くから!」
「催眠術……またそんなことを言っているのか」
首に下げていたひも付きコインを外し、セスの手のひらにコインを置く。
「あぁ、そうだよ。十五才の記憶しか持たないのも全部俺のせいなんだ。そういう催眠術をかけた」
「それは、本当なのか?」
俺は深く頷く。
真剣さがセスに伝わったのか、彼の表情も真面目なものに変わる。
それから密着しすぎている身体をやや離して、セスの手に置いたコインをまた自分の手に戻した。
「頼む。セス……俺の声を聞いてくれ」
彼の返事を聞く前に、俺はコインを左右に揺さぶり始める。
真っすぐなセスの視線は目を逸らしたくなるほど強い。じわりと俺の心のうちで淋しさのようななんとも言えない感情が湧きあがってくるのを感じながら、指示を出した。
──ゆら~ゆら~……。
何度も繰り返すように指示を出す。
催眠術をかけている間、セスは瞼を閉じなかった。それどころか益々視線が強くなる。
「セスは……」
「催眠術を解かないでくれ。かかったままがいい」
コインを持つ俺の手をセスが掴んだ。
「前の俺は知らないが今の俺はこのままがいい。リュリュに好きだと言えるのが嬉しいのだ」
「……いや」
いいわけがない。
「このまま、お前に恋をしていたい」
真摯で一直線な彼の言葉に、ズキズキしていた胸がドキドキに変化する。
「駄目だ、セス。術中の会話を許可しない。ちゃんと──ふっ⁉」
甘い言葉に惑わされよう空気を切り替えようとするが、軽めのキスが降り注がれる。
「ん、ん、っ……催眠術、を解くって!」
「……」
瞼を閉じて俺の言う事はスルーしますって顔に書いてある。口の中で文句を言うと反抗するかのように彼の舌が俺の舌に巻き付いてくる。
「はっ、き……け、ふぐ」
吐息と共に文句を吐くと舌を甘噛みされる。宥めるような柔らかな刺激。
まるでこちらが聞き分けのないと言わんばかりに背中を撫でられる。そして彼の手に引き寄せられて、身体が密着する。
俺の身体丸ごと包み込んでのキス。電光石火のごとく彼の身体の熱が高まっていく。
自分に情欲を感じている相手に抱きしめられているからか、俺の身体にも熱が伝導する。
口の中をたっぷり弄る舌の刺激にツンと鼻から抜けるような快感。
「ふぁ……」
自分の吐息すら男には刺激になるのか──太腿に当たっているコブラがグンと大きくなった。
一人だと快適に過ごせる自分の部屋に大男が入ると窮屈感が凄い。
それもそのはず、俺はベッドに腰をかけるセスの膝上に座らされているからだ。適当な場所に座ってくれと促した曖昧さが悪かったのだろう。
今、こうして大人しくするまで、俺も一通り離れようと努力したのだ。無駄だったけれど。
「リュリュ、お前から誘って貰えてとても嬉しい」
「……そう、そうですか」
頭にぶちゅぶちゅと唇が降り注いでいるが、ツッコミを入れる元気が出ない。
「ようやくお前を腕の中に抱くことが出来た」
長年離れていましたみたいな感慨深げに言うものだから、目を細めた呆れ顔を彼に向ける。
「自分でもおかしいと分かっている。だが、愛おしいと思う気持ちが強まるばかりで、四六時中一緒にいたいのを我慢している」
──強まる?
それは催眠術をかけた時より悪化しているってことだろうか。
抱き締められているから、心臓の音が背中越しから伝わってくる。
「今までどうして離れていられたのだろう。お前のこと好きすぎてどうにかなってしまいそうだ。あっ、
そうだ。もういっそのこと婚約するか」
「はぁ⁉」
ぎょっとして後ろを振り向くと、彼の頬が高揚して紅い。まるでいいことを思いついた子供のように目を輝かせてはしゃいでいる。
「明日にでも、リュリュのご家族に頭を下げて許可をもらおう。卒業したら共に暮らそう。リュリュは一人っ子だからな、俺が婿入りしてもいい」
正気か⁉ ──いや、正気じゃないから言ってるんだ。
しかし今は本気だ。セスは有言実行。すると決めたらする何があろうと実行する人間だ。……俺の身内にまで挨拶されてはマズイ。外堀が完全に埋められてしまう。
「ちょっと待て。現実的に考えろ。セスと俺とではあまりに不似合いだ」
「お前に見合うような男になるから、今は今の俺で我慢してくれ」
──我慢してくれ?
いやいや、逆だ。この国では魔法が使えない俺などは魅力マイナスで誰にも相手にされない。セスが最上級の男だ。そんなことは常識で、セスも分かっているだろうに催眠術のせいで認識まで変わってしまったのだろう。
俺は身体を横向きに変え、セスを見つめた。
彼をこの部屋に呼んだのは、催眠術を完全に解くためだ。そのために催眠術を解く方法を読み込んでいる。
セスが“企み”を思い出して、振り出しに戻ろうとも、婚約だなんて流石の俺もそこまで騙すことが出来ない。
「リュリュが俺の腕の中で見つめてくれている」
「感激しているところ悪いが、本題に……」
「キスしていいか?」
「いや、この部屋に君を呼んだのは……ふっ」
許可していないのにキスで唇を塞がれる。
このゴリラめぇ!
彼の手が俺の顎を固定し、大きく口を開かされる。昨日でコツを上手く掴んだのか、セスの舌が器用に俺の敏感なところを擦ってくる。
「ふっん、うぅっ……はっ、ん」
学習能力が高い。息苦しさを感じると少し離される。でもすぐにくっつく。口腔内を余すところなく舐め尽くされるけれど苦しさはない。
至近距離で見るセスは雄々しい色気がある。
──気持ちよさそう。そんなに俺とのキスが気持ちいいのか。
「ん……?」
俺の尻を下から固いモノが当たっている。これはあの大蛇だ。怖がらせてごめんなさいって言ってたのはどこのどいつだ。尻を脅してくるではないか。
身じろぐとセスは唇を離した。それで、俺の脇に手を添えて持ち上げ、対面になるように膝に座らせ直した。
この体勢、下半身が密着する。戦闘態勢のキングコブラを刺激しないように腰を引けばその背中や腰を宥めるように撫でられる。
「ドスケベ親父みたいな手つきを……」
「好きだ。リュリュ」
「……いや、だからそれは──はぁ」
有頂天になっているセスの表情にズキンッと胸が痛みが走った。
でもその痛みで流されかけた自分がやや冷静になる。再びキスしようとしてくるセスの唇を手で受け止めた。
「ええい、セス、よく聞け! 君が俺と恋人同士だと思っているのは俺がかけた催眠術のせいだ。今からその催眠術を解くから!」
「催眠術……またそんなことを言っているのか」
首に下げていたひも付きコインを外し、セスの手のひらにコインを置く。
「あぁ、そうだよ。十五才の記憶しか持たないのも全部俺のせいなんだ。そういう催眠術をかけた」
「それは、本当なのか?」
俺は深く頷く。
真剣さがセスに伝わったのか、彼の表情も真面目なものに変わる。
それから密着しすぎている身体をやや離して、セスの手に置いたコインをまた自分の手に戻した。
「頼む。セス……俺の声を聞いてくれ」
彼の返事を聞く前に、俺はコインを左右に揺さぶり始める。
真っすぐなセスの視線は目を逸らしたくなるほど強い。じわりと俺の心のうちで淋しさのようななんとも言えない感情が湧きあがってくるのを感じながら、指示を出した。
──ゆら~ゆら~……。
何度も繰り返すように指示を出す。
催眠術をかけている間、セスは瞼を閉じなかった。それどころか益々視線が強くなる。
「セスは……」
「催眠術を解かないでくれ。かかったままがいい」
コインを持つ俺の手をセスが掴んだ。
「前の俺は知らないが今の俺はこのままがいい。リュリュに好きだと言えるのが嬉しいのだ」
「……いや」
いいわけがない。
「このまま、お前に恋をしていたい」
真摯で一直線な彼の言葉に、ズキズキしていた胸がドキドキに変化する。
「駄目だ、セス。術中の会話を許可しない。ちゃんと──ふっ⁉」
甘い言葉に惑わされよう空気を切り替えようとするが、軽めのキスが降り注がれる。
「ん、ん、っ……催眠術、を解くって!」
「……」
瞼を閉じて俺の言う事はスルーしますって顔に書いてある。口の中で文句を言うと反抗するかのように彼の舌が俺の舌に巻き付いてくる。
「はっ、き……け、ふぐ」
吐息と共に文句を吐くと舌を甘噛みされる。宥めるような柔らかな刺激。
まるでこちらが聞き分けのないと言わんばかりに背中を撫でられる。そして彼の手に引き寄せられて、身体が密着する。
俺の身体丸ごと包み込んでのキス。電光石火のごとく彼の身体の熱が高まっていく。
自分に情欲を感じている相手に抱きしめられているからか、俺の身体にも熱が伝導する。
口の中をたっぷり弄る舌の刺激にツンと鼻から抜けるような快感。
「ふぁ……」
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