催眠術をかけたら幼馴染の愛が激重すぎる⁉

モト

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 学園上の結界に綻びが出来た件で、魔物が出現回数が増えたことは生徒にはよい刺激になったようだ。安全な建物の中から警護班を見て学んでいる。
 そこでセスに攻撃魔法を教わりたいと生徒達から要望が相次いた。祖父に頼まれたセスは臨時講師を引き受けることになったのだ。

 魔法が使えない俺は授業そのものには興味はないが、超口下手なセスがどんな風に授業を展開するのか知りたくて授業を受けた。
 教壇に立ったセスは空間内に結界を張り攻撃魔法を披露していく。説明は魔法書の棒読みで、たどたどしかったけれど、高度な魔法を見た生徒達は感激して拍手喝采の中、授業は終えた。

 最近のセスは、刺々しい雰囲気が柔らかくなったと噂になっている。その証拠に休憩時間となるや、生徒達が彼に質問する姿があった。

 セスは教師には不向きなタイプだろうと内心こっそり思っていたが、案外卒なくこなしそうではないか。

 変わっていく恋人を見て、ふふんと鼻を鳴らした。
 すると、斜め前の席に腰かけていたふたりの女子生徒がこちらを見て微笑んだ。女子に微笑まれることなんて滅多にないから挙動不審になる。

「サーシャベルト君、雰囲気がよくなりましたね」

「え? 俺が……ですか?」

「はい。今だから言えるのですが、昔はよくファレル様を見て歯ぎしりしたり、睨んだり、ぶつぶつ何かを呟いたり……陰のオーラがあって近寄れなかったのです」

 ──なんてことだ。
 セスの威圧に対して、そんな馬鹿な無意識で威圧なんて出来るわけがないと思っていたが、俺も無意識で陰をセスに放っていた? 自分がモテないことを人のせいばかりにしていただなんて──猛省だ。

 あまりにも自分が見えていなかったことにショックを受けながら席から立ち上がり、ふらふらと教室を出る。

 廊下をぼんやりと歩きながら己を恥じていると、目の前に高い壁……いや、セスが立っていた。教室の中で講師をしていた筈の彼がいて、前後を振り返る。

「え、セス、何故⁉」

「元気がないように見えたから追いかけてきた。気分が悪いのか?」

 セスは腰を曲げて俺の額に手を置いた。

「ううん、元気だよ」
「そうか、なら良かった」

 彼は心底安堵したように息を吐き、柔らかく微笑んだ。こんな表情を作る人なんだと付き合ってから知った。


 彼と付き合うようになって早一ケ月。
 恋人としてのはじめてのキスは、物理的に酷く苦しかった。呼吸困難になって真っ青になっている俺を見て、ようやく冷静さを取り戻したセスは落ち込んでいた。それ以降、ゴリラ級の力は再び最小限になるよう対処されている。


 ──だというのに、エッチどころかキスすらない。催眠術がかかっているセスと違って本物のセスは
紳士だった。

 ゴホン、と咳払いが聞こえるので真上を見ると目が合う。

「リュリュ、さっきの講義どうだった?」

「あ~……、棒読みだった」


 褒めるよりも欠点をつい言ってしまう。素直じゃないこういうところが人から嫌われるのだ。 
 つまらない指摘だというのに、何故かセスの表情に照れが含まれた。

「リュリュに見られていると思うと、緊張したのだ。お前に格好いいところを見せられるかもしれないと焦っていた」

「え?」

「次に期待してくれないか」


 ──おいおい、なんて優しい声と表情をするのだ。

 セスの変化がめまぐるしい。いや幼い頃を思い出せば、彼の本質は元からこうだったのかもしれない。


 眉間のシワが寄ってしまう。
 そのシワを指で広げながら不貞腐れながら言う。

「恰好悪くていい。急いで変わられると置いてけぼりな気持ちになるだろう」
「……」

 セスがなんとも言えない表情をした時、窓の外からあまりにキラキラとした日の光が差し込むものだ
から、空を見上げた。すると空の色がより深く透き通った青に変わっていく。


「結界が元に戻ったな」

「そっか、修繕作業が終わったのか。これでセスもお役目御免だな」

「あぁ、休日、リュリュの家に行ってもいいか」


 断る理由などなくて、「勿論」と大きく首を縦に振った。


 
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