ネックレスとブレスレット【改】 魔法少女に召喚された青年は彼女を守る事になりました!

川村直樹

文字の大きさ
7 / 61

初めての召喚 3

しおりを挟む
「大丈夫ですか? 春馬さん」と、リリカが駆け寄って来る。

「ああ、大丈夫だ。それより、さっきの突風は何だ?」、取り返した財布をリリカに手渡しながら聞いた。

「あれは、私の魔法ですよ」

「えっ魔法、あれが?」

「私、半人前だから、風の魔法はさっきの突風ぐらいしか知らないの」

「知らない、どういう事?」

春馬の想像する魔法と、リリカの説明が合致しない。だから、その時の彼は、この世界の魔法が何なのか理解出来なかった。

リリカは、この世界の魔法を知らない春馬を怪訝そうな目で見る。

「魔法は、イメージしたことを具現化させる力なの。だから知らない事は、イメージできないから出せないの」

知ってて当たり前の様に話すリリカに、春馬はどうしても理解出来ない自分が悪いのかと思ってしまう。

知らないことは、具現化出来ない? 
どういう事だ、経験なのか、知識なのか。
この世界の魔法とは、一体何だ?

納得しようにもリリカの説明だけでは、原理やら法則などが良く分からない。

もしかしたら彼女が魔法を使う所をじっくり見れば、何か分かるかもしれない。

最初から全てを把握するのは無理だと感じた春馬は、後でゆっくりリリカから話を聞けば良いかと思った。

とりあえず、男から奪い返した財布を女性に返しに行く事にした。

スリとの騒動の後、リリカと春馬は話しながら町の中心部へ移動する。

「ばあさんから詳しい事は、何にも聞いていないから教えてくれるか?」

「はい。知っている事なら教えて上げますよ」

噴水を囲む様に置かれたベンチを見つけた二人は、空いていた場所に並んで座った。そこは、休憩や待ち合わせ場所として利用する人で賑わっていた。

「いつ、元の世界に帰れる?」と、春馬は不安そうな表情で尋ねた。

「元の世界に戻るのは、春馬さん次第です」

「俺次第とは、どう言う事だ?」、想定外の返答に戸惑ってしまう。

「私がネックレスに魔力を込め、来て欲しいと願った様に、春馬さんも自分の世界に戻りたいと、ブレスレットに力と思いを込めれば、きっと戻れますよ」

「そんな簡単な方法で、本当に戻れるのか?」

リリカは、まじまじと春馬を見た、「今日は、思いがけず春馬さんを呼んでしまったけど」と、服の中からペンダントトップを取り出して見つめた。

「そんな簡単に戻れるのか・・・」

「はい、本当です。戻りたいときに戻れますよ」

「呼び出すのは君の意思で、戻るのは俺の意思か?」、半信半疑だが試せば直ぐに分かることだ。

「私のネックレスと春馬さんの身に着けているブレスレットが、私の世界と春馬さんの世界を繋げているのです。そう聞いています」

リリカの話を聞きながら春馬は、ばあさんから無理矢理に渡された右腕のブレスレットを見た。

何の説明も無く、ただ肌身離さず付けておけとだけ命じられていた。

ブレスレットの中心には、小さな黒い石がはめ込まれている。

檳樃子黒《びんろうじぐろ》、黒色なのに下染めされたような紅色を感じる。
不思議な輝きを放つのだから、多分普通の石じゃないな。

「じゃあ、君が呼べばいつでも俺は、この世界に召喚されるのか」

「そうです。嫌ですか?」

「嫌じゃないけど、突然ここに来たからな。まあ、大学生だから自由な時間も多いし。問題無いか」

「大学生?」と、リリカは初めて聞く言葉に反応した。

「そうだ、学生だよ。勉強をするために学校へ通っている。俺の話はいいから、君は一人か? ここで暮らしているのか?」

春馬の質問にリリカは、ためらいながら頷いた。

「おばあちゃんが亡くなって、両親は幼い頃から居ないから一人です」

本当に彼は、パートナーとして私を助けてくれるのだろうか。

リリカは、不安な気持ちに襲われた。そんな彼女に対して春馬は、どうしたものかとこめかみを指で押さえている。

「そうか、じゃあ、これから俺は、君の為に何をしたら良いんだ?」

「一人前の魔法士になるため、アバルディーンに行きたいの。だから旅をする私を助けて欲しいの。おばあちゃんが亡くなる前に、トミさんから、お孫さんが私のパートナーになって助けてくれると聞いていたから」、リリカは胸の前で両手を合わせ必死に訴える。

「トミさん? ばあさん、富子なのにこっちではトミと名乗っていたのか」、思わず春馬は声を出して笑いそうになった。

「君が目的地に着くまで、どれだけの時間が掛かるのか知らないけど、危険な目に合わない様に君を助けてあげるよ」

「じゃあ、これからも呼んで良いのですか?」

「ああ、良いよ。これからよろしくな」

リリカは、嬉しそうに春馬が差し出した手を取った。

「ありがとう、これからよろしくお願いします。あとね、おばあちゃんに聞いたんですが、私が強くなると、春馬さんも強くなると言っていました。どうしてだか分からないけど」

春馬は、この世界に呼ばれてから身のこなしが早くなっていたように感じていた。気のせいかと思っていたが、そうでは無いようだ。

ベンチの前で腕の力を抜いた彼は、軽くジャンプすると、簡単に1メートルの高さまで飛べた。

「強くなるか? 軽く飛んでこれだから、本気で動くと凄い事になりそうだな」

今すぐ、確かめたかったが、はやる気持ちを抑えた。

こんな人の目が多い町中で身体能力を試したら、下手に目立ってしまう。そうなるとリリカに迷惑をかけてしまうかも知れないと思った。

焦らなくても次の機会に自分自身の身体能力が、どれほど上がっているのか試せば良いか。

リリカから、もう少し魔法の事やこの世界の事を聞きたかった。しかし、前触れも無く突然この世界に呼ばれた春馬にとって、今は本当に自分の世界に帰れるのかどうかを確かめるのが最優先だ。

夕暮れ時を頃合いに、春馬は自分の世界へ戻ろうと決めた。

「そろそろ帰るよ、じゃあな。気を付けて旅をしろよ」

春馬は、リリカに言われた通り右腕のブレスレットに意識を集中させた。
さあ、自分の世界に帰るぞ。

目をつぶって集中する春馬の足元に、光で魔法陣が描かれた。
足元から上に向かって光は上昇する。
全身が光に包まれると、今度は足元から光が消えて行った。
光が無くなると、そこに春馬の姿は無かった。

彼は、無事、自分の世界へ帰ったのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

処理中です...