ネックレスとブレスレット【改】 魔法少女に召喚された青年は彼女を守る事になりました!

川村直樹

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魔法の検証 2

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魔法のない世界から来た春馬にとって、この世界の話しは面白い。更に知識を増やすために、リリカへ質問を続けた。

「魔法は、使い続けることは出来るのか? 例えばだな、1日中とか」

質問攻めのリリカは少し疲れた様子だったが、身振り手振りを加えながら久しぶりの会話を楽しんでいた。

「ふふふ、無理です。体力と一緒で、魔法は魔力と精神力の二つを使うから、使いすぎると死んじゃいます。絶対に限界まで魔法を使っちゃダメなんです」

「死ぬのか!? 魔力と精神力か、想像以上に負担が大きいのか」

「使い方次第ですね。小さな現象を起こす魔法ならそんなに疲れないけど、大きな現象を起こす魔法を使うと、ものすごーく、疲れます!」

春馬は、上半身を後ろに反らし空を見上げた。

魔法が使えるからとて連続して使用すると、想像以上に体への負担は大きい。しかも使いすぎると命を落とすかも知れないと聞いてしまうと、興味本位に実践させられなくなる。

「なるほどね。リリカの説明から推測すると、体を鍛えるのと同じように、魔法も訓練とか鍛錬が必要になるな」

「そうなのですよ。だからこそ知識を増やすために、魔法の勉強と色々な経験をしなくちゃいけないのです。それと精神力が高まれば、魔法の力も増えるみたいだけど」

「精神力を養うなら、山伏の様に修行するのが良いかもな」

「えっ? や・ま・ぶ・し、何それ」とリリカが聞くので、「何でもない」と春馬は答えた。

最初の講義に疲れた二人は少し休憩を挟み、リリカ先生による魔法教室は次のステップへと移った。

「火と風の魔法はもう見たから、最初に水の魔法を見せて欲しい」

軽く頷きリリカは詠唱する、「我に服従せし水よ、その姿を現せ」、さっと手を上にかざすと目の前に水の塊が現れ、バシャッと地面に落ちた。続けて彼女は、「服従せし水よ、大地を潤す雨となりて現れよ」と唱えると、空から小雨が降り注いだ。

何か物足りないと思ったが、春馬は無難な感想を伝えた、「うん、確かに水だな」

「水の魔法は、こんな感じです」

次に見せる魔法をどれにするか迷うリリカは、先に苦手な土魔法を春馬に見せようと決めた。

「次は土魔法を見せるけど、自信ないから。上手く出来なくても文句をいわないでね」

さっき土でテーブルを作って見せたが、あれはあくまで正方形の箱を作り出すような簡単なイメージだった。

本来、魔法士が使う土魔法は、もっと複雑な物を作り出したり、攻撃の防御に使用するものだ。そんな精巧な物を土魔法で作った経験の無いリリカが、嫌がるのは仕方がない事だった。

苦手な分野に尻込みする彼女は、チラチラと何度も春馬の方を見た。出来るのなら土魔法の実演は、やりたく無いのだ。

そんな彼女の素振りに、魔法の検証に夢中になる春馬は全く気が付いていない。

「文句なんか言わないよ。それじゃあ、人形とか器を出して見てよ」

リリカは、口をとがらせ眉をひそめた。しゃがみ込むと、大地に手を置き詠唱する。地面の土が盛り上がりグニャグニャと、土が生きているかのように動きだした。すると20センチほどの大きさの泥人形が現れた。

「おー、良いね。その人形は、動かせるか?」

「そ、それは、無理。動く泥人形なんか、この世に居ないでしょ」

「ほら、ファンタジー世界のゴーレムは・・・、知らないのか?」

魔法があるから、ファンタジー要素の全てが、この世界に揃っているとは限らない。リリカが困った表情を見せたので、春馬は話題を変えた。

「なあ、リリカ。地震はしっているのか?」

「地震?」、リリカは首を傾げた。

「そう、こう地面が左右や上下に揺れる現象だけど」

「そんな経験したこと無いけど、大地の唸りの事かな?」

「大地の唸りが、どんな物なのか分からないけど、経験したことが無いならイメージできないか」

一通りの魔法をリリカから教わる事が出来て、春馬は満足した。彼の思惑通り、魔法はほぼ想像していた通りの物だった。

次はスマホの動画を見せて、どれだけ彼女の使う魔法に影響を与えるのか、自分の推測が正しいのか知りたくなった。

「これから俺の世界で起きる、自然現象や理科の実験などの動画を見せるから」

「この箱から動く絵が出てくるの?」

「直ぐに分かるよ、見ながら説明するから」

リリカは、スマートフォンの画面に映し出される様々な動画に驚嘆した。
初めて見る、竜巻や地震、津波、雷や火山噴火などの自然現象。
火がオレンジ色から青く変化し、鋼鉄を溶かし切断する。
水が沸騰するのは、知っていたのでつまらなかったが、氷になる動画は初めて見る現象だった。

動画をリリカに見せながら、春馬は知識レベルの異なる彼女が、理解し易いように言葉を選んで説明した。

「春馬さん、物知りなんだね」

「これでも工学部だからな。理数系は、得意だよ」

「へえ、私ももっと知識を増やしたいな」

知る楽しさを味わい嬉しそうな顔をするリリカに、教えることが面白いと感じる春馬だった。

「今見せた中でいくつか魔法で、試して欲しいけど。出来るか?」

「出来るかどうか、分からないけど。やってみます」

リリカがそう答えると、動画で見た自然現象が魔法で出来るか試し始めた。

「炎に風を加えると、火力が強くなるのね」

赤い炎に風を加えていくと、炎の色が変化し青い炎が出来た。

「わあ、出来た! スマホの動画と同じ色の炎になったよ」、リリカは驚きと喜びに満ちた顔を見せる。

「次は、水に風を加え冷やしたら、氷が出来ると」

「その通りだ、やって見せてくれ」

「ふうぁー、何かひんやりしてきたよ、これが氷!? ひんやりとして気持ちいいね」、直径10センチほどの氷の塊が、リリカの手のひらに落ちた。 

目で見て頭で理解すれば、魔法で表現できる幅が広がった。やはり春馬の推測していた通りになった。

「今度は、雨を風で冷やすイメージをして氷の粒を作って見ようか。氷が出来たら地面に落ちないように風で浮かしながら、方向を決めて飛ばす」

前を指さす春馬に、「はい!」と答えたリリカは、目を閉じて彼に言われた通りにイメージする。

空中に現れた雨粒が、氷に変化し宙を漂う。

リリカは、前方に手を向け突風をだして氷の粒を飛ばした。それはまるで、ショットガンから発射された弾の様だった。

「出来たじゃないか。次は矢の形をした氷を作って、同じように飛ばすせるか確かめてみよう」

「我に従いし水と風よ、氷の矢となり、放たれよ」、氷の矢が一本現れ、ビューッと風を切って草原の中を飛んで行った。

「やったー! 見て、見て、新しい魔法が出来たよ」

見聞が広がると、新しい魔法が出来上がる。力のある魔法士は、きっと豊富な経験と知識の持ち主なのだろう。

「他に風や土の魔法で、出来そうなことはあるかな?」

春馬にそう問われるたリリカは暫く考えた後に、小さな竜巻を出した。

「これも出来るかも知れない」と両手を下にかざした、「恵み深き大地よ、我に従いその大いなる力を現せ・・・大地の唸り!」

真下からドンと、地面が突き上げられた。直ぐに地鳴りが響き渡りグラグラと、大地が激しく左右に揺れ出す。

亀裂が走り、草原に潜んでいた鳥たちが、一斉に空へと飛び立った。

立っているのも辛いほどの揺れに春馬は、バランスを崩しそうになりながら足を踏ん張り耐える。

揺れが収まると、めまいを起こしたリリカは、ゆっくりと倒れてしまった。

春馬は、すぐに駆け寄り倒れた彼女を抱き起した。

「リリカ、おい、大丈夫か?」

「魔法で大地の唸りを起こすと、すごく疲れますね」

力の入らない体を春馬に預け、両腕がだらりとしたリリカは目を閉じた。

「体中の力が、一気に吸い取られたような感じです」

疲れた顔の少女に、大きな力を使わせるのは危険だと感じた。

いくら威力の強い魔法が使えても、魔力と精神力が持たない。下手したら彼女が話した通り、命を落としかねない事態になる。

「リリカ、今みたいな強力な魔法は、一人で絶対に使うなよ。もし、トラブルに巻き込まれたら、必ず俺を呼べ」

「うん、必ず呼ぶね」

しっかり受け答えの出来たリリカは、少し休めば魔力と精神力は回復する。彼女の事を心配する春馬も、その事に遅かれ早かれ気が付くのだが、それでも目の前で倒れられるのは心臓に悪い。

膝枕で眠るリリカは、20分ほどしたら目を覚まし、直ぐに元気になったので、春馬はほっとした。

草原を抜け次の目的地ランケウエルに着くまでの数週間、リリカはほぼ毎日春馬を呼び出して一緒に旅をした。

旅をしながらスマートフォンの動画を見ては、リリカの知らない事を春馬は理解出来るまで丁寧に教えた。

魔法の練習と検証が、草原を抜けるまで彼等の日課になった。

丁度よい機会だったので、春馬は自分の身体能力がどれほど向上しているのかも確かめた。結果は、信じられない内容だった。

10メートル以上の高さまで飛べ、落ちても衝撃をほとんど感じない。100メートル走るのに1秒もかからず、力を入れて岩を拳で殴ると、粉々に砕け散った。驚く春馬にリリカは、十の法則が関係していると話した。

「うわー、きっとこれは十の法則で、全部十倍になってるよ」、十の法則とは、良い事は十倍にしてもらい、悪い事は十分の一になる様に、神様にお願いする事らしい。

二人で過ごす時間が増えると、お互いの距離は近づき親密感が出てくる。

リリカは、春馬を信頼できるパートナーとして認めた。そして春馬は、リリカをお転婆な妹として扱う様になっていた。
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