ネックレスとブレスレット【改】 魔法少女に召喚された青年は彼女を守る事になりました!

川村直樹

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獣人族の国 3

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リリカをかばい怪我をしたタムルは、足を引きずりながら荷台の中で震える体を寄せ合う娘たちを見つけ抱きしめた。

「ココ、メナ、大丈夫だ。みんな助かるから・・・」

最後の裁きは、この世界の言葉を引用すると、大地の唸りだった。

暴走するリリカの怒りは収まらない、ゴ、ゴゴ、ゴゴゴと大地が怒り狂うような地鳴りが辺りに響き始めた。

数秒間、ゆっくりと地面が左右に揺れた後、直ぐに大きな揺れへと変わった。

大地に立つ者を全て跪かせる揺れが数分続くと、丘に向かって無数の地割れが発生した。逃げ惑う兵士達は、大きく口を開けた大地から深淵へと引きずり込まれていく。

こうなるともはや戦争どころではない、命が惜しければ、助かりたかったら早くこの場か逃げなければならない。

極限状態に耐え切れなくなった将校たちは、さすがに音を上げ逃げ出した。

それを見た兵士達は、慌てふためきながら将校の後を追いかけて行った。

全てが終わった、それを知らせるかのように、リリカを包む光も消えた。

宙に浮いていた彼女は、意識を失い地面に崩れ落ちた。

駆け寄った春馬は彼女を抱きかかえ、「しっかりしろ、リリカ、リリカ・・・」

想像をはるかに超える魔法の力は、甚大な被害を帝国軍にもたらした。敵軍は、現実に起こった脅威を信じられない面持ちで撤退して行く。

城門の上で全てを見ていたエメリンは、タガー将軍と兵士達に命じた。

「将軍は、直ぐにあの子達を保護して、私の部屋に連れてきて。それ以外の者は、城外で負傷している市民の救護を急いで」

命じられたタガー将軍は、城壁の階段を駆け下りて城門から真っすぐ、リリカと春馬の元へ向かった。

「さあ、早く、こちらへ」

声の方に向かって、気が立っていた春馬は手にしていた剣を向けた。切っ先が、タガーの喉元で止まる。

「うっ・・・、あなた達に危害を与えるつもりはありません」、タガーは両手を上に上げ、敵意の無い事を示した。

「今は、信じてください。だから、私の後に付いて来てください」

意識を失うリリカを抱き抱え、春馬はタガーの後を追いかけた。
信じるも何も無かった。今はただ、リリカを早く安全な場所に連れて行く事が先決だった。

城門を抜けると、街の中心にそびえる岩山が見える。青々と茂る木々、頂上が平らに削り取られ、その上にはまるで要塞のような城が建っている。

城へ真っすぐ伸びる道沿いには、素朴な木製の建物が並ぶ。

山に近づくにつれて、狭い坂道が続いた。

城の入り口は、巨大な岩石をくり貫き作られていた。落とし格子式の門で、守られている。入り口の左右には、炎のたてがみがのライオンの彫刻が、城に入る者を睨みつけていた。

城の奥へは、岩石をくり貫いたトンネル状の通路を通る。中は広く左右の壁には火が灯され、所々に大きな扉がぼんやりと見えた。全ての扉は閉まっていたが、中は馬小屋から物資の貯蔵庫など軍用の部屋だ。

獣人族の国マラガ王国は、城の外と中で防御力に特化した造りだった。小国故に知恵を絞り、攻められ難い国づくりを追求したのだろう。

軍司の執務室へ案内されると、タガーは急を要する仕事があると言い残し去った。咳ばらいをした春馬が大きな扉を開けると、部屋の奥にある机の上で足を組んで座る女性と目が合った。

探る様に部屋の中を見ると、背の低いテーブル、それを挟むようにソファが置かれていた。一番奥には窓があり、その前には大きな机、壁には本棚。

机から脚を下ろしたエメリンは、春馬のそばに歩み寄った。

「初めまして。私は、軍司をしているエメリンよ」

「ああ、俺は、一条春馬です。意識を失っているが、この子はリリカだ」

「ふーん、まだ子供っぽい女の子だったのね。うふ、可愛い」

「此処に連れて来たのは、何か目的があるんですか」

「それは、ほら、意識を失った女の子を放っておけないでしょ」

「本当にそれだけですか?」

「ふふふ、そんなに警戒しないで。あなたたちは、この国を帝国軍から守ってくれたでしょ。貢献者を招き入れるのは、ダメかしら」

「はあー、そうですね。結果的には、この国を守ったことになるのか」

「詳しい話は、彼女を私の寝室で休ませてからにしましょうか」

妖艶な軍司は、隣の部屋へ春馬を案内した。

寝室には大きなベッドがあり、そこでリリカを休ませる。

直ぐに給仕が四名入って来ると、リリカの汚れた服を着替えさせ身体をきれいにするからと話し、春馬は寝室から追い出された。

寝室のドアを閉めた春馬は、エメリンに話しかけた。

「大丈夫なんですか?」

「えっ、大丈夫とは、何が?」、春馬の質問の意図がエメリンには伝わらなかった。

質問するには、言葉が足りない。男性にありがちなパターンだ。

「すみません、あなたなら、リリカの今の状態が分かるかと思って」

「うん、それなら安心して。彼女は魔力を使いすぎて眠っているだけだから」

「そうか、良かった」、安堵した春馬は胸をなでおろした。

「ただし、覚悟してね。2、3日は目を覚まさないわよ」

数日間目を覚まさないと言われると、春馬は動揺した。

「昏睡状態、・・・そんな訳ないよな」

「いえ、それに近いかも知れないわね。魔法士は、力を使いすぎると意識をなくして動けなくなるから。下手したら命を落とす危険もあるけど」

二人は向かい合ってソファに腰を下ろした。

「リリカを休ませてもらい、感謝しています」

エメリンは、軽く頭を下げた春馬に微笑みかけた。年上の彼女は、年齢に関係無く素直な男性が好きなのだ。黒髪の青年に興味が沸いてくる。

「あなた、この世界の人間じゃないわよね」

「えっ、バレてるの。仕方ないな、そうですよ」

「あなたが、魔法陣の中から現れるのを見ていたの。それに、光る剣を何もない所から出して使っていたわよね」

「あれは、俺専用の武器です」

「そっか、じゃあ、小さな魔法士さんがあなたを召喚したのかしら? 人を召喚する魔法なんて初めて見たけど・・・」

春馬は、驚いた。この世界の魔法士は、みんなパートナーが居ると思っていたからだ。エメリンの口ぶりから、この世界に召喚されている異世界人は、どうやら自分だけしか居ないみたいだ。
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