ネックレスとブレスレット【改】 魔法少女に召喚された青年は彼女を守る事になりました!

川村直樹

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奇襲作戦 6

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深夜から始まったエルフ達の攻撃は、まだ続いていた。

ゲートは原型をとどめないほど破壊され、帝国側が見えている。

左右にあった塔は完全に崩れ落ち、壁は穴だらけだ。

春馬とリリカはシュルツ隊長の元へ行き、奇襲攻撃は無事成功に終わった事を伝えた。

「良かった、成功しましたか。それでは、我々も攻撃を止めて戻りましょう」

「そうしましょう、長居は無用ですから」

シュルツは、春馬の血に染まる袖が気になった。それに春馬の表情も思わしくない。痛みより出血によるダメージが大きかった。

「左腕を抑えていますが、怪我でもしましたか?」

「ああ、油断しました。銃で撃たれてしまって。弾は貫通しています」

「治療しますから、見せてください」

そう話したシュルツは、両方の手のひらを春馬の腕に向けて光魔法を使った。

「神より賜りし光よ、我らの友を癒したまえ」

強い光が春馬の腕に注がれ、光のあたる箇所が温かくなった。

心配そうに銃創を見ていたリリカは、光魔法で傷口がふさがって行く様子に目を疑う。嘘みたいに痛みは、取り除かれ傷跡すらなくなってしまった。

「有り難うございます。光魔法で傷を癒すなんて凄いですね」

「ええ、光は神から授かったギフト(賜物)ですから。癒しの恩恵も神は与えてくれたのですよ。本当なら人間族も同じように光魔法を使えるのですが、神を忘れてしまった今は使えなくなったのです」

この光魔法と闇魔法は、人間族も使える力だった。
神を信じる信仰心からもたらされるギフトなのだ。

ただ、光魔法と真逆の闇魔法は、破滅を意味している。生と死を連想させる魔法は、欲深い人間族にとっては忘れ去られた方が良いのかも知れない。

「では、アルフヘイムに戻りましょう」

シュルツは、攻撃の中止と帰還指示を部下に出した。

かく乱を目的とした国境での戦闘は、帝国へ多大なる被害を負わせ終了した。思わぬ成果と自分達の被害の少なさにエルフ達は、意気揚々とする。

魔法と弓の攻撃が止み、徐々にエルフ達は森の奥へと姿を消していく。

「さあ、俺たちも帰ろうか」と、春馬はリリカの手を取った。

無事作戦は、終了した。後は帝国軍がどの様な動きを見せるのかにかかっていた。思惑通りマラガ王国と帝国との国境に居座る帝国軍が、撤退してくれることを祈りながら戦場を後にした。

アルフヘイム城の大広間では、ビュグベルが彼等の帰りを待っていた。

「腕を怪我したと聞いたが、大丈夫なのか?」

「ええ、ご心配なく。シュルツ隊長の光魔法で、癒してもらいました。傷もすっかり消えてしまいましたよ」

「そうか、大事なく良かった。我々エルフ族も被害が無かったと聞いたので、なお良い。これから、どうなるかの?」

「国境の壁の破壊と帝国内の武器工場の破壊に成功しましたので、問題無く帝国軍はマラガから撤退すると思います」

「凄かったのよ、龍みたいな火柱が立って。ドドーン、バーンって工場が壊れて行ったの」、興奮気味のリリカが口を挟んだ。

「ははは、リリカの魔法のおかげですよ」

両手を合わせたリリカは、照れくさそうに身体をくねらせていた。

「国境ゲートと広範囲に壁を破壊しましたので、帝国軍がアルフヘイムに侵攻する恐れも無いかと考えます。しかし、暫くは国境での偵察を強化する予定ですのでご安心を」、報告を終えたシュルツはエルフの長に一礼した。

「よろしい。それでは、リリカと春馬はこれからどうするのじゃ? このまま旅を続けるのであろう」

ビュグベルの問いかけに春馬は、「そうですね、直ぐに出発したいのですが、マラガ国境で居る帝国軍の撤退を確認してからになりますね」

そう、彼等の旅の再開は安全を確保してからだ。

「そうか。残念じゃな、もう少しゆっくりしてもらいたかったが。次にアルフヘイムに来た際には、お主たちの祖母の武勇伝でも、お聞かせしたい。楽しみに待っておるぞ」

自分の祖母の昔話に興味をそそられたのか、リリカはビュグベルの手を両手でしっかりと握りしめた。嬉しそうに笑みを浮かべる彼女は、今からでも祖母の話を聞きたかったが、次回訪れた時の楽しみに取って置く事にした。

「本当ですか、是非是非お願いします。必ずアルフヘイムに戻って来ます。それにエルフ族の料理は絶品だと本に書いてあったので、それも気になるし」

「ほう、我々の文化に興味があるのか。では、料理のもてなしも忘れないようにしないとな」

リリカの言動は、周囲を和ませる力がある。戦闘を終え疲れているはずのエルフ達を笑顔にさせていた。

何か話したい事があるのか、ビュグベルは春馬の傍に歩み寄って来た。

「一つ確認したい事があるのじゃが」

「何でしょうか?」

「ネックレスとブレスレットを持つ者は、我々と同じように神からギフトが与えられていると聞く。ネックレスを持つ者は強力な魔法、そのパートナーは専用の武器が与えられてはずじゃ。トミは、確か疾風の槍を使っていたが、お主の専用の武器は何じゃ?」

「光の剣ですが、何か知っていますか?」

「おお、それは良かった。我々と同じ属性の力を秘める武器じゃよ。お主らに協力したことは、我々の定めだったのかも知れない」と、感慨深げにビュグベルが顎に手をやった。

「何か知っているのでしたら、教えて貰えませんか」

「良い良い、我々に伝わる話なのだが、光の剣は切りたいと願えば、この世にあるもの全てを切るらしい。硬さや大きさに関係なくじゃ、その剣は思うがままに伸び、光を放つ事も出来ると聞く。それに普通の剣と違う所は、人の心や思い記憶さえも全て切るらしいぞ。ただし、所詮武器なので、癒しの力は無いので気を付ける事じゃな」

腕を組みながらビュグベルの話を聞いていた春馬は、精神的なものが切れるなら、今まで経験してきた事と一致するので納得できた。

ビュグベルの話した言い伝えの内容は、全て真実だった。

光の剣は、何でも切れるし、遠くまで伸ばせる、しかも放つ事も出来る魔法剣だった。

色々な事が出来る剣なら論より証拠で、実際にどこかで試して見たくなる。

「有り難うございます。色々と試して見ますよ」

「うむ、二人とも、この強大な力を決して己の欲のために使わないで欲しい。これだけは、約束してくれ」

「もちろん、お約束します」と、春馬とリリカは声を揃えた。

この世界で神から与えられた力(ギフト)は、全て使う者に委ねられている。

強い魔法を手に入れれば、一国どころか世界を支配する事も可能になるので、ビュグベルが憂いるのは至極当然だった。
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