ネックレスとブレスレット【改】 魔法少女に召喚された青年は彼女を守る事になりました!

川村直樹

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奇襲作戦 7

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話が終わるとヴェルガがマラガの代表者として、ビュグベルの前に歩み出た。「この度のエルフ族の協力に感謝いたします」

帝国の動向から良からぬ方向に世界が進んでいると感じていたエルフの長は、自国の危機管理をする上で、隣国との連携が必要になる時が来たと確信した。

「再び両国の交流を深めるために、マラガ王に親書をお送りしましょう。危機に瀕した際は、互いの協力が必要になるでしょうから」

エルフ族からの親書を受け取ったヴェルガは、振り返り仲間達に告げた。

「さあ、マラガへ帰りましょう!」

静寂の森から出ると、暖かく初夏を思わすような気持のよい気候になっていた。緊張感の途切れたリリカは、終始気持ちよさそうに狼の背で揺られながら眠る。大きな欠伸をした春馬は、口を少し開け呼吸する彼女の頬を指で突きながら寝顔に見とれた。

「しかし、よく眠るな。魔法は便利だが、消耗が激しいのかな」

移動中だけでなく、リリカは昨晩も食事が終わるとすぐに寝ていた。

まだ15歳の少女には、魔法は精神的にも肉体的にも負担が大きい。まだまだ、十分に成長していない証拠だった。

マラガ王国から数十キロ離れた場所で、長い隊列を作り自国へと帰っていく帝国軍と出会った。マラガ侵攻を諦めて、完全撤退を始めていたのだ。

騎兵が先頭を進み、その後からライフル銃を肩に乗せる歩兵と剣や槍を持つ兵士達が続く。兵士達に守られるようにして、大砲を馬が引いて行く。

長い隊列を組む彼等は、みんな疲弊していた。

多くの死傷者を出したリリカの魔法攻撃は、精神的にも肉体的にも大きなダメージを与えていた。

マラガ王国は、帝国軍の撤退に住民達が歓喜に沸いていた。

どうして帝国軍が引き上げて行くのか理由は知らなかったが、そんな事は彼等にとってどうでも良かった。

とにかく喜びをみんなで分かち合い騒ぎたかったのだ。

街の騒がしさとは裏腹に、城内は落ち着いていた。

「ありがとう、上出来よ。昨日の内に帝国軍は、国境から撤退したのよ」

「ふう、作戦通りになって良かった。まあ、一番の功労者は、彼女だけど」と、春馬はリリカの方へ視線を移した。

「ふふふ、リリカ。私達を救ってくれて有難う」

エメリンに抱きしめられるリリカは、恥ずかしそうに照れていた。

春馬やヴェルガ、そしてエルフ達と多くの人が協力してくれたから、帝国軍を追い払い、親切にしてくれた獣人達が安心して暮らせる環境を取り戻せた。

「いえいえ、ヴェルガさんやエルフの皆さんのおかげですよ」

「そんな事無いわよ。リリカは、よく頑張ったと思う。さあ、疲れたでしょ、ソファに座って」、お茶の準備をするよう給仕を呼んだ。

「ねえ、春馬は座らないの?」

春馬は、首を横に振りソファに座らなかった。

「エメリンさん。申し訳ないけど、俺は自分の世界に戻ります」

「ええ、今なの? 別に良いけど」

「それじゃあ、奇襲作戦の報告は、明日しますよ」と、光の中に春馬は消え、自分の世界に帰った。

「春馬は、本当に違う世界の人なのね」

「はい、知らないことを教えてくれるし、変な機械を見せてくれますよ」

「私たちの世界より、きっと彼の世界の方が進んでいるのよね」

紅茶を飲みながら、用意されたお菓子に手を伸ばすリリカを眺めていたエメリンは、「まあ、良いわ。せっかくだから、リリカに説明してもらおうかしら」

「えっ、上手く出来るかな。それでも良いの?」

いきなり説明を求められたリリカは、ソワソワし始めた。初めて報告する彼女の心中は穏やかではない。考え込むリリカは、体を左右に揺らしていた。

「あら、かわいい仕草」と、リリカの横に座り直したエメリンは、たまらず彼女を抱きしめた。

エメリンの胸に顔を埋めたリリカは、窒息しそうになる。

「く、苦しいです」

「ご、ごめんなさい。じゃあリリカ、説明して」

凛々しい顔つきでスクッと立ち上がったリリカは、静寂の森の事や奇襲攻撃について報告を始めた。

彼女は必死に身振り手振りで話すのだが、擬音が多すぎて内容が見えてこない。難解な説明になってしまった。

「エルフの国、アルフヘイムは自然と建物が融合していて本当に綺麗でした。エルフ族の長と会った後に国境に行ったのですが、エルフの光魔法は、ババーンて感じで夜空を照らして、ゲートとか壁とかをガンガン壊してしまって。帝国には春馬と一緒に入って、工場と倉庫を炎でゴーと焼いて、グワーと炎の竜巻が出来たらバーン、ドドーンて工場が爆発しました。もう、建物がたくさん爆発したんですよ、ビックリでした。森に戻る途中で春馬は、銃で撃たれて怪我したんですが、エルフの光魔法でビビーと治してもらったんです」

興奮しながらも得意げな表情を見せるリリカが話し終えた。

ハアハアと息を切らす彼女は興奮冷めやらぬ様で、放っておいたら再び話し出しそうだった。

そんなリリカの姿がツボに入ったエメリンは、吹き出しそうになるのを必死で堪えた。

「ぐっふふふ、報告ありがとう。今日はもう疲れたでしょ、食事の用意を頼んでおくから、先にお風呂に入ってゆっくり休むと良いわ」

マラガには、この世界では珍しい入浴の習慣があった。

城内には来賓客をもてなすために、大きな湯船を備えた男女別の浴場があり、リリカは女性専用の浴場へ案内された。

広い浴室に感動しつつお湯の中に体を沈めると気持ちが良い、疲れている時ほどその心地よさに、全身から力が抜け癒される。

湯船につかるリリカは、ボーと、天井を眺めながら考える。

私、一人じゃ出来ない事が多い。

春馬の助言通りにすると、びっくりするような魔法が使えるし、ヴェルガさんやエルフの人たちは、危険な場所でも私を守ってくれた。

一人前になったら、一人で何でも出来るようになるのかな・・・。
ああ、なんだか無性に眠たい。
瞼が重くなり、ふわあーと、大きな欠伸をした。
明日、春馬を呼び出すのを忘れないようにしないと。

半分寝ている様な状態のリリカは、何も考えられなくなり、湯船から上がった。ほとんど記憶が無いまま用意された食事をし、気が付けばベッドで眠っていた。

翌朝、目を覚ましたリリカは、見慣れない天井が目に入り息を呑んだ。

「キャッ、あわわわ、驚いた」、直ぐにマラガ王国の城内に居る事を思い出し起き上がった。

隣の部屋では、エメリンがソファに座り何か調べているのか本を読んでいた。

「おはようございます」

「おはよう。驚いた声が聞こえたけど、よく眠れたかしら?」

「へへ、はい。お風呂に入れて、疲れはすっかり取れましたよ」

「それなら、良かった。今日の予定だけど、王から祝賀会の招待を受けているの。夕方になるけど、問題は無いかしら?」

「大丈夫ですよ。それまでには、春馬を呼んでおきますね」

帝国軍の侵攻を止めた功労者達を集め、感謝と労いをする為の祝賀会が催される。

来賓として正式に参加をするのは、初めての経験になるはずだ。それなのにリリカは、作法や服装など全く気にしていなかった。

エメリンの問いかけは、その事を気にかけていたのだが、彼女には伝わっていなかった。
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