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第四章 KOD決勝ステージ編
第111話 ドッペルゲンガー
しおりを挟む全ては一瞬だった。
最初の立ち位置から姿を消したアンノウンが、フォーマルハウトの背後へ。
そして、自らの創造主であり、自身の住処であるダンジョンの主――フォーマルハウトを、己の手で真っ二つに切り裂いた。
【き、きさ――】
フォーマルハウトが反応――した時には、もう手遅れだった。
更に重ねて放たれたアンノウンの斬撃が、その全容を一切の容赦無く、無慈悲なほどに切り刻む。
微塵に、無尽に。
黒い球体の原型が消え去るほど、圧倒的に。
後には、塵となったフォーマルハウトの残骸が、埃のように宙に舞うだけだった。
〈は……は?〉
〈え、今、何が起きた?〉
〈ダンジョンコアが……〉
〈アンノウンが〉
〈え、ダンジョンコア、破壊された?〉
《影狼チャンネル》のコメント欄にも、狼狽の空気が流れている。
それもそのはずだ。
モンスターが、ダンジョンコアを破壊した。
人間が神に逆らうような、そんなマネをしたのだ。
理解が追い付かないのだろう。
「………」
そんな中、俺はアンノウンの動きを注意深く観察していた。
故に、気付いた。
あの刹那、あの一瞬。
アンノウンがフォーマルハウトの背後に一瞬で移動したかのように見えた動き――あれは、俺のスキル【陽炎】が発動した時と同じ現象。
更に、その後、瞬く間にフォーマルハウトを切り刻んだ斬撃。
明らかに太刀筋の数を上回る剣戟が叩き込まれていたあの現象は――【斑切り】。
「俺の技と、俺のスキル……フォーマルハウトは、ドッペルゲンガーと言っていたか」
〈確か、ドッペルゲンガーって遭遇した探索者の姿に変身して襲い掛かってくるモンスターだよな?〉
〈そうそう、変身した対象を執拗に攻撃して、自分が成り代わろうとする習性を持つモンスター〉
〈あのダンジョンコア、確か、影狼達の記憶を反映させたとかって言ってなかったっけ?〉
〈え、じゃあ、影狼と同じステータスなの?〉
コメント欄が俄にざわつく。
その直後。
「……これで」
空間に、声が響き渡った。
低い、しかし若い男性の声に聞こえた。
その声の主が――今し方フォーマルハウトを屠った、アンノウンの頭部から発せられたと気付くのに、時間は掛からなかった。
「俺達は、自由だ」
「……お前、意思があるのか?」
問い掛けると、アンノウンが赤い目線をこちらに向けた。
「ああ。俺を縛るもの。俺を支配するもの。最も厄介で邪魔だったもの。いつか破壊し、その呪縛から逃れられないかと考えていた……お前には礼を言う、俺のコピー元」
アンノウンが、俺に体を向ける。
「お前がここにやって来た事で、“アレ”は酷く恐慌状態に陥った。お前に全ての意識が向き、混乱し、隙が生まれた。その隙を、突かせてもらった」
「………」
「後は、お前だけだ」
アンノウンが、俺に刃を向ける。
「コピー元であるお前を破壊し、俺がお前に成り代わる。この穴蔵を出て、外の世界で、俺は自由にやらせてもらうことにする」
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