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第9章
09-221 キリヤ訪問
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萱場隆太郎は、マハジャンガでは変哲のない建物を訪れていた。
見た目の違いは、敷地が広いこと、警備員がいることくらいだ。
ここで、磯貝聡子移住委員会委員長と面会する。彼女が、マハジャンガの最高指導者だ。
「お待たせしました。
初めまして、磯貝です」
隆太郎は、彼女をモニター越しに何度も見ているが、実年齢よりも5歳ほど若く見える。30歳代半ばのはずだが、20歳代後半にしか見えない。
「萱場隆太郎です」
「おかけになってください」
ソファーを勧められ、隆太郎が従う。
「単刀直入に……。
委員長特別補佐に就任していただけませんか?
私たちは、この世界で生きていかなくてはなりません。
ですが、世界情勢がわからないのです。
わかっていることもあります。
その、わかっていることを利用すれば、世界の中で、マハジャンガの地位が確立できると思うんです。
時間がかかるでしょうけど……。
どう動いていくのかもわからないし……。
だから、萱場さんに委員長特別補佐に就任してもらいたいのです。行政が表だってできないこと、例えば商行為、貿易とか、そういったことに関与してほしいのです」
「暗殺とか、破壊工作とかはしませんよ」
「そういったことは、お願いしません!
萱場さんに動いてもらって、波紋を起こしていただきたいのです。その波を捕らえて、行政は動いていきたいのです」
「私だけですか?」
「いいえ、表だって動く委員も参加する予定です。
ですが、委員では動けない部分を、萱場さんにお願いしたいのです」
隆太郎は少し考えたが、この得体の知れない申し入れを引き受けた。
どう動くにしても、行政の通行手形は必要だと感じたからだ。
バンジェル島の王冠湾勢力から入手したタンカーは、東地中海北アフリカの石油製品積み出し港とマハジャンガ間を往復している。
石油製品の備蓄基地がないため、タンカー自体がタンクの役目を負っていた。2隻あれば、需給のバランスが最低限確保できるのだが、現実はそうなっていない。
マハジャンガは、常時、危機的状況にあった。食料と燃料の供給は不安定で、その他の物資が不足するのも遠くはないと予測されている。
物資の供給源確保は、喫緊の課題となっている。
エリシアは鮎原梨々香が機長となったことに不満だった。彼女はパイロットとして働いているが、梨々香の職業は固定翼機の開発スタッフだからだ。
ただ、卓越した飛行技術、飛び抜けた離着陸技術には敬意を払っている。
でも、不満だった。
さらに不満なのは、梨々香に「私は着陸だけでいいよ」とお姉さん発言されたことだ。
しかし、この重要な飛行で、離陸を担当することは、彼女にとっては人生最大の名誉だった。これ以上の名誉が、今後の人生で出会えるかわからない。
だから、逃す気はなかった。
移住委員会は、この飛行計画を重要視していない。ズラ湾への飛行作戦の前段階、あるいは予行演習程度に位置付けている。
移住委員会委員長は「この飛行は、人道的見地からの行為であり、外交とは無関係」だと表明している
750軸馬力級ワルターM601を装備するキングエアB200の巡航速度は、ややアンダーパワーなことから時速500キロを超えない。
一方、燃料の消費が少なく、航続距離は推定で4000キロに達する。これは、現下の状況においては、悪いことではない。
メーウィッシュは、接触したマハジャンガ住民の言葉を詳細に記憶し、事後に記録し、分析していた。
レムリアでは大豆は重要作物ではないが、マハジャンガでは大豆を必要としている。また、砂糖も欲している。
大豆や砂糖は、キリヤで用意できる。もちろん、小麦も。ソルガムは求められていない。米は作っていない。
驚いたことは、未成熟の大豆を枝豆と呼んでよく食べること。本来は大量に消費する食品だが、貴重品扱いされている。
メーウィッシュはマハジャンガの街を歩き、商店を覗き、パンや菓子の種類の豊富さに感心したが、野菜や果物の種類が限られていることに気付いていた。
枝豆なら、すぐに生産できる。
また、アフリカの住民は好みがまちまちで、商談を効果的に進めるには嗜好を探る必要があることも理解していた。
それと、見たことのない野菜もあった。果物は野生種を収穫していると聞いた。果物の生産まで、手が回らないのだ。
メーウィッシュは、護衛と侍女とともにキングエアの機内に入る。
説明によれば、4時間から5時間でキリヤに到着する。
彼女は、飛行機の速さに驚いた。
キリヤの滑走路は、よく整備された草地だった。芝生の滑走路だ。芝生の広場のような施設で、最大距離は3000メートル以上ある。
予定通り、梨々香が操縦して着陸した。十分な距離を使っての滑走だった。着陸時の振動は、乗客が怯えるほど大きかった。
格納庫どころか、管制塔さえない野原に降りたキングエアは、10分後には大勢に取り囲まれていた。
機内からメーウィッシュが降りると、飛行場に集まった面々は、幽霊でも見るような衝撃の中に困惑が混ざる複雑な表情をする。
「生きていたのか?」
「死んだと聞いたが……?」
「どうやって助かったんだ?」
不自然な反応が広がる。
メーウィッシュは、2人の護衛と2人の侍女の先頭を歩いて行く。
軽快そうな単軸の馬車が飛行場に入ってきて、若くはない女性がメーウィッシュに走り寄る。
抱きしめて泣き出す。
その2人を壮年の男性が抱きしめる。
説明は不要。メーウィッシュの両親だ。涙を浮かべて遠巻きにしている女性がいる。護衛か侍女の家族だろう。
「父上、船が漂流しているところを、この方たちにお助けいただきました。
マハジャンガという街の方たちです」
「マハジャンガ?」
壮年の男性は戸惑いながらも挨拶する。
「娘と家人の生命をお助けいただき、ありがとうございます。
私はキリヤの議員で、ランヴィールと申します」
「お嬢様をお届けできたこと、安堵いたしました。
私はマハジャンガの委員で、鏑木健介です」
メーウィッシュは少し興奮していた。
「父上、聞いてください!
船足の速い動力船で3日かかる距離を、1日の6分の1で飛んできたのです!
この速さ、信じられません!」
「とりあえず、我が屋敷に。
みなさんご一緒に」
そう誘われたが、梨々香とエリシアは、飛行機に残ると固辞する。それが、2人の任務だからだ。
エリシアが言った。
「鏑木の爺さん、上手くやってくれるかな?」
梨々香が肯定する。
「飲み過ぎなければ、大丈夫だよ。
それに、花沢のおばちゃんが一緒だし……」
15時頃、キングエアに食事が届けられた。丸テーブルと椅子も運ばれる。
食事の内容は、梨々香にはご馳走のレベルを超えていたし、エリシアにとっても豪華だった。
丸耳族はヴィーガンではないのだが、動物性タンパクの摂取量が少ない。東アフリカ内陸海路は無酸素に近く、棲息する魚は極端に少ない。
漁業という産業はなく、魚食はほとんどない。家畜は飼育しているが、例外なく役畜で食用にすることはない。
例外は家禽で、ニワトリやアヒルを飼育し、卵や肉を食用にする。野生動物に対する狩猟はあり、肉を食用にする。
「これ、すごく美味しい」
エリシアが梨々香に柑橘を投げる。
梨々香は「もらっていくことは恥ずかしいことかな。サクラに食べさせてあげたいな」と声に出しかけていた。
鶏肉なんて滅多に食べられないし、骨付きもも肉を頬張るなんて、数年ぶりだった。
果物の種類は豊富で、野菜のスープは美味。驚くことに、醤油味の炒め物がある。
侍女頭といった雰囲気の女性が、エリシアに言った。
「お気に召していただけたようですので、果物を用意しましょう。
お土産として、お持ち帰りください」
翌早朝、鏑木委員が1人で歩いて飛行場に戻ってきた。
「おもしろい話しをたくさん聞いたよ。
まぁ、この内陸湖岸地域は西岸地域からいじわるをされているんだ。
しかも、情勢を理解していない。
西岸地域の背後には西アフリカのヒトがいるように臭わされているようだが、それを鵜呑みにしている。
実際は、いないんじゃないかな」
梨々香が小首をかしげる。
「影に怯えている?」
鏑木委員は否定しなかった。
「あぁ、西岸地域は怖くないが、西アフリカのヒトは怖いんだ。そこを上手く突かれているようだ」
エリシアが戸惑った目をする。
「どうすればいいの?
メーウィッシュの力になってあげたいけど……」
鏑木委員は老練な政治家だ。
「何もしない。
だが、交易には応じてくれた。
我々は、たった8500人だ。欲しいものは飛行機で運べる。もうすぐ、西アフリカから手に入れた輸送機が飛べるようになる。
ズラ村に行く必要はないかもしれない」
梨々香が疑問を口にする。
「でも、たった8500人をまともに相手にしてくれるのかな?」
鏑木委員には策があった。
「中部レムリア内陸の穀物や豆類を東岸から輸出すればいいんだ。
鮎原さん、輸送機で運べるブルドーザーは、どこかにあるかな?」
梨々香が慌てる。
「見たことがありますよ。小型のブルとミニショベルの中でも大きいタイプ、小型のホイールローダー、小型のダンプは運べます」
鏑木委員は、梨々香の回答に満足する。
「ふむ、東部海岸までの道路と東岸に港湾を整備する手伝いはできるだろう。
それと、東岸の島を拠点にしている海賊対策にも協力できる。
海賊を何とかしないと、レムリア東岸沿岸航路は使えないからね。
それよりも、中部レムリア内陸は、沿岸航路であっても航海する技術はないらしい。
その部分でも協力できる。
先が見えれば、船舶用鋼板を買うことだってできる。船台はどこに作る?
そんな悩みも生まれる。
どう思う?」
梨々香は呆気にとられていた。鏑木委員の構想が、先走り過ぎるからだ。
エリシアが悪戯っぽく笑う。
「鏑木さんって、詐欺師っぽいよね」
「詐欺師?」
「だって、ウソっぽいこと真顔で言うじゃない」
鏑木委員は大笑いする。
「そうかもな。
でも、詐欺師ではなく、策士と言ってくれ」
メーウィッシュと別れるとき、エリシアは「また来る」と告げた。それは惜別の挨拶ではなく、彼女の意思だった。
メーウィッシュから「荷物はどれくらい積めるの?」と尋ねられ、梨々香は「小さな荷車1台分くらいかな」と答えた。
鏑木委員が要求したわけではない。メーウィッシュが厳選した土産が用意された。
マダガスカルにはないジャクソンフルーツを始めとする柑橘類、マンゴー、パッションフルーツ、パラミツなど。
イチゴ、ラズベリー、ブラックベリー、マルベリー、ゴールデンベリーなどのベリー類。
そして、大豆。あえて、小麦は外された。キングエアの積載量には限界があるからだ。
メーウィッシュの狙いはあたった。イチゴや柑橘類の栽培まで手が回らないマハジャンガでは、果物は穀物とは異なる意味があった。
ジャクソンフルーツは4つに切り分けられ、給食時に12歳以下の子供全員に配られた。
自宅で丸ごと2個を平らげたのは、サクラだけだ。
鏑木と花沢の両委員は、移住委員会内での多数派工作を始めていた。
「200万年後の列強が集うソコトラ島やレムリアに強大な権益を持つバンジェル島などと伍して競うことができないマハジャンガは、いまは一定の国際的地位を地道に固めるべきだ」
この意見に傾く委員がおり、同時に「もう少し様子を見てもいいのでは」との中間的立場に向かう委員も出始める。
鏑木委員は、政治家らしい寝技も使う。
裏から手を回し、エリシアを双発双胴大型輸送機ボックスカーの機長にしたのだ。
同時に、梨々香には「飛行機に積める建設機械を準備してください。あなたにその権限を与えます」と依頼する。
梨々香が「滑走路を整備するのですか?」と尋ねると、鏑木委員は微笑むだけだった。
花沢委員は「友好地域を作るべき」と母親集会で、支持の拡大を目指している。
梨々香は花沢委員から「母親集会には必ず出てね」と言われ、集会ではヴィクトリア湖東岸の様子などの話をさせられている。
利用されている感はあるが、梨々香自身は花沢委員の判断は間違っていないと思っていた。
だから、可能な限り協力した。
また、鏑木委員の依頼については、工場長と精査している。小型ブルドーザーと大きめのミニショベルをボックスカーで同時に空輸できると判断した。
適地があれば、3000メートル級の転圧滑走路を整備できる。現在の滑走路は小型機用で、しかも街中にあるので、事故の際に巻き込んでしまう危険がある。
郊外に適地を探す必要があるが、協力を得られるか不明だった。
重大な問題がある。
キリヤには航空燃料を積んだタンクトレーラーがあるのだが、この燃料はバンジェル島王冠湾勢力の物資で、「譲渡はできない」と説明された。
このため、帰路用燃料を機内に積んでいく必要があった。
当面はこの方法をとるしかないが、そうなると乗客数は減らさなくてはならない。滑走路の建設だけでは、物事は進まない。
燃料の問題は大きく、頻繁な交流がしにくい。
キングエアの100と200シリーズの何機かを練習機とし、350シリーズを小型輸送機の代用にしていくしかない。
エンペラーエアの再生産を急ぐ必要があるが、そう簡単に作れるわけもない。
エンジン確保の問題もある。
C-130ハーキュリーズの投入も考えられるが、滑走路が整備されるまでは現実的ではない。
移住委員会は迷っていた。
鏑木と花沢両委員の主張は正論ではあるが、遠回りではないのか、と。
しかし、中部レムリアとの交流が無意味だとは考えていない。物資と情報の取得には、一定の価値があると評価していた。
梨々香は、レムリアの住民であるカプランからティターンの話を聞いていた。
場所は飛行場の休憩室だ。
「ティターンは、レムリアを8つの地域に分けていたんだ。
まず、ヒトが東アフリカ内陸海路と呼ぶ沿岸地帯と内陸以東を東西に分ける。
南北は、北部、中北部、中南部、南部の4区分。東西2区分、南北4区分で、8地域だ。
これは、実際の部族の境界とは無関係だった。
南部の南半分は、ティターン本来のテリトリーだった。残り半分は、数百年前に勢力圏に入った属領。古い属領は優遇されていたけど、新しい属領、侵略されている他部族領は厳しい対応がされていた。
北部は地理的に遠い。北部が最後の未平定地だった。
ティターンによるレムリア全土平定が見え始めていた。そんな侵略の真っ最中に王冠湾がやって来たんだ。
王冠湾の支援で、北部は独立を保ち、王冠湾との交易で発展した。
中部は、北部に比べると複雑だった。北部はほとんどが農民で、少数の遊牧民がいるだけという単一性があったんだ。
対して中部は、農民、半農半採集、半農半牧、定住牧畜民、遊牧民、採集民といろいろだった。農民でも完全定住がいたし、焼き畑を行う半定住もいた。
紆余曲折を経て、中北部と中南部は共同して中部となった。南のティターンが恐ろしかったしね。
その後、南部にいた逃亡奴隷たちが中部に移動してきたんだ。社会構成はさらに複雑になった。
結局、中部には北部のような一体性は生まれなかった。分裂しない理由は、ティターンが怖いからさ。
中部と付き合うなら、平等を心がけたほうがいい。特定の地域をひいきにするのではなく、あまねく友好を考えるんだ」
梨々香はカプランの話を聞きながら、カプランの意見を花沢委員に伝えると決めていた。
バンジェル島とクフラックは、赤道以北アフリカにおける政治と経済の二大勢力だ。イデオロギーと軍事的な対立はなく、経済的な競合関係にある。
両勢力の科学技術力は、拮抗している。
他にも有力な勢力はあるが、バンジェル島とクフラックの技術に依存している部分が多い。
だが、両勢力とも同盟国を集めるブロック化はしていない。是々非々ながら、友好関係にある。
カラバッシュがクフラックの傘下に入って以降、航空機に関しては両勢力以外は優勢ではない。救世主とアトラス山脈も航空機を製造するが、どちらもレシプロの小型機に限られる。
厄介なことは、両勢力が対立していないことから、利害が一致すると重要機材・機械の輸出を止めることだ。
そして、バンジェル島とクフラックは、マハジャンガに対して、ターボプロップエンジンの販売を渋るようになった。
マハジャンガを警戒し始めたからだ。
バンジェル島王冠湾は、喉から手が出るほどほしかったP&W PW4000ターボファンエンジンを当面の必要数入手したし、クフラックには取り立ててほしいものはなかった。
マハジャンガを切り捨てても、影響はない。 それよりも、C-1輸送機くじらちゃんが新たなPW4000を得て再度進空した頃、マハジャンガではバンジェル島がエンジンレスで売り払ったC-119改ボックスカーに4600軸馬力のアリソンT56-A-14ターボプロップが搭載されて空に舞ったことの重大性のほうが大問題だった。
バンジェル島とクフラックは、航空機生産を統制することで、大きな発言力を得ていた。
マハジャンガの登場によって、この秩序が崩れかねないのだ。
だから、バンジェル島とクフラックはマハジャンガにターボプロップエンジンを提供しないことを決めた。
これが、マハジャンガ封じ込めの端緒だった。
両者は個別に決定し、相互に方針を通告する。両者に異論はなく、そのことをマハジャンガは知らない。
マハジャンガでは、ワルターM601やP&WC PT6Aが入手できなくなり、キングエアとエンペラーエアの製造ができなくなった。
レストアできる機体は、すべて対処してしまった。これから先は、新造しかない。
主要部品があり、機体を製造しても、エンジンがなければ飛ばせない。
キングエアとエンペラーエアには、アリソン250ではパワー不足、T56やT64ではパワーがありすぎるのだ。
ちょうどいいエンジンがない。チュルボメカ・アスタゾウやギャレットTPE331は1基か2基ならある。
移住委員会では、このエンジン問題をたびたび議題にするが、解決策がない。
ないものは、ないのだ。
飛行場の休憩所。
最近、鉄骨幕張りテントから木造に変わった。ブルマン商人から合板の購入ができるので、最近は住居以外の建物の建造が増えている。建設ラッシュだ。
エリシアの前に鏑木委員が座る。
「飛行機が足りなくて、迷惑かけているね」
エリシアはラムネの瓶を口にする。
「おじさんが悪いわけじゃないでしょ」
鏑木はエリシアの無礼を、無礼とは思わない。幼い孫娘を見るように目を細める。
「エンジンがないんだよ」
「お金はあるの?」
「予算か?」
「そう」
「あるよ」
「じゃぁ、買えるじゃん」
「売ってくれないんだよ。バンジェル島も、クフラックも……」
「闇で買えば?
ブルマン商人なら、闇で見つけてくるよ。
中古だし、壊れているかもだけど……。
大量は無理だけど、2基とか4基とかなら何とかなるかもしれない」
「闇市?」
「そう。
闇の市場」
「どこにあるの?」
「場所?
悪徳商人の心の中かな」
「ものすごく高いんじゃ……?」
「ブルマン商人に私が話してみようか?」
鏑木委員が少し驚く。
「きみが……?」
「うん……。役に立つかわからないけど」
ブルマン商人は、船首が渡し板になる上陸用舟艇型輸送船でやって来た。
この船はSB船と呼ばれている。この他に、船首が観音開きドアで渡し板が繰り出されるSS船がある。
今回は、注文していた燃料貯蔵用タンクが届いた。
鏑木委員は、このブルマン商人とは初見だった。彼の船までエリシアを伴って出向く。
老商人は、穏やかな眼差しで巨大なタンクの搬出を見守っていた。作業の指揮は、彼の嫡男がしている。跡取りにも恵まれ、跡取りには子がいる。一族は安泰だ。
鏑木委員が声をかける。
「鏑木と申します。
委員をしております」
「お初にお目にかかります。
カブラギ様」
「こちらは、私たちの飛行機のパイロットで……」
「私はエリシア。
ミエリキの孫」
老商人は驚いたように目を見開き、咄嗟に跪こうとする。それを、エリシアが止める。
「偉大なのは祖母であって、私ではない。
ご老人、それはやめてくれ」
「噂で知っております。
放蕩娘が出奔したと……。
ご無礼を……」
「無礼ではない。
その通りだ」
鏑木は慌てている。エリシアの素性を知らないからだ。
「姫様は、ここで何を?」
「姫はやめてくれ。ブルマンには、もう姫はいない。領主は公選で決められるようになったのだから……」
「いえいえ、高家の姫君であることには変わりありません」
「高家の姫君は、こんなところで遊んではいない。社交界で男あさりをしている」
「ご冗談を。
で、何を?」
「若き頃のミエリキと同じ。
飛行機を飛ばしている。
機体はバンジェル島のボックスカーだが、エンジンはとてつもないパワーだ。
まもなく、本格的な就航となる」
「姫様、ご用件は?」
老商人はやや警戒する。
「ターボプロップエンジンを探している。
バンジェル島も、クフラックも、売ってくれぬ」
「あのものたちは、物で我らを従わせようとしますからな」
「ご老人、手に入るか?」
「御意。
ですが、統制品ですぞ」
「承知している」
「持っているとすれば、救世主の商人かと……」
「ならば好都合。
ここマハジャンガには、やんごとなき身分の救世主の姫がいる」
「何と!」
「私のような偽物ではなく、たぶん、本物の姫だ」
「証は?」
「ダマスカス鋼の長刀を持っている。
あんなもの、普通の娘の持ち物じゃない。推測だが、彼女はたぶん、アルベルティーナ妃ゆかりのものだ」
「まことか!」
「たぶん……」
「ふむ……。
場合によっては戦乱の種になりますぞ」
「あぁ、だから彼女は身分を隠している。
他にも身分を隠している曲者が2人」
「それは?」
「ハンダ・ハヤトゆかりのもの。
コウノギ・ケイイチロウゆかりのものもいる。
たぶんそうだ」
「姫、脚が震えてきた」
老商人のごつい手がエリシアの肩をつかむ。
老商人が耳打ちする。
「この街に偉人の縁者が集まったのならば、ここが新たな時代の幕開けを担いますぞ。
ご希望の品、探してみます」
「このことは内密に」
「承知いたしております。
ただ、我が一族のことご記憶にとどめ置いてくだされ」
鏑木委員は、エリシアと老商人の会話について、言葉の意味以上は理解できなかった。
ただ、エリシアが普通の若者ではないことは理解する。彼女にはブルマンに対して、一定の影響力があるように感じた。
この頃、隆太郎は航空機工場から2種類の固定翼機について、構想を説明されていた。
航空機工場では、キングエアとエンペラーエアの製造に移行しようとしていた。
キングエアは12人乗り、エンペラーエアは20人乗り。エンペラーエアが充足してくれば、輸送はエンペラーエア、キングエアは主に哨戒を担当することになっていた。
しかし、どちらもPT6A系のエンジンを必要としている。
PT6A系が入手できない以上、飛行機は作れない。
ならば、機体側を変更するしかない。
「PT6Aが手に入らないなら、機体側を変えるしかないよ」
隆太郎の言葉に、航空機工場の面々が沈黙する。航空機工場の会議室兼食堂は、居心地の悪い沈黙が支配する。
反応がない以上、隆太郎が話を続けるしかない。
「キングエア・モデル90かクイーンエアならば、アリソンで飛ばせる。
機体は小さくなるけど、哨戒には有効だよ。ちょっと狭いけどね。乗員は辛いだろうけど、現状では我慢してもらうしかない。
逆に、エンペラーエアは小さすぎる。GEのエンジンは2850馬力もあるから、20席クラスの機体にはパワーがありすぎる。
だから、エンペラーエアの胴体と主翼を延長して、50席クラスに拡大すればいい。
技術的に可能かどうかは、検討していないけど……。
エンジン、エンジンナセル、プロペラは、P-2Jネプチューンのものをそのまま使えばいい」
工場長がふてくされた顔をしている。
「つまり、靴のサイズが合わないなら、足の大きさを変えろと?」
隆太郎は、否定しない。
「ええ、ヒトの身体なら不可能ですが、飛行機は機械ですからね。
できないことはないでしょう?」
すると、エンペラーエアの主任設計者が発言する。
「最大の問題は、王、皇帝、その次は何と名付ければいいかだ」
工場長が「そこかよ!」と唖然とする。
主任設計者は、持論を展開する。
「まさか、PT6Aの確保に苦労するなんて思わなかった。だが、70年間使い回していたのだから、なくなるのは当たり前だね。
で、エンペラーエアをなぜ造るか、なんだ。これは、PT6Aとも関係がある。
燃料だよ。
燃料がないから燃費のいい機体が必要なんだ。大飯喰らいはいらない。維持できない。
だけど、燃料は確保できるようになったよね。もちろん買わなきゃならんけど、買えないわけじゃない。燃料はあるんだ。高知の頃のように、どこにもない状況じゃない。
我々の設計グループは、ビーチクラフトの双発機はどこまで大型化できるか、という検討をしたことがある。
で、その結論なんだけど、全長、全幅とも24メートルだった。この規模なら、座席の間隔を詰めれば50席はいける」
胴体の設計担当が発言。
「胴体の幅を広げて、シートを4列にすれば全長22メートル強に収まるんじゃないかと思うんですよ」
主翼の設計者も発言。
「全長が22メートルなら、主翼の全幅は24メートル以内におさめられるよ」
何人かが手を上げるが、反対の意志はないようだ。
工場長が隆太郎を見る。
「萱場さんの案に乗るよ。
ないものをねだっても無意味。
あるものでやっていくしかない。
で、名前は何がいい?」
この問いに一瞬の沈黙がある。
隆太郎がベタな提案をする。
「スーパーエンペラーエアは?」
女性の技術者が鼻で笑う。
そして、全員の目が彼女に向く。彼女が視線を感じて慌てる。
「エンジェルエアは?
天使。
天使なら皇帝の上じゃないかな」
工場長が頷く。
「商品の名は大事だ。
それでいこう」
4回目のキリヤ訪問は、鏑木と花沢両委員が同行する。単なる買い付けではなく、ヴィクトリア湖東岸に大型機の発着に適した滑走路の建設を打診するためだ。
今回の飛行では、移住委員会から梨々香に「機長として搭乗するように」との要請があった。
梨々香は副操縦士として、丸耳族であるカプランを指名する。
見た目の違いは、敷地が広いこと、警備員がいることくらいだ。
ここで、磯貝聡子移住委員会委員長と面会する。彼女が、マハジャンガの最高指導者だ。
「お待たせしました。
初めまして、磯貝です」
隆太郎は、彼女をモニター越しに何度も見ているが、実年齢よりも5歳ほど若く見える。30歳代半ばのはずだが、20歳代後半にしか見えない。
「萱場隆太郎です」
「おかけになってください」
ソファーを勧められ、隆太郎が従う。
「単刀直入に……。
委員長特別補佐に就任していただけませんか?
私たちは、この世界で生きていかなくてはなりません。
ですが、世界情勢がわからないのです。
わかっていることもあります。
その、わかっていることを利用すれば、世界の中で、マハジャンガの地位が確立できると思うんです。
時間がかかるでしょうけど……。
どう動いていくのかもわからないし……。
だから、萱場さんに委員長特別補佐に就任してもらいたいのです。行政が表だってできないこと、例えば商行為、貿易とか、そういったことに関与してほしいのです」
「暗殺とか、破壊工作とかはしませんよ」
「そういったことは、お願いしません!
萱場さんに動いてもらって、波紋を起こしていただきたいのです。その波を捕らえて、行政は動いていきたいのです」
「私だけですか?」
「いいえ、表だって動く委員も参加する予定です。
ですが、委員では動けない部分を、萱場さんにお願いしたいのです」
隆太郎は少し考えたが、この得体の知れない申し入れを引き受けた。
どう動くにしても、行政の通行手形は必要だと感じたからだ。
バンジェル島の王冠湾勢力から入手したタンカーは、東地中海北アフリカの石油製品積み出し港とマハジャンガ間を往復している。
石油製品の備蓄基地がないため、タンカー自体がタンクの役目を負っていた。2隻あれば、需給のバランスが最低限確保できるのだが、現実はそうなっていない。
マハジャンガは、常時、危機的状況にあった。食料と燃料の供給は不安定で、その他の物資が不足するのも遠くはないと予測されている。
物資の供給源確保は、喫緊の課題となっている。
エリシアは鮎原梨々香が機長となったことに不満だった。彼女はパイロットとして働いているが、梨々香の職業は固定翼機の開発スタッフだからだ。
ただ、卓越した飛行技術、飛び抜けた離着陸技術には敬意を払っている。
でも、不満だった。
さらに不満なのは、梨々香に「私は着陸だけでいいよ」とお姉さん発言されたことだ。
しかし、この重要な飛行で、離陸を担当することは、彼女にとっては人生最大の名誉だった。これ以上の名誉が、今後の人生で出会えるかわからない。
だから、逃す気はなかった。
移住委員会は、この飛行計画を重要視していない。ズラ湾への飛行作戦の前段階、あるいは予行演習程度に位置付けている。
移住委員会委員長は「この飛行は、人道的見地からの行為であり、外交とは無関係」だと表明している
750軸馬力級ワルターM601を装備するキングエアB200の巡航速度は、ややアンダーパワーなことから時速500キロを超えない。
一方、燃料の消費が少なく、航続距離は推定で4000キロに達する。これは、現下の状況においては、悪いことではない。
メーウィッシュは、接触したマハジャンガ住民の言葉を詳細に記憶し、事後に記録し、分析していた。
レムリアでは大豆は重要作物ではないが、マハジャンガでは大豆を必要としている。また、砂糖も欲している。
大豆や砂糖は、キリヤで用意できる。もちろん、小麦も。ソルガムは求められていない。米は作っていない。
驚いたことは、未成熟の大豆を枝豆と呼んでよく食べること。本来は大量に消費する食品だが、貴重品扱いされている。
メーウィッシュはマハジャンガの街を歩き、商店を覗き、パンや菓子の種類の豊富さに感心したが、野菜や果物の種類が限られていることに気付いていた。
枝豆なら、すぐに生産できる。
また、アフリカの住民は好みがまちまちで、商談を効果的に進めるには嗜好を探る必要があることも理解していた。
それと、見たことのない野菜もあった。果物は野生種を収穫していると聞いた。果物の生産まで、手が回らないのだ。
メーウィッシュは、護衛と侍女とともにキングエアの機内に入る。
説明によれば、4時間から5時間でキリヤに到着する。
彼女は、飛行機の速さに驚いた。
キリヤの滑走路は、よく整備された草地だった。芝生の滑走路だ。芝生の広場のような施設で、最大距離は3000メートル以上ある。
予定通り、梨々香が操縦して着陸した。十分な距離を使っての滑走だった。着陸時の振動は、乗客が怯えるほど大きかった。
格納庫どころか、管制塔さえない野原に降りたキングエアは、10分後には大勢に取り囲まれていた。
機内からメーウィッシュが降りると、飛行場に集まった面々は、幽霊でも見るような衝撃の中に困惑が混ざる複雑な表情をする。
「生きていたのか?」
「死んだと聞いたが……?」
「どうやって助かったんだ?」
不自然な反応が広がる。
メーウィッシュは、2人の護衛と2人の侍女の先頭を歩いて行く。
軽快そうな単軸の馬車が飛行場に入ってきて、若くはない女性がメーウィッシュに走り寄る。
抱きしめて泣き出す。
その2人を壮年の男性が抱きしめる。
説明は不要。メーウィッシュの両親だ。涙を浮かべて遠巻きにしている女性がいる。護衛か侍女の家族だろう。
「父上、船が漂流しているところを、この方たちにお助けいただきました。
マハジャンガという街の方たちです」
「マハジャンガ?」
壮年の男性は戸惑いながらも挨拶する。
「娘と家人の生命をお助けいただき、ありがとうございます。
私はキリヤの議員で、ランヴィールと申します」
「お嬢様をお届けできたこと、安堵いたしました。
私はマハジャンガの委員で、鏑木健介です」
メーウィッシュは少し興奮していた。
「父上、聞いてください!
船足の速い動力船で3日かかる距離を、1日の6分の1で飛んできたのです!
この速さ、信じられません!」
「とりあえず、我が屋敷に。
みなさんご一緒に」
そう誘われたが、梨々香とエリシアは、飛行機に残ると固辞する。それが、2人の任務だからだ。
エリシアが言った。
「鏑木の爺さん、上手くやってくれるかな?」
梨々香が肯定する。
「飲み過ぎなければ、大丈夫だよ。
それに、花沢のおばちゃんが一緒だし……」
15時頃、キングエアに食事が届けられた。丸テーブルと椅子も運ばれる。
食事の内容は、梨々香にはご馳走のレベルを超えていたし、エリシアにとっても豪華だった。
丸耳族はヴィーガンではないのだが、動物性タンパクの摂取量が少ない。東アフリカ内陸海路は無酸素に近く、棲息する魚は極端に少ない。
漁業という産業はなく、魚食はほとんどない。家畜は飼育しているが、例外なく役畜で食用にすることはない。
例外は家禽で、ニワトリやアヒルを飼育し、卵や肉を食用にする。野生動物に対する狩猟はあり、肉を食用にする。
「これ、すごく美味しい」
エリシアが梨々香に柑橘を投げる。
梨々香は「もらっていくことは恥ずかしいことかな。サクラに食べさせてあげたいな」と声に出しかけていた。
鶏肉なんて滅多に食べられないし、骨付きもも肉を頬張るなんて、数年ぶりだった。
果物の種類は豊富で、野菜のスープは美味。驚くことに、醤油味の炒め物がある。
侍女頭といった雰囲気の女性が、エリシアに言った。
「お気に召していただけたようですので、果物を用意しましょう。
お土産として、お持ち帰りください」
翌早朝、鏑木委員が1人で歩いて飛行場に戻ってきた。
「おもしろい話しをたくさん聞いたよ。
まぁ、この内陸湖岸地域は西岸地域からいじわるをされているんだ。
しかも、情勢を理解していない。
西岸地域の背後には西アフリカのヒトがいるように臭わされているようだが、それを鵜呑みにしている。
実際は、いないんじゃないかな」
梨々香が小首をかしげる。
「影に怯えている?」
鏑木委員は否定しなかった。
「あぁ、西岸地域は怖くないが、西アフリカのヒトは怖いんだ。そこを上手く突かれているようだ」
エリシアが戸惑った目をする。
「どうすればいいの?
メーウィッシュの力になってあげたいけど……」
鏑木委員は老練な政治家だ。
「何もしない。
だが、交易には応じてくれた。
我々は、たった8500人だ。欲しいものは飛行機で運べる。もうすぐ、西アフリカから手に入れた輸送機が飛べるようになる。
ズラ村に行く必要はないかもしれない」
梨々香が疑問を口にする。
「でも、たった8500人をまともに相手にしてくれるのかな?」
鏑木委員には策があった。
「中部レムリア内陸の穀物や豆類を東岸から輸出すればいいんだ。
鮎原さん、輸送機で運べるブルドーザーは、どこかにあるかな?」
梨々香が慌てる。
「見たことがありますよ。小型のブルとミニショベルの中でも大きいタイプ、小型のホイールローダー、小型のダンプは運べます」
鏑木委員は、梨々香の回答に満足する。
「ふむ、東部海岸までの道路と東岸に港湾を整備する手伝いはできるだろう。
それと、東岸の島を拠点にしている海賊対策にも協力できる。
海賊を何とかしないと、レムリア東岸沿岸航路は使えないからね。
それよりも、中部レムリア内陸は、沿岸航路であっても航海する技術はないらしい。
その部分でも協力できる。
先が見えれば、船舶用鋼板を買うことだってできる。船台はどこに作る?
そんな悩みも生まれる。
どう思う?」
梨々香は呆気にとられていた。鏑木委員の構想が、先走り過ぎるからだ。
エリシアが悪戯っぽく笑う。
「鏑木さんって、詐欺師っぽいよね」
「詐欺師?」
「だって、ウソっぽいこと真顔で言うじゃない」
鏑木委員は大笑いする。
「そうかもな。
でも、詐欺師ではなく、策士と言ってくれ」
メーウィッシュと別れるとき、エリシアは「また来る」と告げた。それは惜別の挨拶ではなく、彼女の意思だった。
メーウィッシュから「荷物はどれくらい積めるの?」と尋ねられ、梨々香は「小さな荷車1台分くらいかな」と答えた。
鏑木委員が要求したわけではない。メーウィッシュが厳選した土産が用意された。
マダガスカルにはないジャクソンフルーツを始めとする柑橘類、マンゴー、パッションフルーツ、パラミツなど。
イチゴ、ラズベリー、ブラックベリー、マルベリー、ゴールデンベリーなどのベリー類。
そして、大豆。あえて、小麦は外された。キングエアの積載量には限界があるからだ。
メーウィッシュの狙いはあたった。イチゴや柑橘類の栽培まで手が回らないマハジャンガでは、果物は穀物とは異なる意味があった。
ジャクソンフルーツは4つに切り分けられ、給食時に12歳以下の子供全員に配られた。
自宅で丸ごと2個を平らげたのは、サクラだけだ。
鏑木と花沢の両委員は、移住委員会内での多数派工作を始めていた。
「200万年後の列強が集うソコトラ島やレムリアに強大な権益を持つバンジェル島などと伍して競うことができないマハジャンガは、いまは一定の国際的地位を地道に固めるべきだ」
この意見に傾く委員がおり、同時に「もう少し様子を見てもいいのでは」との中間的立場に向かう委員も出始める。
鏑木委員は、政治家らしい寝技も使う。
裏から手を回し、エリシアを双発双胴大型輸送機ボックスカーの機長にしたのだ。
同時に、梨々香には「飛行機に積める建設機械を準備してください。あなたにその権限を与えます」と依頼する。
梨々香が「滑走路を整備するのですか?」と尋ねると、鏑木委員は微笑むだけだった。
花沢委員は「友好地域を作るべき」と母親集会で、支持の拡大を目指している。
梨々香は花沢委員から「母親集会には必ず出てね」と言われ、集会ではヴィクトリア湖東岸の様子などの話をさせられている。
利用されている感はあるが、梨々香自身は花沢委員の判断は間違っていないと思っていた。
だから、可能な限り協力した。
また、鏑木委員の依頼については、工場長と精査している。小型ブルドーザーと大きめのミニショベルをボックスカーで同時に空輸できると判断した。
適地があれば、3000メートル級の転圧滑走路を整備できる。現在の滑走路は小型機用で、しかも街中にあるので、事故の際に巻き込んでしまう危険がある。
郊外に適地を探す必要があるが、協力を得られるか不明だった。
重大な問題がある。
キリヤには航空燃料を積んだタンクトレーラーがあるのだが、この燃料はバンジェル島王冠湾勢力の物資で、「譲渡はできない」と説明された。
このため、帰路用燃料を機内に積んでいく必要があった。
当面はこの方法をとるしかないが、そうなると乗客数は減らさなくてはならない。滑走路の建設だけでは、物事は進まない。
燃料の問題は大きく、頻繁な交流がしにくい。
キングエアの100と200シリーズの何機かを練習機とし、350シリーズを小型輸送機の代用にしていくしかない。
エンペラーエアの再生産を急ぐ必要があるが、そう簡単に作れるわけもない。
エンジン確保の問題もある。
C-130ハーキュリーズの投入も考えられるが、滑走路が整備されるまでは現実的ではない。
移住委員会は迷っていた。
鏑木と花沢両委員の主張は正論ではあるが、遠回りではないのか、と。
しかし、中部レムリアとの交流が無意味だとは考えていない。物資と情報の取得には、一定の価値があると評価していた。
梨々香は、レムリアの住民であるカプランからティターンの話を聞いていた。
場所は飛行場の休憩室だ。
「ティターンは、レムリアを8つの地域に分けていたんだ。
まず、ヒトが東アフリカ内陸海路と呼ぶ沿岸地帯と内陸以東を東西に分ける。
南北は、北部、中北部、中南部、南部の4区分。東西2区分、南北4区分で、8地域だ。
これは、実際の部族の境界とは無関係だった。
南部の南半分は、ティターン本来のテリトリーだった。残り半分は、数百年前に勢力圏に入った属領。古い属領は優遇されていたけど、新しい属領、侵略されている他部族領は厳しい対応がされていた。
北部は地理的に遠い。北部が最後の未平定地だった。
ティターンによるレムリア全土平定が見え始めていた。そんな侵略の真っ最中に王冠湾がやって来たんだ。
王冠湾の支援で、北部は独立を保ち、王冠湾との交易で発展した。
中部は、北部に比べると複雑だった。北部はほとんどが農民で、少数の遊牧民がいるだけという単一性があったんだ。
対して中部は、農民、半農半採集、半農半牧、定住牧畜民、遊牧民、採集民といろいろだった。農民でも完全定住がいたし、焼き畑を行う半定住もいた。
紆余曲折を経て、中北部と中南部は共同して中部となった。南のティターンが恐ろしかったしね。
その後、南部にいた逃亡奴隷たちが中部に移動してきたんだ。社会構成はさらに複雑になった。
結局、中部には北部のような一体性は生まれなかった。分裂しない理由は、ティターンが怖いからさ。
中部と付き合うなら、平等を心がけたほうがいい。特定の地域をひいきにするのではなく、あまねく友好を考えるんだ」
梨々香はカプランの話を聞きながら、カプランの意見を花沢委員に伝えると決めていた。
バンジェル島とクフラックは、赤道以北アフリカにおける政治と経済の二大勢力だ。イデオロギーと軍事的な対立はなく、経済的な競合関係にある。
両勢力の科学技術力は、拮抗している。
他にも有力な勢力はあるが、バンジェル島とクフラックの技術に依存している部分が多い。
だが、両勢力とも同盟国を集めるブロック化はしていない。是々非々ながら、友好関係にある。
カラバッシュがクフラックの傘下に入って以降、航空機に関しては両勢力以外は優勢ではない。救世主とアトラス山脈も航空機を製造するが、どちらもレシプロの小型機に限られる。
厄介なことは、両勢力が対立していないことから、利害が一致すると重要機材・機械の輸出を止めることだ。
そして、バンジェル島とクフラックは、マハジャンガに対して、ターボプロップエンジンの販売を渋るようになった。
マハジャンガを警戒し始めたからだ。
バンジェル島王冠湾は、喉から手が出るほどほしかったP&W PW4000ターボファンエンジンを当面の必要数入手したし、クフラックには取り立ててほしいものはなかった。
マハジャンガを切り捨てても、影響はない。 それよりも、C-1輸送機くじらちゃんが新たなPW4000を得て再度進空した頃、マハジャンガではバンジェル島がエンジンレスで売り払ったC-119改ボックスカーに4600軸馬力のアリソンT56-A-14ターボプロップが搭載されて空に舞ったことの重大性のほうが大問題だった。
バンジェル島とクフラックは、航空機生産を統制することで、大きな発言力を得ていた。
マハジャンガの登場によって、この秩序が崩れかねないのだ。
だから、バンジェル島とクフラックはマハジャンガにターボプロップエンジンを提供しないことを決めた。
これが、マハジャンガ封じ込めの端緒だった。
両者は個別に決定し、相互に方針を通告する。両者に異論はなく、そのことをマハジャンガは知らない。
マハジャンガでは、ワルターM601やP&WC PT6Aが入手できなくなり、キングエアとエンペラーエアの製造ができなくなった。
レストアできる機体は、すべて対処してしまった。これから先は、新造しかない。
主要部品があり、機体を製造しても、エンジンがなければ飛ばせない。
キングエアとエンペラーエアには、アリソン250ではパワー不足、T56やT64ではパワーがありすぎるのだ。
ちょうどいいエンジンがない。チュルボメカ・アスタゾウやギャレットTPE331は1基か2基ならある。
移住委員会では、このエンジン問題をたびたび議題にするが、解決策がない。
ないものは、ないのだ。
飛行場の休憩所。
最近、鉄骨幕張りテントから木造に変わった。ブルマン商人から合板の購入ができるので、最近は住居以外の建物の建造が増えている。建設ラッシュだ。
エリシアの前に鏑木委員が座る。
「飛行機が足りなくて、迷惑かけているね」
エリシアはラムネの瓶を口にする。
「おじさんが悪いわけじゃないでしょ」
鏑木はエリシアの無礼を、無礼とは思わない。幼い孫娘を見るように目を細める。
「エンジンがないんだよ」
「お金はあるの?」
「予算か?」
「そう」
「あるよ」
「じゃぁ、買えるじゃん」
「売ってくれないんだよ。バンジェル島も、クフラックも……」
「闇で買えば?
ブルマン商人なら、闇で見つけてくるよ。
中古だし、壊れているかもだけど……。
大量は無理だけど、2基とか4基とかなら何とかなるかもしれない」
「闇市?」
「そう。
闇の市場」
「どこにあるの?」
「場所?
悪徳商人の心の中かな」
「ものすごく高いんじゃ……?」
「ブルマン商人に私が話してみようか?」
鏑木委員が少し驚く。
「きみが……?」
「うん……。役に立つかわからないけど」
ブルマン商人は、船首が渡し板になる上陸用舟艇型輸送船でやって来た。
この船はSB船と呼ばれている。この他に、船首が観音開きドアで渡し板が繰り出されるSS船がある。
今回は、注文していた燃料貯蔵用タンクが届いた。
鏑木委員は、このブルマン商人とは初見だった。彼の船までエリシアを伴って出向く。
老商人は、穏やかな眼差しで巨大なタンクの搬出を見守っていた。作業の指揮は、彼の嫡男がしている。跡取りにも恵まれ、跡取りには子がいる。一族は安泰だ。
鏑木委員が声をかける。
「鏑木と申します。
委員をしております」
「お初にお目にかかります。
カブラギ様」
「こちらは、私たちの飛行機のパイロットで……」
「私はエリシア。
ミエリキの孫」
老商人は驚いたように目を見開き、咄嗟に跪こうとする。それを、エリシアが止める。
「偉大なのは祖母であって、私ではない。
ご老人、それはやめてくれ」
「噂で知っております。
放蕩娘が出奔したと……。
ご無礼を……」
「無礼ではない。
その通りだ」
鏑木は慌てている。エリシアの素性を知らないからだ。
「姫様は、ここで何を?」
「姫はやめてくれ。ブルマンには、もう姫はいない。領主は公選で決められるようになったのだから……」
「いえいえ、高家の姫君であることには変わりありません」
「高家の姫君は、こんなところで遊んではいない。社交界で男あさりをしている」
「ご冗談を。
で、何を?」
「若き頃のミエリキと同じ。
飛行機を飛ばしている。
機体はバンジェル島のボックスカーだが、エンジンはとてつもないパワーだ。
まもなく、本格的な就航となる」
「姫様、ご用件は?」
老商人はやや警戒する。
「ターボプロップエンジンを探している。
バンジェル島も、クフラックも、売ってくれぬ」
「あのものたちは、物で我らを従わせようとしますからな」
「ご老人、手に入るか?」
「御意。
ですが、統制品ですぞ」
「承知している」
「持っているとすれば、救世主の商人かと……」
「ならば好都合。
ここマハジャンガには、やんごとなき身分の救世主の姫がいる」
「何と!」
「私のような偽物ではなく、たぶん、本物の姫だ」
「証は?」
「ダマスカス鋼の長刀を持っている。
あんなもの、普通の娘の持ち物じゃない。推測だが、彼女はたぶん、アルベルティーナ妃ゆかりのものだ」
「まことか!」
「たぶん……」
「ふむ……。
場合によっては戦乱の種になりますぞ」
「あぁ、だから彼女は身分を隠している。
他にも身分を隠している曲者が2人」
「それは?」
「ハンダ・ハヤトゆかりのもの。
コウノギ・ケイイチロウゆかりのものもいる。
たぶんそうだ」
「姫、脚が震えてきた」
老商人のごつい手がエリシアの肩をつかむ。
老商人が耳打ちする。
「この街に偉人の縁者が集まったのならば、ここが新たな時代の幕開けを担いますぞ。
ご希望の品、探してみます」
「このことは内密に」
「承知いたしております。
ただ、我が一族のことご記憶にとどめ置いてくだされ」
鏑木委員は、エリシアと老商人の会話について、言葉の意味以上は理解できなかった。
ただ、エリシアが普通の若者ではないことは理解する。彼女にはブルマンに対して、一定の影響力があるように感じた。
この頃、隆太郎は航空機工場から2種類の固定翼機について、構想を説明されていた。
航空機工場では、キングエアとエンペラーエアの製造に移行しようとしていた。
キングエアは12人乗り、エンペラーエアは20人乗り。エンペラーエアが充足してくれば、輸送はエンペラーエア、キングエアは主に哨戒を担当することになっていた。
しかし、どちらもPT6A系のエンジンを必要としている。
PT6A系が入手できない以上、飛行機は作れない。
ならば、機体側を変更するしかない。
「PT6Aが手に入らないなら、機体側を変えるしかないよ」
隆太郎の言葉に、航空機工場の面々が沈黙する。航空機工場の会議室兼食堂は、居心地の悪い沈黙が支配する。
反応がない以上、隆太郎が話を続けるしかない。
「キングエア・モデル90かクイーンエアならば、アリソンで飛ばせる。
機体は小さくなるけど、哨戒には有効だよ。ちょっと狭いけどね。乗員は辛いだろうけど、現状では我慢してもらうしかない。
逆に、エンペラーエアは小さすぎる。GEのエンジンは2850馬力もあるから、20席クラスの機体にはパワーがありすぎる。
だから、エンペラーエアの胴体と主翼を延長して、50席クラスに拡大すればいい。
技術的に可能かどうかは、検討していないけど……。
エンジン、エンジンナセル、プロペラは、P-2Jネプチューンのものをそのまま使えばいい」
工場長がふてくされた顔をしている。
「つまり、靴のサイズが合わないなら、足の大きさを変えろと?」
隆太郎は、否定しない。
「ええ、ヒトの身体なら不可能ですが、飛行機は機械ですからね。
できないことはないでしょう?」
すると、エンペラーエアの主任設計者が発言する。
「最大の問題は、王、皇帝、その次は何と名付ければいいかだ」
工場長が「そこかよ!」と唖然とする。
主任設計者は、持論を展開する。
「まさか、PT6Aの確保に苦労するなんて思わなかった。だが、70年間使い回していたのだから、なくなるのは当たり前だね。
で、エンペラーエアをなぜ造るか、なんだ。これは、PT6Aとも関係がある。
燃料だよ。
燃料がないから燃費のいい機体が必要なんだ。大飯喰らいはいらない。維持できない。
だけど、燃料は確保できるようになったよね。もちろん買わなきゃならんけど、買えないわけじゃない。燃料はあるんだ。高知の頃のように、どこにもない状況じゃない。
我々の設計グループは、ビーチクラフトの双発機はどこまで大型化できるか、という検討をしたことがある。
で、その結論なんだけど、全長、全幅とも24メートルだった。この規模なら、座席の間隔を詰めれば50席はいける」
胴体の設計担当が発言。
「胴体の幅を広げて、シートを4列にすれば全長22メートル強に収まるんじゃないかと思うんですよ」
主翼の設計者も発言。
「全長が22メートルなら、主翼の全幅は24メートル以内におさめられるよ」
何人かが手を上げるが、反対の意志はないようだ。
工場長が隆太郎を見る。
「萱場さんの案に乗るよ。
ないものをねだっても無意味。
あるものでやっていくしかない。
で、名前は何がいい?」
この問いに一瞬の沈黙がある。
隆太郎がベタな提案をする。
「スーパーエンペラーエアは?」
女性の技術者が鼻で笑う。
そして、全員の目が彼女に向く。彼女が視線を感じて慌てる。
「エンジェルエアは?
天使。
天使なら皇帝の上じゃないかな」
工場長が頷く。
「商品の名は大事だ。
それでいこう」
4回目のキリヤ訪問は、鏑木と花沢両委員が同行する。単なる買い付けではなく、ヴィクトリア湖東岸に大型機の発着に適した滑走路の建設を打診するためだ。
今回の飛行では、移住委員会から梨々香に「機長として搭乗するように」との要請があった。
梨々香は副操縦士として、丸耳族であるカプランを指名する。
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