最後の夜

ざっく

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これからの話

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……抱く?

抱くという単語に反応して、シルヴィーはルドヴィックを見上げる。
「そうすれば……シルヴィーを手放さなくて済む」

まるで、離縁するのが嫌だったようではないか。

結婚してからずっと、シルヴィーを見ることもしないほどに苦しそうだったくせに。
どういうことだと問う隙を与えずに、巨大な圧迫感がシルヴィーを襲う。
「ぃ……あっ!?」
あまりの痛さに言おうとしていた言葉も忘れ、唇をかみしめる。
「シルヴィー」
痛くて涙がにじんでいるのに、ルドヴィックは、ゆっくりだが着実に進んでくる。
「やあ……!痛いっ!」
「ああ……シルヴィー。可愛い」
やっぱり痛めつけるのが好きな変態だ!
だけど、シルヴィーの視界に映る彼は、眉間に深い皺を刻んで、シルヴィーを心配そうに見ていた。
目が合うと、嬉しそうに微笑んでキスをくれる。
だけど、キスのおかげでふっと力が抜けると、その瞬間にまた進んでくるのだ。
「痛い……です。ルドヴィック様」
「うん。ごめん」
謝りながら、ものすごく嬉しそうに微笑まれた。
「こんな風に、シルヴィーとつながれるなんて思わなかった。ごめん。だけど、嬉しいんだ。ごめん」
涙がにじんだシルヴィーの目元にキスをして、頬に、唇に、耳に。
顔中にキスが降り注ぐ。
「愛してる」
額をくっつけて、至近距離で捧げられた言葉。
シルヴィーは、さっきとは別の理由で涙を流す。
「ルドヴィック様……っあ!」
ルドヴィックが一気に入ってきて、あまりの圧迫感に一瞬、息が止まる。
「ああ……もう、離さない」
ルドヴィックの腕が背中に回り、柔らかく抱きしめられる。
ぬくもりが気持ちいい。
今されていることの結果が、どうなるのかなんてシルヴィーにだって分かる。分からないのは、どうして突然できるようになったか、だ。
「シルヴィー」
でも、そんなこと、それほど気にしなければいけないことではない。
突然でも、なんでも、彼が今、自分を愛してくれている。
「ルドヴィック様……愛しています」
シルヴィーは微笑んで、自分からキスをねだった。
「ああっ、もうだめだ……!」
食らいつくようなキスをしながら、ルドヴィックの体が震える。
「くそっ……!」
悔しそうなうなり声がしたけれど、抱きしめてくれる腕がある幸せに、そんなことは気にならなかった。

シルヴィーの内側から押し上げていたものが、ずるりと抜けていった。
ルドヴィックは、シルヴィーを腕の中で囲うようにして項垂れている。
落ち込んでいるように見えるが、どうしたのだろうか。
彼も気になるが、今、時間はどれくらいなのかが気になる。
今日は、離縁する日だったはずだ。
シルヴィーが寝惚けているのでは無ければ、もう使用人たちがシルヴィーを起こしに来てもいいほどの時間ではないだろうか。
荷物の最終確認をして、シルヴィーは出立の準備をしなければならなかったはずだ。
「ルドヴィック様……」
呼びかけてから、何を聞けばいいのか、聞きたいことがありすぎて、言葉が続かなかった。
シルヴィーが不安に思っていることが分かったのか、ルドヴィックが微笑んで体を起こす。
「離縁はしない。ずっと、ここに居て欲しい」
願った通りの言葉がルドヴィックから発されて、シルヴィーはぽかんと彼を見上げる。
こんな都合が良すぎる現実が、本当にあるのだろうか。
「家の者にも、もう伝えている。シルヴィーは、出てかない」
「ほんとに……?」
驚きすぎて、子供のような口調になってしまった。
ルドヴィックはくすくすと笑いながら、シルヴィーにキスをする。
「ああ。湯を準備させよう。準備ができるまで、ゆっくりしていていい」
ルドヴィックは、床に落ちていたガウンを拾い上げると、簡単に肩にかけてドアの方へ歩いていく。
ドアのところで呼び鈴を鳴らし、何かを話した後、すぐに戻ってきた。
「君の実家にも、連絡をしておいた。壮大な夫婦喧嘩に巻き込んでしまったことへ謝罪しているよ。また改めて、一緒にご挨拶に伺おう」
もう一度シルヴィーの横に寝そべって、彼はシルヴィーを抱き寄せる。
「さあ、シルヴィーは、昨日のことはどこまで覚えているかな?」

そうして、シルヴィーは、昨夜のことを知ったのだ。



ぴちゃぴちゃと水音がする。
風呂場なので、それは正しいことのはずだが、甘い声が全てを塗り替える。
「や……っん、もう、るど様っ……!だめっ」
シルヴィーを後ろから抱きかかえて、ルドヴィックは熱い息を吐く。
「誘っているようにしか聞こえないな」
それは、あなたが変態だからだ。
なんていう言葉を発する前に、ぐいっと腰を持ち上げられたと同時に貫かれる。
「ふ……ああぁっ」
もう何度となく彼を受け入れたそこは、熱く潤んで、本体を無視してもっともっとと彼を誘い込むようにうねる。
「ああ……シルヴィー。君はどうしてこんなに私を搾り取ろうとするんだ」
ぐちゅっぐちゅっ。
卑猥な音を立てながら、彼がシルヴィーを突き上げる。
「も……だめえ。また、のぼせちゃうぅ」
『だめ』という言葉が彼を煽ることは、初めて体験した一月前に聞いた。
求められることにストレスを感じていた彼は、拒絶されることで性欲を刺激されるようになってしまっていたらしい。
迷惑すぎる話だ。
本当にダメな時はなんて言ったら良いのか。
一度、積極的に求めたらできなくなるのだろうかと、考えた。
性行為を覚えたての思春期のように……実際、そうなのだが……毎晩毎晩盛っていた夫に、『もっと』とねだってみた。
あまりの疲労に、正常な判断が出来なくなっていたに違いない。
今なら、絶対に言わない。
「シルヴィー!」
真っ向から受け取って喜んだ夫に、朝まで抱きつぶされる事態になった。
『だめ』も『もっと』も、彼をあおる結果になった。
ということは……。
非常に残念なことに、ルドヴィックを止める手段はなくなったということで。
「ルド様……!」
シルヴィーが睨んでみても、効果はない。
「シルヴィー。可愛い。愛してる」
「ひぅっ……!あああぁっ」
そして、こう言われれば、シルヴィーだって……。
「ああ、締まったな。……可愛いシルヴィー。『もっと』と言って?」
それは、無理!
だけど、代わりに、別の言葉を。

「ルド様……愛してます」

「くっ……!」
ルドヴィックはぶるりと震えて、達する。
少しだけ悔しそうにしながら、彼は、シルヴィーをベッドへ運んでくれる。

まあ、長いこと童貞だった彼に、もう少し好きなようにさせてあげてもいいかもしれない。
甘やかされながら、シルヴィーはルドヴィックに抱き付いた。


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感想 30

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みんなの感想(30件)

まー
2021.02.04 まー

ルド様視点の酔ったシルヴィーちゃんめちゃくちゃ可愛かったです!
お互い想いあってのすれ違いだからこそ翌朝の展開にはニヤニヤが止まらなかったです
すごく好みのお話でした

解除
2020.07.06 ユーザー名の登録がありません

退会済ユーザのコメントです

解除
鴨南蛮そば
2020.07.03 鴨南蛮そば

良かった、良かった^ ^
末永く夫婦仲良くラブラブでいて欲しい( *´꒳`*)੭⁾⁾

解除

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