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ざっく

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騙していたのは・・・

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婚約披露をした数日後、アニータはリアム殿下に呼ばれて王城へ登った。
そこで、第二王子であるライアン殿下と話をした。
誤解を解かないと、結婚までの話が進まないからとリアム殿下が言ったので、ライアン殿下に謝った。
「リアム、お前は、この性悪女の演技に騙されている」
断定された。
「騙してなどおりません。騙していたのはライアン殿下を、です。……申し訳ありませんでした」
もう一度深く頭を下げたというのに
「あれが演技でなくて何なのだ!」
だから、演技だったのです。
意味が分からなくて首を傾げると、ライアン殿下が忌々しげにアニータを見た。
「胸を押し付けておいて、真っ赤になる。それを誤魔化すように頬まで腕にくっつけて顔を隠して。私と目が合うと何もなかったかのようにわざとらしく妖艶な笑みを浮かべるなど!大胆な行動を恥じつつも、それを必死に押し隠している様子など、悪質だ!私のツボを心得すぎている!」
意味が分からない。
というか、真っ赤になっていたの、気がつかれていたのか。
「……完璧な演技だったはずなのに」
顔の赤さは如何ともしがたい。
なんだか、完璧だと思っていた物が全てバレバレだったことが恥ずかしくて顔が熱くなった。
「くっ!また誘惑か!?」
いえ、今は何もしていないのですが。
不思議に思って見上げれば、嫌そうなライアン殿下と、怒っているような感じのリアム殿下。
リアム殿下の顔が怖い。
アニータの間抜けぶりに、もう笑うこともできないのだろう。
涙がにじんできそうだと思っていると、リアム殿下がライアン殿下と私の視界を遮るように立って、頭を下げた。
「それでも、私が彼女の婚約者なのです」
「―――分かっているさ。了承してしまったのだから」
はあっと大きなため息が聞こえた。
「お前のものだと認識するたびに憎々しいなと思っていた」
やっぱり、アニータが王子妃になることは反対なのだ。
自分の行ったことだと分かっているが、軽はずみな行動が悔やまれる。
「認めよう」
アニータが後悔の渦に飲み込まれているときに聞こえたその言葉は、最初空耳かと思った。
驚いてリアム殿下の陰からライアン殿下を見上げると、ライアン殿下は片眉をあげてアニータを見下ろした。
「認めてくださるのですか?」
聞き返すと、彼はとても嫌そうな顔をしたけれど、頷いてくれた。
リアム殿下と結婚できる。
そう認識した瞬間、声が出なくて、胸を押さえた。
だけど、何も言わないなんて、不敬なことできないと思う。
嬉しさに涙がにじむ目でしっかりとライアン殿下を見た。
「ありがとうございますっ」
嬉しくて、満面の笑みでお礼を言った。
アニータはお礼を言っただけなのに、ライアン殿下は真っ赤になった。
どうしたのだろうと、首を傾げようとした頭を捕まえられた。
「ふやっ!?」
リアム殿下はアニータの頭を押さえつけて、
「何度、そんなことをすれば気が済むのでしょうね?」
低い声で脅された。
えっ?―――私は何をしたんですか!?

ライアン殿下に謝りに行った時のことを思いだして、またため息を吐いた。
本当に、リアム殿下は怒った顔しかしない。
彼が父に用事があって侯爵邸に来るときも、お茶を出して、少しだけお話をできるけれど、父とばかり話す。
アニータを庭に誘って一緒に歩くことなどしてくれはしない。
夜会のエスコートも……仕事があるからとアニータが泣きじゃくった夜以外に、まだされたことがない。

―――嫌われているのだろう。

好きだと言われたような気がしていたが、気のせいだったのかもしれない。
彼は、いつもそうだったから、平気だった。
笑ってくれなくても、大切にされているような気がしていた。
また、勘違いだったのかもしれない。
今見た、王女様の手を取るように、微笑んで自分の手を取ってはくれないだろうか。
願いはある。
けれど、もしも、そうされなくても、リアム様の婚約者である今の自分の立場を捨てることは絶対にしない。

―――どうあっても、縛りつけてやる。

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