絶対、手に入れて見せる!

ざっく

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不意を突く!

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アニータは、体をくるむように包んだマントを両手で握りしめた。
今日、リアム殿下は王城ではなく近衛騎士団宿舎の団長室に泊まる。
兄二人に、男性を繋ぎ止めるにはどうしたらいいのかをしっかりと聞いた。
―――やはり、既成事実だ。
今度はやり方をしっかりと聞いてきたので大丈夫だ。
二人とも途中からお腹が痛くなったようで息も絶え絶えの中、一生懸命教えてくれた。
とても妹想いの兄だと思う。
まずは拘束しろと言われたので、ロープも持って来てみた。
寝ようとしているところの不意を突く!
アニータに許されたのは一瞬だ。
躊躇している暇はない。

気合と共に、こくっと一人で頷いて、ノックもせずに団長室を開けた。
そして、飛び込むように室内に入って―――
「ひゃううぅ。痛いぃ」
「アニータ……」
アニータを壁に押し付けて、短刀を首に押し付け―――ようとして、止まったリアム殿下が、疲れたように壁におでこを押し当てていた。
「今度は何だ」
「内緒です」
呆れたように見下ろされるが、気にせずにリアム殿下の体に腕を回す。
「何をしている?」
「あ!返してください!」
縛ろうとしていたロープを取られてしまった。
折角結び方覚えてきたのに!
「殿下、両手をこうやって出してください」
「・・・・・・拘束して何がしたい」
手首をあわせて差し出すアニータに、リアム殿下が首を振る。
「内緒です。ロープ返してください」
どうあっても拘束することから始めないとと思っているアニータのことは、とりあえず無視することにしたようだ。
リアム殿下はため息をついた。
「ここまでどうやって来た?危ないだろう」
腕を組んで説教体制に入ったリアム殿下は、ラフな半袖シャツとズボンの姿だった。
もう湯を浴びたのか、少しだけ髪が濡れている。
短刀が未だにその手に握られていることが少し気になるが、アニータは、軍服以外のリアム様をじっくりと眺めた。
日焼けをした太い腕が惜しげもなく晒されて、シャツの下にあるたくましい胸板を連想させる。
アニータは厳しい顔をしたリアム殿下を見て泣かないように唇をかみしめた。
「兄様に送ってきてもらいました」

迷惑をかけるから一人で行くとアニータが言うと、兄たちは「それはさすがに命が危ない」と慌て始めた。
「団長にどうやって来たか聞かれたら、僕たちに送ってもらったことは隠さずに言うんだよ?絶対だよ?僕たちを守ると思って、しっかりと言うんだ」
兄を守るというのならば、この忍び込んできたことの共犯にしてしまう方が悪いと思うのだが。
アニータが首をかしげると
「とにかく、絶対だ!僕たちの命が危険なんだ」
必死に言われたので、アニータは正直に言った。

リアム殿下は、予想はしていたのだろう。深々とため息をつきながら、呟いた。
「最近、あいつらは楽しむための犠牲が大きすぎやしないか」
嫌そうに顔をしかめるリアム殿下を見てアニータは慌てた。
「兄様は、私が無理を言ったのを、心配してついてきてくださったのです!」
やっぱり言わない方がよかったのではないだろうか。
自分の思いのせいで兄たちに罰が下ったらどうしようと、アニータは叫んだ。
そのアニータの様子に、リアム殿下は片眉を上げて「ああ」と小さく頷いた。

「では、その無理を言った理由を聞こうか」
その言葉を聞いて、アニータは入ってきたばかりのドアに走り出した。
「こらっ・・・!」
すぐに捕まえられるが、じたばたと動いて、リアム殿下が持っていた短刀に触れる。
チリッと嫌な痛みが指先に走って、体がびくんと揺れた。
「アニータっ・・・・・・!?」
アニータの指先から出た血を見て、リアム殿下の体が止まった。
その瞬間に、アニータは先ほど行こうとしていた方向とは反対方向へ走る。
ドアとは反対、部屋の奥の寝室へ駆け込んだ。
「このっ・・・・・・!待て!」
思わず出てしまったような怒声を背中に浴びながら、アニータは、リアム殿下の寝台へと辿り着く。
靴を脱ぎ捨てて、布団の上へぴょんと飛び込んで振り返ると、リアム殿下が疲れた顔をして立っていた。
寝室に一歩足を踏み込んだだけで、それ以上は入ってこない。
どうしてもアニータの思い通りにしてくれないリアム殿下をアニータは睨み付けた。
その表情に、リアム殿下が驚いた顔をした。
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