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ざっく

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恋の駆け引き1

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――――それ、いい!とってもとっても素敵だわ!

リオは、ぴょんこぴょんこはねて、興奮していた。
今、花開いた妄想が、現実のものとなったらと考えると、体の奥からわき上がる興奮に、身をよじって悶えてしまう。
 ああ、本当にアレクシオ様のそんな姿が見られたら、幸せすぎて気絶してしまうかもしれない。
 残念なことに、鼻の粘膜を鍛える手段は未だ見つかっていない。
 兄に聞いてみると、「アホか」と簡潔な一言が返ってきた。
 妹の切実な悩みをそんな簡単な言葉だけで片付けるだなんて。思い返しても腹立たしい。・・・・・・ああ、だめだ。今のこのすてきな妄想時間を兄の顔を思い出すのに使ったらもったいなさすぎて、一生後悔するかもしれない。
 リオの思考がすっ飛ぶほどに大げさになりすぎた時に、笑い声がした。

「楽しそうだな」
突然、笑いを含んだ声が背後から聞こえて、慌ててリオが振り返れば、アレクシオが夜着に着替えて部屋に入ってきていた。
壁に背を預けたまま、おもしろそうに目を細めてこちらを眺める姿は、色気を含んで、すぐにでも襲い掛かりたい。
 というか、いつからいたのだろう。全く気がつかなかった。

 どうしてすぐに声をかけてくれないのと、普段だったら抱きついて文句の一つでも言うところだ。
 アレクシオはリオを見ているけれど、リオが気がついていない時間は、リオがアレクシオを愛でる時間が減ってしまうことでもある。
 アレクシオは、リオが嬉しそうに何かをしているのを見ているのが好きらしい。それで、声をかけずに眺めて楽しんでいることが時々ある――――だけど、それはずるいと思うのだ!
 リオだって、アレクシオを見ているのは大好きだ。もちろん触るのも。というか、触りたい。ずっとぎゅーっとしていたいのに、アレクシオがリオを見ているだけの時間がもったいないだろう。
 一度、こんこんとアレクシオにそのことについて説明したときは、たくさん抱きしめてもらって満足したけれど、やっぱりリオを眺めることが多い。
 「ずっと腕の中にいると、見えにくいだろう?」
 まあ、リオはアレクシオの腕の中とか服の中とかにもぐりこむのが趣味でもあるので、見えなくはなるかもしれない。それなら、ちょっとくらいなら仕方がないかな?などと、上から目線で考えていた。

けれど!今日は一味違うのだ。
 アレクシオは、声をかければ、すぐにリオが飛び込んでくると思っていたが、びっくりしたような表情をやめた後、リオは悲しそうに目を伏せた。
「きょ、今日は私、一人で寝ます!」
「え?」
 リオは、アレクシオとお揃いの夜着の裾をつかんで、宣言した。
アレクシオにいぶかしげに細めた目でこちらを見られて、少したじろぐ。
「べっ、別に気になる方ができたの。ごめんなさい。だっ・・・だから、ね、アレクシオ様と寝たくないの!向こうに行ってらして!」
 どもりながらも、考えていたことが言葉にできてほっとした。
 後は、アレクシオの反応だが――――。
 アレクシオは、すぐに言葉が飲み込めないように固まったままだったが、リオと目が合うと、傷ついたような瞳でリオを見返した。
途端、後悔に襲われた。
「そうか」
一度そらされた瞳がリオに向けられることはなく、何も言わずに部屋を出ていくアレクシオを見て、間違ったことに気が付いた。

 ―――違う。
 こんなことがしたかったんじゃないのに!!
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