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恋の駆け引き3
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「オリヴィア様、駄目ですわ。その程度であきらめては!」
その可能性を思い描いた途端、リオは耐えきれなくなって、オリヴィアをたきつけていた。
「好きなら、好きだと一度でも告白しなければ、あきらめてはいけません!」
そう、リオだって、アレクシオに伝えないまま、一人で苦しんでいた。
一言でも「大好きです」と伝えていれば、すれ違いなど起きなかった。
「いい?あきらめるのは、いつでもできるの。泣くのは、全部やり尽くした後!まずは、素直に気持ちを伝えなければ」
突然張り切りだしたリオに、目を瞬かせて、オリヴィアは言った。
「で、ですが、私は充分、好意を伝えたと思っています。この上、さらに拒否されるのですか?」
「充分なんてものはないわ!」
ざっくりとオリヴィアの言葉を否定して、リオは叫んだ。
背後から侍女が現れて、リオの周りの食器を遠ざけていることにも気づかず、リオは熱弁を振るった。
「私は、毎日大好きだと伝えているけれど、充分伝わっている気がしないわ。もっと、もっとたくさん大好きなんだもの」
充分伝わっていると思います。使用人一同、心の声だったが、リオは気づかない。
「こっそりと遠回しに伝えられても、はっきり言って、分からないわ!」
貴族女性としてあるまじき。
侍女が頭を抱えそうになっていることなど知らずに、リオは鼻息荒く断言する。
オリヴィアは、その言葉に、目から鱗だ。
はっきりきっぱり言わないのが、高位の女性だ。
男性であろうとも、比喩や動作で、それとなく好意を女性へ伝えることが上品であるとされる。
そんなのも、勘違いが起こりまくるじゃないの!と、リオに怒られそうだが、普通は起こらないのだ。普通は。
アレクシオとリオは、そこらのそれとない伝え方を知らない、分からないので、お互いにすれ違っていくだけで、お互いがお互いを想っていることなど、端から見れば、あからさますぎるほどなのだ。
そこに、言葉などいらないというのが、美しい恋愛感であるが、リオにとっては、言葉にも態度にも出さなければ、鼻の粘膜が危険にさらされる。
今更リオの鼻血くらいではアレクシオは仰天しないだろうが、まだまだ女性としての恥じらいというものがある。少々他とはずれている恥じらいが。
「今から行くわよ!」
「今から!?」
すぐに立ち上がったリオに、「少々お待ちください」「ご連絡を」「お支度を」と、使用人たちが慌て出す。
「行くのは無理だ」という者はいない。リオがこうなったら、人の話を聞かないからだ。
おろおろしているオリヴィアを尻目に、とんとん拍子で話は進み、
「グレイ=マックレガン様は、本日はお休みで、ご自宅にいらっしゃるそうです」
どこでどう調べてきたのか、半時と待たずに、家令が伝えに来た。
「あら、ちょうどいいわ」
「本気ですかっ?」
「当然よ。思い立ったら吉日という言葉があるでしょう?」
「はあ……?」
それは、日本のことわざだ。
オリヴィアが戸惑っているのも、別世界の言葉を出してしまったことにも、やる気まんまんのリオは気がつかず、オリヴィアを引きずるようにマックレガン伯爵邸へ向かった。
「急にお邪魔して申し訳ないわ」
「いえ、公爵夫人の来訪を喜ばないはずがありません。いつでもいらしてください」
お嬢様モードのリオの相手をするのは、マックレガン伯爵だ。
「ご令息の優秀さを、以前から夫に聞いておりましたのよ。それで、機会があればお会いしてみたいと思っていましたの。そうしたら、今日、オリヴィア様とお話していたら、先日の狩猟会で助けていただいた方が、そのグレイ=マックレガン様だとお聞きしたのよ。」
手を口に当てて、ころころと鈴が鳴るように微笑むリオは、どこから見ても上品な公爵夫人で、外見の愛らしさと合わせて、うっとりするほどの麗しさを醸し出している。
「もう、どんなに素敵な方なのかと思って、急に訪問させていただいたの」
「ああ、なんという光栄なことでしょう。―――おい、グレンはまだか?」
伯爵は、リオに是非にと望まれるなどと感激し、後半の言葉を侍従に向けて、グレンの来訪を急かした。
「急な訪問ですもの。急かさないでください。申し訳ないですわ」
片頬に手を当て、首を傾げる様は、何を押してでも願いを叶えたくなる愛らしさだと、伯爵は思う。
私があと10歳若ければ・・・アレクシオに知られれば、辺境に飛ばされそうなことを考えながら、視線だけで使用人たちを走らせる。
オリヴィアが全く話せずにいる間に、リオは庭を褒め、屋敷を褒め、壁の絵を褒め、出された茶器を褒め、紅茶と菓子を褒め、伯爵とその家族を褒めたたえた。
オリヴィアは、ただただ聞くことだけしかできない。
この茶器って、そんなに有名なの?菓子の中のハーブ?伯爵夫人の趣味が観劇って、そんな情報どこから・・・?
リオは、「すぐに行く」という言葉通りに、外出着に着替えることさえ侍女に押さえつけられながらするほどに、あっという間に出てきた。
伯爵家を調べる暇などあったはずもないのに、その情報は頭に入っているのだろうかと、呆然とリオを眺めていた。
その可能性を思い描いた途端、リオは耐えきれなくなって、オリヴィアをたきつけていた。
「好きなら、好きだと一度でも告白しなければ、あきらめてはいけません!」
そう、リオだって、アレクシオに伝えないまま、一人で苦しんでいた。
一言でも「大好きです」と伝えていれば、すれ違いなど起きなかった。
「いい?あきらめるのは、いつでもできるの。泣くのは、全部やり尽くした後!まずは、素直に気持ちを伝えなければ」
突然張り切りだしたリオに、目を瞬かせて、オリヴィアは言った。
「で、ですが、私は充分、好意を伝えたと思っています。この上、さらに拒否されるのですか?」
「充分なんてものはないわ!」
ざっくりとオリヴィアの言葉を否定して、リオは叫んだ。
背後から侍女が現れて、リオの周りの食器を遠ざけていることにも気づかず、リオは熱弁を振るった。
「私は、毎日大好きだと伝えているけれど、充分伝わっている気がしないわ。もっと、もっとたくさん大好きなんだもの」
充分伝わっていると思います。使用人一同、心の声だったが、リオは気づかない。
「こっそりと遠回しに伝えられても、はっきり言って、分からないわ!」
貴族女性としてあるまじき。
侍女が頭を抱えそうになっていることなど知らずに、リオは鼻息荒く断言する。
オリヴィアは、その言葉に、目から鱗だ。
はっきりきっぱり言わないのが、高位の女性だ。
男性であろうとも、比喩や動作で、それとなく好意を女性へ伝えることが上品であるとされる。
そんなのも、勘違いが起こりまくるじゃないの!と、リオに怒られそうだが、普通は起こらないのだ。普通は。
アレクシオとリオは、そこらのそれとない伝え方を知らない、分からないので、お互いにすれ違っていくだけで、お互いがお互いを想っていることなど、端から見れば、あからさますぎるほどなのだ。
そこに、言葉などいらないというのが、美しい恋愛感であるが、リオにとっては、言葉にも態度にも出さなければ、鼻の粘膜が危険にさらされる。
今更リオの鼻血くらいではアレクシオは仰天しないだろうが、まだまだ女性としての恥じらいというものがある。少々他とはずれている恥じらいが。
「今から行くわよ!」
「今から!?」
すぐに立ち上がったリオに、「少々お待ちください」「ご連絡を」「お支度を」と、使用人たちが慌て出す。
「行くのは無理だ」という者はいない。リオがこうなったら、人の話を聞かないからだ。
おろおろしているオリヴィアを尻目に、とんとん拍子で話は進み、
「グレイ=マックレガン様は、本日はお休みで、ご自宅にいらっしゃるそうです」
どこでどう調べてきたのか、半時と待たずに、家令が伝えに来た。
「あら、ちょうどいいわ」
「本気ですかっ?」
「当然よ。思い立ったら吉日という言葉があるでしょう?」
「はあ……?」
それは、日本のことわざだ。
オリヴィアが戸惑っているのも、別世界の言葉を出してしまったことにも、やる気まんまんのリオは気がつかず、オリヴィアを引きずるようにマックレガン伯爵邸へ向かった。
「急にお邪魔して申し訳ないわ」
「いえ、公爵夫人の来訪を喜ばないはずがありません。いつでもいらしてください」
お嬢様モードのリオの相手をするのは、マックレガン伯爵だ。
「ご令息の優秀さを、以前から夫に聞いておりましたのよ。それで、機会があればお会いしてみたいと思っていましたの。そうしたら、今日、オリヴィア様とお話していたら、先日の狩猟会で助けていただいた方が、そのグレイ=マックレガン様だとお聞きしたのよ。」
手を口に当てて、ころころと鈴が鳴るように微笑むリオは、どこから見ても上品な公爵夫人で、外見の愛らしさと合わせて、うっとりするほどの麗しさを醸し出している。
「もう、どんなに素敵な方なのかと思って、急に訪問させていただいたの」
「ああ、なんという光栄なことでしょう。―――おい、グレンはまだか?」
伯爵は、リオに是非にと望まれるなどと感激し、後半の言葉を侍従に向けて、グレンの来訪を急かした。
「急な訪問ですもの。急かさないでください。申し訳ないですわ」
片頬に手を当て、首を傾げる様は、何を押してでも願いを叶えたくなる愛らしさだと、伯爵は思う。
私があと10歳若ければ・・・アレクシオに知られれば、辺境に飛ばされそうなことを考えながら、視線だけで使用人たちを走らせる。
オリヴィアが全く話せずにいる間に、リオは庭を褒め、屋敷を褒め、壁の絵を褒め、出された茶器を褒め、紅茶と菓子を褒め、伯爵とその家族を褒めたたえた。
オリヴィアは、ただただ聞くことだけしかできない。
この茶器って、そんなに有名なの?菓子の中のハーブ?伯爵夫人の趣味が観劇って、そんな情報どこから・・・?
リオは、「すぐに行く」という言葉通りに、外出着に着替えることさえ侍女に押さえつけられながらするほどに、あっという間に出てきた。
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