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呑んでも飲まれるな1
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今日は、伯爵家次男グレイ・マックレガンと、同じく伯爵家長女オリヴィア・アルサーレとの婚約発表を兼ねた舞踏会が、行われる。
リオの結婚以前から仲良くしていた令嬢、オリヴィアの婚約発表ということもあり、リオは、是非参加したいとアレクシオに申し出た。
しかし、公爵夫妻が、伯爵家同士の婚約発表にそろって参加するというのは、 この伯爵家に特別な何かがあるのではないかと勘繰られることにもなり得る。
リオの父のようにあちこちと夜会に出ている人間ならば問題はないだろうが、アレクシオは基本的に舞踏会には参加しない。嫌いだからだ。
その公爵閣下が参加するというのだ。
王家と並び立つほどの名家から主人を招くことができるとなれば、伯爵家当主はむせび泣かんばかりに喜ぶ。
だが、アルサーレ伯爵家が周りの貴族に一目置かれることになったり、様々な思惑が絡んでくるのだ。
難しい話はリオにはいまいちよく分からないが、あまりよくないことなのだろうと思う。
リオの気持ち一つで、貴族間の力関係を変えてしまうことになりかねないのだ。
だったら……と、リオは提案した。
公爵夫妻で参加するよりも、リオだけで参加すれば、そこまでの影響を受けないのではないかと。
エスコートは父か兄に頼めばいい。
まあ、泣いて拒否られるだろうが、副官のマッシュでもいい。
「―――マックレガン家の婚約発表に?」
アレクシオが低い声で威嚇してきた。
「いえ、どっちかというと、アルサーレ家……」
リオが反論を試みるも、アレクシオに肩をがっしりと掴まれた。
「軍人が多く参加するだろう舞踏会に、一人で、参加すると?」
すごく区切られて話された。怖い。
リオの反論の受付口は無いらしい。
オリヴィアの結婚相手であるグレイは、アレクシオの部下でもある。
グレイは軍人なので、そのつながりでリオ好みの大きながっしりした体を持っている方も多く出席することになるのだろう。
じっと睨まれ……いや、見つめられて、リオはアレクシオに「是非エスコートをして欲しい」と可愛くおねだりすることになった。
え?貴族の力関係?
そんなの、公爵閣下が嫉妬くらいで無視するようなものにリオが気を使う必要はないと判断した。
悪い方向に動きそうだったら、父と兄に丸投げでいいだろう。
広い顔をこういう時こそ、可愛い娘、妹に使ってもらおうとリオは思う。
こんなことを考えていると分かれば、父と兄は声を揃えて「毎回毎回、尻拭いしてやってるだろう!?」と憤慨しそうだが、幸いなことに、ここに二人はいない。
……まあ、そんなわけで、アレクシオと二人での参加となったのだ。
「リオ、オレのところには部下がたくさん挨拶に来る」
「そうですね!」
もちろん、上司が同じ会場にいるのだ。挨拶に来ない方がおかしいだろう。
(盛装した軍人さん!楽しみです)
そこは声に出さずに、リオはとてもいい笑顔で答えたのに。
「お前は友人たちと一緒にいろ」
しっかりと、心の声も読み取られてしまったらしい。
リオはアレクシオに冷たい目で見下ろされた。ひどい。
さすがに変なことしないのに。
「他の男に見惚れた瞬間にキスされてぐちゃぐちゃにされて良いならいいぞ」
「あ、たまには友人ともお話したいわ。では、お言葉に甘えて」
恐ろしい提案を受けて、リオは早々にアレクシオから遠ざかることにした。
ええ、自信がないわけではないのですよ?
たまには女子トークというものもいいかなと思っただけで。
おほほ~と優雅に笑いながら、アレクシオの元に誰かが挨拶に来る前に退散することにした。
「外には出るなよ」という過保護なセリフを背中に受けて、その甘さににやける顔を隠しながら、リオは今日の主役であるオリヴィアの元へ向かった。
オリヴィアの元には、リオも仲の良かった友人たちが、こぞって祝いの言葉を言いに集まっていた。
「オリヴィア!おめでとう!」
リオも、その輪の中へ入り、祝いの言葉を述べた。
正式な発表は、もう少し宴が進んでからだ。それまでは、オリヴィアとグレイは別々に行動する。
発表直前に、ようやく二人一緒になるのだ。
「ありがとうございます」
はにかんで答えるオリヴィアの頬はピンク色に染まってとても可愛らしかった。
リオの結婚以前から仲良くしていた令嬢、オリヴィアの婚約発表ということもあり、リオは、是非参加したいとアレクシオに申し出た。
しかし、公爵夫妻が、伯爵家同士の婚約発表にそろって参加するというのは、 この伯爵家に特別な何かがあるのではないかと勘繰られることにもなり得る。
リオの父のようにあちこちと夜会に出ている人間ならば問題はないだろうが、アレクシオは基本的に舞踏会には参加しない。嫌いだからだ。
その公爵閣下が参加するというのだ。
王家と並び立つほどの名家から主人を招くことができるとなれば、伯爵家当主はむせび泣かんばかりに喜ぶ。
だが、アルサーレ伯爵家が周りの貴族に一目置かれることになったり、様々な思惑が絡んでくるのだ。
難しい話はリオにはいまいちよく分からないが、あまりよくないことなのだろうと思う。
リオの気持ち一つで、貴族間の力関係を変えてしまうことになりかねないのだ。
だったら……と、リオは提案した。
公爵夫妻で参加するよりも、リオだけで参加すれば、そこまでの影響を受けないのではないかと。
エスコートは父か兄に頼めばいい。
まあ、泣いて拒否られるだろうが、副官のマッシュでもいい。
「―――マックレガン家の婚約発表に?」
アレクシオが低い声で威嚇してきた。
「いえ、どっちかというと、アルサーレ家……」
リオが反論を試みるも、アレクシオに肩をがっしりと掴まれた。
「軍人が多く参加するだろう舞踏会に、一人で、参加すると?」
すごく区切られて話された。怖い。
リオの反論の受付口は無いらしい。
オリヴィアの結婚相手であるグレイは、アレクシオの部下でもある。
グレイは軍人なので、そのつながりでリオ好みの大きながっしりした体を持っている方も多く出席することになるのだろう。
じっと睨まれ……いや、見つめられて、リオはアレクシオに「是非エスコートをして欲しい」と可愛くおねだりすることになった。
え?貴族の力関係?
そんなの、公爵閣下が嫉妬くらいで無視するようなものにリオが気を使う必要はないと判断した。
悪い方向に動きそうだったら、父と兄に丸投げでいいだろう。
広い顔をこういう時こそ、可愛い娘、妹に使ってもらおうとリオは思う。
こんなことを考えていると分かれば、父と兄は声を揃えて「毎回毎回、尻拭いしてやってるだろう!?」と憤慨しそうだが、幸いなことに、ここに二人はいない。
……まあ、そんなわけで、アレクシオと二人での参加となったのだ。
「リオ、オレのところには部下がたくさん挨拶に来る」
「そうですね!」
もちろん、上司が同じ会場にいるのだ。挨拶に来ない方がおかしいだろう。
(盛装した軍人さん!楽しみです)
そこは声に出さずに、リオはとてもいい笑顔で答えたのに。
「お前は友人たちと一緒にいろ」
しっかりと、心の声も読み取られてしまったらしい。
リオはアレクシオに冷たい目で見下ろされた。ひどい。
さすがに変なことしないのに。
「他の男に見惚れた瞬間にキスされてぐちゃぐちゃにされて良いならいいぞ」
「あ、たまには友人ともお話したいわ。では、お言葉に甘えて」
恐ろしい提案を受けて、リオは早々にアレクシオから遠ざかることにした。
ええ、自信がないわけではないのですよ?
たまには女子トークというものもいいかなと思っただけで。
おほほ~と優雅に笑いながら、アレクシオの元に誰かが挨拶に来る前に退散することにした。
「外には出るなよ」という過保護なセリフを背中に受けて、その甘さににやける顔を隠しながら、リオは今日の主役であるオリヴィアの元へ向かった。
オリヴィアの元には、リオも仲の良かった友人たちが、こぞって祝いの言葉を言いに集まっていた。
「オリヴィア!おめでとう!」
リオも、その輪の中へ入り、祝いの言葉を述べた。
正式な発表は、もう少し宴が進んでからだ。それまでは、オリヴィアとグレイは別々に行動する。
発表直前に、ようやく二人一緒になるのだ。
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はにかんで答えるオリヴィアの頬はピンク色に染まってとても可愛らしかった。
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