41 / 72
クラウス①
しおりを挟む(この感情は一体……)
私――クラウス・ド・カラフリアは国王である父と、王妃である母との間に生まれた唯一の子である。
私はとても優秀だった。
幼くして始まった王子教育をあっという間に修め、剣も魔法も教えられた以上のものを身に付けていった。
そして十歳という異例の早さで立太子されることになったのだ。
立太子と同時にランドルフとフィンメルが私の側近に選ばれた。
これまで同年代の子どもと共に過ごすことがなかったが、二人と一緒に過ごす時間が増えていくと改めて自分の優秀さを知った。
もちろんランドルフもフィンメルも、上級貴族家の子なだけあって優秀ではある。
ただそんな日々が続くと、なにか物足りないと感じることが多くなっていく。
私はその物足りなさを、女性と過ごすことで埋めていった。
貴族の令嬢から平民の女性まで幅広い付き合いをしてきた。
ただそうは言っても、自分が王太子である自覚はちゃんとある。だから体の関係まではない。
演劇を見たり食事をしたり買い物をしたりと、時間があればそんな風に女性たちと過ごすようになっていた。
勉強や稽古、公務をこなしつつ、女性と過ごすという生活を続けてきたが、十五歳になりとうとう婚約することになってしまう。
まだ遊びたいという気持ちはあったが、王太子である私がいつまでも婚約者を作らないわけにはいかない。
そしてその婚約の相手として選ばれたのが彼女、ダリアローズ・ブルーだった。
これまで一度たりとも表舞台に出てこない謎の令嬢。
そう聞けばなんだか神秘的に聞こえなくもないが、父から聞いた話によると家族から疎まれているという。
なぜそんなやつと私が婚約しなければならないのか。
どう考えても釣り合わない、そう思ったが同い年の上級貴族の令嬢が彼女しかいない。
だから仕方なくだと父は言うが、そんなお荷物を私に押し付けるなど心外である。
ただでさえ婚約してしまえば、付き合っている女性たちとの関係を終わりにしなければならないというのに、とんだハズレだ。
じゃあバレずに関係を続ければいいのでは?
なんてことも考えたが、やはりそれはリスクが高すぎると断念した。
なぜなら彼女の母親はパレット帝国の皇女で、彼女にはたしかに帝国皇室の血が流れているから。
帝国からの怒りを買うようなことは避けたい。
対応を誤れば王国が滅びる可能性だってある。
それだけ国力が違いすぎるのだ。
いくら家族から疎まれているからと言って、蔑ろにしていい相手ではない。
ただ頭では理解していても、どこかで驕りがあったのだろう。
私は顔合わせの場で、余計なことを言ってしまい、それが全ての原因ではないものの、婚約の話は白紙になってしまったのだ。
顔合わせの後、少し時間を置いてから父と改めて話をした。
『あの娘にしてやられたな』
『そう、ですね……ですが婚約を白紙にする必要はあったのですか?王命で婚約させてしまえば』
『馬鹿者。そんなことをしてみろ。この国がどうなるか分からんぞ』
『……その、そこまですごいのですか?』
S級冒険者、魔道具師、ローズ商会長……
この時の私は、彼らがどれだけ国に影響を与える人物なのか分からなかった。
『はぁ……お前は一度あの者たちのことを調べてみなさい』
父にそう言われ私は調べた。
そして婚約の白紙という結果に納得せざるを得なかった。
1,599
あなたにおすすめの小説
乙女ゲームの悪役令嬢の兄の婚約者に転生しましたが傷物になったので退場を希望します!
ユウ
恋愛
平凡な伯爵令嬢のリネットは優しい婚約者と妹と穏やかで幸福な日々を送っていた。
相手は公爵家の嫡男であり第一王子殿下の側近で覚えもめでたく社交界の憧れの漆黒の騎士と呼ばれる貴族令息だった。
結婚式前夜、婚約者の妹に会いに学園に向かったが、そこで事件が起きる。
現在学園で騒動を起こしている第二王子とその友人達に勘違いから暴行を受け階段から落ちてしまう…
その時に前世の記憶を取り戻すのだった…
「悪役令嬢の兄の婚約者って…」
なんとも微妙なポジション。
しかも結婚前夜で傷物になる失態を犯してしまったリネットは婚約解消を望むのだが、悪役令嬢の義妹が王子に婚約破棄を突きつける事件に発展してしまう。
愛のない結婚をした継母に転生したようなので、天使のような息子を溺愛します
美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
目が覚めると私は昔読んでいた本の中の登場人物、公爵家の後妻となった元王女ビオラに転生していた。
人嫌いの公爵は、王家によって組まれた前妻もビオラのことも毛嫌いしており、何をするのも全て別。二人の結婚には愛情の欠片もなく、ビオラは使用人たちにすら相手にされぬ生活を送っていた。
それでもめげずにこの家にしがみついていたのは、ビオラが公爵のことが本当に好きだったから。しかしその想いは報われることなどなく彼女は消え、私がこの体に入ってしまったらしい。
嫌われ者のビオラに転生し、この先どうしようかと考えあぐねていると、この物語の主人公であるルカが声をかけてきた。物語の中で悲惨な幼少期を過ごし、闇落ち予定のルカは純粋なまなざしで自分を見ている。天使のような可愛らしさと優しさに、気づけば彼を救って本物の家族になりたいと考える様に。
二人一緒ならばもう孤独ではないと、私はルカとの絆を深めていく。
するといつしか私を取り巻く周りの人々の目も、変わり始めるのだったーー
【完結】転生したら悪役継母でした
入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。
その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。
しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。
絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。
記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。
夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。
◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆
*旧題:転生したら悪妻でした
【完結】2番目の番とどうぞお幸せに〜聖女は竜人に溺愛される〜
雨香
恋愛
美しく優しい狼獣人の彼に自分とは違うもう一人の番が現れる。
彼と同じ獣人である彼女は、自ら身を引くと言う。
自ら身を引くと言ってくれた2番目の番に心を砕く狼の彼。
「辛い選択をさせてしまった彼女の最後の願いを叶えてやりたい。彼女は、私との思い出が欲しいそうだ」
異世界に召喚されて狼獣人の番になった主人公の溺愛逆ハーレム風話です。
異世界激甘溺愛ばなしをお楽しみいただければ。
悪役令嬢発溺愛幼女着
みおな
ファンタジー
「違います!わたくしは、フローラさんをいじめてなどいません!」
わたくしの声がホールに響いたけれど、誰もわたくしに手を差し伸べて下さることはなかった。
響いたのは、婚約者である王太子殿下の冷たい声。
わたくしに差し伸べられたのは、騎士団長のご子息がわたくしを強く床に押し付ける腕。
冷ややかな周囲のご令嬢ご令息の冷笑。
どうして。
誰もわたくしを信じてくれないまま、わたくしは冷たい牢の中で命を落とした。
悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。
槙村まき
恋愛
スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。
それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。
挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。
そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……!
第二章以降は、11時と23時に更新予定です。
他サイトにも掲載しています。
よろしくお願いします。
25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!
転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎
水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。
もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。
振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!!
え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!?
でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!?
と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう!
前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい!
だからこっちに熱い眼差しを送らないで!
答えられないんです!
これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。
または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。
小説家になろうでも投稿してます。
こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる