婚約が白紙になりました。あとは自由に生きていきます~攻略対象たちの様子が何やらおかしいですが、悪役令嬢には無関係です~

Na20

文字の大きさ
61 / 72

48

しおりを挟む

「このあとはダンスパーティーね」


 屋台で買った食べ物を食べ歩きしながら、このあとの予定を口にした。
 学園祭の後夜祭として、夕方からダンスパーティーが開催されるのだ。あ、こっちは学園主催ね。


「ダンスですか……」


 ダンスパーティーと言った途端、アナベルの様子がおかしい。


「ど、どうしたの?気分でも悪いの?」

「……」


 黙ったまま首を横に振るアナベル。
 どうやら体調が悪いわけではないらしい。
 それならよかったけど、急にどうしちゃったのかな?


「ベル?」

「……実は私、ダンスが苦手なんです」

「え、そうなの?」


 意外だ。
 まさかアナベルがダンスを苦手にしているとは……いや、それは私の偏見か。
 アナベルはヒロインだから何でもできるって無意識に思っていたのかも。
 そりゃ誰だって苦手なことの一つや二つはあるよね。
 私だって朝早く起きるの苦手だし。

 でもこの場合、どうやって元気づければ……あ。
 そうだ、アレがあったんだった。
 まだ少し時間は早いけど、いいよね?


「はぁ……」

「ねぇ、ベル。今から貸衣装の店に行かない?」

「……貸衣装のお店、ですか?」

「ええ」


 実は今日、ローズ商会の服飾部門も学園に来ている。
 学園祭自体に服飾部門は関係ないんだけど、ダンスパーティーがあると聞いて急遽手配してみたのだ。
 学園の生徒の多くは貴族だ。でも少数と言えど平民の生徒だっている。
 そうするとダンスパーティーのためだけに、ドレスを用意するのは難しい生徒も出てくるはず。

 そこでローズ商会の出番だ。

 パーティーには制服で参加してもいいとはなっているけど、せっかくのお祭り。
 できれば最後まで楽しんでもらいたい。
 ということで、ドレスや燕尾服の貸出を行うことに決めた。
 それを学園内でお知らせすると、平民の生徒は大喜び。
 貴族の生徒も羨ましがってたな~。まぁ憧れのローズ商会だもんね。
 さすがに生徒全員は無理なので、貴族の生徒には次回購入する時に割引になる特別クーポンをあげました!
 ……まぁ少しくらいは営業しないとね?


「でも私……」

「私のドレスがそこにあるのよ。だから一緒に行かない?」

「あ……」


 アナベルも忘れていたようだけど、今の私は正真正銘の平民。
 そして学園で私がローズ商会の会長だと知ってるのは、アナベルと王太子だけ。
 だから堂々と行っても問題ないのだ。


「それにベルにお願いしたいことがあるの。だから、ね?」

「ダリア様からのお願い……!わ、分かりました!」

「ありがとう。たしか場所は……こっちね」


 私のドレスがあるのは間違いなのだけど、目的はそれではない。
 目的はアナベルを元気づけるため。
 じゃあなんで貸衣装の店に行くのかというと……


「わぁ……素敵」

「ふふっ、よく似合ってるわ」


 うんうん、すっごく可愛い!
 実はアナベルにプレゼントしようと、ドレスを用意していたのだ。
 可愛い服を着れば、自然と気分が上がるもの。


「でも……」


 ん?


「私なんかが、こんなに素敵なドレスをいただくわけには……」


 ……だよね。
 真面目で謙虚なアナベルならそう言うと思ってました。
 だからちゃんと対策は考えてあります!


「実はねこの生地、今度商会で新しく売り出すものなのよ」

「えっ、そうなのですか?」


 アナベルのドレスには、動く度に色が変わって見える生地を使っている。


「ええ。それでねさっき言ってたお願いなんだけど、ベルには宣伝をしてもらいたいの」

「宣伝……」


 これが私の考えた対策だ。
 この生地は私がアナベルをイメージして作ったもの。
 だから本当は売るつもりはなかったんだけど、申し子アンナが許してくれませんでした。
 そこをなんとかって頼み込もうとしたんだけど……

『この生地は誰が見ても高価だって分かります。それで作ったドレス……アナベルさんは受け取ってくれますかね?』

 はい、私もそう思います。
 この言葉に私は白旗を上げましたよ。

 アンナの言う通りこの生地はかなりいい値段がするし、ただでさえドレスは高価なもの。
 受け取ってもらえなければ、そもそも意味がない。
 じゃあどうすれば……それで考えたのが、アナベルに広告塔になってもらおう作戦だ。
 これならアナベルもドレスを受け取ってくれるはず!


「ぜひ協力してもらえないかしら?」

「も、もちろん協力させてください!」

「本当?嬉しいわ」

「でもそれが終わったらドレスはお返ししま――」


 よし、これで止めだ。


「そのドレスはベルに合うように作ってあるの。もし返されても他の人では着れないし、もう捨てるしか……」

「えっ」

「それにこのドレス、私がデザインしたものなんだけど……それじゃあ仕方ないわね」


 ここでチラッと視線を向けてっと……
 どうだ!私の迫真の演技は!


「ダリア様のデザイン!?……ダ、ダリア様!」

「……なぁに?」

「そ、その……よろしければこのドレスいただいても……」


 よし!


「もちろん!私もベルに受け取ってもらえたらすごく嬉しいわ」


 こうしてドレスをめぐる攻防は、私の勝利で幕を閉じたのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

乙女ゲームの悪役令嬢の兄の婚約者に転生しましたが傷物になったので退場を希望します!

ユウ
恋愛
平凡な伯爵令嬢のリネットは優しい婚約者と妹と穏やかで幸福な日々を送っていた。 相手は公爵家の嫡男であり第一王子殿下の側近で覚えもめでたく社交界の憧れの漆黒の騎士と呼ばれる貴族令息だった。 結婚式前夜、婚約者の妹に会いに学園に向かったが、そこで事件が起きる。 現在学園で騒動を起こしている第二王子とその友人達に勘違いから暴行を受け階段から落ちてしまう… その時に前世の記憶を取り戻すのだった… 「悪役令嬢の兄の婚約者って…」 なんとも微妙なポジション。 しかも結婚前夜で傷物になる失態を犯してしまったリネットは婚約解消を望むのだが、悪役令嬢の義妹が王子に婚約破棄を突きつける事件に発展してしまう。

愛のない結婚をした継母に転生したようなので、天使のような息子を溺愛します

美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
目が覚めると私は昔読んでいた本の中の登場人物、公爵家の後妻となった元王女ビオラに転生していた。 人嫌いの公爵は、王家によって組まれた前妻もビオラのことも毛嫌いしており、何をするのも全て別。二人の結婚には愛情の欠片もなく、ビオラは使用人たちにすら相手にされぬ生活を送っていた。 それでもめげずにこの家にしがみついていたのは、ビオラが公爵のことが本当に好きだったから。しかしその想いは報われることなどなく彼女は消え、私がこの体に入ってしまったらしい。 嫌われ者のビオラに転生し、この先どうしようかと考えあぐねていると、この物語の主人公であるルカが声をかけてきた。物語の中で悲惨な幼少期を過ごし、闇落ち予定のルカは純粋なまなざしで自分を見ている。天使のような可愛らしさと優しさに、気づけば彼を救って本物の家族になりたいと考える様に。 二人一緒ならばもう孤独ではないと、私はルカとの絆を深めていく。 するといつしか私を取り巻く周りの人々の目も、変わり始めるのだったーー

【完結】転生したら悪役継母でした

入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。 その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。 しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。 絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。 記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。 夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。 ◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆ *旧題:転生したら悪妻でした

【完結】2番目の番とどうぞお幸せに〜聖女は竜人に溺愛される〜

雨香
恋愛
美しく優しい狼獣人の彼に自分とは違うもう一人の番が現れる。 彼と同じ獣人である彼女は、自ら身を引くと言う。 自ら身を引くと言ってくれた2番目の番に心を砕く狼の彼。 「辛い選択をさせてしまった彼女の最後の願いを叶えてやりたい。彼女は、私との思い出が欲しいそうだ」 異世界に召喚されて狼獣人の番になった主人公の溺愛逆ハーレム風話です。 異世界激甘溺愛ばなしをお楽しみいただければ。

悪役令嬢発溺愛幼女着

みおな
ファンタジー
「違います!わたくしは、フローラさんをいじめてなどいません!」  わたくしの声がホールに響いたけれど、誰もわたくしに手を差し伸べて下さることはなかった。  響いたのは、婚約者である王太子殿下の冷たい声。  わたくしに差し伸べられたのは、騎士団長のご子息がわたくしを強く床に押し付ける腕。  冷ややかな周囲のご令嬢ご令息の冷笑。  どうして。  誰もわたくしを信じてくれないまま、わたくしは冷たい牢の中で命を落とした。

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

処理中です...