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しおりを挟むとうとうこの日がやって来た。
学園に入学してからおよそ一年。
悪役令嬢が断罪され、ヒロインと攻略対象が真実の愛を掴みとる……『ハナキミ』最大のイベント、卒業パーティーの日が。
卒業パーティーは卒業式の後に催される。
本来は、卒業生の門出を祝うためのパーティー。
しかし『ハナキミ』では、悪役令嬢の断罪の場へと変わる。
卒業生を祝う為の場なので、主役は卒業生だ。
けれど学園の生徒なら誰でも参加することができる。
だからダリアローズも参加していた。
ただ婚約者である王太子のエスコートはなかったが。
このパーティーで王太子は、ダリアローズへの断罪を始める。
そして断罪により絶望したダリアローズはラスボス化し、ヒーローとヒロインに倒され、ゲームはハッピーエンドを迎えるのだ。
普通のプレイヤーなら、ここでスカッとするのだろう。
でも前世の私は、なんて可哀想なんだと思った。
最後まで誰からも愛されることなく、ただむなしく散っていくダリアローズが。
もちろん悪事が許されるわけではない。
でももしも。
もしも誰か一人でもダリアローズに寄り添ってくれる人がいれば、こんな悲しい結末にはならなかったはず。
だから私は決意したのだ。
私がダリアローズを救ってみせると。
そうして無我夢中で進んできた十年。
本当の意味で自由を手にするまで、もうあと少し……
◇
「そろそろ始まる頃ね」
きっと今頃パーティー会場では、生徒たちが楽しい時間を過ごしているだろう。
ただその生徒の中に、私とアナベルは含まれていない。
「ダリア様」
「ん?なぁに?」
「その……本当によかったのですか?」
何がとは聞かない。
アナベルの言いたいことは分かっているから。
卒業パーティーはほとんどの生徒が参加する。
けれど私たちが今いる場所はパーティー会場ではなく、寮の自分の部屋。
要するに私たちは、パーティーに参加していないのだ。
「ええ。もちろんよ」
パーティーに参加しない理由。それはもちろん断罪を回避するため。
もうここまでシナリオが変わってしまっているので、今さら断罪されることはないと思う。
でも今日は、私にとって大きな分岐点だ。
パーティーへの参加は任意。
だから私は参加しないことを選んだ。それに……
「でも王太子殿下から誘われていましたよね?」
「……」
うっ……さすが親友。
気づいてたか。
そう。なぜか王太子から一緒にパーティーに行かないかと誘われたのだ。
でも王太子は攻略対象で、しかもメインヒーロー。
そんな相手とパートナーなんて考えただけで恐ろしい
当然、全力でお断りしさせていただきました。
「二回も誘われていましたよね?」
「……」
そうなのだ。
一度しっかりきっぱり断ったというのに、何を考えているのかもう一回誘ってきたのだ。
これが他の女子生徒や、『ハナキミ』のダリアローズなら喜んで受け入れていただろう。
でも私は違う。
だからもう一度きちんとお断りさせていただきましたよ。
『あなたは王太子です。そう遠くない未来に然るべき相手と結婚することになるでしょう。ですからその方を大切にしてください』ってね。
さすがに王太子は何も言ってこなかったよ。
まぁそりゃあ正論だもんね?
なんで私に関わってくるのかは分からないけど、できることならばこれからは将来結ばれるであろう女性だけを大切にしてあげてほしい。
「ちゃんと全部お断りしたから大丈夫よ」
「……全部?」
……おっと、いけないいけない。
「二回とも断ったっていう意味よ」
「そうでしたか」
「ええ」
アナベルごめんね。本当は違うの。
全部っていうのはそういう意味じゃない。
実は王太子以外にもランドルフ、マティアス、フィンメルからも誘われていたの。
きっと三人は私に恩を感じて誘ってくれたんだと思う。
だけど私はそもそもパーティーに参加するつもりがない。
だから全部丁重にお断りしたのだ。
もちろんアナベルにも言おうか迷ったよ?
でも相手は上級貴族。
ただでさえ王太子の誘いを断っているのを知っているのに、さらに上級貴族からの誘いを全部断ったなんて知ったら、余計な心配を掛けてしまうかもしれないと思い黙っていたのだ。
……さてと。
この話はここまでにして話題を変えないとね。
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