婚約が白紙になりました。あとは自由に生きていきます~攻略対象たちの様子が何やらおかしいですが、悪役令嬢には無関係です~

Na20

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 雲一つない青い空。私は今、大きな門の前に立っている。
 今日は学園の入学式。
 眩しいほどの青色が、新たな始まりを歓迎しているようだ。


 ――ブランディール学園


 カラフリア王国王都にある、屈指の名門校だ。
 貴族なら誰でも入れるわけではなく、入学するには入学試験をパスしなければならない。在籍する学園生は、教育の差から圧倒的に貴族が多いが、平民にも門戸を開いている。
 貴族も平民も入学を夢見て、毎年試験を受ける者があとを絶たない。なぜならブランディール学園卒業は、一つのステータスだから。

 クラスは騎士科、魔法科、経営科、普通科の四つに分かれてて、好きなクラスを自分で選ぶことができる。
 騎士科は騎士を目指す者、魔法科は魔法士や治癒士を目指す者が多く在籍するクラスだ。平民の学園生は、この二つのクラスのどちらかを選択している。
 逆に経営科と普通科の二つのクラスには、貴族子女しか在籍していない。経営科は領地を継ぐ者の為のクラスであり、普通科はとりあえず卒業することを目的としている者が選ぶクラスである。


 では私はどのクラスを選ぶべきか。
 入学するからには必ず選ばなくてはいけないが、剣も魔法も改めて学ぶ必要はない。それに領地を継ぐ予定はないし、貴族が多いのもなんかめんどくさそうだし……などなど、色々悩んだ結果、最終的に選んだのは魔法科。
 特にこうなりたいとかがあるわけではない。ただ魔法が好き。それが選んだ理由だ。

 ちなみにこの世界の人間は、多かれ少なかれ皆が魔力を持っている。血筋の影響なのか、魔力の多い者はほとんどが貴族ばかりだが、平民でも魔力の多い者はいる。
 魔力の多い者は魔法士や治癒士など、将来の選択の幅が広げることができ、魔力の少ない者は、火を起こしたり水を出したり程度しかできないというのが一般的な見解だ。
 しかし私から言わせてもらえば、魔法は魔力の多い少ないよりも、想像力の方が重要だ。

 魔力の少なさを、想像力でカバーする。

 こんな考えは、この世界の人には思いもつかないらしく、魔力が少ないからと自ら将来を狭めてしまうのはもったい……まぁそもそもの話、そう思えるのは、私に前世の記憶があるからなのだが。



 門をくぐり、入学式の会場へと向かう。もちろん歩いてだ。頬にあたる風が心地よい。


『あの方がブルー家の……』

『綺麗……』


 長く伸びた青の髪を揺らし歩いていると、ヒソヒソと話す声が聞こえてくる。それにあちこちから視線も感じた。


 (こればっかりは仕方ないか)


 初めてブルー家の娘が表に出てきたのだ。みんな気になって仕方ないのだろう。それにこの美しい見た目だ。目立つなという方が無理な話なのである。

 会場に着くと、すでにたくさんの新入生がいた。入り口に張り出されていた座席表を見ると、どうやら席はクラスごとに分かれているようだ。


 (私の席は……あそこね)


 指定された席に座る。先ほどの張り紙を見るに、新入生は五十名くらい。三学年あるから、単純に考えればこの学園には百五十名近く在籍していることになる。


 (せっかく学園に通うんだもん。友達できるといいなぁ)


「続きまして新入生代表挨拶――」


 そんなことを考えているといつの間にか入学式が始まっていたようだ。次は新入生代表挨拶か。


「王太子殿下よ」
「まぁ……」
「今日も素敵ね」


 (新入生代表は王太子なのね)


 王太子は『ハナキミ』のメインヒーロー。当然と言えば当然か。
 壇上に上がった王太子を見つめる多くの女子からは、うっとりとした声が聞こえてきた。たしかにメインヒーローなだけあって、見た目は極上だ。
 王家の色である黒い髪に黒い瞳、格好いいというよりは美しいという言葉がぴったりの容姿をしている。さらに背も高く、女子がうっとりするのも理解できる。私には無しだが。

 挨拶を終えた王太子が壇上から降りてくる。その様子を眺めていた私だったが、やはりこの見た目が目立つのか、王太子がこちらに視線を向けた。


 (あ、今……)


 王太子と目が合った。あちらもあっ、と思ったのだろう。
 ついこの間までは見下していた相手が、急に気を遣わなくてはいけない相手になってしまったのだ。一瞬気まずそうな表情をしたものの、すぐに表情を戻し、席に戻っていく。その姿にうっかり笑ってしまいそうだった。

 王太子からしても、望んでいない婚約が回避できたのだ。私は今後、王太子や他の攻略対象、そしてヒロインに近づくつもりはさらさらない。だからぜひとも私のことは気にせず、ヒロインとの真実の愛を育くんでいってほしい。




 ……しかしいくら私がチートだとしても、すべてが思い通りになるわけではない。
 この時の私はすっかり忘れていたのだ。

 ヒロインはを目指しているということを。
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