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ランドルフ②
しおりを挟むこの日授業を受けに訓練場に行くと、俺はマティアス・グリーンと言い争いをしてしまう。
マティアスとは昔からの顔見知りだ。ただ俺は剣、あいつは魔法。
仲良くなれるはずもなく、顔を合わせるといつも言い争ってしまうのだ。
王太子の側近がするべき行動ではないと頭では分かっている。ただどうにも最近はイライラして仕方がなかった。
ちょうどこのあと両クラスの委員長同士での試合があるらしい。どうせ魔法科の委員長はあいつだ。だからそこで憂さ晴らしをしようと決めた。
しかし俺の前に現れたのはマティアスではなく、青い髪に青い瞳の女だった。
青い髪と瞳はブルー家の血筋の証。間違いない。
目の前にいるのはブルー家の令嬢、ダリアローズ・ブルー。
もちろん目の前の相手が誰だか分かってはいた。ただこの時の俺は言い争いをしたあとで頭に血がのぼっていたのか、クラウス様の言葉を忘れていたのだ。
『絶対に彼女を敵にまわしてはいけない』と。
◇
(この女が委員長なのか?)
女相手では話にならない。憂さ晴らしできると思っていたのに、とんだハズレだ。
この状況にイラつきはしたが、試合をしないわけにはいかない。
けれど目の前の女はふざけたこと抜かし、さらに俺をイラつかせた。
一撃で終わらせてやろう。
そう思った。
相手は令嬢。どうせ俺の剣を受け止めきれないに決まっている。
だから試合開始の合図とともに力一杯剣を振りかぶったが、運だけはよかったのだろう。渾身の一撃は避けられてしまった。
(これならどうだ!)
それならばと続けざまに剣を打ち込んでいく。俺の攻撃に相手は防戦一方だった。
(ずいぶんと偉そうなことを言っていたが、つまらないほどに弱い!)
これなら余裕で勝てる、この瞬間まではそう思っていた。
――ガキーン
しかし次の瞬間、俺の剣が折れた。
そして動揺している間に、俺の首もとには剣が突きつけられていたのだ。
まさかこの俺が女相手に負けるなんて。
とてもじゃないが信じられない。
きっとまぐれだ。そうでなければおかしい。
しかし女は周りを見ろと言う。
腹立たしく思いながらも周りを見てみる。すると驚くことに、女は試合開始前から一歩も動いていなかったのだ。
(そんなことがあり得るのか?)
思い返してみれば最後の一撃はかなりの衝撃だった。あれは令嬢の力ではない。きっと何かしたに決まっている。
そう問いただすと、女は悪びれる様子もなく魔法を使ったと言う。
そして剣と魔法、互いに尊重しあうことが大切だとも。
その言葉にハッとした。
もしかしたらこれが父の言っていた強さなのか?
これまではまったく受け入れることができなかったが、実際に身をもって体験するとすんなりと受け入れることができた。
剣も魔法も使いこなす彼女には勝てない。
そう思えるようになると、頭のモヤモヤが晴れていくのが分かった。
こんな清々しい気分は久しぶりだ。
それに俺はもっと強くなれる、そう思うとやる気が漲ってくる。
俺は彼女に謝罪した。
いくらイライラしていたからと、騎士を目指す者としてあの態度はいけなかった。
もしかしたら許してもらえないかもしれないと思っていたが、彼女は笑って許してくれた。
――ドクン
彼女の笑顔を見た瞬間、心臓が跳ねた。
それになぜか顔も熱い。
(この胸の高鳴りはなんだ……?)
そのあとも彼女と話している間は、ずっと心臓がドキドキしていた。
それに彼女に魔法を教えてもらうことに、なぜだか心が躍っている。
一体自分はどうしてしまったのか。
だけど嫌な気分ではなかった。
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