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しおりを挟む「……さい」
「だから黙ってと言っているのが」
「うるさい!」
「なっ……」
「ごちゃごちゃうるさいのよ!妹を助けたいんでしょう?それなら私の言うことを聞きなさい!」
「何を言って」
「いい?私はここでも魔法が使える。でも人目につくのは困る。だからあなたの控え室に行く。分かった?」
子どもにするような説明になってしまったが、冷静ではない相手にはこれくらいでいい。
「ほ、本当か!?」
どうやらちゃんと伝わったらしい。よかった。
伝わらなかったら強行突破するところだったよ?
「この状況で嘘なんてつくわけないでしょ!ほら、さっさとして!」
「……分かった。お前は父に連絡を!」
「は、はい!」
従者に指示を出し、メルリルを抱え急いでフィンメルの控え室へ。
メルリルをソファに寝かせ、状態を確認する。
呼吸が浅い。それに胸を押さえて苦しんでいる。肺?それとも心臓?
「妹さんは何か持病でも?」
「……魔管狭窄症だ」
「……なるほど。たしかその病気は先天的なものがほとんどだと聞いたことがあるわ……辛かったわね」
――魔管狭窄症
この世界の人間には魔力が流れる管、魔管が存在する。
この病気は名前の通り、魔管が狭くなる病気だ。そのほとんどが生まれつきのもので、魔力が多い者ほど苦痛を伴うことになる。
上級貴族であるメルリルはおそらく魔力が多いはず……これまで相当辛い思いをしてきたことだろう。
根本的な治療方法はなく、薬を服用するか回復魔法を使うことで症状を軽くすることしかできない。それにこの病気で亡くなる人は多い。
……なるほど。
きっとゲーム開始時点でメルリルは、姿を見せられないほどに衰弱していたか、すでに亡くなっていたのかもしれないね。
だからフィンメルのシスコン具合を見て、疑問に思ったわけだ。
メルリルの顔を見る。とても苦しそうだ。
辛い体調をおしてまで応援に駆けつけるなんてね。本当に素敵な兄妹で羨ましい。
できることならこれからもそうであってほしい。
だから私は……
「回復魔法をかけるわよ」
「頼む……!」
普通、この病気に回復魔法をかけても一時的な効果しか得られない。
……そう、普通は。
前世の記憶を持つ私なら話は違う。
メルリルの胸に手をかざし、想像する。
(管が狭いのなら広げればいい)
前世の世界であったカテーテル治療をイメージして……よし、回復!
魔法の発動と同時に、メルリルの体が光に包まれた。
「こ、これは……」
驚きの声が聞こえるが、今はそれに答える余裕なんてない。
集中、集中、集中……
徐々に光が消えていく。メルリルは穏やかな表情で眠っていた。
「……ふぅ」
これでもう大丈夫。
しかしだいぶ魔力を使ってしまった。今日はもう魔法は使わない方がいいだろう。
どうせあとは帰るだけだし、問題な……
(……違う!まだ大会中だった!今何時……ってもうすぐ二回戦始まっちゃう!)
時計を確認すると、まもなく二回戦が始まる時間だ。
これはまずい。遅刻で優勝を逃すわけにはいかない。
「じゃあ私はこれで」
「……え?」
「念のためお医者様に診てもらってくださいね!では失礼します!」
「ま、待って」
「あ、そうだ。今この時をもってお二人に関わらないので安心してください!」
「え、いや……」
「あと魔法のことは秘密でお願いします……ってもう時間が!では!」
このままじゃ不戦敗になっちゃう!
「ちょ、ちょっと……!」
急ぎこの場をあとにする。
フィンメルが何か言いたそうにしていたけど、どうせ二度と関わらないしいいよね。
そうして臨んだ二回戦。無事に勝利し、私は三回戦に駒を進めた。
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