婚約が白紙になりました。あとは自由に生きていきます~攻略対象たちの様子が何やらおかしいですが、悪役令嬢には無関係です~

Na20

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フィンメル②

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 そうして迎えた大会当日。
 まさか一回戦の対戦相手が、彼女だとは思いもよらなかった。
 女子生徒で唯一の参加者である彼女。
 しかし女子だからと油断するべきではない。
 どうやって勝ったのかは分からないが、ランドルフに勝つほどの実力があるのはたしかだ。
 それにクラウス様に言われた。

『彼女は魔法が無くても強い』と。


 そしてクラウス様の言うとおり、彼女は強かった。
 自身の注意が逸れてしまったのもある。だけどそれ以上に、彼女は最後まで強さを悟らせなかった。
 そんなことができるのは、真の強者のみ。
 要するに私はこれっぽっちも本気を出してもらえずに、負けてしまったのだ。

 悔しさのあまり、らしくないとは分かっていたものの、気づけば彼女を呼び止めていた。
 なぜ本気を出さなかったのかと問いかければ、彼女は『妖精のせい』だと言う。
 すぐにそれがメルリルのことを言っているのだと理解した。
 だから忠告した。妹に何かすれば許さないと。

 彼女は今後一切関わらないと言っていたが、信用なんてできない。
 妹を守れるのは私だけ。
 そう思っていた、それなのに……


『お、おにい、さま……』


 大切な妹が目の前で苦しんでいても、私はなにもできない。
 どうすればいい?どうすれば……


『ごちゃごちゃうるさいのよ!妹を助けたいんでしょう?それなら私の言うことを聞きなさい!』


 とても令嬢が口にするとは思えないような言葉。
 しかしその言葉に妹も、そして私も救われたのだ。



 ◇
 


「フィンメル!」


 あのあと屋敷に戻り、医師の診察を受けていると、父がやって来た。
 従者からの連絡を受けて、急いで戻ってきてくれたようだ。


「父上!」

「メルリルの容態は?」

「回復魔法をかけてもらったので今は落ち着いています」

「そうか……無事で良かった」


 そう言って眠るメルリルの頭を撫でる父。
 仕事柄、普段は表情を出さない父が、今は安堵の表情を浮かべている。
 それだけ心配していたのだろう。
 しかしその表情はすぐに驚愕へと変化することになる。
 なぜなら医者から衝撃の事実を告げられたから。


「お嬢様の病気が完治しております!」


 私も父も驚くしかなかった。


「なんだと!?」

「そ、それは本当か!?」

「はい!何度も確認しましたが、間違いなく治っております!」

「一体どういうことなんだ……?」

「……」


 もしかして彼女が?
 まさかと思った。たしかに助けるとは言っていたが、それは一時的なものを指しているのだと思っていたのに。
 しかしこれは……


「……フィンメル」

「っ!は、はい」

「先ほど回復魔法をかけてもらったと言っていたが、誰にかけてもらったんだ?学園にいた治癒士か?」

「そ、それは……」


 あの時彼女は、魔法のことは秘密にしてほしいと言っていた。
 私たちは助けられたのだ。その約束を守らないわけにはいかない。
 だから父の問いかけに黙るしかなかった。


「……まぁ病気が治ったことは喜ばしいことか」


 私の反応で何か察したのだろう。
 父はそれだけ言って、あとは何も聞いてくることはなかった。
 そのあと父は医者を連れ部屋から出ていった。きっと口止めをするためだろう。
 治療方法のない病が治ったのだ。この事実が公になれば大騒ぎになるのは間違いない。


 (もしもそうなれば彼女に嫌われてしまうのでは?……っ!)


 なぜ私はそんな心配をしているのか。
 いや違う。私はただ彼女に礼をしたいだけ。それだけ。


 (あ、でも……)


 そういえば去り際、私たちには二度と関わらないとハッキリ宣言していたな……
 そのことを思い出した私は、一人頭を抱えることになった。
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