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12 結婚式の夜
しおりを挟むそして現在、夫婦の寝室にて。
(これは予想外よ……)
今夜は初夜であるが、私たちは初夜を迎える必要がない。だからのんびりとお互い別々の部屋で休めるものだと思っていたのに、まさかの同室だったのだ。侍女に案内されて入った部屋にはすでにレイノがいた。
「ど、どうして」
「どうしてもなにも、俺たちは今日から夫婦だろう?」
「っ!そ、そうだけど……!わざわざ一緒の部屋の必要はないじゃない!」
「仕方ないだろう?夫婦は同じ部屋で寝る、これが我が家の決まりだからな。……ほら、さっさと寝るからこっちに来い」
そう言ってベッドに腰かけているレイノが手招きをした。
「い、行かないわよ!私はソファで寝るから!じゃあ……ちょ、ちょっと!」
白い結婚になるから一緒に寝ることはないだろうと思っていたのに、初日から予想が外れて戸惑いを隠せない。だけどそんな姿をレイノには気づかれたくない私は急ぎソファがある方に向かおうとしたが、レイノに腕を捕まれてしまった。
「お前が俺のことを嫌いなのはわかってる」
「そ、それは……」
(あなただって私のこと嫌いじゃない!)
そう言ってやりたかったのにあまりに突然のことで言葉が出てこない。
「だけど俺たちは夫婦だ。お前が嫌がることは絶対にしないと約束するから一緒に寝るぞ!」
「きゃっ!」
急に身体が浮いたと思ったらレイノに抱き抱えられていた。
「お、降ろして!」
「ダメだ。……くそっ。なんでこんなに軽くて柔らかいんだよ……」
「何をごにょごにょ言ってるのよ!」
「っ、何でもない。ほらもう寝るぞ」
そう言って私をベッドの上に降ろし、レイノは反対側からベッドに潜り込んだ。本当は今すぐ逃げ出したいが、そんなことをしてしまえばなんだか私が負けを認めたようではないか。それは絶対にあってはならない。もうここまできたら覚悟を決めるしかないようだ。幸いベッドはとても広いので端の方で寝ればなんとかなるだろうと思い、私もベッドに潜り込む。
「……」
「……」
しばらく沈黙が続くと、結婚式の疲れも相まって眠くなってきた。
(もう寝ちゃおうかな……)
私はあまりの眠さに瞼を閉じた。
「カレン」
「……」
「寝たのか?」
「……」
(……眠いのになによ。めんどくさいし寝たふりしちゃおう)
私はレイノの問いかけに微動だにせず、寝たふりをすることにした。どうせ嫌味か小言でも言うのだろうから無視をするのが一番だ。
「……寝た、よな?」
私が何も反応を示さないことで寝たと思ったようだ。本当はまだ寝ていないがこのまま諦めて
さっさと寝てほしい。
「……カレン」
(っ!)
耳元で私の名前を囁いた。あまりに突然のことで、驚きで声が出そうになったがなんとか堪える。
(きゅ、急になんなのよ!なんだか声もいつもと違うし……)
驚きからか、私の名を呼ぶ声が恐ろしいほどに優しいからか、心臓の音がうるさく目が覚めてしまった。しかし今さら寝たふりを止めるわけにもいかないのでこのまま耐えるしかない。
(ゆ、指一本でも触れたらその時は……)
「……三年後の今日、俺はお前と本当の夫婦になりたい」
「……」
「……どうか俺のことを受け入れてくれ」
「……」
「……おやすみ、カレン。いい夢を」
―――チュッ
唇に柔らかくて温かい何かが触れた。これは結婚式での誓いのキスにとても似ていて……
(え……?今のは……、キス!?)
指一本でも触れたら殴ってやろうと思っていたのに、現実にはレイノの行動が予想外すぎて動くことすらできなかった。
(こ、これは、どういうことなのよーーー!)
私のことを嫌いなはずの男からの突然のキス。
戸惑いと混乱で一睡もできず朝を迎えるのだが、私は知らなかった。隣で寝ていたレイノも、緊張から一睡もできずに朝を迎えていたとこを。
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