【完結】白い結婚なのでさっさとこの家から出ていきます~私の人生本番は離婚から。しっかり稼ぎたいと思います~

Na20

文字の大きさ
28 / 29

27

しおりを挟む

 あの夜会から早いもので半年が経つ。
 今思い出してもあの夜会の後は本当に大変だった。

 王妃様に献上した新商品の影響で、商会は目が回るほどの忙しさだったようだ。ただ元々商会の運営はリオとケビンに任せており、私自身はオーナーでありながらも商品開発担当なので宣言通り休ませてもらっていた。
 しかしあまりの忙しさにさすがに申し訳ないと思い仕事を手伝おうとすると、リオとケビン、それにノーラまでもが加わり無理矢理にでも休まされていた。それを三度程繰り返したが、私は気づいた。私が手伝おうとする度に三人がかりで私を止める。そうするとその間仕事が滞る。オーナーである私自らが無駄な仕事を増やしているのだと。そのことに気づいてからは大人しく休むことにしたのだ。

 では何が大変だったのかと言うと、それは求婚書だ。
 夜会の日にリオに言われていたが、平民の私に貴族たちから求婚書など届くはずないと思っていた。だが私の予想を裏切るように次の日からひっきりなしに求婚書が届くのだ。気づけば求婚書の山、山、山。私はそれを見てさすがに自分の価値というものを真剣に考えさせられた。

 しかしあまりにも数が多すぎて現実逃避したくなったが、そんなことできるはずもなく。求婚を受けるなら受ける、断るなら断るできちんと一件ずつ返事をしなければならない。貴族からの求婚書を面倒だからとそのまま放置するのは危険だ。返事がなかったから受け入れてもらえたと思われる可能性もある。そうしたら望まぬ結婚を迫られることだってあるかもしれない。だから一件一件求婚書を確認して、丁寧にお断りの手紙を書いたのだ。これが恐ろしいほどに大変だった。


 私はまだまだやりたいことがたくさんあって結婚どころではないのだ。充電時間を取ったことによりむしろ働きたい意欲がすごい。お金が大好きなのは変わらないが、こうして休んでみると私は働くこと自体が好きなのだと気づかされた。

 もちろんこれは強がりではない。

 だって今は自分が誰かに愛されていることを実感することができているから。


 そんな忙しさが落ち着いたある日の出来事。


「ヴィー」

「あ、リオ」

「今日は何をしていたんだ?俺の愛しのヴィーは」

「っ!そ、そういうのは恥ずかしいからやめてって言ってるじゃない…!」

「恥ずかしがるヴィーも可愛いな」


 リオはそう言って私を抱きしめ、頬にキスをした。


「~っ!リ、リオっ!」


 きっと私の顔は赤く染まっていることだろう。それを見てリオが嬉しそうに微笑んでいる。

 そう。

 あれからリオは宣言通り私に想いを伝え続けてくれている。そして私はつい先日答えを出した。その答えの結果がさっきのあれだ。


 夜会が終わってすぐの頃はまだ慣れぬ私を気遣ってか控えめに、だけどたしかな想いを伝えてくれていたが、私がリオを信じ受け入れたいと答えを出した後からの愛情表現がすごい。私もすでに二十三歳の立派な大人の女性であるが、こういったことには全く免疫がなく、いつもリオに翻弄されている。
 だけどそれが不快かと聞かれるとそうではない。恥ずかしかったり戸惑うことはあるが嫌ではない。むしろ嬉しいと思っている自分がいるくらいだ。ただ人前では恥ずかしいのでやめてほしいとお願いしている。これでも私は大人気商会のオーナーなのだ。オーナーには威厳というものがなければならないのに、こんな恥ずかしくて戸惑っている姿などとても見せられたものではない。


「ひ、人前では絶対にしないでよね!?」

「もちろん。ヴィーが嫌がることは絶対しないよ。それにヴィーの可愛い姿を他の奴らに見せたくない」

「なっ!か、可愛い姿って何を言っているのよ
 !?」

「ああ、本当にヴィーが可愛すぎる…!」

「ちょ、ちょっと!リオ!」


 リオの顔が再び私に近づいてきたところで、私に救いの手が差し伸べられた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

理想の女性を見つけた時には、運命の人を愛人にして白い結婚を宣言していました

ぺきぺき
恋愛
王家の次男として生まれたヨーゼフには幼い頃から決められていた婚約者がいた。兄の補佐として育てられ、兄の息子が立太子した後には臣籍降下し大公になるよていだった。 このヨーゼフ、優秀な頭脳を持ち、立派な大公となることが期待されていたが、幼い頃に見た絵本のお姫様を理想の女性として探し続けているという残念なところがあった。 そしてついに貴族学園で絵本のお姫様とそっくりな令嬢に出会う。 ーーーー 若気の至りでやらかしたことに苦しめられる主人公が最後になんとか幸せになる話。 作者別作品『二人のエリーと遅れてあらわれるヒーローたち』のスピンオフになっていますが、単体でも読めます。 完結まで執筆済み。毎日四話更新で4/24に完結予定。 第一章 無計画な婚約破棄 第二章 無計画な白い結婚 第三章 無計画な告白 第四章 無計画なプロポーズ 第五章 無計画な真実の愛 エピローグ

危ない愛人を持つあなたが王太子でいられるのは、私のおかげです。裏切るのなら容赦しません。

Hibah
恋愛
エリザベスは王妃教育を経て、正式に王太子妃となった。夫である第一王子クリフォードと初めて対面したとき「僕には好きな人がいる。君を王太子妃として迎えるが、僕の生活には極力関わらないでくれ」と告げられる。しかしクリフォードが好きな人というのは、平民だった。もしこの事実が公になれば、クリフォードは廃太子となり、エリザベスは王太子妃でいられなくなってしまう。エリザベスは自分の立場を守るため、平民の愛人を持つ夫の密会を見守るようになる……。

え? 愛されると思っていたんですか? 本当に?

ふらり
恋愛
貧乏子爵令嬢の私は、実家への支援と引き換えに伯爵様と覚悟を決めて結婚した。だが、「私には離れ離れになってしまったがずっと探している愛する人がいる。なので君を愛するつもりはない。親が煩くて止む無く結婚をしたが、三年子供が出来なければ正式に離婚することが出来る。それまでの我慢だ」って言われたんですけど、それって白い結婚ってことですよね? その後私が世間からどう見られるかご理解されています? いえ、いいですよ慰謝料くだされば。契約書交わしましょうね。どうぞ愛する方をお探しください。その方が表れたら慰謝料上乗せですぐに出て行きますんで! ふと思いついたので、一気に書きました。ピスカル湖は白い湖で、この湖の水が濃く感じるか薄く感じるかで家が金持ちか貧乏かが分かります(笑)

溺愛されている妹の高慢な態度を注意したら、冷血と評判な辺境伯の元に嫁がされることになりました。

木山楽斗
恋愛
侯爵令嬢であるラナフィリアは、妹であるレフーナに辟易としていた。 両親に溺愛されて育ってきた彼女は、他者を見下すわがままな娘に育っており、その相手にラナフィリアは疲れ果てていたのだ。 ある時、レフーナは晩餐会にてとある令嬢のことを罵倒した。 そんな妹の高慢なる態度に限界を感じたラナフィリアは、レフーナを諫めることにした。 だが、レフーナはそれに激昂した。 彼女にとって、自分に従うだけだった姉からの反抗は許せないことだったのだ。 その結果、ラナフィリアは冷血と評判な辺境伯の元に嫁がされることになった。 姉が不幸になるように、レフーナが両親に提言したからである。 しかし、ラナフィリアが嫁ぐことになった辺境伯ガルラントは、噂とは異なる人物だった。 戦士であるため、敵に対して冷血ではあるが、それ以外の人物に対して紳士的で誠実な人物だったのだ。 こうして、レフーナの目論見は外れ、ラナフェリアは辺境で穏やかな生活を送るのだった。

訳あり侯爵様に嫁いで白い結婚をした虐げられ姫が逃亡を目指した、その結果

柴野
恋愛
国王の側妃の娘として生まれた故に虐げられ続けていた王女アグネス・エル・シェブーリエ。 彼女は父に命じられ、半ば厄介払いのような形で訳あり侯爵様に嫁がされることになる。 しかしそこでも不要とされているようで、「きみを愛することはない」と言われてしまったアグネスは、ニヤリと口角を吊り上げた。 「どうせいてもいなくてもいいような存在なんですもの、さっさと逃げてしまいましょう!」 逃亡して自由の身になる――それが彼女の長年の夢だったのだ。 あらゆる手段を使って脱走を実行しようとするアグネス。だがなぜか毎度毎度侯爵様にめざとく見つかってしまい、その度失敗してしまう。 しかも日に日に彼の態度は温かみを帯びたものになっていった。 気づけば一日中彼と同じ部屋で過ごすという軟禁状態になり、溺愛という名の雁字搦めにされていて……? 虐げられ姫と女性不信な侯爵によるラブストーリー。 ※小説家になろうに重複投稿しています。

一年後に離婚すると言われてから三年が経ちましたが、まだその気配はありません。

木山楽斗
恋愛
「君とは一年後に離婚するつもりだ」 結婚して早々、私は夫であるマグナスからそんなことを告げられた。 彼曰く、これは親に言われて仕方なくした結婚であり、義理を果たした後は自由な独り身に戻りたいらしい。 身勝手な要求ではあったが、その気持ちが理解できない訳ではなかった。私もまた、親に言われて結婚したからだ。 こうして私は、一年間の期限付きで夫婦生活を送ることになった。 マグナスは紳士的な人物であり、最初に言ってきた要求以外は良き夫であった。故に私は、それなりに楽しい生活を送ることができた。 「もう少し様子を見たいと思っている。流石に一年では両親も納得しそうにない」 一年が経った後、マグナスはそんなことを言ってきた。 それに関しては、私も納得した。彼の言う通り、流石に離婚までが早すぎると思ったからだ。 それから一年後も、マグナスは離婚の話をしなかった。まだ様子を見たいということなのだろう。 夫がいつ離婚を切り出してくるのか、そんなことを思いながら私は日々を過ごしている。今の所、その気配はまったくないのだが。

熱烈な恋がしたいなら、勝手にしてください。私は、堅実に生きさせてもらいますので。

木山楽斗
恋愛
侯爵令嬢であるアルネアには、婚約者がいた。 しかし、ある日その彼から婚約破棄を告げられてしまう。なんでも、アルネアの妹と婚約したいらしいのだ。 「熱烈な恋がしたいなら、勝手にしてください」 身勝手な恋愛をする二人に対して、アルネアは呆れていた。 堅実に生きたい彼女にとって、二人の行いは信じられないものだったのである。 数日後、アルネアの元にある知らせが届いた。 妹と元婚約者の間で、何か事件が起こったらしいのだ。

私は真実の愛を見つけたからと離婚されましたが、事業を起こしたので私の方が上手です

satomi
恋愛
私の名前はスロート=サーティ。これでも公爵令嬢です。結婚相手に「真実の愛を見つけた」と離婚宣告されたけど、私には興味ないもんね。旦那、元かな?にしがみつく平民女なんか。それより、慰謝料はともかくとして私が手掛けてる事業を一つも渡さないってどういうこと?!ケチにもほどがあるわよ。どうなっても知らないんだから!

処理中です...