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【サイパン島の敗因】
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父島の海軍水上機基地に到着すると、まだ私が何も言っていないにも拘わらず、整備員たちがすぐに駆け付けて燃料の給油と整備を始めてくれた。
きっと栗林中将が硫黄島から指示してくれたに違いない。
燃料の補給と機体の整備が終わり父島を飛び立つ頃には、空は紫色に染められていた。
父島を出て220km西に飛び、そこから北に進路を変えれば青ヶ島、八丈島上空を通り千葉県館山市付近に到着する。
そこから房総半島を木更津まで進み、東京湾に出て北西に進路を取れば浜離宮に到着する。
飛行時間は、約6時間。
機を浜離宮に係留して、そこから大本営のある市谷までは5kmだから、1時間も歩けば到着する。
時速220km/hで1時間飛行して進路を北に変え、エンジンの出力を巡航速度に落とす。
有視界飛行ではないので高度は伊豆諸島で最も高い、八丈島にある西山(854m)より高い1000m付近を飛ぶことにした。
もう日も落ちて真っ暗な空を計器だけを頼りに進む。
もう、ここまで来れば敵機に怯える心配もないだろう。
計器と、たまに星を見上げながら、考えていた。
現在の日本の状況と、自身の任務について。
サイパン島での敗戦は、私の中ではある程度予想は出来ていた。
情報収集の甘さと、陸海軍部の連携不足。
この2つの体質は、明治天皇のような強力な影響力を持つ存在が無いと治せないのが軍部の体質なのだ。
つまりお互いが、天狗になっている。
なんという小さい男たちなのだろう。
しかし、あれほど一方的に負けるとは……。
サイパンとテニアン基地航空隊は敵空母の位置さえ掴めないまま敵の延べ1,100機による奇襲攻撃を受けて初日から2日目にかけてほぼ全滅してしまい、迎撃に飛んだ機のパイロットも現地での訓練が行われていなくて技量不足で殆どが逆に迎撃されてしまった。
これはマラリアなどの感染症によるところもあるものの、決戦を前にして燃料をできるだけ温存しておきたいという思惑が作用した結果ではあるが、それにしても偵察機の燃料まで節約して敵艦隊の接近に気付けなかった事はお粗末としか言いようがない。
また決戦間近という状況で急きょ新しい滑走路整備に着手して、基地の要塞化が手薄になったことに加え、その新しい滑走路に配備されるはずの航空機が殆ど到着しなかったことも大きな敗因となるだろう。
なにしろ飛行機を運ぶための船舶がない上に、その船舶があったとしても航路上には何隻もの敵潜水艦が潜んでいる。
このため航空機は自ら飛んで来るしかなく、期待された基地防衛用の迎撃戦闘機として製造された二式戦闘機『鍾馗』は届けられなかった。
陸軍で本土から飛んでこれるのは一式戦『隼』と三式戦『飛燕』だけ。
しかも陸軍機は長距離を飛ぶには整備上の信頼性が悪く、特にもともと発動機の信頼性の問題を抱えていた『飛燕』においては移動中の発動機不良が原因の墜落が多く、飛び立った基地に引き返す部隊も多くいた。
基地部隊は、堅牢な防御施設を構築するとともに、敵の奇襲攻撃を受けないためにも積極的に偵察を行う事が望まれる。
さらにこれは南方方面に配備されている全ての部隊に言えることだが、イザという時に必要な人員を必要な場所に確実に配備できるよう、常日ごろから衛生面に気をつけて病人を出さないことが肝心だ。
陸地での敗北は最初から一方的になることは現地に居て容易に予想できたものの、問題なのは海での敗北。
海軍は事前に各方面に潜水艦を哨戒任務に当たらせていたにもかかわらず、敵がいつどの方面から来るのか一向に把握できないまま、サイパン島守備隊からの情報に頼っていたが、その守備隊も偵察行動を怠っていたのでは話にならない。
そのため海軍機動部隊が作戦行動圏内に到着できたのは、敵がサイパン島への航空奇襲攻撃を行った6月11日より1週間も後の18日。
そして決戦の場にようやくたどり着いた海軍は、早々に大型空母『大鵬』と『翔鶴』を敵の潜水艦による攻撃で失い、更に敵機の空襲により中型空母『飛鷹』を失ったほか、空母『瑞鶴』『隼鷹』『千代田』『龍鳳』、戦艦『榛名』巡洋艦『摩耶』などが損害を受けただけでなく、貴重な油送船2隻と潜水艦20隻も失ってしまった。
更に400機以上の艦載機と、その搭乗員も同時に失ったことは甚大な損害と言える。
これに対して海軍の戦果は、敵空母2、戦艦2、巡洋艦2に損傷を与えただけに留まり、もはや日露戦争でのバルチック艦隊をも超えるほど惨めな敗北だったと言える。
アウトレンジ戦法という奇抜な方法を持って母艦の損害を回避しようとするのであれば、見切り発車的にいち早くサイパン島付近に到着し、400機以上に上る艦載機を陸上基地に降ろしてそのまま本土に帰った方がマシだったかもしれない。
総合的に考えるとこの敗戦も、またしても陸軍と海軍の連携の甘さが露呈した結果と言える。
本来なら、統合作戦本部的な役割を担うはずの大本営の影響力が薄れ、国民向けの大袈裟な戦果を発表するだけの機関となってしまった事が原因で、コレについては私も充分に責任を感じている。
果たして私が持ち帰る資料は役に立つのだろうか……。
今回の海戦で、当分海軍の機動部隊は使えない。
無傷で残っている艦隊型空母は『瑞鳳』と『千歳』の小型空母2隻のみ。
航空戦力は両空母合わせても60機程度だから、機動部隊同士の戦いには戦力が足りなさすぎて到底使えない。
その間に、テニアン、グアム、そして硫黄島は落とされてしまうだろう。
きっと栗林中将が硫黄島から指示してくれたに違いない。
燃料の補給と機体の整備が終わり父島を飛び立つ頃には、空は紫色に染められていた。
父島を出て220km西に飛び、そこから北に進路を変えれば青ヶ島、八丈島上空を通り千葉県館山市付近に到着する。
そこから房総半島を木更津まで進み、東京湾に出て北西に進路を取れば浜離宮に到着する。
飛行時間は、約6時間。
機を浜離宮に係留して、そこから大本営のある市谷までは5kmだから、1時間も歩けば到着する。
時速220km/hで1時間飛行して進路を北に変え、エンジンの出力を巡航速度に落とす。
有視界飛行ではないので高度は伊豆諸島で最も高い、八丈島にある西山(854m)より高い1000m付近を飛ぶことにした。
もう日も落ちて真っ暗な空を計器だけを頼りに進む。
もう、ここまで来れば敵機に怯える心配もないだろう。
計器と、たまに星を見上げながら、考えていた。
現在の日本の状況と、自身の任務について。
サイパン島での敗戦は、私の中ではある程度予想は出来ていた。
情報収集の甘さと、陸海軍部の連携不足。
この2つの体質は、明治天皇のような強力な影響力を持つ存在が無いと治せないのが軍部の体質なのだ。
つまりお互いが、天狗になっている。
なんという小さい男たちなのだろう。
しかし、あれほど一方的に負けるとは……。
サイパンとテニアン基地航空隊は敵空母の位置さえ掴めないまま敵の延べ1,100機による奇襲攻撃を受けて初日から2日目にかけてほぼ全滅してしまい、迎撃に飛んだ機のパイロットも現地での訓練が行われていなくて技量不足で殆どが逆に迎撃されてしまった。
これはマラリアなどの感染症によるところもあるものの、決戦を前にして燃料をできるだけ温存しておきたいという思惑が作用した結果ではあるが、それにしても偵察機の燃料まで節約して敵艦隊の接近に気付けなかった事はお粗末としか言いようがない。
また決戦間近という状況で急きょ新しい滑走路整備に着手して、基地の要塞化が手薄になったことに加え、その新しい滑走路に配備されるはずの航空機が殆ど到着しなかったことも大きな敗因となるだろう。
なにしろ飛行機を運ぶための船舶がない上に、その船舶があったとしても航路上には何隻もの敵潜水艦が潜んでいる。
このため航空機は自ら飛んで来るしかなく、期待された基地防衛用の迎撃戦闘機として製造された二式戦闘機『鍾馗』は届けられなかった。
陸軍で本土から飛んでこれるのは一式戦『隼』と三式戦『飛燕』だけ。
しかも陸軍機は長距離を飛ぶには整備上の信頼性が悪く、特にもともと発動機の信頼性の問題を抱えていた『飛燕』においては移動中の発動機不良が原因の墜落が多く、飛び立った基地に引き返す部隊も多くいた。
基地部隊は、堅牢な防御施設を構築するとともに、敵の奇襲攻撃を受けないためにも積極的に偵察を行う事が望まれる。
さらにこれは南方方面に配備されている全ての部隊に言えることだが、イザという時に必要な人員を必要な場所に確実に配備できるよう、常日ごろから衛生面に気をつけて病人を出さないことが肝心だ。
陸地での敗北は最初から一方的になることは現地に居て容易に予想できたものの、問題なのは海での敗北。
海軍は事前に各方面に潜水艦を哨戒任務に当たらせていたにもかかわらず、敵がいつどの方面から来るのか一向に把握できないまま、サイパン島守備隊からの情報に頼っていたが、その守備隊も偵察行動を怠っていたのでは話にならない。
そのため海軍機動部隊が作戦行動圏内に到着できたのは、敵がサイパン島への航空奇襲攻撃を行った6月11日より1週間も後の18日。
そして決戦の場にようやくたどり着いた海軍は、早々に大型空母『大鵬』と『翔鶴』を敵の潜水艦による攻撃で失い、更に敵機の空襲により中型空母『飛鷹』を失ったほか、空母『瑞鶴』『隼鷹』『千代田』『龍鳳』、戦艦『榛名』巡洋艦『摩耶』などが損害を受けただけでなく、貴重な油送船2隻と潜水艦20隻も失ってしまった。
更に400機以上の艦載機と、その搭乗員も同時に失ったことは甚大な損害と言える。
これに対して海軍の戦果は、敵空母2、戦艦2、巡洋艦2に損傷を与えただけに留まり、もはや日露戦争でのバルチック艦隊をも超えるほど惨めな敗北だったと言える。
アウトレンジ戦法という奇抜な方法を持って母艦の損害を回避しようとするのであれば、見切り発車的にいち早くサイパン島付近に到着し、400機以上に上る艦載機を陸上基地に降ろしてそのまま本土に帰った方がマシだったかもしれない。
総合的に考えるとこの敗戦も、またしても陸軍と海軍の連携の甘さが露呈した結果と言える。
本来なら、統合作戦本部的な役割を担うはずの大本営の影響力が薄れ、国民向けの大袈裟な戦果を発表するだけの機関となってしまった事が原因で、コレについては私も充分に責任を感じている。
果たして私が持ち帰る資料は役に立つのだろうか……。
今回の海戦で、当分海軍の機動部隊は使えない。
無傷で残っている艦隊型空母は『瑞鳳』と『千歳』の小型空母2隻のみ。
航空戦力は両空母合わせても60機程度だから、機動部隊同士の戦いには戦力が足りなさすぎて到底使えない。
その間に、テニアン、グアム、そして硫黄島は落とされてしまうだろう。
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