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★中国大陸★
【大陸の問題②】
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とは言え、この問題の解決には糸口さえ見つからない。
とりあえず政府関係者を動かさないと話にはならないと思い、毎日議員会館に足を運んで誰彼となく話を聞いてもらうが、皆難しい顔をするだけで答えにならない答えを返すだけ。
二・二六事件のときに協力してくれた高橋是清や若槻礼次郎、自動車購入時の補助金案に賛同してくれた斎藤実や岡田啓介首相でさえそれは同じだった。
特に首相時代に不拡大方針を掲げていたにもかかわらず、国体よりも自らの功を優先した一部の浅はかな陸軍軍人によって引き起こされた柳条湖事件を契機とした満州事変により総辞職に追い込まれた若槻礼次郎の悔しさをこらえる顔は、見ていて心が痛かった。
当たり前と言えば当たり前な話。
朝鮮半島と満州を合わせた面積は約153万km²。
日本の陸地面積が約37万8千km²だから、実に日本の4倍もある土地を捨てろと言っているようなもの。
サイパン島ひとつ失っただけで大混乱に陥ったのとは比べ物にならない混乱を招くことは必至。
3人の総理経験者と1人の現役総理に話しても、事態は何も動かない。
他の議員たちにも話したが、こちらも同じ。
このままでは陸軍は暴走を続けてしまい、やがて諸外国の圧力に押し出されるように日本は戦争の表舞台に引きずり込まれてしまう。
やはりいくら史実を知っていると言っても、一人で出来ることには限界があるのか……。
途方に暮れて俯いたままベンチに座っているところへ、誰かが声をかけてくれた。
顔を上げると、そこには一人の老人が居た。
老人の名は『鈴木貫太郎』。
私がこの時代に戻る前の、つまり戦争時最後の内閣総理大臣にして日本を終戦へと導いた主導者のひとり……いや、最大の功労者と言うに相応しい人物、そして二・二六事件で命を狙われ瀕死の重傷を負うはずだった人物。
たしかこの時代は、陛下の身の回りの世話を取り仕切る侍従長をしていたはず。
皇居か侍従長官邸にいるはずの鈴木が、何故このような所に居るのだろう……。
「先ほどから何か困り事か悩み事がありそうな様子に見えたので、大変失礼ながら声をかけました。お力になれるかどうかは分かりませんが、もし良ければ話だけでも聞かせてはもらえませんか?」
鈴木は穏やかな声で、そのように言った。
私が満州や朝鮮への日本支配と、今後予想される中国大陸への軍事侵攻を憂いていることを伝えると、鈴木はしばらく黙ったあとで「全ての国民が貴方と同じ気持ちになれば、貴方が危惧しているような事は起こらないでしょう」と言った。
しかし気持ちはそうでも、それを口に出して言うのは違う。
口に出して言えば、赤(共産主義者)だと思われて、特高(特別高等警察=国体護持のため国家の根本を危うくする行為を除去するために組織された警察)に連れて行かれる。
やはり政治家が、そのへんはしっかりと国民の真意を把握して政治を行うべきであり、むやみに軍事費を上げることは他国に戦争の不安を与えるとともに、世界からの孤立を招く。
以上のような内容を鈴木に伝えると、彼は3人の総理の名前を言った。
3人の名は、原敬、濱口雄幸、犬養毅。
原敬は1921年(大正10年)11月4日、東京駅で駅職員に刺されて死亡。
濱口は1930年(昭和5年)11月14日、東京駅で右翼団体構成員により銃撃を受けた怪我が元で翌年8月に死亡。
犬養は1932年(昭和7年)5月15日、五・一五事件で海軍少尉服の2人、陸軍士官候補生姿の3人から9発の銃弾を撃たれ、そのうち4発を受けて死亡。
3人共、軍備縮小に動いていた矢先、凶弾に倒された。
「どれだけ有能で、頑張ったとしても、個人の力には限界がある。しかもその個人を倒せば何とかなるというように思わせては命など幾らあっても足りない」と、鈴木は言った後「いまの君のように」と付け加えた。
とりあえず政府関係者を動かさないと話にはならないと思い、毎日議員会館に足を運んで誰彼となく話を聞いてもらうが、皆難しい顔をするだけで答えにならない答えを返すだけ。
二・二六事件のときに協力してくれた高橋是清や若槻礼次郎、自動車購入時の補助金案に賛同してくれた斎藤実や岡田啓介首相でさえそれは同じだった。
特に首相時代に不拡大方針を掲げていたにもかかわらず、国体よりも自らの功を優先した一部の浅はかな陸軍軍人によって引き起こされた柳条湖事件を契機とした満州事変により総辞職に追い込まれた若槻礼次郎の悔しさをこらえる顔は、見ていて心が痛かった。
当たり前と言えば当たり前な話。
朝鮮半島と満州を合わせた面積は約153万km²。
日本の陸地面積が約37万8千km²だから、実に日本の4倍もある土地を捨てろと言っているようなもの。
サイパン島ひとつ失っただけで大混乱に陥ったのとは比べ物にならない混乱を招くことは必至。
3人の総理経験者と1人の現役総理に話しても、事態は何も動かない。
他の議員たちにも話したが、こちらも同じ。
このままでは陸軍は暴走を続けてしまい、やがて諸外国の圧力に押し出されるように日本は戦争の表舞台に引きずり込まれてしまう。
やはりいくら史実を知っていると言っても、一人で出来ることには限界があるのか……。
途方に暮れて俯いたままベンチに座っているところへ、誰かが声をかけてくれた。
顔を上げると、そこには一人の老人が居た。
老人の名は『鈴木貫太郎』。
私がこの時代に戻る前の、つまり戦争時最後の内閣総理大臣にして日本を終戦へと導いた主導者のひとり……いや、最大の功労者と言うに相応しい人物、そして二・二六事件で命を狙われ瀕死の重傷を負うはずだった人物。
たしかこの時代は、陛下の身の回りの世話を取り仕切る侍従長をしていたはず。
皇居か侍従長官邸にいるはずの鈴木が、何故このような所に居るのだろう……。
「先ほどから何か困り事か悩み事がありそうな様子に見えたので、大変失礼ながら声をかけました。お力になれるかどうかは分かりませんが、もし良ければ話だけでも聞かせてはもらえませんか?」
鈴木は穏やかな声で、そのように言った。
私が満州や朝鮮への日本支配と、今後予想される中国大陸への軍事侵攻を憂いていることを伝えると、鈴木はしばらく黙ったあとで「全ての国民が貴方と同じ気持ちになれば、貴方が危惧しているような事は起こらないでしょう」と言った。
しかし気持ちはそうでも、それを口に出して言うのは違う。
口に出して言えば、赤(共産主義者)だと思われて、特高(特別高等警察=国体護持のため国家の根本を危うくする行為を除去するために組織された警察)に連れて行かれる。
やはり政治家が、そのへんはしっかりと国民の真意を把握して政治を行うべきであり、むやみに軍事費を上げることは他国に戦争の不安を与えるとともに、世界からの孤立を招く。
以上のような内容を鈴木に伝えると、彼は3人の総理の名前を言った。
3人の名は、原敬、濱口雄幸、犬養毅。
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濱口は1930年(昭和5年)11月14日、東京駅で右翼団体構成員により銃撃を受けた怪我が元で翌年8月に死亡。
犬養は1932年(昭和7年)5月15日、五・一五事件で海軍少尉服の2人、陸軍士官候補生姿の3人から9発の銃弾を撃たれ、そのうち4発を受けて死亡。
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