20 / 56
★中国大陸★
【盧溝橋要塞②】
しおりを挟む
柳生さんに相談したところ、36センチ砲の射程は35㎞もあるので都市攻撃などに使用する目的がない限り射程が長過ぎて使い物にならないばかりか、陸上で使うには反動が大き過ぎて地盤が持たないらしい。
反動を逃がすためには列車砲という手もあるが、これはこれで製作する手間に運用する手間、砲を発射するために人手が掛かり過ぎる。
どうせすぐに航空機の時代になるのだから、35㎞という長大な射程は捨てて実用性に重きを置くことになり曲射砲として使用することにした。
曲射砲であれば全長16mもある長い砲身は必要ないので短く切り落として少しでも軽くすることで運搬を楽にすることが出来る。
これを持って満州要塞の実現化に向けての草案をまとめ、まず海軍軍令部に赴き陸軍寄りの嶋田繁太郎中将に草案を見せると彼は大いに気に入ってくれ自ら進んで軍令部総長で皇族の伏見宮博恭王の許可を取りつけてくれ、その足で陸軍参謀本部に行き総長の杉山元大将に掛け合ってくれた。
これは嶋田が海軍の中でも、陸軍と協調する意識が強い人間であることを知っていた私の経験が功を奏した。
かくして戦艦『扶桑』と『山城』の主砲24門と15cm単装砲32門は、海軍から陸軍に譲渡されて満州に向かう事となった。
盧溝橋要塞については、大本営からも案を出すこととなり、古い格式のある城塞に向けて柳生さんに設計を依頼することにした。
柳生さんは戦艦『扶桑』と『山城』の空母への改装の図面を作っていたにもかかわらず、私が依頼した自動車運搬船の案にも快く乗ってくれた。
たしかに自動車運搬船と言っても、緊急時には1カ月程度の工事で空母への改装が終了する構造を持つ。
しかし今度は、本物の“要塞”という兵器。
「やっと戦争らしくなってきたな」と柳生さんは張り切っていた。
柳生さんには要塞を造るにあたって、近代戦争に耐えうるものの他に、もうひとつ重要なことをお願いした。
それは工事期間をできるだけ短くするということ。
特に盧溝橋の正面を塞ぐ形で建設される楼閣は、敵に邪魔をする隙を与えないスピードが不可欠になる。
何故なら、その部分の工事に時間が掛かれば、敵は難癖をつけて壊しにかかり、逆に盧溝橋事件自体を早めてしまう恐れがあるから。
「時間を短縮する必要は俺も認めるが、いったい何週間くらいで楼閣の工事を終わらせればいいんだ?」
柳生さんの質問に私は1日だと答えた。
「いっ、一日⁉ そんな短期間で……」
「豊臣秀吉は、一夜で石垣山城を造ったではないですか」
「……なるほど、そういうことか」
石垣山城は豊臣秀吉が天下統一を果たすきっかけとなった城で、当時対峙していた北条氏の軍勢はその事に驚き戦意を失ったとされている。
だが彼らが見たものは、細い木に紙を貼り合わせたハリボテで、本当の城はそのハリボテの裏に隠れて80日間の工期で完成している。
もちろんたかが出城とは言え、80日で1つの城を完成させるのも見事だが、1日で城が作られたように見せかけて敵を動揺させた手法はあまりにも鮮やかで、彼はその30年前にも美濃の斎藤家との戦いで墨俣に短期間で城を築き、その後の立身出世の足掛かりを作ったと言われている(墨俣の一夜城)。
とにかく盧溝橋事件の裏には関東軍の暴走よりも、蒋介石の国民党軍と日本軍を戦わせて双方の戦力を削ぐと言うソビエトと中国共産党の思惑があったのは確かで、工期が長引けば敵に考える時間的猶予を与えてしまうことは間違いない。
敵を混乱させるために是が非でも、この城郭要塞は早急に出現する必要がある。
反動を逃がすためには列車砲という手もあるが、これはこれで製作する手間に運用する手間、砲を発射するために人手が掛かり過ぎる。
どうせすぐに航空機の時代になるのだから、35㎞という長大な射程は捨てて実用性に重きを置くことになり曲射砲として使用することにした。
曲射砲であれば全長16mもある長い砲身は必要ないので短く切り落として少しでも軽くすることで運搬を楽にすることが出来る。
これを持って満州要塞の実現化に向けての草案をまとめ、まず海軍軍令部に赴き陸軍寄りの嶋田繁太郎中将に草案を見せると彼は大いに気に入ってくれ自ら進んで軍令部総長で皇族の伏見宮博恭王の許可を取りつけてくれ、その足で陸軍参謀本部に行き総長の杉山元大将に掛け合ってくれた。
これは嶋田が海軍の中でも、陸軍と協調する意識が強い人間であることを知っていた私の経験が功を奏した。
かくして戦艦『扶桑』と『山城』の主砲24門と15cm単装砲32門は、海軍から陸軍に譲渡されて満州に向かう事となった。
盧溝橋要塞については、大本営からも案を出すこととなり、古い格式のある城塞に向けて柳生さんに設計を依頼することにした。
柳生さんは戦艦『扶桑』と『山城』の空母への改装の図面を作っていたにもかかわらず、私が依頼した自動車運搬船の案にも快く乗ってくれた。
たしかに自動車運搬船と言っても、緊急時には1カ月程度の工事で空母への改装が終了する構造を持つ。
しかし今度は、本物の“要塞”という兵器。
「やっと戦争らしくなってきたな」と柳生さんは張り切っていた。
柳生さんには要塞を造るにあたって、近代戦争に耐えうるものの他に、もうひとつ重要なことをお願いした。
それは工事期間をできるだけ短くするということ。
特に盧溝橋の正面を塞ぐ形で建設される楼閣は、敵に邪魔をする隙を与えないスピードが不可欠になる。
何故なら、その部分の工事に時間が掛かれば、敵は難癖をつけて壊しにかかり、逆に盧溝橋事件自体を早めてしまう恐れがあるから。
「時間を短縮する必要は俺も認めるが、いったい何週間くらいで楼閣の工事を終わらせればいいんだ?」
柳生さんの質問に私は1日だと答えた。
「いっ、一日⁉ そんな短期間で……」
「豊臣秀吉は、一夜で石垣山城を造ったではないですか」
「……なるほど、そういうことか」
石垣山城は豊臣秀吉が天下統一を果たすきっかけとなった城で、当時対峙していた北条氏の軍勢はその事に驚き戦意を失ったとされている。
だが彼らが見たものは、細い木に紙を貼り合わせたハリボテで、本当の城はそのハリボテの裏に隠れて80日間の工期で完成している。
もちろんたかが出城とは言え、80日で1つの城を完成させるのも見事だが、1日で城が作られたように見せかけて敵を動揺させた手法はあまりにも鮮やかで、彼はその30年前にも美濃の斎藤家との戦いで墨俣に短期間で城を築き、その後の立身出世の足掛かりを作ったと言われている(墨俣の一夜城)。
とにかく盧溝橋事件の裏には関東軍の暴走よりも、蒋介石の国民党軍と日本軍を戦わせて双方の戦力を削ぐと言うソビエトと中国共産党の思惑があったのは確かで、工期が長引けば敵に考える時間的猶予を与えてしまうことは間違いない。
敵を混乱させるために是が非でも、この城郭要塞は早急に出現する必要がある。
45
あなたにおすすめの小説
対ソ戦、準備せよ!
湖灯
歴史・時代
1940年、遂に欧州で第二次世界大戦がはじまります。
前作『対米戦、準備せよ!』で、中国での戦いを避けることができ、米国とも良好な経済関係を築くことに成功した日本にもやがて暗い影が押し寄せてきます。
未来の日本から来たという柳生、結城の2人によって1944年のサイパン戦後から1934年の日本に戻った大本営の特例を受けた柏原少佐は再びこの日本の危機を回避させることができるのでしょうか!?
小説家になろうでは、前作『対米戦、準備せよ!』のタイトルのまま先行配信中です!
大東亜戦争を有利に
ゆみすけ
歴史・時代
日本は大東亜戦争に負けた、完敗であった。 そこから架空戦記なるものが増殖する。 しかしおもしろくない、つまらない。 であるから自分なりに無双日本軍を架空戦記に参戦させました。 主観満載のラノベ戦記ですから、ご感弁を
もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら
俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。
赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。
史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。
もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。
裏長屋の若殿、限られた自由を満喫する
克全
歴史・時代
貧乏人が肩を寄せ合って暮らす聖天長屋に徳田新之丞と名乗る人品卑しからぬ若侍がいた。月のうち数日しか長屋にいないのだが、いる時には自ら竈で米を炊き七輪で魚を焼く小まめな男だった。
土方歳三ら、西南戦争に参戦す
山家
歴史・時代
榎本艦隊北上せず。
それによって、戊辰戦争の流れが変わり、五稜郭の戦いは起こらず、土方歳三は戊辰戦争の戦野を生き延びることになった。
生き延びた土方歳三は、北の大地に屯田兵として赴き、明治初期を生き抜く。
また、五稜郭の戦い等で散った他の多くの男達も、史実と違えた人生を送ることになった。
そして、台湾出兵に土方歳三は赴いた後、西南戦争が勃発する。
土方歳三は屯田兵として、そして幕府歩兵隊の末裔といえる海兵隊の一員として、西南戦争に赴く。
そして、北の大地で再生された誠の旗を掲げる土方歳三の周囲には、かつての新選組の仲間、永倉新八、斎藤一、島田魁らが集い、共に戦おうとしており、他にも男達が集っていた。
(「小説家になろう」に投稿している「新選組、西南戦争へ」の加筆修正版です)
織田信長IF… 天下統一再び!!
華瑠羅
歴史・時代
日本の歴史上最も有名な『本能寺の変』の当日から物語は足早に流れて行く展開です。
この作品は「もし」という概念で物語が進行していきます。
主人公【織田信長】が死んで、若返って蘇り再び活躍するという作品です。
※この物語はフィクションです。
幻の十一代将軍・徳川家基、死せず。長谷川平蔵、田沼意知、蝦夷へ往く。
克全
歴史・時代
西欧列強に不平等条約を強要され、内乱を誘発させられ、多くの富を収奪されたのが悔しい。
幕末の仮想戦記も考えましたが、徳川家基が健在で、田沼親子が権力を維持していれば、もっと余裕を持って、開国準備ができたと思う。
北海道・樺太・千島も日本の領地のままだっただろうし、多くの金銀が国外に流出することもなかったと思う。
清国と手を組むことも出来たかもしれないし、清国がロシアに強奪された、シベリアと沿海州を日本が手に入れる事が出来たかもしれない。
色々真剣に検討して、仮想の日本史を書いてみたい。
一橋治済の陰謀で毒を盛られた徳川家基であったが、奇跡的に一命をとりとめた。だが家基も父親の十代将軍:徳川家治も誰が毒を盛ったのかは分からなかった。家基は田沼意次を疑い、家治は疑心暗鬼に陥り田沼意次以外の家臣が信じられなくなった。そして歴史は大きく動くことになる。
印旛沼開拓は成功するのか?
蝦夷開拓は成功するのか?
オロシャとは戦争になるのか?
蝦夷・千島・樺太の領有は徳川家になるのか?
それともオロシャになるのか?
西洋帆船は導入されるのか?
幕府は開国に踏み切れるのか?
アイヌとの関係はどうなるのか?
幕府を裏切り異国と手を結ぶ藩は現れるのか?
世界はあるべき姿へ戻される 第二次世界大戦if戦記
颯野秋乃
歴史・時代
1929年に起きた、世界を巻き込んだ大恐慌。世界の大国たちはそれからの脱却を目指し、躍起になっていた。第一次世界大戦の敗戦国となったドイツ第三帝国は多額の賠償金に加えて襲いかかる恐慌に国の存続の危機に陥っていた。援助の約束をしたアメリカは恐慌を理由に賠償金の支援を破棄。フランスは、自らを救うために支払いの延期は認めない姿勢を貫く。
ドイツ第三帝国は自らの存続のために、世界に隠しながら軍備の拡張に奔走することになる。
また、極東の国大日本帝国。関係の悪化の一途を辿る日米関係によって受ける経済的打撃に苦しんでいた。
その解決法として提案された大東亜共栄圏。東南アジア諸国及び中国を含めた大経済圏、生存圏の構築に力を注ごうとしていた。
この小説は、ドイツ第三帝国と大日本帝国の2視点で進んでいく。現代では有り得なかった様々なイフが含まれる。それを楽しんで貰えたらと思う。
またこの小説はいかなる思想を賛美、賞賛するものでは無い。
この小説は現代とは似て非なるもの。登場人物は史実には沿わないので悪しからず…
大日本帝国視点は都合上休止中です。気分により再開するらもしれません。
【重要】
不定期更新。超絶不定期更新です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる