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★ノモンハン事件★
【結城薫の決意】
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舞踊団の中にスパイが混じっている可能性を感じた結城薫は、自らもスパイとして舞踊団に紛れ込む決心をした。
不安がないなんて嘘。
相手はプロで、こっちは素人。
誰かに頼めるわけもなく、頼めるような立場にもない。
柏原くんは有能だけど、彼はこの時代でもちゃんとした人間関係が築ける人。
仮に彼にスパイを頼んだとしても、この晩餐会という多くの人たちの輪の中で、その人間関係が邪魔をしてまともに活動することは困難となるだろう。
それに彼はこの時代にとって大切な人……。
私がやるしかない!
柏原くんが反対してくれたときは、正直言って嬉しかった。
嬉しかったからこそ、やり遂げようという勇気が湧いてきた。
しかし私はスパイではないから、銃やナイフ、それに小型無線などのスパイグッズを見つけなければ誰がスパイであるかなんて分からない。
とりあえず、この時代に誰にも疑われずに持ち歩くことが出来る小型無線機なんてないから、舞踊団に入って銃やナイフを隠し持っている者が居ないかを注意深く探した。
日本の舞踊団に入らず、中国の舞踊団に入れさせてもらったのは、格闘戦になることを踏まえてのこと。
着物を着た状態で格闘するのはあまりにも不利になるし、かと言って脱ぐのにも時間がかかる。
それに着物を脱いだあとは、ほぼ裸の状態になってしまう。
中国舞踊団なら、踊りはひらひらのロングスカートだし、その後の接客はチャイナドレスだろうから動きやすい。
しかもスパイの居る確率も、中国舞踊団のほうがより高いだろうと見込んで。
最初の衣装に着替える時も、接客用のチャイナドレスに着替える時も、周囲に気を配って武器になるようなものを隠し持つ者が居ないか注意して見ていたが、それらしい人物は見当たらなかった。
晩餐会で接客をしながらスパイらしき人物を探そうと思ったが、相手はプロでコッチは素人。 そんな素人の目から見てもスパイと分かるようなバカでは、その世界では生き残ることは出来ないだろう。
だから視点を変えた。
いくら凄腕のスパイが居たとしても、その対象物である獲物は素人。
しかもこのミッションは、時間も限られているから、より難易度の低い人物を狙うのは間違いない。
あとはその対象の人物に気に入られ、油断させ、機会を狙うだけ。
対象はごく限られた情報を持つ者。
限られた情報とは、おそらく今回の作戦行動に関する資料。
その資料を持っているのは日本軍の将官クラスだが、それを奪うのは容易なことではない。
もっとも簡単なのは、その資料をココで貰った人物。
つまり調査団の人たちと言う事になる。
彼らには頑丈な鍵付きの部屋が用意され、その部屋のある建物には歩哨も立っているから彼らの留守中に忍び込んで盗み出すことは困難だろう。
しかし彼らのうちの誰かと一緒にいたなら、部屋に入ることは不可能ではないだろう。
そして調査団一行の中で、最もリスクの低い人物に纏わりつく女がスパイだと思った。
スパイにとってリスクの低い人物、それは邪魔の入りにくい人物と言う事になるだろう。
調査団一行は、米英仏は公使級と武官のペアで、イタリアだけが1等書記官1名だけの参加。
会が始まった時からミンメイがそのイタリア人に擦り寄っていて、まだ宴もたけなわというにもかかわらずそのイタリア人が退席し、ミンメイも少し時間をずらして外に出て行った。
スパイはおそらくミンメイに間違いないだろう。
だがココで騒ぎ立てたとしても、何の証拠もない以上誰も取り合ってくれないだろう。
逆に彼女に他に仲間が居たとすれば、その混乱に乗じて資料を手に入れてしまうかもしれない。
ホールを出る時に柏原くんのほうを見た。
彼もミンメイに疑いの目を向けていたようで、彼女が出て行った方を見ていた。
けれどもやはり私が思ったとおり、彼独特の人間関係の良さが災いして、席を立とうとした瞬間に後ろから来た植田大将に掴まっていた。
柏原くんは捕まった瞬間、助けを求めるような目で私を見たけれど、関東軍のトップに掴まった以上どうすることも出来なかったし、逆にそのトップに気に入られればこれから先の状況にもより良い結果を求めることが出来るだろう。
幸いなことに、植田大将は上機嫌で柏原くんを拘束していた。
不安がないなんて嘘。
相手はプロで、こっちは素人。
誰かに頼めるわけもなく、頼めるような立場にもない。
柏原くんは有能だけど、彼はこの時代でもちゃんとした人間関係が築ける人。
仮に彼にスパイを頼んだとしても、この晩餐会という多くの人たちの輪の中で、その人間関係が邪魔をしてまともに活動することは困難となるだろう。
それに彼はこの時代にとって大切な人……。
私がやるしかない!
柏原くんが反対してくれたときは、正直言って嬉しかった。
嬉しかったからこそ、やり遂げようという勇気が湧いてきた。
しかし私はスパイではないから、銃やナイフ、それに小型無線などのスパイグッズを見つけなければ誰がスパイであるかなんて分からない。
とりあえず、この時代に誰にも疑われずに持ち歩くことが出来る小型無線機なんてないから、舞踊団に入って銃やナイフを隠し持っている者が居ないかを注意深く探した。
日本の舞踊団に入らず、中国の舞踊団に入れさせてもらったのは、格闘戦になることを踏まえてのこと。
着物を着た状態で格闘するのはあまりにも不利になるし、かと言って脱ぐのにも時間がかかる。
それに着物を脱いだあとは、ほぼ裸の状態になってしまう。
中国舞踊団なら、踊りはひらひらのロングスカートだし、その後の接客はチャイナドレスだろうから動きやすい。
しかもスパイの居る確率も、中国舞踊団のほうがより高いだろうと見込んで。
最初の衣装に着替える時も、接客用のチャイナドレスに着替える時も、周囲に気を配って武器になるようなものを隠し持つ者が居ないか注意して見ていたが、それらしい人物は見当たらなかった。
晩餐会で接客をしながらスパイらしき人物を探そうと思ったが、相手はプロでコッチは素人。 そんな素人の目から見てもスパイと分かるようなバカでは、その世界では生き残ることは出来ないだろう。
だから視点を変えた。
いくら凄腕のスパイが居たとしても、その対象物である獲物は素人。
しかもこのミッションは、時間も限られているから、より難易度の低い人物を狙うのは間違いない。
あとはその対象の人物に気に入られ、油断させ、機会を狙うだけ。
対象はごく限られた情報を持つ者。
限られた情報とは、おそらく今回の作戦行動に関する資料。
その資料を持っているのは日本軍の将官クラスだが、それを奪うのは容易なことではない。
もっとも簡単なのは、その資料をココで貰った人物。
つまり調査団の人たちと言う事になる。
彼らには頑丈な鍵付きの部屋が用意され、その部屋のある建物には歩哨も立っているから彼らの留守中に忍び込んで盗み出すことは困難だろう。
しかし彼らのうちの誰かと一緒にいたなら、部屋に入ることは不可能ではないだろう。
そして調査団一行の中で、最もリスクの低い人物に纏わりつく女がスパイだと思った。
スパイにとってリスクの低い人物、それは邪魔の入りにくい人物と言う事になるだろう。
調査団一行は、米英仏は公使級と武官のペアで、イタリアだけが1等書記官1名だけの参加。
会が始まった時からミンメイがそのイタリア人に擦り寄っていて、まだ宴もたけなわというにもかかわらずそのイタリア人が退席し、ミンメイも少し時間をずらして外に出て行った。
スパイはおそらくミンメイに間違いないだろう。
だがココで騒ぎ立てたとしても、何の証拠もない以上誰も取り合ってくれないだろう。
逆に彼女に他に仲間が居たとすれば、その混乱に乗じて資料を手に入れてしまうかもしれない。
ホールを出る時に柏原くんのほうを見た。
彼もミンメイに疑いの目を向けていたようで、彼女が出て行った方を見ていた。
けれどもやはり私が思ったとおり、彼独特の人間関係の良さが災いして、席を立とうとした瞬間に後ろから来た植田大将に掴まっていた。
柏原くんは捕まった瞬間、助けを求めるような目で私を見たけれど、関東軍のトップに掴まった以上どうすることも出来なかったし、逆にそのトップに気に入られればこれから先の状況にもより良い結果を求めることが出来るだろう。
幸いなことに、植田大将は上機嫌で柏原くんを拘束していた。
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